INTERVIEW
DuelJewel
2024.03.27UPDATE
2024年04月号掲載
Member:隼人(Vo) Shun(Gt) 祐弥(Gt) Natsuki(Ba) ばる(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
今ってまさに歴史の転換点なんだろうな、と
-コンポーザーであると同時にプレイヤーでもあるNatsukiさんは、ベーシストとしては「OBSERVE」とどのように向き合われていくことになったのでしょう。
Natsuki:楽曲全体を見ながら、ベースがどういう動き方をしたらいいんだろう? っていうのは最後の最後になって考えました。ストレートにルートで弾き続けるのもちょっと違う印象だったので、隙間を狙って音を入れてった感じでしたね。
-作曲者として、ギター隊にアンサンブルの面でのオーダーを出されるようなことはありましたか?
Natsuki:"可能な限りデモに沿っていってほしい"みたいなことは言いました。
祐弥:Natsukiが作る曲ってギターも全部バッチリ組み込まれてるし、細かい粘りの部分の表現とかまで誇張して作ってくれてるんですね。だからいつも"Natsukiはギタリストとしてもだいぶ成熟してるなぁ"と思いながら、デモを参考にして弾かせてもらってるんです(笑)。今回も、こっちから"こうしたほうがいいんじゃない?"みたいなのはまったくなかったですね。あとの細かい部分とかは、録りの本番で弦楽器隊3人でディスカッションして落とし込むっていうことをしたくらいです。
Shun:Natsukiの曲は結構難しいものも多いんですけど、この「OBSERVE」はストレートなアプローチの曲だなと感じたんですよ。たぶん、これは今後のライヴでも映えるだろうなっていう予感がしてますね。今はそう思いながら、ここからのツアーに向けての練習をしてるところです。
-先ほど、隼人さんは仮タイトルを生かしながらこの詞を書き、そして正式タイトルも"OBSERVE"とされたとのことでしたが、この曲を通して一番描きたいものについては、ご自身でどのように認識されていたのでしょうか?
隼人:実はNatsukiからデモを貰ったときに、一緒にイメージ画みたいなものをくれたんですよ。それと自分がこの曲に対して抱いた印象が近かったので、詞はとても作っていきやすかったです。"オブザーバー"っていうのは監視するとかそんな意味合いの言葉で、日常の中でもたまに聞く言葉ですけど、要はそれって客観的な立場のことを指すじゃないですか。例えば、僕らが生きているなかで喜んだり悲しんだりしていることも、生物学的な目線とか、もっと大きな視点からはオブザーバー的にそういう光景を捉えることもできるのかな、っていうふうに考えたんです。
-主観と客観では同じ場面でも違って見える、ということですね?
隼人:自分自身の自我が捉えている今と、自分の立場から捉えてる今って、きっと違うんだろうなっていうことです。わかりやすい例としては、実験である条件のもとでラットにストレスをかけると、彼らは殺し合いを始めてしまうことがあるんですよ。当然、人間はその様子をオブザーバーとして冷静に解析するわけじゃないですか。ということは、人間って当事者にもなれるし、監視する側にもなれるんだろうなと。立場が違えば、監視することが仕事になっちゃうこともありえるわけです。社会学的に見て今の日本はどうだ、世界はこう動いている、そういう話がある一方で、それを語っている人にも日々の実生活があって、楽しいこともあれば、時には危険な目にあったりもする。その図をオブザーバー的な視点で見るとどこか滑稽でもあるんだろうし、痛みとか苦しみっていうものからはどんどん離れていくんだろうな、っていうことをこの詞の中ではひとつのストーリーとして描いてみたんです。
-現代社会の歪みの部分が、この詞にはある意味で凝縮されているのかもしれません。
隼人:直近でも1月には震災がありましたし、同じ国の中で起きてることなのに、そこにいる人とそうではない人では感じ方って違うと思うし、少しでも自分のことのように親身になって考えたいっていう気持ちもある反面、共感しすぎると自分の心もつらくなってくる、っていうのが現実ですからね。もっと話の範囲を人種、宗教、風習、文化の違いとかの領域まで拡げると、僕らはここから人間としてもっと進化して乗り越えなきゃいけないことがたくさんあるなと感じるんですよ。今ってまさに歴史の転換点なんだろうな、と思いながら作ったのが「OBSERVE」の詞ですね。
-もう1曲の新曲「咲き誇る桜の下で」は、今作『[RE]REVIVE』のラストを飾っておりますが......こちらもまっさらの書き下ろし曲なのですか? その昔に断片として作っておいたものを、改めて曲として仕上げたとかではないのですよね?
Natsuki:まっさらの書き下ろしですよ。
-だとしたら、この曲の中に漂う90年代的ノスタルジーはなんなのでしょう。この曲の中にはあの時代の、あの春の空気が吹き抜けているかのようです。
Natsuki:そういうノスタルジーを感じてもらえたんなら、狙いは成功です(笑)。
ばる:この曲は"懐かしさ"を感じてもらえるような新曲として、意図的に作ったんですよ。自分たちにとっての"90年代のV系ってこれだろう!"を作り込んでこの形にしました。だから、そう感じていただけるのはめちゃくちゃ嬉しいです(笑)。
Shun:ただ、我々はこれだけヴィジュアル系を長くやってきたのに、意外とこういう曲調の曲はやってなかったんですよ。むしろ、ちょっと避けて通ってきたところがあるくらいなんですけど、いざ当時のバンドをオマージュしながらクリーン・トーンを多用してみたらとても楽しかったです(笑)。
隼人:詞もこの曲はあまり考え込んだりすることなく、曲を聴きながら筆が進むがまま書きましたね。春っていう季節も曲調から自然と浮かんできたもので、春は別れと出会いが両方多くなる季節ですし、人間関係って恋愛であろうが、仲間同士であろうが、始まったものはいずれ終わるじゃないですか。でも、その終わるっていうことをマイナスに捉えずに次に向かうというか、ひとつひとつの物語を終わらせていくのが人間の一生なのかな、と思いながらこの詞は書きました。
祐弥:曲にも詞にも、この曲には僕らがヴィジュアル系にいろいろと影響を受けてきたなかで、昔カラオケでバンバン歌ってたようなシングル・チューンの匂いがすごい漂ってるんですよね。自分の好きだったものをこんなにもすっきりとした形でDuelJewelの曲に落とし込んだことはなかったので、とりあえず要点は全部入りな曲になったと思います。アンコールで銀テープが飛ぶような光景を想像できるんじゃないでしょうか(笑)。
-誰のどの曲に似ている、とかではないのですが。時代感が曲全体に投映されているところが非常に素敵です。
ばる:今回、アルバムとして『[RE]REVIVE』をリリースしたあとには"DuelJewel mini tour 「TIMESLIP」"をやることも決まっているので、「OBSERVE」では最新の音を聴かせたかったと同時に、もう1曲の新曲ではタイムスリップ感をあえて出したかったんですよ。あと、タイムスリップ感については「OBSERVE」のMVのイメージ・シーンで小道具を使ったりしてるところでも醸し出したりしてますし、衣装も今回は昔のV系シーンでよく流行ってた軍服に腕章というスタイルにしてます。
-「OBSERVE」から始まって、「咲き誇る桜の下で」終わり、途中には様々な過去の名曲が最新の音で詰め込まれている『[RE]REVIVE』の世界を、今度のツアー"DuelJewel mini tour 「TIMESLIP」"でもぜひ堪能させていただきたいものです。
ばる:僕らが復活したのが2019年だったんで、情況的には復活してすぐコロナ禍になっちゃったんですよね。コロナの間も作品は出してましたし、ライヴもやっていたんですが、意外とDuelJewelが復活したことを知らないままライヴっていう文化から遠のいてしまった人も中にはいると思うんで、今度のツアーでは久しぶりにDuelJewelを観たいなっていう人はもちろん、"昔のDuelJewelってこんなことをやってんだ?"っていう部分を新しいファンの人たちにも体験してもらえると思うんで、きっとみなさんに楽しんでいただけると思います。
-なんでも、5月19日のツアー・ファイナルはあの目黒鹿鳴館で行われるそうですし、この日はよりいっそうの"TIMESLIP"を感じられそうですね。
ばる:(目黒)鹿鳴館でやるの、もう10数年ぶりぐらいなんですよ。結成当初はよくお世話になってましたし、1年延長になりましたけど去年はもうすぐ閉店するっていうニュースもありましたからね。なんとかやらせてもらいたい、ということで実現しました。ツアー・ファイナルは、鹿鳴館の最後に花を添えられるようにやりたいです。