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INTERVIEW

VOIVOD

2022.02.21UPDATE

2022年02月号掲載

VOIVOD

Member:Denis “Snake” Bélanger(Vo)

Interviewer:菅谷 透

-他にもいくつかの曲について質問させてください。オープナーの「Paranormalium」では、超常的な存在のように語り掛けるヴォーカルなど、多彩な表現が駆使されています。アルバム全体も含め、ヴォーカル・ワークで意識したことはありますか?

いろんな表現は必要に駆られてやる感じだね。時には歌いながら正しいヴォーカルを模索することもある。複雑なプロセスではあるね。例えばここにコーラスがあったとして、"ヘイ!"みたいな感じでわかりやすいものにするのがいいときもあるし、場合によってはテーマがダークだから、ダークに歌ったほうがいいものもある。そういうときは囁いてみたり、ブツブツとつぶやいたりもして、その雰囲気を醸し出そうとするんだ。まぁさっきの話じゃないけど、音楽ありきだね。マーチング・ビートがあれば、戦争に旅立っていく兵士たちの姿が目に浮かぶ。音楽はすごいよ。物理的には存在しないものを作り上げるんだから。4つの脳を組み合わせると、それまでなかったものが"ある"ようになる。音楽というのはとても不思議なコンセプトなんだ(笑)。触れることはできなくてもそこにある。

-頭の中の"絵"にインスピレーションを強く受けて、そのイメージを歌や歌詞で表現しようとしているんですね。

そうだね。ただ、起承転結があるようにはしている。絵を表現するというよりは小説かな。ちゃんと筋が通っていないといけない。そこが一番難しいところなんだけどね。曲のコンセプトを考えて、それから浮かんだ言葉を繋ぎ合わせるんだけど、パワフルな言葉でないといけないし、曲にも合っていていい響きのものでないといけない。なお且つ、ストーリーを読んだ人がちゃんと筋がわかるものにしておかないといけないんだ。インスピレーションからストーリーを生み出すのが一番難しいところだね。

-「Planet Eaters」は、人類が別の惑星へ"侵略"していく未来が啓蒙的に描かれています。Awayによるアートワークを用いたMVも印象的ですが、この曲についても教えていただけますか?

俺の彼女はカルガリーに住んでいて、遠距離なんだ。だから会いに行くときはいつも飛行機で、ポイントが貯まるんだよ(笑)。クレジット・カードで払うからね。それでふと思ったんだ。未来はこうやって飛行機に乗って宇宙にバケーションに行くこともあるのかな......とね(笑)。それで歌詞には"次の火星への旅までにお金を貯めておこう(Save for your next trip to Mars)"みたいなフレーズが出てきたりする。"星に行けるチャンスが当たりました(Win your chance to reach the stars)"とか。"リンクをクリックして名前を記入して / 下のチェックボックスをチェックしてください(Click the link, fill your name / Check the box down below)"。それから主人公が飛行機に乗ると"席についてお食事をお楽しみください(Take your seat, enjoy your meal)"と言われる。

-カルガリーに行くときみたいに。

そう。ツーリズムみたいなものだよ。そうして宇宙船に乗っているといろんな景色が見えてくる。月とかね。そのうち地球に居場所がなくなってしまった人間は宇宙に移住して、よその惑星で、地球にやってきたのと同じようなファッキンな荒らし方をするんだ(笑)。俺たちはみんな"Planet Eaters(惑星を蝕む者)"なんだ。人間は消費する生き物だからね。消費とは蝕むことに似ている。俺たちは惑星を蝕んでいるんだ。ビデオのコンセプトもファンタスティックだったね。監督は完全にわかってくれていたよ。

-「Quest For Nothing」では苦悩するようなヴォーカルに加えてパンキッシュなコーラスも登場し、楽曲に重厚さを与えています。この曲についても教えていただけますか?

何かに対して一生懸命取り組んだのに、残念な結果になることについて歌っているんだ。集中して取り組んだのに実りがなかった、みたいな感じだね。バケーションに出かけて帰ってくると、出発前より余計疲れているみたいな(笑)。

-(笑)

フラストレーションについての歌だね。善意をもってこの人生を渡っていって、ベストを尽くしても、時には見返りを得るのが本当に難しいことがある。あってもほとんどなかったり。だから見返りがなかったとしても人生は楽しまないといけない。心理的なものだけど、何かをするときは必ずしも"報酬"があることを期待しないほうがいい。というか、"経験"が"報酬"なんだ。それはカネより価値があることだってある。

-となると、ネガティヴなタイトルではありつつも内容はポジティヴなんですね。

そうだね。ダークな面も明るい面もあるということだ。「The World Today」もポジティヴな内容の曲だよ。誰かに出会ったら優しく接したほうがいい。俺たちはメタル・バンドだから、――(※声を低くして)昔はすごく感じが悪かったんだよ(笑)! スタッドを腕に巻いて"殺してやる"みたいな雰囲気を醸し出していた(笑)。

-(笑)

でも歳を重ねた今はクールダウンしてきた。大丈夫、気楽に行こうぜという感じだ。ほら、特にコロナ禍がそうだけど、みんなつらいことを経験してきた。仕事を失ったりね。誰かに出会ったら、その人がどんなつらい思いをしてきたかはわからないし、優しく接することだよ。パッと見ではどんな壮絶な人生を送ってきたかわからないんだから。落ち着いて接することだね(笑)。

-バンドは今年で結成40周年を迎えますね。限定盤のディスクには、結成35周年ライヴの音源が収録されています。新参のファンにも嬉しい、アニバーサリー・ライヴだけあって、キャリアを横断するようなセットリストになっていますが、このライヴについて印象に残っていることはありますか?

ホームタウンのジョンキエールでやったんだ。あれは最高だったね。昔懐かしい曲をひもとくのはいつも楽しいことだよ。40年近くやっていると、ファンキーなスラッシュからプログレッシヴ・メタル、もっとプログレッシヴな......なんでもいいや(笑)。とにかくスペクトラムが広いんだ。ショーをやるときはいつも昔の曲をひもといているけど、ときどき曲目を変えているんだ。"これは結構長い間やったから、そろそろこっちに替えよう"みたいにね。そうするとショーを観に来てくれている人たちもフレッシュな気分になれるし。早くセットリストを組める状況になってほしいもんだよ(苦笑)。早くツアーに出たいね。

-VOIVODのバイオグラフィにも書いてありましたが、そもそも40年続くバンドもなかなかいないですし、これだけの年数を常に個性的/創造的なバンドとして歩み続けてきたのは容易なことではないと思います。どのような点にその秘訣があると思いますか? これまでの間にいろいろなことがありましたよね。

そうだね。音楽、特にロック・シーンはジェットコースターみたいなものだから、次に何が起こるかまったく見当がつかない。俺たちもいいときと悪いときがあったよ。Piggyを亡くしたりもしたしね。――Piggyが逝ってしまったときは、正直言ってこのバンドももう終わりだと思った。でも素晴らしいことがようやく起こったんだ。(両手を広げ)だから俺はいつもこう言うんだ。"Don't give up"ってね。考えることをギヴ・アップしちゃいけない。何が起こるか予測がつかないってことは、ものすごくいいことだってやってくる可能性があるんだから。ものすごくダークなときでも、それまで見ていなかった方向からいいことがやってくるかもしれない。いろいろ悩んでいたことが解決することだってあり得るんだ。40年もやっていくには心が強くなくちゃいけない。俺はもうファッキンすぎて自分の手に負えないと思って、音楽から足を洗った時期もあったけど(※1994年~2002年にバンドを脱退)......。でも全体を見れば俺にとって音楽は身を捧げるものであり、使命なんだ。一生かかる使命だね。バンドのメンバーになるっていうのは、いろんなことにコミットすることを意味する。いろんな経験、いろんなアドベンチャー......人生そのものだね。だからバンドをやっているのが好きなんだ。いつも何か新しい発見があって、何か素晴らしいことがあって、世界を旅することもできるし、決して退屈な仕事じゃない。アーティストとしての見返りはカネというよりも、記憶というお土産なんだ。その見返りに魅了されて、またやってみたくなる。また曲を作って、また出して、またツアーに出て......その繰り返しで車輪が回り続けていて、気がつけば"あれ? 10年経ったぞ"という感じになるんだ。20年、30年、そして今度は40年だ(笑)。

-(笑)巨大な回転車の中で回っているんですね。

そう(笑)!

-これからもその旅を続けていくのを楽しみにしています。バンドの活動予定を教えていただけますか? ドキュメンタリーが出るという噂は本当でしょうか。

ああ。できれば年内、または来年出ると思う。40周年の記念にね。それから今年は(編集者の)Jeff Wagnerが書いた本が出る予定だよ。

-そうなんですね。バンドのバイオグラフィ的な内容なんでしょうか。

いろいろだね。エピソードも入っていると思うよ。ツアーに関しては、本当は今年の春やりたかったけど、秋にはヨーロッパに行けると思う。日本もできればね!

-来日は少し時間がかかるかもしれませんが、その間もいろいろ目白押しで楽しませてもらえそうですね。最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

(両手を広げて)ハロー、日本のファンのみんな! みんなに会えなくてすごく寂しいよ。早く会える状態になるといいね。俺たちにとって日本というのはいつ行っても楽しい場所なんだ。早くまたそっちに行ける状態になって会えますように!