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INTERVIEW

THE PRIMALS

2022.09.09UPDATE

2022年09月号掲載

THE PRIMALS

大人気オンラインRPG"ファイナルファンタジーXIV(以下:FFXIV)"のオフィシャル・バンドとして、サウンド・ディレクターである祖堅正慶を中心に結成されたTHE PRIMALS。そんな彼らが2022年6月4日、5日にワンマン・ライヴとしては過去最大規模となる、幕張メッセ 幕張イベントホールで、"THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow"を開催した。約4年ぶりのワンマンということもあり、チケットは一般発売後、即日完売。そんな幻のライヴの初日公演がついに映像化となり、9月14日にBlu-rayでリリースされる。しかもライヴ本編だけでなくバック・ステージ映像、MP3音源(一部を除く)、アイテム・コードもついた豪華仕様。改めて、5人にBlu-rayの見どころと、THE PRIMALSが提示する独自のエンターテイメントについて訊いた。

メンバー:マイケル・クリストファー・コージ・フォックス(Vo) 祖堅 正慶(Gt/Vo) GUNN(Gt) イワイエイキチ(Ba) たちばなテツヤ(Dr)
インタビュアー:真貝 聡
Photo by 西槇太一、MASANORI FUJIKAWA © 2010 - 2022 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.


"FFXIV"で同じ感動を共有している1万3,000人以上が一堂に集まったステージ


-みなさんの中で、何年経っても色褪せないアーティストを教えてください。

祖堅:僕はRAGE AGAINST THE MACHINEですね。振り返ると1stアルバム『Rage Against the Machine』が出た1992年からずっと聴き続けています。

-どこに魅了されていますか?

祖堅:"最低限、最高潮"なんです。ミクスチャーだとか、骨太だとかいろいろと言われていますけど違うんですよ。RAGE(RAGE AGAINST THE MACHINE)以外に形容できる言葉なんてない。とにかくすごいバンドっていうことですね。あと30代の頃はeastern youthに激ハマりして、今またカッコいいなと思っています。

GUNN:僕は、中学生ぐらいに出会ったSEX PISTOLSです。初めて聴いた瞬間、ビックリしました。なんだこれ! っていう。めちゃくちゃしている感じもありながら、曲はものすごくポップ。未だにちょいちょい聴きますね。特に、ここで一発気持ちを上げないかんときには「God Save The Queen」を聴いて、自分を鼓舞しています。

たちばな:小学生のときに出会ったKISSは特別なバンドですね。当時は2作目のライヴ・アルバム『Alive II』が出たタイミングで。子供の頃はすごくケバケバしいヴィジュアルの印象が強くて、どこかいやらしい感じがしていました。今聴くとシンプル且つ的確な音楽っていう感じがするし、とても勉強になりましたね。初期の曲も後期の曲も好きだし、未だに色褪せていないバンドだと思います。

コージ:80年代に結成された、LIVING COLOURという黒人のロック・バンドが大好きです。当時のロック・バンドって、ほとんど白人で構成されていて、サウンドも似ているんですよ。そんななかで現れたLIVING COLOURはヘヴィなロック・サウンドなんだけど、歌はソウルフル。僕はソウルもロックも好きだったので、"その両方が入ってる音楽があったらいいな"とずっと思っていて。「Cult Of Personality」を初めて聴いたときに"これだ!"と感じたんです。今で言うとSEVENDUSTもそうですね。こちらもヘヴィにソウルフルが入っていてすごく好きです。

イワイ:AC/DCはずっと聴いてますね。最初は『Back In Black』を手に取り、そこから過去の作品を買い漁っていきました。子供の頃からあのシンプルさにずっと魅了されています。当時、僕はギターを弾いていたんですけど、AC/DCのコピーばっかりしてましたね。

-そんなTHE PRIMALSは2022年6月4日、5日に幕張メッセ 幕張イベントホールで開催した、ワンマン・ライヴ"THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow"の模様を映像化した(※本作には6月4日の映像が収録される)Blu-rayをリリースされます。約4年ぶりのワンマン・ライヴが決まったときの心境はいかがでしたか?

祖堅:今もそうですけど、コロナ禍だったので"どれぐらい会場に入れられるのかな?"というのが最初に思ったことでしたね。

-実際は2日間で1万3,000人以上を動員しました。

たちばな:最初は3デイズという話だったんですよ。コロナの状況によっては、会場にそこまでお客さんを入れられないかもしれないので、その場合は3デイズもしくは1日2ステージになるかもしれない、と言われて"いや、それは無理だ!"と。

-あははは(笑)。

たちばな:結果は会場にある程度入れられることになったので、2デイズになりました。決まった当初は"いつも以上にちゃんとやらなきゃ!"と強く思いましたね。そもそもワンマンが久々だったので。

祖堅:無観客配信は最近だとオンラインでファン・フェスティバルもあったので、2~3ヶ月に1度ぐらいのペースでやっていたし、レコーディングもあったので、演奏自体は久々な感じはしなかったんです。だけど、お客さんを入れた状況というのが久しぶりだったので"本当にやれるのかな?"って不安はありましたね。

-開催にあたって公演のコンセプトやテーマは、どのようなことを考えていましたか?

祖堅:これといってコンセプトは決めていなかったんですけど、"FFXIV"で10年間を締めくくるストーリー("ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ")がリリースされたのもありますし、それに伴って我々のバンドも10年近くやっているのもあって。THE PRIMALSができる最高のフル・ライヴはどんなものか、というのは意識しました。このバンドはすごく特殊で、僕らが主役じゃなくて、ゲームをプレイしたみなさんの思い出や体験が主役なんです。"FFXIV"愛を抱いたプレイヤーのみなさんが会場に来て、その思いに僕らが火をつける。そういう立ち回りなので、火をつけるため何ができるかに最大限に取り組んだステージでしたね。

-演出面で意識されたことはなんでしょう?

祖堅:背景の映像だったり光だったり、特殊効果を取り入れて、いわゆるロックのライヴとしてプレイヤーが楽しむためには、どうしたらいいのか考えました。それこそ"FFXIV"内のバトル・シーンの曲を僕らが演奏しているんですけど、音源で歌っているヴォーカリストは海外のアーティストで、コロナ禍だから呼ぶことができない。そうなった場合にヴォーカル不在の状態で生演奏をしたところで、果たして盛り上がるのか? という疑問があって。そこで生まれたのが"Players' Video"でした。プレイヤーからバトル・シーンの動画を募集しまして、集まった素材に編集をかけてMVっぽくして、その映像を背負って僕らが演奏する。言うならばその映像は、送ってくれた人だけの体験ではなくて"FFXIV"をプレイした全員の思い出と、ゲーム体験という意味でリンクしているんです。"こんなことがあったよね"という映像を背景に、我々は生で演奏する。他にない独自のエンターテイメントだと思います。

-「貪欲」と「To the Edge」の演奏中、巨大LEDディスプレイに"Players' Video"の映像が流れましたけど、あの演出を見て表現の一番きれいな形を目撃した気がしました。表現の醍醐味は、自分たちの発信した作品が受け取った人の生活の中にどう馴染んでいくのか? ですよね。つまり、作品を発信して終わりではなくて、それがどのような影響を与えているのか? どう楽しんでもらえているのか? という。ただ、普通はそれを知ることはできない。そんななか、今回はTHE PRIMALSと"FFXIV"とプレイヤーをリンクさせた。そんな映像を背負ってライヴをするというのは、これ以上ない画力を放っていて感動的でした。

祖堅:普通の音楽コンサートでも映像を背負ってライヴをする演出はあると思うんですけど、特殊なのがゲームのプレイ映像を流していることで。ゲームをしていると"ヤバい"とか"良かった"とか、"感動して泣いちゃう"とか、そういう心情になるシーンがあるわけですよね。その喜怒哀楽って、来場されたプレイヤーは全員同じ体験をしているんです。普通の音楽だと音楽を聴いたとき、個々のシチュエーションの受け取り方で"そのときに僕はこれをやっていたから、この曲が刺さる"とか"このときこういう心境だったから、私はこの曲が刺さるな"とかそういう特殊な思い出とリンクするんですけど、ゲーム音楽ってそうではなくて。同じ体験をしてる1万3,000人以上が集まっている。しかも、そこにいるのは"Players' Video"の映像を観て、"このシーンは感動するよね"というポイントをわかっている人たち。そんな空間の中で生演奏を届けて感情をアップデートしていくのは、普通の音楽コンサートだとなかなか味わえないエンターテイメントだと思うんです。

-これ以上ない共有というか、繋がりを感じました。

たちばな:すでに、ゲームの中で感情が盛り上がっているのが大きいと思うんですよね。それを抱えて爆音の中に飛び込んでいくのは、かなり特殊な体験だと考えています。いわゆる普通に音楽だけ聴いて観に行くライヴとは違う感動を、THE PRIMALSで感じられるんじゃないかなと。

祖堅:みなさんはTHE PRIMALS以外に本体のバンドで音楽活動されている方たちなので、オーディエンスの熱量についてよく話をされるんですけど。ゲーム・プレイヤーたちが我々のコンサートに来るときの熱気感っていうのは、ちょっと味わったことのないものなんです。日本だけじゃなくて、どこの国に行こうがどんな地域に行こうが、同じ熱量がステージ上に飛んでくるのがすごいなと思いますね。

たちばな:国によってノリ方に差が出そうなもんじゃないですか。まったく一緒ってちょっとびっくりしますよ(笑)。しかもすごい熱量なんです。それがあるから"FFXIV"ユーザーを見てると面白いですよ。僕は音楽しかやってこなかった人間なので、そういう光景は見たことなかった。

-ひとつの作品とそこで流れる楽曲に対して、年齢や人種にかかわらずみんなが同じ感情を持つのはかなり希少なことですよね。

祖堅:"この曲はあそこのシーンで流れていたよね"と共有されているから、もう言葉はいらないんですよ。共有されている前提で我々は演奏して、プレイヤーのゲーム体験に火をつけて、一緒に盛り上がってる。なかなかできない体験なので、めちゃくちゃ面白いですよ。