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INTERVIEW

BACK LIFT

2022.11.30UPDATE

2022年12月号掲載

BACK LIFT

Member:KICHIKU(Vo/Ba) SEIYA(Gt/Cho) HEAVIN(Dr/Cho)

Interviewer:杉江 由紀

果てなき夢を乗せたバンドワゴンは今日もきっとどこかを走り続けている。名古屋を拠点に15年にもわたる長いキャリアを積み重ねてきた3ピース・バンド BACK LIFTが、今年に入って新メンバー、SEIYAを迎えたうえで生み出したのは、なんと4年ぶりのまとまった音源であるというEP『Dream Wagon』だ。"全A面と言いたいほどの仕上がりで、今後のバンドライフでも欠かせない楽曲ばかり"とコメントしている通り、たしかに今作はどれもそれぞれの味わいを持っていながら、見事な粒揃いぶりを呈している仕上がり。新体制となったBACK LIFTの旅は、ここからより面白くなっていくに違いない。

-BACK LIFTにとって今回のEP『Dream Wagon』は新メンバー、SEIYAさんを迎えての初音源となるそうですが、まずは今年に入ってSEIYAさんが加入されることになった経緯から教えていただけますでしょうか。

KICHIKU:2021年8月に前任のギタリスト(YU-PON)がいなくなったあとも、僕らはいろいろなバンドマンにサポートを務めてもらいながら、活動を止めることなくずっとやってきていて、その間も並行してメンバー探しはしていたんですよ。ただ、それを3ヶ月くらい続けた結果として、一緒にやりたいなと思う人はすでにバンドをやってるか、現役を退いているかだということがわかったんですね。それで、なかなか周りにはピンと来るギタリストで一緒にやっていける人材がいないんだったら、ここは思い切って未知なる可能性に賭けてみようということで、今度は2021年9月に公募をしたんです。そこに応募してきてくれたのがSEIYAでした。

-SEIYAさんは公募内容をご覧になってすぐに応募されたのですか?

SEIYA:募集の内容が投稿された日に見てすぐ"応募したいな"とは思いました。ただ、当時は仕事もしていて社会人1年目だったのもあって、9月だとまだ入社してから半年くらいしか経っていないという状況だったんですよ。だから、2日ぐらいはちょっとどうしようかなと悩んで、いつもお世話になってる親や友達とかにも相談してみたら、みんなから"やりたいことをやってみれば"っていうことを言ってもらえたんですね。たしかに、人生は1度きりだし、こんな貴重なチャンスはそう巡ってくるもんじゃないなと自分としても思ったので、そこからは応募に必要な課題曲の動画を撮影するための練習を速攻で始めました。スタジオで一発録りしたプレイ動画を送る必要があったんです。

-募集の投稿を見てから、動画を送るまでにはどのくらいの時間があったのです?

SEIYA:たぶん、2週間くらいだったと思います。

KICHIKU:そもそも募集期間自体が1ヶ月ないくらいだったんですよ。

-ちなみに、SEIYAさんはもともとバンド活動の経験はあったのですか?

SEIYA:いや、ちゃんとしたのはなかったです。大学生のときに軽音サークルでコピバンやったとかそのくらいでした。

-その状態で応募してみたというのは......正直、結構な勇気ですねぇ。

KICHIKU:ほんとそうなんですよ。少なくとも俺なら無理(笑)。

-ちなみに、KICHIKUさんとHEAVINさんの側からしてみると、新メンバーに求めていた人物像とはどのようなものだったのでしょうね。

KICHIKU:具体的にこんな演奏ができてとか以前に、とにかく会ってすぐ会話のキャッチボールがテンポ良くできるやつがいいな、というのは僕の中で個人的にかなり重視してた部分でしたね。

HEAVIN:もちろん、ある程度ちゃんと弾ける人っていうのも当然大事でしたよ。そこは動画で基本的なところはわかるんで、あとは会って話してスタジオに一緒に入ってみないと詳しいことはわからないだろうな、とは思ってました。

-実際に、動画とリアルで会ってみた感じでは違いがあったわけですか。

HEAVIN:動画の雰囲気だとSEIYAってめっちゃもの静かでちょっと照れながら弾いてるような雰囲気だったんですよ(笑)。でも、初対面からいきなりすごい質問とかいっぱいしてきたし、動画のシャイなイメージとリアルは違いました。

KICHIKU:まぁ、動画の場合は僕らの音源をバックに弾いてる状態なので、細かいところまではわからないというのはありましたけどね。でも、その時点で"結構弾けるやつなんやな"というのは感じてました。そして、動画と言えばSEIYAは、課題動画とは別に以前からYouTubeにも何曲かBACK LIFTの曲をあげてたんやんな?

SEIYA:そうなんですよ。公募に前後するような感じで計7~8曲くらいあげてました。撮った時期はどれも公募の前で、いつあげようかなと思っていた頃に前のギターの方が脱退されたのもあり、僕としてはそのときに、"おつかれさまでした"というリスペクトの気持ちで、最初に1曲あげたんです。

KICHIKU:なるほどね。もっとも、うちのバンドの場合は3ピースやからギターだけじゃなくコーラスも非常に大事なんで、それはあんまりよく聴こえやんかったんよな(笑)。

SEIYA:募集の条件としては"コーラス"っていうのもあったんで、応募したほうの動画では自分なりに歌ったんですけど、わかりにくかったみたいです(笑)。

-かくして、そこからこの3人で初めてスタジオに入ったときの様子というのも教えていただけますでしょうか。

KICHIKU:去年の10月16日に初めて音を合わせて、わりといい感じではあったんですよ。でも、そこから半年くらい今年の春までは毎週とか隔週くらいのペースで一緒にスタジオに入りながら、ずっと様子を見ていくことになりましたね。

-インターン期間を設けたわけですか。

HEAVIN:まさに。いわゆる練習生みたいな感じです。

KICHIKU:その間、サポートを入れたライヴを1回だけやってそれを見せたことはありましたけど、基本的に水面下でのスタジオ・リハーサルばっかりでした。

-その半年間にはきっと様々なドラマがあったのではないです?

KICHIKU:僕はSEIYAに自分の感情を悟られないようにしてましたね。SEIYAは不安だったかもしれないですけど、あんまり自分のほうからOKなムードを出しすぎると緩みそうな気もしたので、気持ち的には俺らとしてはSEIYAで行こうとぼほぼ決めていた反面、あえてSEIYAにはそこが伝わらないようにしてたところがありました。

SEIYA:いや、ほんとにそこは見えなかったですねぇ。何回か"俺、どうなんですか?"っていうジャブも打ってみたんですけど、毎回"まぁまぁまぁ"みたいな感じでかわされるか無視なんですよ(笑)。

HEAVIN:僕もずっとお茶を濁し続けてた感じで、今年の春にいよいよ加入を決めたときには、"この話はいったん白紙にしよう"っていうドッキリをSEIYAに仕掛けさせてもらいました。動画も撮ったんで、その様子はいずれアップしますよ(笑)。

-SEIYAさんは、見事してやられてしまったのですね(笑)。

SEIYA:ドッキリだなんて予想もしてなかったから、ほんまにあのときは"そうか。あかんかったんやな......"ってなりましたもん(苦笑)。

KICHIKU:俺はその間、めっちゃ笑うの我慢するの大変やった(笑)。しかも、流れとしては告白した相手にフラれるときみたいな、"あなたの気持ちは嬉しい"から始まるいったんはアゲつつな感じで、そこから"でもやっぱり......"って落とすんやけど、"実はドッキリでした!"っていう3段階の展開やったからな。

SEIYA:マジであれはヤバかったですって(笑)。

-なんともドラマチックな加入劇だったようですが、無事に今日まで至ったということで何よりです。なお、SEIYAさんの正式加入後からは、すぐに今回のEP『Dream Wagon』を制作していくことになったのでしょうか。

KICHIKU:その前に、まずは僕ら持ち曲が100曲くらいあるんで、それを練習じゃなくライヴでやっていく必要がありましたね。6月にSEIYAが正式加入してからすぐ6月末スタートで全6本の主催ツアー([BACK LIFT presents "P.M.P TOUR 2022"])をやって、なるべく被りがないようなセットリストでできるだけ多くの曲を演奏していったんです。あそこで80曲くらいはやったことになると思います。

-初めてのツアーで計80曲も弾くとなると、頭の中が混線したりはしませんでした??

SEIYA:それはもう、相当こんがらがってたっす。でも、意外とHEAVINさんも"これどんなだったっけ!?"って困惑したりしてましたよね(笑)。

HEAVIN:うん、普段ほとんどやってなかった曲とかもあったんで(笑)。

-そんなツアーを経てようやく制作に取り組むことになっていったのが、今回のEP『Dream Wagon』であったとのことですが、この作品を作っていくにあたりバンドとして伝えたかったことは、このタイトルに象徴されていることになりますか。

KICHIKU:実を言うと、これは新体制になってから作ったものというよりは、前からずっと吐き出したかったことをかたちにしたEPなんですよ。うちのバンドの場合は僕がすべて曲を作っているんですけど、表題曲になってる「Dream Wagon」に関してはSEIYAが入る前からもともと作ってたもので、歌詞の内容も何を書きたいかは決まってたんです。ただ、ちょうどこれを作り出したあたりから、前のギターがやめるかもしれない状況にもなっていって、さすがにその状態ではこの曲を出すわけにもいかず、いつかバンドが落ち着いた状態になったら出したいとずっと見計らっていた曲でもあったので、ようやくこの曲を出せるようになったのが今やったって感じですね。

-とはいえ、以前からあった曲だとしても、SEIYAさんを交えて新たに音を作っていくことになった以上は、何かしら前体制のときと変化が生まれていったところもあったのではないかと思います。あえて前体制と現体制を比べた場合、音を作っていくうえでの違いがあるとすると、それはどのような点になるのでしょう。

KICHIKU:作曲者側としては、SEIYAに限らずこれまで歴代ギタリストに対して、それぞれの曲に関する要望はその都度出してきましたし、なんならわりと細かいところまで"こうしてくれ"って言うんですけど、やっぱり3ピースでやってるということは、個々が持ってるプレイヤーとしての個性も欲しいですからね。その点、SEIYAはちゃんと自分の我も持ってるやつなんで、そこは今の体制ならではのところかもしれないです。

HEAVIN:SEIYAはこれまでのBACK LIFTではあんまり使ってなかったコードを、自分で探してきたりするんですよ。それを積極的に試したりしてたんで、そういう率先して新しい要素を取り入れようとする姿勢は、彼ならではのものだなって感じてます。

-ある意味、かつてはいちキッズとしてコピーをしていたことがあるからこそ、客観的にBACK LIFTの音楽を解析したうえで"もっとこんなアプローチもできるのでは?"と提案できるのがSEIYAさんの強みなのかもしれませんね。

SEIYA:BACK LIFTが好きでコピーしてたぶん、BACK LIFTっぽいフレーズとかコード進行というのはなんとなくわかりますし、逆にそれがかなり多用されてるなって印象もあったんで、今回のレコーディングでは"今までだったらこのパワー・コードを使ってたんだろうけど、今回はちょっと違うコードをつけてみたらどうかな?"って実験をコード本とかを見ながら試していったんですよ。