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INTERVIEW

VOIVOD

2022.02.21UPDATE

2022年02月号掲載

VOIVOD

Member:Denis “Snake” Bélanger(Vo)

Interviewer:菅谷 透

"これはメタルなのかどうか"はあまり気にならないんだ。俺たちがやればいつだってメタルでプログレッシヴでVOIVODだからね

-今作は、ベーシストのDominic "Rocky" Larocheを迎えた現在のメンバー編成で制作した2枚目のアルバムになります。曲作りはどのように進めていきましたか? 資料によると今回はあまりジャムができなかったそうですが、これまでとは勝手が違ったのでしょうか。

何もかも勝手が違ったからね、この2年は(苦笑)。たまに集まってやれたときは最高だったよ。ちょっと前にも集まって「Synchro Anarchy」のMVを作ってさ。集まってやれるということ自体がクールだよ。"俺たちはまだ走っている! まだ何かできることがあるんだ!"と実感することができるからね。すごく気分が良かったよ。真面目な話、今俺たちが一番恋しく思っているのがツアーなんだ。人と交流できないというのがこの2年間とてもつらかった。ずっと家にいる状態にあまり慣れないんだ(苦笑)。

-あまり集まれなかったということで、おそらくファイル・シェアなどをよく利用したと思いますが、そういうことも本作の楽曲の長さに影響していますか? これまでのディスコグラフィでは、7分から時には10分以上の長尺曲がしばしばアルバム内に配されてきましたが、今回は最長でも「Mind Clock」の6分台と、比較的コンパクトな作品になっています。

ファイルをシェアするときはまだアイディア段階なんだ。断片的なものでね。ちゃんとひとつの部屋に集まって実際に感じてからじゃないと曲ができない。グルーヴ、ビート、ドラム、ベース、ギターの感覚を掴んで、そこに俺がヴォーカルを乗せる。今回どうしてこのくらいの長さになったかは、たまたまだね。曲の長さについてはほとんど意識していなかった。あと曲の間にインタールードも入っていない。以前はコンセプト・アルバムだったから曲と曲が繋がっているような感覚があったけど、今回は1曲ごとに作っていった。どうしてそうなったんだろうね? ......たぶん急いで作ったからだろうな(笑)。

-アルバム全体を通して、近作で推し進められた異ジャンルの融合を引き継ぎつつ、さらにメタル/ハードコア・サイドの色が強く出ているような印象を受けました。こちらも意識的なものですか? ライヴができない時期に制作されたのも関係しているのでしょうか。

今回は特に、自分たちがいいなと思った音を積極的に取り入れていったと思う。例えば「Synchro Anarchy」はスカにも近いビートだしね。

-たしかに。

あれは慣れないものだったね。というかやったことがなかったよ! それでいてあれはプログレでもあった。スカみたいな単調なビートじゃなくて、ちょっと脇に飛んだりするしね。(※曲のリズムの口真似をして)スカだけどプログレ。"プログレッシヴ・スカ"とでも言おうか(笑)。

-なるほど(笑)。

それから別の曲で、俺的にはフラメンコを彷彿とさせるというか、異文化的なものを思わせるものもある。――何かアイディアを検討するとき、"これはメタルなのかどうか"はあまり気にならないんだ。俺たちがやればいつだってメタルでプログレッシヴでVOIVODだからね。ChewyがPiggyのやっていたような音を出してくれるのもわかっているし、VOIVODらしい音になるのは間違いない。だから、だいたいどんなタイプの音楽でも自分のものにすることができるんだ。

-すでにVOIVODの音というのが確立しているから、逆にやりやすいかもしれませんね。

そうなんだよ。頭に浮かんだものならなんでも取り入れられる。シンプルなメロディかもしれないし、子供食堂から聴こえてきた童謡のメロディかもしれない。ものすごく複雑な曲の中に、そういうのを俺が取り入れたりするんだ(笑)。

-だからか、複雑ではありつつも親しみやすいメロディなのかもしれませんね。

そうかもしれないね。俺たちの音楽はコマーシャルではないにしろ、かなりアクセシブルだと思うよ。メロディと曲がよく合っていると思うし、耳に残るようになっている。そこが鍵なんだ。リリースされてみんなに聴いてもらえるのが楽しみだね。

-歌詞ではSFをはじめとして、不安やメンタルなど様々な題材が取り上げられていますが、執筆にあたりインスピレーションを受けるものはありますか? 今回はご自宅で過ごす時間が長かったからいつもと違ったりとか、そういうことはありましたか。

インスピレーションはあらゆるものから受けているよ。頭にパッと浮かぶときもあるし、ある曲に手を入れているときに暗礁に乗り上げて、困ったどうしよう、ここからどういうふうに持っていこう......なんて考えこんでしまうこともある。いつも頭の中でハムスターが(回転車に乗って)グルグル回っているよ(笑)。

-いつも考えを巡らせているんですね。

そうだね。そうしていると、車を運転しているときなんかに"これだ!"と急に答えが浮かぶんだ。"曲の終わらせ方がわかったぞ!"みたいなね。他のことをやっているときに急にひらめくんだ。そういえばドキュメンタリーを観てね。ある男がベルギーで母親と住んでいるんだけど、そいつは自宅の裏庭に"空飛ぶ円盤"を造った。その"空飛ぶ円盤"は木でできているんだ(笑)!

-(笑)

そしてそいつは、いつの日かそれに乗って別次元に行けるって本気で思っているんだ。そいつのお母さんも息子を信じ込んでいる。という感じにドキュメンタリーが進行していくわけだけど、あれを撮影したクルーはきっと"なんだかすごく、ファッキンなくらいイカレたことが今起こっているぞ......"なんて思いながら撮っていただろうね(笑)。俺はそのドキュメンタリーにものすごくインスピレーションを受けたんだ。見ているものが信じられなかったからね。しかも、その"木製の空飛ぶ円盤"ってのがまたよくできているんだよ! 見てくれもきれいでさ(笑)。"なんだこりゃ。こいつは20年もかけてこんなものを造ったのか"と思ったよ。もっと言うと、そいつは決してバカじゃない。きちんと理論的な話し方ができるやつなんだ。4次元がどうで、ケーブルはどういうふうに繋いでとかを、理路整然と話していたよ。――まったくとんでもないやつだった(笑)。インスパイアされて書いたのが「Mind Clock」だ。年老いた男がどこかの施設に入っていて、いつの日か"空飛ぶ円盤"に乗ってどこかに行くんだと繰り返し言っている。みんな"はいはい"ってあしらっているんだけどね(笑)。そしてある日、その男は本当にどこかに行ってしまうんだ。それを見てみんなは"あいつは正しかったのかもしれない"と思う、そういう内容だ。そんな感じで、いろんなことにインスピレーションを受けているよ。

-その「Mind Clock」は、スローなパートと緊張感のある高速ビートの展開が耳を引くところがまた興味深かったです。

そうだね。アレンジは主にChewy担当なんだけど、あいつは本当に巧いんだ。何かを中心に据えてその周りにいろいろ組み立てていって、その方向性を曲の途中で急に変えたりして。独特のやり方を持っている。あいつは俺にいろいろ試す余地を与えてくれるんだ。こっちの方向に行ってもいいし、あっち方面に行ってもいいし――目を閉じてあいつのアレンジを聴いていると、頭の中に風景というか、映画が見える。音楽そのものがすでにいろんな風景を描いてくれているんだ。音楽が全体にインスピレーションを与える感じだね。