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INTERVIEW

ADAM at

2021.07.12UPDATE

2021年07月号掲載

ADAM at

Interviewer:荒金 良介

今いるジャンルを拡げたいという気持ちがあった


-そういう流れを踏まえ、今作を作るうえでは何かテーマはあったんですか?

昨年のコロナ禍でピアノを弾く時間も長かったですからね。最終的にアルバムの曲を並べたときに、10曲中2曲が激しめの、「カルラテン」と「ケイヒデオトセ feat. Benji Webbe from SKINDRED」で、これを作品の前半にするか、後半にするかで聴き応えも変わると思ったんですよ。あえて1曲目に「カルラテン」を持ってきたのは聴き手を驚かせたいというより、今いるジャンルを拡げたいという気持ちがあったのかもしれない。次に行きたいなって。テーマは後付けかもしれないけど、次のステージに進むための1枚かもしれないですね。

-今作こそ転機作にしたい、という気持ちがあったと。

はい。ジャズ/ピアノ・インスト・シーンのままでいると、そのジャンルを好きな人にしか聴いてもらえないので。そのためにフェスやいろんな人とコラボする手もあるけど、自分の音楽を根本的に変えて、今までのスタイルから脱却しないと、リスナーは増えないんじゃないかと思ったんです。

-1曲目「カルラテン」はいきなりドラムで始まりますからね。

ピアノ演奏なのに、ドラムで始まるという。曲は気に入ってくれて、かっこいいと思っていただければいいんですよ。

-「カルラテン」はメタルのヘヴィさとピアノの軽やかな音色が見事に融合してます。

これは完全にILL NIÑOのおかげです。あんなにラテンをやっているヘヴィ・ロックは知らなかったし、あれを聴いたら、いつか自分でもやってみたいなと。

-ILL NIÑOのラテン・メタル感からインスパイアを受けていたんですか。面白いです!

もともとこの曲はそんなに跳ねてなくて、もう少しオーソドックスなメタルだったんですよ。それだと僕らしくないから、跳ねた部分を入れたら、うまく昇華できたんです。個人的にもかっこいい曲ができたので、そのあとにILL NIÑOを聴いてみろ、よくわかるぞ! って。

-はははは(笑)、最高です。「ケイヒデオトセ feat. Benji Webbe from SKINDRED」は、今作の中でもいい意味で浮いているし、一番攻めたヘヴィネスっぷりですね。

去年、確定申告を作成しているときに経費で落としたいな、という心の叫びからスタートしました。とにかく、"ケイヒ"の部分をみんなで叫びたいなと。で、どうせなら振り切って、デス・ヴォイスを入れたいなと思ったんです。それで海外のアーティストに声を入れてもらえないかと思い、ビクターの方にリストアップしてもらい、そこにSKINDREDの名前があったんですよ。メタルにいち早くレゲエを取り入れたのはBenjiだと思ってますので、もしかしたらやってくれるんじゃないかと思って。

-SKINDREDはCrossfaithやSiMとも絡みがありますし、イギリスを含めてヨーロッパにおいても絶大な人気がありますからね。

ですよね。ただ、ジャズ/インスト・シーンの中で、どれだけSKINDREDとのコラボのすごさをわかってくれる人がいるのかなと。メタル上がりの人はわかってくれるんですよ。"SKINDRED、マジですか!?"って。

-「ケイヒデオトセ feat. Benji Webbe from SKINDRED」は日本にとどまらず、海外のリスナーにも刺さりそうな1曲です。おそらくBenjiもこういう曲調で歌ったことはないと思うので、新しいミクスチャー感が出ているなと思います。ヴォーカルに関しては何かリクエストしたんですか?

いえいえ、"ケイヒデオトセ"、"ヘイ!"の部分だけ歌ってもらえれば良かったんですけど。Benji側が頭のラップをつけてくれて、サビ部分のメロディも作ってくれたんですよ。

-それはすごいですね! では、他の楽曲に関しては作品トータルのバランスも考えて?

先ほどもお話した通り、セッション・バンドから今もやっていることはドラムの四つ打ち、ベースの跳ねる部分で、なんとかアダムっぽいよねと言われたい気持ちが昔からあったんです。ドラムが四つ打ちで、そこにピアノが乗ることでADAM atらしさを感じてもらえるものを3曲入れて、あとジャズっぽいものを1曲入れて、"猫と竜"というファンタジー小説/漫画とコラボさせてもらった「猫と竜」では、中世ヨーロッパ的なテイストを入れました。なので、バランスを考えたというより、できた曲を並べてどうすればバランス良く聴こえるかなと。

-ADAM atさんらしい楽曲というと?

「Refresh」、「ARIA」、「URAMICHI瓢箪いろは坂」。このへんがらしい曲ですね。

-「URAMICHI瓢箪いろは坂」はドラムもかなり激しいですね。

TRI4THのドラムの方(伊藤隆郎)で、ルーツにパンクやスカがあるんですよね。で、ジャズっぽい曲が「World Of Ceiling」。

-メタルで言えばアルバムに必ず1曲は収録されているバラード的な位置づけですね?

はははは(笑)、そうです。コロナ禍で毎日やることがなくて、天井をよく見ていたんですよ。この先のツアーはどうなるんだろうと。コロナでライヴができない代わりに、ラジオのレギュラー番組の中で擬似ライヴをよくやっていたんです。この曲では立体音響を取り入れたんですよ。ヘッドホンで聴くと、シンセが右から左へ音が回るような仕掛けを施しました。

-「猫と竜」はタンゴ風のリズムが印象的で、ヴァイオリンやパーカッションを導入してますよね?

パーカッションをこんなにガッツリ入れたのは初めてですね。「Innocent Overkill」(2019年リリースの5thフル・アルバム『トワイライトシンドローム』収録)という曲にSEPULTURA、SLIPKNOT的なパーカッションを入れているんですけど、今回はゲーム音楽的なイメージで入れました。

-表題曲はコロナ禍の中でできた最初の曲だそうで、聴き手の心に明るい光を灯してくれるような曲調です。また、「Spring Field」は草彅 剛さん出演のCM(独立行政法人環境再生保全機構CM)ソングに起用されてますよね?

アメリカン・ロックが好きで、DAMN YANKEESのような乾いた感じもすごく好きで、アコギの音も映えるじゃないですか。この曲はVanessa Carltonみたいな90年後半~2000年初期のアメリカン・ポップス的なイメージですね。

-ADAM atさんは音楽の引き出しも多いですね。最後に将来の夢があれば教えてもらえますか?

メタル、アメリカン・ポップス、ジャズ、ピアノ好き、いろんな方に聴いていただきたいです。おこがましいですけど、夢は自分の曲が教科書に載って、いろんな人が演奏してくれたら、こんなに嬉しいことはないですね。