INTERVIEW
WITHERFALL
2021.03.08UPDATE
2021年03月号掲載
Member:Joseph Michael(Vo/Key) Jake Dreyer(Gt)
Interviewer:菅谷 透
常に自分自身を超えたいという気持ちでやっているけど、その"超え方"が前よりうまくなってきた
-2018年末に行った前回のインタビュー(※2019年1月号掲載)では、2019年にSONATA ARCTICAとのアコースティック・ツアーや、EP『Vintage』をリリースするとおっしゃってましたね。それぞれどのような反響がありましたか?
Jake:あのツアーは興味深かったよ。アコースティックだったしね。初めてその話があったとき、いつも何か努力が必要なものを求めている俺たちとしては、チャレンジを受けて立つことにしたんだ。過去にやった曲の多くもアレンジを作り直してアコースティックなフォーマットにしつつ、ただコードをかき鳴らすだけじゃないものを作った。すごく楽しかったよ。俺たちのアプローチは、ジャズ・フュージョン・バンドmeetsクラシック・コンサートという感じだったね(笑)。
Joseph:コアな要素まで曲を分解するだけでも面白かったよ。曲を作った当初の意図の雰囲気を掴もうとしてね。
Jake:すごくうまくいったよ。SONATA ARCTICAのファンも素晴らしかったし、俺たちをよく受け入れてくれた。でも、普段のエレクトリックなヘヴィ・メタルのショーだとみんなヘドバンしてるけど、このときはみんな教会の聖堂にいるみたいに椅子に座ってじっとしていたから、変な感じだった(笑)。
Joseph:ミラノでやった劇場は、たしかLuciano Pavarottiが最後にやったところじゃなかったかな。いろいろもの珍しいところでやったよ。
-EP『Vintage』のほうはいかがでしたか?
Joseph:たしかソールド・アウトになったと思うよ。手元には20枚くらいしか残ってないんじゃないかな。生産限定盤だったからね。
Jake:生産限定盤で、アナログ盤はカラーだったから特によく売れたんだ。あれもチャレンジの上にチャレンジを重ねたような感じだったね。実は日本とちょっと関係がある話なんだけど、あのEPを完成させてからすぐスタジオを出て、その足で(2018年11月の)KAMELOTとのツアーに出たんだ。ロサンゼルス空港に直行してそのまま日本に飛んだんだよ。
-なんと。
Joseph:完成したのが夜10時ごろ、フライトは翌日の朝5時とかそのくらいだったんだ。完成させてから24時間以内にすでに日本にいたんだよ!
-今までの話は2018年から19年の時期でバンドの勢いを感じさせましたが、2020年になると、COVID-19により音楽活動をはじめとして様々な事柄が制限を受けるようになりました。バンドにはどのような影響がありましたか?
Joseph:正直、その時間はアルバム作りに費やしていたんだ。あとビデオもね。レコーディングが始まったのは3月の終わりだった。
-コロナ禍がアメリカで始まった直後ですね。
Joseph:そう、始まった直後だった。もともとはJon(Schaffer/ICED EARTH/Gt)がLAに来て、一緒にプリプロダクションをやってから、ドラムのレコーディングに立ち会ってくれることになっていたけど、彼もJim(Morris/レコーディング&ミキシング・エンジニア)も来ることができなかったんだ。それでドラムのレコーディングは、FOO FIGHTERSのドラム・エンジニアのBradley Cookと一緒に俺たちでプロデュースした。それから1ヶ月くらい待って、状況を整えてからインディアナ州に行って1ヶ月くらい滞在して、ギター、ヴォーカル、ベースを録った。そのあと今度はフロリダのタンパに飛んで、Morrisound(※Jim & Tom Morris兄弟の所有するスタジオ)でミキシングとマスタリングを行ったんだ。だから、世界がシャットダウンしてからもノンストップで働いていたんだよね。
-時間を最大限に活用してアルバムが作れたのは良かったですね。
Joseph:ああ。しかもビデオも撮れたしね。
Jake:良かったよ。というのも、2019年の終わりにはすべて計画済みだったんだ。スケジュールもスタッフも、ホテルも、スタジオの使用時間、フライトも全部手配済みだった。ドラムはGergo Borlaiがプレイすることになっていたけど、彼がスペインで足止めを喰らってしまったから、Marco Minnemann(THE ARISTOCRATS etc.)にやってもらうことになったんだ。ファンタスティックな、間違いなく素晴らしいドラマーが来てくれたよ。でも、彼もぎりぎりのところで決まったんだ。そんなわけでもともと計画していたものは3月にすべてポシャってしまって、それが最大のハードルだったね。
-Marcoですが、彼はとても有名な、超絶技巧のドラマーですよね。彼にはどういった経緯で声を掛けて、どうやってこのプロジェクトに参加したのでしょう。
Joseph:フフ......(笑)、ほとんど絶望していたところで声を掛けたんだ。Gergoが参加できないことになってしまって、Jakeも言っていたけどいろいろ手配もしてあったのに、全然身動きが取れなくなってしまった。だけどドラマーは必要だ。俺たちが知っているドラマーでうまくやってくれそうな人はたぶんひと握りだったと思う。そのうち何人かに声を掛けて――
Jake:でも、Marcoは候補リストの筆頭だったよね。
Joseph:ああ。実は声を掛けたのは最後だったんだけど。というのも、彼のツアーの情報を見たような気がしていたから、参加できるかどうかわからなかったんだ。たしかそのツアーは早く切り上げて帰ったみたいで、それで参加できることになった。声を掛けたとき幸運にも彼はドイツにいて、そこからはアメリカ行きの便が出ていたんだ。彼にはWEBサイト経由で声を掛けて、プロジェクトについて説明してたんだけど、全面的にやる気になってくれたよ。
Jake:のちに「Tempest」になった曲を、ギターとヴォーカルとMarcoのドラムだけの仮音バージョンで送ってくれたんだ。"ああ、やらせてくれ。これを君たちのために録音したんだ"なんて言って送ってくれたんだけど、その時点で75パーセントは完成させてくれたようなものだったね(笑)。これはすごいことになるぞ、と確信できたよ。
Joseph:Marcoはとても音楽性豊かなんだ。ただのテクのあるスラッシュなドラマーじゃない。あらゆる意味で超一流のミュージシャンだよ。そんな彼とスタジオでコミュニケートするだけですごく楽しかった。Jakeと俺が曲を書くときと同じようなコミュニケーションを、Marcoとはスタジオで取ることができた。......(※ワイン・グラスを傾けながら)それから言うまでもなく、彼は大の赤ワイン好きだったから、そういう意味でも合ったんだ(笑)。だからセッションが終わってからもとても楽しかったよ(笑)。
Jake:(笑)ファンタスティックなセッションだったよ。
-"赤ワイン好きなの? じゃあ仲間だ"みたいな感じですね(笑)。
Joseph:そのとおり(笑)! 決め手の45パーセントはそれだよ(笑)。
-先ほどプロデューサーのJonの話も出ましたが、通常はおふたりがプロデュースを行いますよね。今回はJonも迎えたということで、アルバム制作において、ケミストリーや変化はありましたか?
Jake&Joseph:いや。
Jake:Jonを迎える前にJosephと俺とですでに全部書いてあったんだよね。スタジオに入る前に全部頭の中でできあがっていたんだ。俺たちはスタジオでいきなりプロデューサーに"このコード進行はどう? これはやってみる?"と訊くタイプのバンドじゃないからね。Jonは俺たちのベストなパフォーマンスを引き出す手伝いをしてくれたんだ。俺たちのヴィジョンを把握するのがとてもうまかった。全体的なサウンドの方向性とか、俺たちが何を望んでいるか、ゴールがどんなものかをわかってくれたんだ。でもクリエイティヴ面では、Josephと俺ですでに曲も全部書いてあったよ。
Joseph:Jakeと俺は常にWITHERFALLのプロデューサーなんだ。Jonを連れてきたのは、俺たちがテクニカルな面の細かいところを心配することなく、しかるべきパフォーマンスや曲を叩き出すのに専念したかったからだね。"これで大丈夫かな?"といちいち気にしなくていいし。JonとJim Morrisがいてくれたおかげで俺たちはそのあたりから解放されて、ミュージシャンでいることに専念することができたんだ。技術面は一切心配する必要がなかったよ。Jonは人のやる気を引き出すのがものすごくうまい、それは言っておきたいね。俺たちが彼の言っていることを気に入ろうが入るまいが(笑)、必ず俺たちの中からベストなものを引っ張り出してくれるんだ。音楽に対する情熱がものすごいよ。
Jake:Jimはエンジニアリングを担当してくれたんだけど、彼もすごいよ。ミュージシャンとしても素晴らしいし、ほとんどの楽器を演奏できるから、俺たちがスタジオを出た時点には確実にベストなテイクを録った状態にしてくれた。俺たちが100パーセント力を発揮できるようにプッシュしてくれたよ。ファンタスティックな気分だね。そこまでのプロセスは大変なこともあるけど、間違いなくやり甲斐があったよ。
-前回のアルバム『A Prelude To Sorrow』(2018年リリース)は結成メンバーだったAdam Sagan(Dr)の死を中心に書かれたコンセプト・アルバムでしたね。今回の『Curse Of Autumn』は特定のコンセプトやテーマはありましたか。
Joseph:そうだね。俺たちのアルバムはすべてコンセプト・アルバムではあるけど、ある意味非オーソドックスな形をとっているんだ。今回は......君がアントン・ラヴェイという作家(※アメリカ人。"サタン教会"の開祖でもあった)を知っているかどうかわからないけど、彼はアレイスター・クロウリー(※イギリスのオカルト団体主催者/作家)に似た、"力への意志"的な世界観の持ち主で、願望成就のファンタジーを持っていた。アルバムのバックボーンになっているのは、夢やファンタジーにヴィジョンを持って、敵をみんな払拭してしまうような嵐を呼び起こすことができるようにするということなんだ。そして、自分の人生に悪さをしたやつらをみんな正してしまう。マクロ的な意味で文字どおりのコンセプトを持ったことはないね。例えば"ゾウの森を彷徨っている主人公"とか、そういうのはいない(笑)。
-(笑)よそのコンセプト・アルバムみたいな感じではない。
Joseph:そう(笑)。とても漠然としていて、一番見たとおりのアルバム『A Prelude To Sorrow』ですら、単に俺たちが感情と向き合っているというものだった。中には実世界で起こったこと、あるいは誰かの実生活で起こったことを題材にしているものもあるけど(笑)、あまり事実に即した世界のことは考えていないんだ。俺たちが歌の中で語っていることは深く掘り下げないと解釈できない。
-そうですね。いろいろ暗示するものがあるぶん、聴き手のイマジネーションの余地をたくさん残してくれているところがいいと思います。
Joseph:俺もそう思うね。いろんな解釈ができる曲が多いんだ。
-音楽的にはこれまでの作品に比べるとキャッチーなメロディ・ラインなどの要素が強化された一方で、バンドの持つダークでプログレッシヴなメタル・サウンドもより奥行きを増した、まさに進化を遂げたような方向性だと感じました。こうした変化は意識的なものでしょうか? また、今作ではどのようなサウンドを目指しましたか?
Joseph:流れはいつも自然発生的だね。要は、基本的にJakeと俺がソングライターとして成長したってことだと思う。特にチームとしてね。WITHERFALLがどんなものになり得るかをきちんと把握できるようになってきたんだ。自分たちができることの限界も少し押し広げることができたと思う。つまり、このバンドという範疇の中で、自分たちにどんなことをするのを許すかということだね。
Jake:そうだね。うまくまとめてくれたと思うよ。俺たちのライティングのプロセスは、とても自然発生的なんだ。アーティストとしては常に自分自身を超えたいという気持ちでやっているけど、Josephも言っていたように、その"超え方"が前よりうまくなってきたというのかな。でも、初めにアイディアがあったわけじゃないんだ。"よし、これから超キャッチーな曲を書くぞ"なんて言って作るわけじゃない。例えば「The River」は3分ちょっとだけど、「...And They All Blew Away」は15分半もあって(笑)、3つの楽章を流れていく。これもみんな自然の流れでそうなったんだ。