INTERVIEW
THE PRIMALS
2022.09.09UPDATE
2022年09月号掲載
メンバー:マイケル・クリストファー・コージ・フォックス(Vo) 祖堅 正慶(Gt/Vo) GUNN(Gt) イワイエイキチ(Ba) たちばなテツヤ(Dr)
インタビュアー:真貝 聡
Photo by 西槇太一、MASANORI FUJIKAWA © 2010 - 2022 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
-今回のライヴ映像の中で、みなさんそれぞれが思うハイライト・シーンを教えてください。
たちばな:「知恵の巻貝 ~オールド・シャーレアン:夜~ (Acoustic Version)」ですね。これは今までのTHE PRIMALSではやっていないパターンなので、"こういう感じもやれるんだ"って楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。
イワイ:僕もこの曲は思い入れが強くて、他のメンバーは楽しそうにやっているんですけど、こっちは大変だぞっていう必死な顔をしています(笑)。
祖堅:この曲のレコーディングはめちゃくちゃ時間がかかりましたよね!
たちばな:丸1日かかってます。
GUNN:いわゆるダビングして作る案も出たんですけど、"アコースティックでやったら面白いかもしれないね"という話になりまして。ボンゴを持ってきてボコボコ叩いたら"この感じいいねぇ!"となり、"エイキチさん、ギターを弾いてもらえませんか?"と言ったら"え、今から!?"って(笑)。
イワイ:そこから練習したからね。
GUNN:そういう感じで一発にこだわってみようと。ただ、みんながうまく弾けないともちろんダメなので。それでも23、4回で録れたんだよね?
たちばな:まぁ、胸を張って言う数字じゃないけど。
一同:あははは(笑)。
祖堅:"ひとりずつ録ればいいじゃん"って話なんですけど、そこはこだわりたかったんですよ。マイク・スタンドを1本立てて、せーので演奏する。普通に考えたら時代と逆行していますよね。
-最近は別々で録る方が多いですよね。
祖堅:ちゃんと録れるし早いんですけど、やっぱり"せーの"で録りたいねって話になりましたね。
GUNN:僕が思うハイライトは「Endwalker」ですね。最初の1曲目は何にしようかすごく考えたところでもあったんですよ。この曲によって流れがバーッとできているので「Endwalker」で"おぉ!"と盛り上がってもらえたら、最後まで興奮して観れると思います。
コージ:先ほど特殊効果の話が出たんですけど、今までのTHE PRIMALSのライヴに比べれば、本当に盛りだくさんのステージになっていて。昔から僕らを観てきたファンには、ぜひ観てほしいです。小さな箱からスタートして、5人で"イェーイ"と自由にやっているような感じから、この大きなステージに立つことができて。しかも火がバンバン出て、レーザー・ライトがピュンピュン飛んでいるし、クレーンも含めてカメラもいっぱいあって、とにかく何もかもがすごいことになっているんですよ! しかも今回はストリーミングした映像ではなくて、Blu-rayのためにイチから作り直して、本当にいい感じの編集に仕上げているのでTHE PRIMALSがここまで来たか! っていう。意外とちゃんとしてるバンドなんだなと9年目にして、改めて思いました(笑)。
祖堅:コージが言ったようにこのBlu-rayは映像もそうですし、音もミックスから全部やり直しているんです。それがね......超大変だったんですよ(笑)! どう考えても配信の音と映像の比じゃない。クオリティはめちゃくちゃ高いです。
-そんな祖堅さんが思うハイライト・シーンは?
祖堅:全部が見どころなんですけど、強いてあげるなら「Flow Together」ですね。感極まって泣いてる人が結構いて、映像にも入っているんです。やっぱりゲームをやってたそのときの気持ちを思い出して、泣いてしまうっていう。それはまさに僕らが目的としてた"ゲーム・プレイしたときの気持ちに、僕たちが火をつける"ことなんですよ。改めて映像を見返しながら泣いてるお客さん見て、僕も泣きそうになって。
たちばな:グッとくるよね。
祖堅:本当にね、喋れなくなっちゃうんです。声が震えて泣きそうになっちゃう。
-あと、サプライズ・ゲストで出演した植松伸夫さんの演奏も素晴らしかったですね!
祖堅:植松さんがアルバム(『Modulation - FINAL FANTASY Arrangement Album』)を作っていると聞いたので、"じゃあうちで弾いてくださいよ"と言ったら、最初は"わかった。じゃあ前座で"という返事が来て。"いや、前座じゃなくてちゃんと出てくださいよ"と言ったら、"いや、前座がいいんだ"って結構頑なだったんです。これでは埒が明かないと思い、直接植松さんに会いに行って"前座じゃ困ります!"と熱心に説得したら受けてくれて。それと登場の仕方も楽曲も衣装も、"THE PRIMALSはすべてゲーム体験にひもづいたライヴをするバンドなんです"と言ったら、それも了解して出てくれました。
-登場して演奏する一連の流れは絵になるというか、とにかくカッコ良かったですよね。
祖堅:"お客さんは絶対に喜びますよ"と言っても、"俺なんて誰かわからないよ"とずっと言ってたんですよ。"そんなわけないですよ!"と何度も説得しましたからね。実際、ステージで演奏したあと"お客さんの反応が良くてめちゃくちゃ楽しかった。俺ももっとやりたくなった"と言っていたので良かったですね。お客さんの心に火をつけるだけでなく、植松さんの心にも火をつけることができたっていう。
-「悠久の風」、「メイン・テーマ~マトーヤの洞窟メドレー」など、"FF"のクラシックを聴けたのは興奮でしたね。
祖堅:そうなんですよね。植松さん自らがご自身の曲を弾く機会って、今までなかったから相当レアなんですよ。一度は観てみたいって、みんなが思っていたことが実現して良かったですよね。
-改めて『THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow』は、みなさんにとってどんなステージになりましたか?
GUNN:お客さんを入れてライヴができる時点で、8割は成功したような気持ちでいました。本番では僕らが準備してきたことをお客さんと一緒に楽しめて、すごく嬉しかったし、また次に繋がればと思うようなステージでした。何より、お客さんの目を見たら楽しんでくれているのが伝わったし、いいライヴだったなと思います。
コージ:私にとってTHE PRIMALSのライヴは、充電できる場所なんですよ。ゲーム作りって、チームでやるんだけど基本はひとりで作業するんです。ずっとひとりでやっていると、どんどん疲れもストレスが溜まっていく。だけどファン・フェスに行ってみんなが盛り上がっている様子を目の当たりにすると、自分が作ったものや関わってきたものを、こういうふうに好きになってくれているんだなと知れて。それによって自分も充電できて、頑張るエネルギーになっていたんです。だけどコロナ禍になって、ライヴをやったとしても無観客。それだと、どうしても充電されないんですよ。ライヴハウスでファンと同じ体験をすることは、やっぱり自分にとっては救いのひとつで。今回は久しぶりにファンの前でライヴができて、みんなの表情を見たら目一杯楽しんでくれていた。自分にとっても貴重な体験だったし、逆に救われましたね。
祖堅:THE PRIMALSって、ファン・フェスティバルのトリを務めることが多くて。ライヴの総時間が1時間ちょっとで、曲数もだいたい10曲ちょっとのケースが多いんですね。いわゆるフル・ライヴってあまりやってこなかったんですよ。みなさんもお忙しいし、僕らもゲーム開発が本職なので時間が取れなかった。今回はやっとフル・ライヴができたうえに、自分たちが理想としていたセットリストで、なおかつクオリティが高い。お客さんがすごく楽しんでくれたし、自分たちも楽しかった。生配信もしたし、こうして盤にもできた。だから気持ち悪い表現ですけど、通信簿で言うと"オール5"みたいなライヴだったと思います(笑)。
たちばな:お客さんがたくさん入って、すごく盛り上がってくれてたのはやっぱり嬉しかったですね。リハーサルの特殊効果の音がデカかった以外は、素晴らしいステージになったと思います。
コージ:あははは(笑)。
たちばな:そのリハーサルの模様は、バックステージ映像に入っているのでぜひチェックしていただきたいと思います。
イワイ:レコーディングはしたけど、人前ではやっていない曲とか、レコーディングでは座って弾いたけど初めて立って演奏した曲もありまして。しかも、それをメニューの中に組み入れて人前で演奏したのが、この日が初めてだったんですよ。でも、やり切ってみると、新しい方法論が見えたかなと思います。キツかったぶん、収穫も大きかったですね。
-今回はBlu-ray化のために音のミックスも映像編集もされて、舞台裏の映像、ボーナス・トラックもあり、さらには封入特典としてアイテム・コードもつくという。もはや買わない理由がない作品になっていますね。
祖堅:あとはスマホでも聴きたい人のために、Blu-rayプレイヤーからスマホにMP3音源を転送する仕組みも入っているので、配信で観るよりも圧倒的にお得なんですよ。
GUNN:今ならおいくらなんでしたっけ?
祖堅:税込6,050円です!
-このボリュームで考えたら、かなり安いですよね。
祖堅:そもそもライヴの盤ってあんまり売れないから、できるだけ安いほうがいいと思うんですよ! ......と言いつつ、オリコントップ10は目指したいです。
コージ:そのためにも、激ロックさんのお力も借りてね。
GUNN:ライヴ映像が売れることで、フェスに出るきっかけに繋がるかもしれないし。
祖堅:そう、僕らはフェスに出たいんですよ! ぜひ、関係者のみなさんお声掛けください(笑)。