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INTERVIEW

青色壱号

2021.11.17UPDATE

青色壱号

Member:一ノ瀬(Ba/Vo/Composer/Lyrics/Designer)

Interviewer:杉江 由紀

今はもう"ひとりでいいじゃん!"って思えるようになった


-音楽的なことからいっても、リズムに乗れる側のギター&ヴォーカルと違って、リズムを繰り出す側であるベース&ヴォーカルというのはさらに難しいそうですものね。

それ以前に、今までは自分にとってベースが一番得意なことだったのに、ベース&ヴォーカルになった瞬間"あれ!? これは全然得意じゃないかも?"ってなったのが、自分にとってはかなりショックでした。歌も大変だし、ベースも思ったように弾けないじゃん! っていうのがストレスで。そのあたりの感覚が、きっとこの歌詞の前半部分の鬱々と彷徨っている感じに投影されているんだと思います。だけど、途中で開き直るんですよね。

-曲の後半で"思い切るなら飛べよと楽観"と歌われているのは、そのためでしたか。

悩んでてもしょうがない、進んでいくしかないんだ! となったんです。私の周りには支えてくれる人たちや、サポートしてくれるミュージシャンたちもいますけど、ソロ・プロジェクトである以上は自分ですべてを決めて進んでいくしかないわけですし。

-まさに"Lonely"であることを自覚されたと。そして、そこが認識できているからこそ、この曲は"誰がここから掬い上げるのか/蒼い深淵の底に沈む ロンリーダイバー"という1節をもって締めくくられることになったのでしょうね。

そうですねぇ、ほんとにそうなんですよ。私が今こうして活動しているのはバンド・シーンですし、ソロだとしてもバンドっぽいことがしたいと思っていた時期もあったんです。でも、今はもう逆に"ひとりでいいじゃん!"って思えるようになったというか。

-「A LONELY DIVER」はとてもドキュメントな楽曲なのですね。

はい。まさに青色壱号としての活動をしていくなかで作った曲だし、生まれていった言葉たちなので、その時々の状況がすべて織り込まれる方向になっちゃいました。そして、この曲を完成させられたことでさらに"よし、ベース&ヴォーカルでやっていこう!"という決心は強まりました。青色壱号としての方向性も定まったかな、というのもあります。

-思えば、一ノ瀬さんと初めてお会いしたのは絶対倶楽部での取材だったわけですけれども。ガールズ・メタル・バンドのベーシストであった方が、今このようなテクノポップをベース&ヴォーカルとして颯爽と奏でていらっしゃるというのは、少し不思議なことのようにも感じますよ。とても似合っていらっしゃるので違和感はないのですけれど、あれがずいぶんと遠い昔のことのように思えてしまうのです。

自分にとっても、もうわりと大昔のことのように感じますよ。そこまで昔のことではないはずなのに。たぶん、青色壱号を始めてからはずっと目まぐるしいからなんでしょうね。

-さて。ここからはカップリング曲についてもうかがって参りましょう。まずは2曲目の「毒林檎を食べたら」ですが、こちらはどんなことをコンセプトに作られたのです?

これはシングルのB面的なポジションの曲にしたかったんです。まぁ、今はサブスクが主流なので"B面っぽい感じ"っていうのが感覚的には伝わりにくいかもしれないですけど。

-おっしゃりたいことはわかりますよ。あからさまな派手さはないけれども、地味にいい曲というのが"B面っぽい"ものなのではないかと私は解釈しております。

要は、リード・トラックっぽい曲って存在感も強いしライヴでも人気がすぐ出るんですけどね。長めのライヴをやるとなったときには、そういう曲ばっかりだと緩急がつかないしストーリー性が生まれないんですよ。

-例えばアクション映画なども、120分すべてが激烈なアクションだけではメリハリがつかずにクドすぎて飽きてしまいそうですものね。

それに、前回のアルバム『Some Blue』と違って今回のシングルでは自分が全曲を歌うことが大前提なので、余計に曲ごとの役割というかキャラクターを明確に分けていきたかったんです。そのねらいもあって、この「毒林檎を食べたら」ではしっとりめの"B面っぽさ"を出していくようにしました。

-毒林檎というモチーフは、何を切っ掛けに想起したものでした?

これは曲を作っていたときに、音と一緒に自然と出てきちゃったものなんです。とてもインパクトの強い言葉だったので、そこを軸にちょっと白雪姫みたいなメルヘンっぽいイメージで詞を書いていくことになりました。ひとりの人間の中にいる、弱っている自分と、前を向いていこうとしている自分というのが両方出てきます。

-それもまた、一ノ瀬さん自身を投影した物語なのでしょうね。だとすると、3曲目の 「いいよ」もこれは私小説的なものとして受け取ってもよろしいのでしょうか?

これは曲の持っている闇かわいい的な雰囲気から、イヤな女と言うんですかね。私自身も日頃から自分はあんまりいい人間じゃないと意識しながら生きているところがありますし(笑)、意外と普段は口に出さないだけでみんな誰しも"こういうことを思ってたりするんじゃない?"っていう詞を書いたんですよ。

-ずばり"人の不幸は 蜜の味"というフレーズが出てきますし、この詞にはかわいらしい言葉たちも並ぶ一方で、ある種の魔性を感じる内容でもありますね。また、そこにともなうサウンドがアイドル・ポップ並みの超ポップなものなので、味わいとしては原色カラーが鮮やかな外国産ジェリービーンズ的ジャンク感があってなんとも最高です。

ありがとうございます。詞の内容は怪しげなんだけど、メロディやサウンドはかわいいっていう対比は大事にしました。

-『A LONELY DIVER』は3曲ともテイストこそ個々に違いますが、どれも根本的な部分では濃厚にサブカル感がにじみ出たものになったようです。

そこはなんか、どうしても出ちゃいましたね(笑)。

-それと同時に、このシングルについては公式サイトなどに"青い深淵の底で叫ぶ衝動"というコピーが添えられております。その衝動は、この作品を世に出すことで発散されていくことになるのでしょうね。

私がベース&ヴォーカルをやることに対しては、おそらく賛否両論なところがあると思うんですよ。ファンの方々からは"歌ってください"って言われましたし、このシングルも受け入れてもらえると信じてますけど、第三者的な人たちの中にはたぶん"ベースだけ弾いておけばいいのに"みたいな声もそれなりにあると思いますからね。でも、そんなのには関係なく"自分はやりたいことをやるんだ!"っていう強い衝動は、今回の3曲すべてに詰まってると思います。

-何かにつけて文句を言いたい人は、どんなことに対しても言う人ですからね。ここはいっそ馬耳東風で参りましょう(笑)。とにもかくにも、前作のアルバム『Some Blue』が青色壱号にとっての豪華な序章だったとすると、今回の『A LONELY DIVER』からは本編の第1章になるのではないでしょうか。

新しい一歩を踏み出せた実感はすごくあります。このシングルを出したあとは12月いっぱい西日本をまわるツアーをやって、年明け以降もライヴはコンスタントにやっていこうと思ってますし、近い将来には東名阪ワンマンができるくらいのアーティストになりたいですね。音源も何かしらまた出したい......というかすでにもう作っているので、今はほんとにやりたいことが多すぎて時間が足りません(笑)。