INTERVIEW
8bitBRAIN
2021.03.31UPDATE
2021年04月号掲載
Member:Koyoka 小谷 茉美子 菊地 桃子 アンズ卍100% メロネサリ
Interviewer:吉羽 さおり
-歌詞にもそれぞれのキャラクターがよく出ている感じですか。
Koyoka:そうですね。今回のシングルでやっと、5人全員が作詞した曲を読んだんですけど、みんなそれぞれ書く内容が全然違うんです。
菊地:一番ハチブレっぽい、韻を踏んでいて、意味合いとしても遊んでいるのがKoyokaの作詞かな。
Koyoka:私が一番ハチブレのスタンダードという感じかな。今回のシングルだと「I'd like」と「SeNSe oF GuiLT」が同じグループの曲なのに、全然違うテイストで(笑)。それぞれ書き手が好きなもの、表現したいものを8bitBRAINのサウンドに乗せているのが伝わってくる曲になっています。そういうのに感化されて、次にもし私が書くことがあったら、自分が好きなものをとことん書きたいと思っちゃうくらいの曲でした。
-「I'd like」はSF風の切ない物語です。これはアンズ卍100%さんの作詞ですね。
アンズ:私は物語を想像したり、形にしたりするのがすごく好きなんですけど、私が書く物語ってだいたい、なぜか主人公が死んじゃうんですよ。終わり方がきれいな人っていいなっていうのが、どこかにずっとあるからだと思うんですけど。これは、AIをテーマに書いてくれと言われて、ロボットと人間について書いていて。ロボットが人間になりたいって思ったことで、エラーが起きちゃって死んじゃうっていう物語なんです。ロボットとして生きていれば生きられたけど、変わろうとしてことで死んじゃった......でも、最後の部分で、"さあ次のステージへ行こうか。"って言ってるのは、次の自分を楽しみに死んでいるので。変わろうとすることを恐れない気持ちみたいなものも込めて書いてます。
-ストーリーもメロディも切ないけれど、グッとくるラストです。
アンズ:このストーリーをいろんなことをに置き換えてほしいなと思うんです。例えば、仕事を辞めたいと思ってるけれど辞められない、でも辞めないと今の環境は変わらないし、だけど辞めるのは怖いとか。それでも、やってみないとわからないし、次のステージがあるよっていうことも、歌詞の奥深くまで噛み砕いて読みとってくれたらなと思います。あと、この曲には自分が言われてムカついたことも入っているんです。前のグループをやめたときに、"アンズは終わったね"、"もう出てこられないね"みたいに言われたことがあって、勝手に決めないでよと思って。
Koyoka:ハチブレで物語調の歌詞は初めてですね。今までは、韻を踏むということに重点を置いていたので、アンズは物語を作るタイプの人だなって。
アンズ:でも、一応、韻を踏んでるんだよ。
Koyoka:だから、すごいなって思って。両方取り入れてるから。
-ハチブレのいい振り幅になりますね。「SeNSe oF GuiLT」は小谷さんの作詞で、気になるワードがたくさん盛り込まれている曲です。
小谷:この曲は、ミステリーで書いてほしいって言われていたんです。私はこれまで作詞をしたことがなくて、何が正解かよくわからなかったんですけど、ミステリーだけじゃつまらないなって勝手に思っちゃって。二郎系ラーメンがすごく好きなので、これはミステリーで犯人を探して見つけていくのと、二郎系ラーメンを完食することをかけて書いてます。
Koyoka:そこなのね(笑)。
アンズ:途中に"迷宮シャウエン"とか、世界の観光地の名前も入ってるよね。それはどこからきたの?
小谷:普通のこと言っても、ハチブレじゃないなって思って。ちょうどそのときテレビを見ていたら世界遺産の特集をやっていて、世界遺産か......すごいなぁと。じゃあ、ミステリーの迷宮感を世界遺産に置き換えたら面白いかなって思ったんです。世界遺産の名前を入れたりして。
Koyoka:それがいい意味で目立って、異質感がある。私はこの"迷宮シャウエン"がどうしても頭に残るので、歌詞ってやっぱそういうのが大事だなと思いました。
アンズ:あとは最後で"黄色い看板"って出てきて、やっとラーメンのこと、二郎のことも歌ってるんだなって種明かしをする、ミステリーの小説を読んだみたいな気持ちになるところがいいなって。
小谷:終盤だったらちょっとふざけてもいいかなって。
アンズ:いや、最初のほうで"マシマシ"って言ってるからね。そこで"ん?"って思って、最後に種明かしがあるっていう。かっこいい曲なのに、クスッとできる。
小谷:ちなみにサビの"run and dash! run and dash!"のところも"ラーメンだ! ラーメンだ!"って聞こえたらいいなって思って書いてます。
アンズ:レコーディングのときにマリーちゃんからご指導があったよね。
-その言葉遊びを、四つ打ちのビートや、スラップ・ベースでノリ良く聴かせているのがいいんですよね。しかも、この四つ打ちにどこか懐かしい感覚があって。
菊地:90年代、2000年代初期みたいな感じがあるんですよね。私たちは子供の頃聴いていたような感覚になります。
Koyoka:ファンの方も30代や、それより上の世代もいらっしゃるので、その方たちが青春時代にCDを買ったり、追いかけてきた音楽だったりも垣間見えて。懐かしさもありながら、私たちの音として進化している感じがあって、届きやすいんじゃないかなって思います。そこにまさか、この歌詞が乗るとは思わなかったですけど(笑)。それが8bitBRAINらしさなのかなっていう。
菊地:これで歌詞も普通だったら、私たちが歌わなくてもいいんじゃないかってなりそうなところが、一気にハチブレっぽくなったので。
-ちょっとしたデコボコ感がポップさを呼びます。
菊地:プロデューサーがメンバーに歌詞を頼むときや、ライヴのときもそうなんですけど、サウンドはかっこいけど、歌詞は遊んでほしいと言うんです。かっこいいとかっこいいだったら、ただのかっこいいで、それはハチブレじゃないから。かっこいいサウンドとちょっと遊んだテーマを必ず作ってほしいっていう。今回の「Black Sabbath」のような、ストレートな気持ちを伝える曲ももちろんあるんですけどね。
-そして「Why fight?」がKoyokaさんの作詞曲ですね。エキゾチックでキャッチーなサウンドに、先ほどから出ている言葉遊び、韻を踏む心地よさがマッチした曲です。
Koyoka:作詞のテーマが、ボーダレス社会だったんです。でも、それだと抽象的だしテーマが大きすぎるので、身近なことに落とし込んで書いているんですよ。今回は"Why fight?"と言うタイトル通り、Wi-Fiとかけていて。Wi-Fiを擬人化して、気づけばすぐそばにいてくれたとかあなたがいたら何もいらないとか、なくなったら困るとか、待っていられないとかを入れつつ、ガンガン韻を踏んでいた気がします。ちなみにこれはふたりが入る前の初期に作った曲なんです。"ポケットタイプ"=ポケットWi-Fiとか歌ってますけど、今や5Gの時代で(笑)。たった2年くらいでもう古くなっちゃったんだ? って思ったんですけど、それを今出すことで"時代"を感じられるし、楽しいのかなと。
菊地:Koyokaが韻を踏むのが一番上手だなって思うのが、こういう言葉遊びみたいな歌詞だけど、ライヴでのノリがすごく良くて。お客さんの中でもこの曲大好きっていう方が多いんです。
-それぞれのキャラクターが全開になったシングルになりましたね。このシングルで3部作は締めくくりとなって、次に8bitBRAINがどんな曲を提示してくるのか、それがさらに楽しみになりました。
アンズ:この3部作はテーマに沿ってかっちりやってきたし、次はわけわかんないことしたいね。私たち自身メジャーでの活動が初めてだったので、メジャーという場でどこまで言っていいんだろうとか探り探りやってきて、でも日和ったことはしたくない、絶妙なラインで攻めたいシングルだったから、次はもう意味わかんない曲出したい(笑)。
菊地:ハチブレはこのサウンドだからこそ、なんでもありなのが面白いなって思ってて。メッセージ性の高い曲もあれば、例えば、2ndシングルに収録されている「Love&Sick」はピコピコした一番かわいい系の、恋の病の曲だし。振り幅はあるのに、チップチューンでラウドロックでという統一されたものがあるから、全部ハチブレになるのが逆に何にでもなれて面白いなって思ってます。
-こんなサウンドにしたい、こんな曲をやりたいとメンバーから提案することは多いんですか。
菊地:サウンドに関しては、プロデューサーが私たちに次はどんな感じのサウンドが欲しいか聞いてくださるんです。それこそ「Black Sabbath」もそうで。
サリ:「Black Sabbath」ではしつこく、"絶対にピアノから始めてくれ"って言っていたんです。
アンズ:会うたびに言ってたよね(笑)。"おはようございます。で、ピアノのことなんですけど──"って。
サリ:最初にできあがってきたデモが、ピアノが入ってるかどうかくらいの目立っていない状態だったんです。プロの人が聴けばそれでもわかるんでしょうけど、一般の人が聴いて、これはピアノから始まる曲だなってわかるくらいに入れてほしいって言って。でも、これ以上は入れたくないって言われたんです。この曲の流れだとピアノを入れるとおかしいからって言われたんですけど、おかしくてもいいので、私が歌詞を書くから入れてくださいって。
アンズ:あの攻防はすごかったね。
-メロネサリさんはなぜ「Black Sabbath」という曲でピアノが必要だと?
サリ:私の感覚ですけど、ピアノって心がきれいになるのと一気にエモくなるのと、ピアノが嫌いな人ってきっといないじゃないですか。ハチブレでこんなふうにピアノから始まる曲はないし、3部作の最後で優しく人に寄り添った歌詞だから、絶対にピアノから始めたいって思っていたんです。
-ここからさらにライヴも増えていくと思いますが、8bitBRAINとしては今ライヴにどのような思いで臨んでいますか?
Koyoka:今はまだ、ライヴハウスに行くこと自体ハードルが高くなってしまっている状況だと思うんです。それでも、8bitBRAINのライヴを選んで、その日にその場所に観にきてくれる方がいるので。前にも増して、来てくれた人への感謝や、一緒に楽しみたい気持ちがあります。段々と、状況は明るくもなってきているんですけど、やっぱりまだライヴに行くことを会社や周囲には言えてないという方も、会場に足を運んでくださるので。その方たちにどれだけ思いを伝えられるか、あとは非日常的な楽しみを届けられたらという気持ちはどんどん強くなっていってます。
菊地:私たちは2021年の頭にZeppでのライヴをしますっていう発表をしていたんです。そこに向けて、"ROAD TO ZEPP"と冠してツアーをずっと回ってきたんですけど、結局コロナ禍でZeppでのライヴがなくなってしまって。それが実現できるのがいつになるのかも、今となってはわからないんですけど。必ずZeppでの景色をお客さんに見せてあげたいという気持ちがあるので。
アンズ:ツアー・ファイナルだけ終わってない状態なんです。
菊地:まずは、"ROAD TO ZEPP"のツアー・ファイナルを絶対にやりたいなっていうのが目標です。