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INTERVIEW

The DUST'N'BONEZ

2023.11.08UPDATE

2023年11月号掲載

The DUST'N'BONEZ

Member:nao(Vo) 戸城 憲夫(Ba) 坂下 丈朋(Gt) 満園 英二(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

猛者揃いにもほどある。The DUST'N'BONEZとはex-ZIGGYにして現THE SLUT BANKSの戸城憲夫、同じく現THE SLUT BANKSの坂下丈朋、ex-SADSの満園英二、そして首振りDollsでも活躍するnaoが雁首を揃えた、筋金入りのロックンロール・バンドとなる。そんな彼らがこのたび発表するアルバムのタイトルは、その名も"1000のロックンロール"。往年の洋楽に原題と邦題が付けられていたことを彷彿とさせる、この洒落がきいた素晴らしいセンスもさることながら、もちろん中身のほうもこのアルバムは最高な音たちで満たされている。ロックンロールという名の夢とロマンたちは、今を生きる音としてここに息づいているのだ。


自分が音楽と付き合ってきた50年という時間を、ここで改めて昇華させたかった


-今回のアルバム『1000のロックンロール』は、その名の通りに粒揃いのロックンロールが詰まった作品となっている印象ですが、これはもともとタイトルありきで作られた作品だったのでしょうか。それとも、音が完成してからこのアルバム・タイトルが決まることになったのでしょうか。

戸城:だんだんとだね。アルバムを作っていくうちに、だんだんこういう方向性の作品になっていった感じ。で、結果的にタイトルも"1000のロックンロール"にしました。

-ちなみに、今回のアルバム制作に入ることになったきっかけがあったとしたら、それはどのようなものだったのでしょう。

戸城:なんとなく"そろそろかな"って(笑)。

nao:一緒に飲んだりすると、よく"アルバム作りたい!"、"レコーディングしたい!"っていうことは前から言ってましたよ。

戸城:だってほら、俺だってそのうち死んじゃうかもしれないじゃない(笑)。生きてるうちに作りたいものを作っとかないとな、っていうのはちょっとありましたよ。

-とてもお元気そうですけれど、まさか何かしらの危機感を持つようなことでもあったりしたのですか??

戸城:それがもう、去年の11月に札幌で大変だったんですから。ツアー先のホテルで、いきなり血便がドバーッて!

坂下:えっ、その話しちゃうんだ!?

戸城:一応、東京に戻って検査したら大したことなくて大丈夫だったからね。それに、あの当日も"きっと気のせいだ"って言い聞かせて、夜は飲みに出掛けたもん(笑)。

-その姿勢はあまりにロックンロールすぎます。毒を盛って毒を制すスタイルですか。

戸城:そうね。ただ、さすがにあの瞬間は焦ったなぁっていう。そして、あの経験をしたことで"なんかあったら死んじゃうな"っていうことは頭をよぎったんですよ。

-たしかに、そこは年齢に関わらず誰しもが"明日も絶対に生きていられる保障はない"のが人生の本質ではありますものね。

戸城:でしょ? だとしたら、やっぱりやりたいことはやれるうちにやっとかないと。

-ちなみに、今作『1000のロックンロール』の中で最も早い段階でできた楽曲はどちらだったのでしょう。

戸城:デモ段階では、9曲目に入ってる「DOWN」が一番先にできてました。というのも、この曲は前作(2022年リリースの5thアルバム『Search and Destroy』)からの流れで作ったものだったんですよ。わかりやすく言っちゃうと、GUNS N' ROSESとかVELVET REVOLVER的な(笑)。あのへんの雰囲気を前作からそのまま引きずっていこうかな、ってこの曲を作った段階ではそう思ってたわけ。

-しかしながら、完成したこのアルバムを聴かせていただくと「DOWN」はむしろ異質な雰囲気を持った曲になっている印象です。

戸城:うん、だろうね。今回のアルバムを作り出したあたりから、サブスクで自分が夢中になって聴いてた50年くらい前の音楽を改めて聴き直す機会が増えてさ。KISS、AEROSMITHがデビューしたくらいの時期の曲って、今聴いてもすげー面白いなと思ったんだよね。ルックスだってめちゃめちゃカッコいいじゃない? そういう自分の中の気持ちが、今回の曲作りには結構色濃く反映されていったんじゃないかなぁ。でも、ただ昔の音楽を焼き直したっていうのとは違うよ?

-ロックンロールに対する初期衝動を、今に生きるThe DUST'N'BONEZとして表現されたわけですよね。

戸城:例えば、人間椅子みたいに昔ながらのハード・ロックを貫いてやり続けるとか、ゆらゆら帝国みたいにヴィンテージ機材を使って昔のバンド風の音を出すとか、そういうやり方もあるとは思うけど、今の自分がやりたかったのはそれじゃなかったからね。自分が音楽と付き合ってきた50年という時間を、ここで改めて昇華させたかったんですよ。

-今のお話というのは、今作の冒頭を飾っている「The Golden Age」の音と詞に凝縮されているように感じられます。

戸城:この『1000のロックンロール』は、コンセプト・アルバムみたいにしたかったんですよ。THE BEATLESの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』みたいな。だから、最初の曲は「The Golden Age」ってもう初めから決めてたの。というより、すべての曲ができた段階で曲順とアルバムの流れもすでに決まってたね。それに、"1000のロックンロール"っていうタイトルも、これはいわゆる邦題なんですよ。

-KISSのアルバム『Destroyer』が邦題では"地獄の軍団"だったりした、あの感覚ですね?

戸城:まさにそれ。PINK FLOYDの『Atom Heart Mother』が日本では"原子心母"になっちゃうみたいな(笑)。このアルバムも原題は"THOUSAND ROCK'N'ROLL"なんだけど、リリースするうえでのタイトルとしてはわざと70年代の洋楽っぽく"1000のロックンロール"にしたわけ。

-それだけテーマ性がはっきりしていたということは、各メンバーもこのアルバムを制作していくうえでは基本的にオールドスクールな音を出していく、という方向性が明確に見えていたことになりそうですね。

満園:そもそも流行りとは関係なく生きてるから(笑)、自分のドラムはほっといてもオールドスクールな音になるんですよ。そういう意味では、特に何かを意識して叩くということはなかったし、前回からヴォーカルがnaoちゃんに変わっても、丈ちゃん、戸城さんと一緒に音楽を作っていくっていう点ではいつもと同じでした。

-こと音質の面でこだわられたところがあったとすると、どのようなところでしたか。

満園:それがなんと、今回は耳が聴こえないなかでレコーディングしてたんですよ(苦笑)。

-それは一大事ではありませんか! いったい何があったのです??

満園:実は顔面麻痺というのになりまして、その影響で難聴になってしまったんです。

坂下:血便の次は難聴って(笑)。

戸城:ボロボロじゃねーか、うちのバンド(笑)。

満園:とにかく、ある日突然口周りがまったく動かなくなって、歯も磨けないし、ご飯も食べられなくなっちゃってね。病院に行ったら即入院でした。で、退院後も耳は不調でその状態のなかでプリプロとレコーディングをやることになったんですよ。だから、今回のサウンドメイクはすべて勘です(笑)。

-すべて勘でここまでのものを作れるとは......さすがですね。それこそキャリアの成せる技、ということなのかもしれません。

坂下:あの時期、顔が曲がっちゃってたもんねぇ。

満園:顔の骨の中に通ってる神経が腫れちゃって、耳までおかしくなってたからね。幸いなことに今はもうもとの聴力に戻ったんですけど、レコーディング中は大変でした。ただ、うちのバンドはとにかくベースの音が容赦なくデカい音なんで、難聴でもある程度は聴こえるくらいでしたね(笑)。それに、ずっとやってるメンバーだからさっき言った通りで、勘でなんとかなったところもあったんですよ。

-阿吽の呼吸、以心伝心の力で生まれたのがこのアルバムであるわけですね。

満園:長年連れ添った夫婦みたいな感覚はあるかもしれない。だけど、だいたいわかるっていうだけじゃなんとかならない場面もあって、今回のアルバムでは想像以上に細かいリクエストを出された曲なんかもあったりしたんですよ。いやほんと、いろいろあっただけにこのアルバムが完成してほんとに良かったです。

-坂下さんからしてみると、今回のレコーディングに向けてはどのようなスタンスでいらしたのでしょうか。

坂下:僕もいつもの感じでした(笑)。もちろん、憲夫とは現場ですごく密に打ち合わせはするんです。そこも含めていつもの感じだったっていうことですね。憲夫が曲を書いたときのイメージ通りの音にするために、曲ごとに使うギターをどれにするとか、もっと細かく"これはピックアップがP90じゃなきゃダメだ"みたいな話も結構しましたよ。