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INTERVIEW

Ethereal Sin

2021.08.25UPDATE

2021年08月号掲載

Ethereal Sin

Member:Yama Darkblaze(Vo) Hal Purprite(Key/Cho)

Interviewer:杉江 由紀

-ところで。今作におけるリード・チューンというのは決まっていらっしゃいますか。

Yama:うーん、どうだろう? あんまりそういうのを考えたことはないですし、聴き手のほうで自由に感じてくださればそれでいいと思ってるんですけど、一応4曲目の「Into the Misty Rain」については先行でリリック・ビデオを作成しました。メンバー内で"どれにする?"って多数決を取ったときに、一番人数が多かったのがこの曲だったんですよ。ま、多かったと言っても実際は票がバラけていて、この曲だけ2票入ったってだけなんですけど(笑)。

-それから、資料では各曲のタイトルしかりアルバムのタイトルしかり、英題と日本語タイトルが両方とも冠されています。この理由についても、よろしければ教えてください。

Yama:これは私の中でのEthereal Sinのポリシーなんですが、アルバムとその前に出すEPがワンセットで共通したテーマを持つというものがあるんです。前回、2014年のスプリット・アルバム『Arcane of Ancient Asia』と2019年の3枚目からテーマを和に振り切っており、今回の場合だと、昨年の春に出したデジタルEP『Kokuu』から詞や写真での見せ方の面でジャパニーズ・ホラーをテーマに加えたんです。そうなった理由は自分のバンドもですが、別にやっている仕事の影響も大きくて。今はコロナ禍でお休みしているんですけど、海外のアーティストを日本に呼んでくるプロモーター業をやってまして、海外の人々とやりとりをしていると、ここ10年くらいで頻繁に言われるようになったのが"なんで日本のバンドって、せっかく日本っていう面白い土地で生まれ育っているのに日本らしさがないの?"っていうことなんです。

-たしかにそれは一理ありますね。

Yama:例えば、ヨーロッパでもいわゆるフォーク・メタルみたいな感じで、各地の文化を生かして民族楽器とか現地語で歌うようなバンドとかもいますから。なかなかメイン・ストリームにはならないんですけど、一方で根強いファンは必ずいますし、そういうジャンル専門のレーベルとかもあるわけです。そんな土壌がもともとあって、最近はさらに伝統的文化を見直そうという機運が高まっているのか、彼らからしてみると"なんでわざわざアジアから出て来てるのに、ヨーロッパのマネしてるの?"ってなるみたいなんですよ。まぁわからなくはないです。ただ、日本人の思う和の雰囲気と海外の人が思う日本らしいもののイメージにはちょっと差もあるんですけどね。

-いわゆるフジヤマ、ゲイシャ、サムライ的なものが今でもハプリック・イメージとしては強いということですか?

Yama:そこまで典型的じゃないでしょうけど、どうしてもデフォルメはされてますよね。逆に我々日本人からすると、テキサスに行ったらみんなカウボーイ的な感じというか(笑)。そこは少し考慮しつつ、Ethereal Sinの音楽は海外ファンにも国内ファンにも聴いてほしいものであるということを意識して、前回からロゴに梵字を使ったり、衣装も雅楽をモチーフにしたり、日本語表記を曲名に含めたりしました。今回は衣装が僧服で、ジャパニーズ・ホラーをテーマにしたので、貞子かよ、みたいな感じになってます(笑)。

-夏に聴くにはちょうどいい感じです(笑)。考えてみれば、ブラック・メタルにもホラー感が漂うケースはあるわけで、それを日本的に表現するとなると、きっと"こう"なるのが自然なのでしょうね。

Yama:ブラック・メタルはもともと悪魔崇拝、サタニズムから生まれてますが、キリスト教から見た悪魔って自分たち以外の異教の神を指すので、仏教や密教の神も悪魔なんじゃないの? という理論でいけば、アジア文化におけるブラック・メタルって"こう"じゃないかなと思っての表現です。

-故に、今作では7曲目の「Ouka」にて日本語も使われておりますね。

Yama:この曲にはナレーションで日本語を入れました。曲の最後には玉音放送の一部も使ってますね。

-そのうえ「Hagakure」については、音階からして"ヨナ抜き"の和音階を使われていますね。

Yama:日本らしさは、かなり出てると思います。おそらく、海外の人が聴いてもこの曲は"少なくともヨーロッパのバンドではないだろうな"ということを感じ取っていただけるはずです。

-Halさんが、今作の中で和要素を醸し出していくためにとられたアプローチはどのようなものでしたか。

Hal:「Hagakure」にはもともと箏の音が入っていたので、そこはそのままにしました。むしろ、僕の役割としてはあまり和に寄りすぎないようにというところを意識してたところが多かったですね。和なところとシンフォニックなところを融合させるためにはどうしたらいいか、という考え方をしていったんです。

-では、今作の中でおふたりそれぞれの推し曲も教えていただけますか?

Yama:リリック・ビデオを作った「Into the Misty Rain」はEthereal Sinが得意とするシンフォニック・ブラック・メタル曲ですが、3曲目の「Like a Garuda」と5曲目の「Dash across the Sky and Sea」に関してはメロディック・デス・メタル的なカラーが強いので、ブラック・メタル好き以外の方にも楽しんでいただけると思いますね。でも、私個人としてのイチ推しは1曲目のSE「Time of Invocation」明けに来るドラマチックな「Beyond the Love and Hate」です。曲自体も長いですし、内容も初めて聴く方に向けてのイチ推しとはちょっと言いにくいところもありますけど、この曲の詞は大正時代に書かれている(この曲の日本語タイトルと)同名の小説"恩讐の彼方に"にインスパイアを受けて書いたもので、物語性の面でもとても気に入っています。

Hal:僕の推し曲は「Braveheart again」です。デモに入っていたブラスの音がタイトル通りに勇ましさを出していたので、この曲はそこからどんどんイメージを広げていきました。ブラック・メタルだけど聴きやすい、っていう曲でもあると思います。

Yama:この詞の内容は、昔、戦争で闘っていたことのある老人が、家族が危機に晒される事態に陥ったとき、再び剣をとり戦場に戻るっていうお話です。これは中世が舞台ですね。

-いやはや。こうなってくると、この"第一章"の続きが気になってきますよ。

Yama:Ethereal Sinの楽曲はどれも1曲ずつが独立した物語ではあるのですが、『Time of Requiem』ではアルバム2枚を通し、様々なかたちで死や闘いや人生をモチーフとしながらそれに対する数々のレクイエムが詰まっているんです。そう遠くないうちに発表されるであろう"第二章"は曲や写真のイメージもこの"第一章"とはまた少し違う壮大なテイストになっていくと思いますので、そちらもぜひ楽しみにしていてください。といっても、まだ完成はしてませんので、私もどうなっていくのかすごく興味深いです(笑)。Halにも、"第二章"はより壮大さを出していくつもりでここからは取り組んでいってほしいです。よろしくお願いします!

Hal:最後の仕上げに向けて、僕もこれからさらに頑張ります(笑)。