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INTERVIEW

JUDAS PRIEST

2024.03.05UPDATE

2024年03月号掲載

JUDAS PRIEST

Member:Richie Faulkner(Gt)

Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子

-続いて収録曲について質問させてください。アルバムのオープナーである「Panic Attack」は、「Painkiller」や「Firepower」(『Firepower』収録)を彷彿させる曲調ながら、「Turbo Lover」のようなシンセ・サウンドや、プログレッシヴな展開など捻りの効いた楽曲です。この曲について詳しくうかがえますか?

まさに君が言った通りの曲だね。オープナーとしてパーフェクトな曲だと思ったんだ。冒頭に壮大な雰囲気があって、シンセ・サウンドが合いそうな感じで......さっきの話になるけど、ここでもPRIESTがこれまで築いてきた土台が生きてくる。シンセがPRIESTのキャリアの初期を彷彿させるんだ。イントロが発展していって爆発して、アップビートでパワフルな曲になる。と言っても君も気づいたように、ここ数作とは展開が違う。いろいろな拍子も使っているしね。あの曲はアルバムの土台作りをしているんだ。つまり、これまでの作品とは違うってことだね。プログレ的な変拍子もあちこちで使うし、前作とも違う内容だ。ということで、この曲が、アルバムのトーンを決めるパーフェクトなイントロダクションになると考えた。あの曲から、アルバム全体を巡る旅に出るんだ。

-タイトル曲「Invincible Shield」はアグレッシヴなビートに鋭いリフ、コーラスの転調にアウトロのツイン・リードと、アルバムで最も長尺ながら聴きどころが満載の楽曲ですね。

最後のハーモニー・ギターについて指摘してくれたのが嬉しいね。あの部分はプレイするのがすごく難しいんだ。弾きながら"俺はいったいどうやってこんなものを思いついたんだ?"なんて思っていたよ(笑)! "俺はいったい何を考えていたんだ? 全然弾けないぞ?"なんてさ(笑)。まぁでもそうだね、いろんなパートがあるひとつの"旅"だよね。道がくねくね曲がっていて、ギター・ソロなんて曲の中にある小さな曲みたいで、Randy Rhoadsみたいな感じだった。リフもたくさんあって......そうだな、最初の3曲、「Panic Attack」、「The Serpent And The King」、「Invincible Shield」はとてもヘヴィで痛烈な意思表示みたいな感じだね。アルバムがこういう内容になるっていう伏線でもある。速くて、ヘヴィで、複雑で、つまりはPRIESTが知られている特徴が表れている。だからこそこの曲をアルバムのタイトルにするのが適切だと思ったんだ。

-一方、最近リリースされた「Crown Of Horns」は哀愁を帯びたヴォーカルとツイン・ギターの絡みが非常に美しい楽曲で、シングルとしても気に入っていたのですが、アルバムの中で聴くと強烈なピック・スクラッチからファスト・ナンバーの「As God Is My Witness」へと繋がるところがユニークでした。こうした構成や曲順も意識されたのでしょうか?

アルバムにはどの曲をどこに置くべきという文脈があるんだ。その曲の前とあとにどんな曲が入るかとかね。さっきも言ったけど、俺たちは多彩さを見せたかった。「Panic Attack」、「Trial By Fire」、「Crown Of Horns」はそれぞれまったく違う個性がある。それらが入っているアルバム全体を聴くと、ダイナミクスがあることがわかる。ヘヴィに始まって、途中で少しトーンが下がって......そんな感じのダイナミクスがアルバムにはあるんだ。アルバム全体を聴くと理解できると思うけど、単独で聴くとコンテクストがあまりわからないんじゃないかな。そう、「As God Is My Witness」に入っていくときはショックに近いものがあるよね(笑)。早くみんなにもアルバムで聴いてもらいたいよ。

-そうですね、ミドル・テンポな曲が終わったかと思ったら急に速くなるので、"えっ?"と思いました(笑)。そのギャップが面白いですが、ということはあの曲はあの位置にあるべくしてあるわけですね。

曲が出揃ってからリストを作って、一番効果的なダイナミクスを持つのはどういう曲順か考えたんだ。初めからあの位置を考えていたわけじゃないけど、俺たちが取り組んできた曲の中でも力強い気がしたし、「Crown Of Horns」は収録曲の中で一番スローというかミディアム・ペースで、アンセミックなタイプの曲だから、ヘヴィにスタートして、「Crown Of Horns」でトーンダウンして、「As God Is My Witness」で勢いを取り戻して......というのが一番理に適っていると思った。トラックリストを作るときは、それぞれの曲とアルバム全体にとって一番効果的な方法を考える。それであの位置にしたんだ。あの曲が最後にフェードアウトしてから次の曲で怖気づかせる(笑)。とても楽しいよ。

-本編ラストの「Giants In The Sky」では荘厳な曲調でレジェンドたちへのトリビュートが歌われています。最後のRobのシャウトも含めてエモーショナルな楽曲ですが、この曲についてもうかがえますか?

あの曲のリフはブルース由来なんだ。そこが心から気に入っている。プログレッシヴなブルース、それこそPRIESTらしさだし、俺のルーツのひとつでもあるからね。あと、スパニッシュ・クラシカル・ギターのソロが入っているミッドセクションもとても気に入っている。あれも今までとはひと味違うよね。Robの美しいヴォーカルもあるし。彼があの部分の歌詞を思いついたときは、即座に"これで決まり!"と思ったよ。それに曲全体も、俺たちが影響を受けてきた、今はもういない人たちへのトリビュートになっている。彼らはいなくなっても、彼らの音楽は永遠に生き続けるということを歌っているんだ。俺たちが全員聴いて育ってきたレジェンドたちはもういないけど、音楽は生き続ける。彼らは俺たちのカルチャーの巨匠(giants)だし、歴史そのものだ。いつまでも死にはしないよ。このアルバム(の本編)を締めくくるところで、Robは"You won't ever die(あなたはいつまでも死なない)"と高音のスクリームで歌っている。とても感動的な曲だよ。俺たちはこよなく愛してきたレジェンドたちを失ってしまったけれど、音楽は生き続けるんだ。それもまた"invincible"ということだよね。

-このインタビューでも先ほど、PRIESTの音楽が不滅であること、メンバー全員がいなくなってしまっても音楽が生き続けることについて話が出ていましたね。ご自分たちへのトリビュートにもなるのでは。

(※少し間を置いて)......たしかに一理あるね。いつかは俺たちも全員ここにはいなくなる。でも願わくは、俺たちの音楽は生き続けてほしい。PRIESTは確かにレジェンドだし巨匠だし、いつかPRIESTの音楽はPRIESTより長生きすることになる。だから遠回しではあるけど、自分たちのこととも言えるね。

-100年後のファンが、PRIESTのセルフトリビュートのような感じでこの曲を大切にしてくれると思います。

すごくクールな見方だね! まぁ、PRIESTのことを念頭に置いて書いた曲とは思わないけど、いつかはそうなるだろうな。俺たちはみんなどこかの時点で死ぬわけだから。そうしたら、この曲はPRIESTのレガシーについての曲にもなる。とても興味深い観点だと思うよ。

-過去の巨匠たちに多大なリスペクトを持って、彼らからたくさんのものを吸収してきたからこそ、PRIESTはそれを自分のものにして、新しいレジェンド、新しいカルチャー、新しい音楽を作ってくることができたのだと思います。それが表れているのがこの曲ではないでしょうか。

俺もそう思うね。Robが考えた歌詞だけど、彼は俺たち全員の気持ちをまとめてくれているんだ。Lemmy(Kilmister/MOTÖRHEAD/Ba/Vo)、Hendrix、Randy Rhoads、さらには去年亡くなってしまったTina Turnerもそうだけど......本当にたくさんいる人々へのトリビュートを、俺たち全員のために、歌詞という形でまとめてくれた。それぞれに憧れの人や大好きな人がいて、彼らにあらゆることを教えてもらってきた。そのことを俺たち全員が自分のことのように思える形で、Robらしく歌詞でトリビュートしてくれたんだ。それがRobの歌詞の美しさだよね。

-まさにそうですね。ところで、デラックス・エディションのボーナス・トラックもそれぞれ個性的な楽曲が収録されていますが、中でも「Some Heads Are Gonna Roll」(『Defenders Of The Faith』収録)などを手掛けたBob Halligan Jr.が制作した「The Lodger」は往年のファンにとって嬉しいサプライズになっているかと思います。彼を起用した経緯をうかがえますか?

あるショーに彼が来てくれたんだ。どこのショーだったかは思い出せないけど、たしかBobの地元で行われたショーじゃなかったかな(※Bobはアメリカ在住)。奥さんと一緒に来てくれて、俺たちと一緒に過ごしたんだ。そのとき曲をひとつ提案してくれて、使えるか考えてくれないかと。何かと印象に残る曲でね。他の曲に取り組んでいても「The Lodger」のことを思い出すんだ。何か独特で、とても興味深い曲だった。それでPRIEST的な味つけをすることにした。そうやってできたこの曲を、どうしても出したい、お蔵入りにはしたくないと思った。それでデラックス・エディションの一部として出すことにしたんだ。素晴らしい曲だからね。とても力強いし、君も言っていたようにBobとこのバンドとの歴史もあるし、入れることが適切だった。

-アルバム発売後には久しぶりとなるUKツアーなどの日程が発表されていますが、日本公演の話題も出ているのでしょうか?

話には出ているよ。君が言っていたツアーの日程を最近発表したところで、今はそのあとの日程を検討しているところなんだ。俺は日本が日程に入ることを願っているし、きっとそうなると確信している。そっち方面で前回行けなかったところにも行けるといいね。みんなにもまた会いたいし。ずっと会えていなかったから、早く行きたいと思っているよ。他の地域も併せて検討しているから、近い将来どこかの時点で行けると思う。

-楽しみにしています。最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

俺たち全員日本が恋しいし、日本のファンが大好きだ。このバンドは半世紀近く日本に来ているし、俺もこのバンドで日本に行くのが大好きだから、早く会いに行きたいね。『Invincible Shield』を引っ提げてそっちに行くつもりだよ! もうすぐ会えることを願おう!