FEATURE
VOIVOD
2020.12.17UPDATE
2020年12月号掲載
Writer 井上 光一
1982年の結成から40年近いキャリアの中で、どの時代においても流行りに迎合することなどなく、一貫して挑戦的且つ独創的なヘヴィネスを追求し続け、同業のミュージシャンからも熱狂的な支持を集めるのが、カナダはケベック州出身のVOIVODである。スラッシュ・メタルという文脈で語られながらも、彼らのスタイルは非常に多面的であり、ハードコア由来の破壊的なパワーがあり、サイケデリックなプログレッシヴ風のメタルがあり、ストレートなハード・ロック・サウンドもあり、モダンなヘヴィ・ロックあり、といったように一口では語れない音楽性を持った名盤の数々は、2020年を過ぎた今だからこそ、より真価を発揮するものではないだろうか。現時点での最新作『The Wake』(2018年)がバンド史上で最も成功したという事実は、彼らの音楽が時代を超越して評価されていることの顕著な例であろう。音楽業界の活動が大幅に制限された時代であろうとも、そんなVOIVODの姿勢は揺らぎもしない。今年の7月には興味深い内容のEP作品『The End Of Dormancy』を発表して、ファンを喜ばせた彼らの、待望のライヴ・アルバム『Lost Machine - Live』が、12月23日(配信は11月27日)にリリースされる運びとなった。本稿では、本作が生まれた背景や作品の内容について書き進めていこう。
本作に収められているのは、2019年7月13日に開催された、"Quebec City Summer Festival"にバンドが出演した際のライヴ音源である。バンドの屋台骨にしてオリジナル・メンバー、通称"Away"ことドラマーのMichel Langevinによれば、ライヴ・アルバムというアイディア自体は以前からあったという。フェス出演の機会を得たバンドは、先述したアルバム『The Wake』のプロデューサーを担当したFrancis Perronを、ライヴに同行させ、ライヴ音源を録音。もともとは"Quebec City Summer Festival"と"Festival International de Jazz de Montréal"の両方の音源を織り交ぜた内容となる予定だったところ、より安定したパフォーマンスと判断された"Quebec City Summer Festival"出演時の音源で統一されたというのが、本作の概要である。今さら説明するまでもなく、2020年は各地でロックダウンを余儀なくされた年ではあるが、バンドはそういった時間も無駄にすることはなく、作品のミキシングやマスタリング、レイアウトなどを考えるいい機会と捉えた結果が、本作『Lost Machine - Live』と言えるだろう。今回選ばれた13曲(日本盤ボーナス・トラックを除く)は、近年の名曲からオールドスクールな代表曲まで選りすぐりのVOIVODナンバーばかり。攻撃的なベースから始まるTrack.1「Post Society」を皮切りに、名盤の誉れ高い『Dimension Hatröss』(1988年)収録のTrack.2「Psychic Vacuum」のような、芸術的なスラッシュ・メタルにしても、難解なバンド・アンサンブルでプログレッシヴ且つドラマチックに展開していくTrack.5「Iconspiracy」にしても、サイケデリックな香りを撒き散らしつつ、真の意味でオルタナティヴなサウンドが今もなお色あせないTrack.6「Into My Hypercube」にしても、そのすべてがVOIVODの音として鳴らされているという厳然たる事実は、古くからのファンならずとも、本作を聴いた人であれば誰しもが理解できるはずだ。本作のリリースに先立って、表題曲となった「The Lost Machine」のライヴ映像がオフィシャルで公開されている。彼ららしいユーモアも交えた演出が施され、今が新たな黄金期とも言えるバンドの最高の姿が楽しめる内容となっており、こちらも必見である。 井上 光一
▼リリース情報
VOIVOD
ライヴ・アルバム
『Lost Machine - Live』
2020.12.23 ON SALE!! SICP-6373/¥2,400(税別)
amazon
TOWER RECORDS
HMV
[Sony Music Japan International]
※歌詞対訳、解説付き
1. Post Society
2. Psychic Vacuum
3. Obsolete Beings
4. The Prow
5. Iconspiracy
6. Into My Hypercube
7. The End Of Dormancy
8. Overreaction
9. Always Moving
10. Fall
11. The Lost Machine
12. Astronomy Domine
13. Voivod
14. The Unknown Knows ※日本盤ボーナス・トラック
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