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INTERVIEW

絶対倶楽部

2019.09.03UPDATE

2019年09月号掲載

絶対倶楽部

Member:天鶴(Vo) 夢兎(Gt) 一ノ瀬(Ba) 桐子(Dr) 瑠美奈(Key)

Interviewer:杉江 由紀

突き抜けるほどの威圧感と、奥深いスケール感をもって響く絶対倶楽部の2ndフル・アルバム『夢幻大スリラー』は、ひとつのダーク・ファンタジーの世界として完成されていると言っていいだろう。"ゼックラ"の愛称でも親しまれているこのバンドは、2016年に"強気な女の子だけが入部を許された絶対倶楽部"として設立され、今日に至っているが、ここにきて彼女たちはどうやら劇的なメタモルフォーゼを遂げたようだ。流麗なギターと壮麗なキーボード、唸るベースと響きわたるドラムが奏でる音像の濃密さもさることながら、ヴォーカリスト 天鶴が時には天使のように、時には悪魔のように綴り上げる歌にも絶対的な存在感が滲んでいるのは間違いない。


"この5人でイチからすべてを作りましょう"となったのがこのアルバムですね


-2016年に始動した絶対倶楽部は今秋で3周年を迎えることになるそうですが、それを前にしてこのたび2ndフル・アルバム『夢幻大スリラー』が完成しました。絶対倶楽部にとって、今作の位置づけとはどのようなものになりますか。

天鶴:今まではとにかくライヴをたくさんやる! というのがバンドにとって活動の軸となってきていて、ライヴのために曲をひたすら書いてきたところがあったんですけど、それだけ曲があるのに、"なんで音源を出さないんだ?"ということにもなってきたので(笑)。前作まではそんな要望に応えられるよう制作した楽曲を音源に閉じ込めてきたのですが、今回はより、楽曲制作の部分からアルバムに向けての"構築"を意識しました。と同時に、出す以上はバンドとして強い存在感を改めて打ち出したいとも考えていたので、今回は、"シアトリカルで、ダークで、からくり感のあるもの"というコンセプト性を持たせたアルバムとして仕上げていくことになったんです。

桐子:去年の6月に夢兎が加入して現体制になったことも、このアルバムを作っていくうえでは大きく影響していたと思いますね。

天鶴:そこに至るまではなかなかメンバーが安定していなかったんですよ(苦笑)。でも、この5人になってからは"これならいける"という確信が持てるようになったので、それもこのアルバムを作り出すことになったきっかけのひとつでした。

夢兎:"この5人でイチからすべてを作りましょう"となったのがこのアルバムですね。

-アルバムのクレジットを拝見すると、メイン・コンポーザーは、ドラムの桐子さんとキーボードの瑠美奈さんのおふたりであるようですが、絶対倶楽部の曲作りにおける主な流れというのは、どういった形であることが多いのでしょうか。

瑠美奈:ふたりともまずはデモを打ち込んで、それをバンドに持っていったあと、みんなで仕上げていくという流れになることが基本的には多いです。

桐子:これまではずっとそういう形でセルフ・アレンジをしていたんですが、今回のアルバム『夢幻大スリラー』からは、楽曲ごとに異なる、計5人の外部アレンジャーにも参加してもらっているので、その結果、上がってきたものをさらにバンドにフィードバックして、最終的にレコーディングしていくという感じでしたね。楽曲そのものの幅がより広くなったこともあって、個々の楽曲の色をさらに濃くしていくという意味で、外部アレンジャーを起用するというやり方は、思っていた以上にいい方向へ作用したんじゃないかと思います。

-では、各パートの見地から、今作のレコーディングをしていくなかで特に意識されたことがありましたら教えてください。

桐子:ドラムに関しては、音圧や迫力は大事にしつつも、あまりバチバチにしすぎない音を意識しながら、アコースティックな空気感もしっかりと出していくようにしました。

一ノ瀬:今回のレコーディングでは、アー写でも持っている青いベースを使ったんですよ。これは今年の1月に自分でセミオーダーした楽器で、今回はそのミッドがよく出る特性を最大限に生かすために、エフェクトとかはほとんど使わずに、ほぼほぼアン直(※エフェクターを介さず、直接アンプと楽器を繋ぐこと)で録りました。そして、曲によって雰囲気が違う点への対応という面では、ミキシングの段階でエンジニアさんと調整をしていった感じです。

夢兎:ギターは、アレンジャーに渡す前段階ですでにだいたいの仮イメージが出てきていた曲もあったので、今回そういう曲はもとの方向性をそのまま生かしながら録りました。アレンジャーから返ってきた曲たちについては、そこにさらに上乗せしてダビングをしていったものもありましたね。だから、曲によってはバッキングだけで3本とか4本とかギターが重なっていて、かなりの音圧になっているものもあります。

-絶対倶楽部のサウンドにおいては、ギターとキーボードが、アンサンブルの面で共存している点も大きな特徴と言えると思うのですが、両者の棲み分けについて、何かこのバンドならではのメソッドのようなものはあったりするのですか?

夢兎:考え方としては、ギターとキーボードでツイン・リードを取っていくサウンドというものを、お互いに心掛けてますね。そこはこのバンドにとって重要なところです。しかも、うちのキーボードは音色がとても派手なんですよ。そこも面白みがあると思います。

瑠美奈:ツイン・リードを取るときには、例えばストリングス系の音で弾いたりもするので、その派手な雰囲気というか華やかさが出るんでしょうね。それから、表題曲の「夢幻大スリラー」という曲では今回初めてチェンバロの音を使っているんですよ。これはアレンジャーの方からのアイディアだったんですが、実際に弾いてみたらとても新鮮でした。今回のアルバムでは新しい試みができて良かったです。

-その表題曲「夢幻大スリラー」をはじめとして、今作では天鶴さんのヴォーカリゼーションも、多岐にわたって各曲たちを彩っている印象があります。もちろんクリーンなトーンの歌も素敵なのですが、特筆すべきはこのデスボのワイルドさでしょうね。女性でここまでの凄みと威圧感、そしてここまでの凶悪さを出せる方はそういないかと。

天鶴:うわぁ! "激ロック"のライターさんに"凶悪"と言ってもらえるなんて、すごく嬉しいです(笑)。今回デスボはもう存分に入っておりますので、私としてもそこはぜひ聴いていただきたいですねぇ。今回は、自分に対して素直になったのが良かったんだと思います。

-それはどういう意味でしょうか。

天鶴:実は、もともと私はヴィジュアル系バンドをやっていたんですよ。要は男性のパフォーマーに対する憧れから歌を始めたところも大きくて。でも、この絶対倶楽部については、ガールズ・メタル・バンドという枠組みの中で始めたという流れがあったので、今までは"女性ヴォーカリストとして歌わなきゃいけない!"という意識にちょっととらわれていたところもあったような気がします。だけど、今回のアルバムは、全編を通してシアトリカルとかダークというコンセプト性を持たせたということもあり、自分の書いた歌詞や表現したい世界をより忠実に描いていきたいということで、"女性ヴォーカリストとしての歌"どうこうということよりも、純粋に自分が素直に歌いたい歌を表現していくことにしたんです。我ながら、今回はだいぶ振り切りました(笑)。

-「夢幻大スリラー」にしても「暗黒幻想」にしても、メタル感だけではなく、ゴシック感も入り交じったこの音像と天鶴さんの表情豊かな歌によって、絶対倶楽部は今作で独自のダーク・ファンタジーの世界を作り上げたことになりますね。

天鶴:"夢幻大スリラー"っていうタイトルの響きも含めて、このアルバムは本当に私たちにしか作れないものになったと思います。

一ノ瀬:"無限大(∞)"という意味も重ねたくて、わざわざ8曲入りにしたしね(笑)。

-この作品を経て、絶対倶楽部にはまさに可能性無限大な未来へと向かっていっていただきたいものです。ギャルバンも昨今は多々見受けられますが、絶対倶楽部はこのまま我が道を進んでいきそうですね。

天鶴:良くも悪くも、周りのことはもう意識してないですからね。ライバルなんていないし、今はいかにこの5人で切磋琢磨していくのかということが、何よりも一番大事なんですよ。それに、絶対倶楽部と名乗ってこうして強気でやっているっていうのも、当然それなりの覚悟があってのことなわけですし。どうせバンドをやるなら、調子に乗ってカッコつけていたいじゃないですか。私たちはこれからも、唯我独尊でやっていきます!

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