MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

8bitBRAIN

2022.03.23UPDATE

2022年03月号掲載

8bitBRAIN

Member:Koyoka 小谷 茉美子 菊地 桃子 アンズ卍100% メロネサリ

Interviewer:吉羽 さおり

2020年、シングル『Under the weather』でメジャー・デビューし、4色のエフェクティヴなヴォーカルと、攻撃的なシャウトによる5人で、ラウド且つポップな音楽を轟かせる8bitBRAIN。コロナ禍で、現状へのフラストレーションや、それでも突き進んでいく思いを封じ込めた、3作のシングルをリリースしてきた8bitBRAINが、初のフル・アルバム『shout』をリリースした。ハチブレ(8bitBRAIN)印と言える破壊力満点のラウドなサウンドはもちろん、アルバムでは和のテイストやまっすぐな歌モノ、またポップなものはよりポップに磨きをかけ、遊びもふんだんにと、サウンドの裾野を広げて暴れまくった内容になった。まさに本領発揮のアルバムだ。グループとしての進化、個性を生かしたフル・パワーのノリが、作品に生きている。

-昨年の3rdシングル『Black Sabbath』のとき(※2021年4月号掲載)以来、約1年ぶりのインタビューとなりますが、2021年の活動はどうでしたか?

アンズ:相変わらずコロナ禍でいろいろな制限があるので、ライヴや活動の面ではつらい状況ではありました。一瞬緩和された時期もあって、そのときは、ライヴハウスの雰囲気がちょっと戻ってきたかなという感じがあったんですけど。また厳しい状況になってきて。でもそういったなかでアルバムをリリースしますということを言えたので、ファンの子たちが明るくなってくれたのはありました。

-ライヴは定期的にやっていたんですね。

アンズ:声が出せないので"一緒に歌おう!"というのができないんですけど、そのぶん振付を(メロネサリが)頑張ってくれました。

サリ:上半身から上の振付で、みんなが見てすぐに真似できるような、声が出せなくても楽しいんだよという振付にしましたね。もともと8bitBRAINの曲はサビだけは簡単にできる振付にしていたんですけど──とは言ってもそんなに簡単ではなかったので。もっと簡単に、初見の人でも踊れるようなものにしています。

アンズ:ステージでの煽りはコロナ禍になってからもやっているんですけど、みんなに声を出してもらうような煽りは全部、声を出さなくても楽しいフレーズに変えていますね。ただやっぱりどうしてもグッとテンションが上がると、思わず"声出せ!"って言っちゃうときもあって。お客さんたちのほうが、わかるよその気持ちって顔をしながら黙って手を上げてくれたりするんですよね。それが逆に、"頑張ろうな、お前ら"みたいな気持ちになったりして(笑)。それはそれでいいライヴだなっていうのはありますね。

菊地:最近はもう、お客さんの魂の声が聞こえてきますからね。いつもは声を出してやっている動きを、声を出さずにやってくれたり。

Koyoka:手拍子でコールみたいなのを再現してくれたり。

菊地:ファンの人もどうにかしてこのフロアを沸かすぞというので一緒にやっていますね。

小谷:声を出せないぶん、結構前のめりで来てくれる人が増えたなという感じで。うん、わかってるよっていう。

-そういうなかでとてもいいアルバム『shout』ができましたね。8bitBRAINの表現や可能性がさらにグッと広がって、これからまたいろんな見せ方ができそうだなという作品ですが。アルバムへのヴィジョンや、モードはどういった感じだったんでしょう?

アンズ:メンバーから最初に出てきたのは、"好きなことがしたい"というもので。コロナ禍でリリースしてきた1stシングル『Under the weather』(2020年7月リリース)、2ndシングル『Out of order』(2020年11月リリース)、3rdシングル『Black Sabbath』が、コロナや今の状況がテーマになっていたこともあって、この3作でひと区切りというか。ひと段落ついたあとにメンバー全員、"もう!"ってなって(笑)。

菊地:"やりたいことをやる!"みたいな。やりたいことやるって言った途端に、みんな髪切ってましたし。

アンズ:見た目も変わっちゃって。メンバーはもちろん、プロデューサーや大人たちも含めて、全員が好きなことをした結果のアルバムが『shout』です。

-曲調の広がりもありますが、自分たちからもこういう曲をやりたいなどがあったんですか?

菊地:曲自体はプロデューサーが選んで。このリード曲と、新曲たちをみんなで作詞してくださいって出してきた6曲が全部、全然違う感じでした。

アンズ:曲が上がってきた時点で、"あぁ、やりたいことがいっぱいあったんだな"っていうのを感じましたね。

菊地:プロデューサーが好きなものを好きなように詰め込んだんだなっていうのを、私たちも受け取って、じゃあ私たちも好きなようにやろうと。

アンズ:うん、同じ気持ちだったなって思った。

-誰がどの曲の歌詞を書くかは、あらかじめ決まっていた感じですか?

アンズ:リード曲「下弦に舞い散る夜桜は、あなたを想い永遠を唄ウ。」は全員で書いて、コンペ形式で決めたんですけど。あとの5曲についてはそれぞれ好きな曲を選んで書こうとなって、見事被らずにバラバラに分かれました。

-「下弦に舞い散る夜桜は、あなたを想い永遠を唄ウ。」はアンズ卍100%さんの作詞ですね。この曲は8bitBRAINでは初の和の要素がサウンドにも出ています。

アンズ:和の要素をやりたいっていうのは聞いてたから、最初に曲を聴いたときはそうきたかっていう感じでした。思い切り和なのに、やっぱりハチブレっぽさが詰まっていて。

-和の要素、ラウドさ、ピコピコ感が詰まった曲ですが内容的には情緒的でエモーショナルな歌詞になりましたね。

アンズ:アルバムのタイトルが小文字で"shout"なんですけど。これはあえて小文字にしようとメンバーで話していたんです。8bitBRAINってまだまだ小さな存在で、届いている範囲も狭いなかで、このアルバムを出すとなって。私たちのこの小さな叫びが、世界のどこまで届くんだろうという気持ちを込めて、小文字で"shout"というタイトルを付けたんです。小さい叫びというテーマがあったから、リード曲はあまり強い言葉を使いたくなかったんですよ。あとはサウンド的に"和"の要素があったので、和を意識して四字熟語を入れるとか。あとは桜の花言葉に、"私を忘れないで"というのがあるので、それをテーマに書いていますね。今、時代が一気に変わってしまって、これからどうなるかも全然わからないけど、8bitBRAINや、一緒に過ごした時間とかを忘れないでほしいなって思って"永遠を唄ウ。"と付けたんです。いろんな状況があって、続けていくことが難しい時代にもなってきていますけど、それでも頑張って歌うから忘れないでねという気持ちを込めました。

Koyoka:2018年に8bitBRAINがスタートして、4年間活動をやってきて初めてのアルバムだし、3人体制の時代から2019年に5人の新体制になってという流れもあるので。ファンに対して忘れないでというのもそうですけど、支えてきてくれた感謝であるとか、いろんなことを歌で届けていけたらいいなというのを歌いながら思っていましたね。

-小谷さんはシャウト、デス・ヴォイス・パートでどんなことを意識しましたか?

小谷:曲を聴いたときは、こういう儚い感じの歌にシャウトを入れるのかとも思ったんですけど。冒頭部分では、儚く消えそうな歌詞だからこそ、力強く入りたいなと考えました。中間に、アンズのラップとの掛け合いがあるんですけど、ここも歌の部分とは少しだけ世界観が違って、散りゆく美しさと力強さとがあったので。切ないけれども、散っていく姿も美しいってのを表現できればというのはありました。

-ふたりの掛け合い部分は、お互いこういう感じでと話やすり合わせみたいなことはするんですか?

アンズ:結構、ぶっつけ本番だったよね。

小谷:そうだね。

アンズ:できあがった音源を聴いたときに、同じことを思ってるなって感じました。今までのレコーディングでも、特にメンバー間でこうしようああしようと話し合うことはなかったんですけど、仕上がってみると、やっぱり感性が同じなんだなということが多いんです。今回もそんな感じで。ライヴでの身体の動きも、同じ瞬間に同じような表現でやっていて、ああ同じだなって嬉しくなっちゃいました。

-各々が歌詞を解釈して、ぶつけ合う感じなんですね。

菊地:今までのシングルでもそれぞれが作詞した曲があったんですけど、作詞をした人からの、"こう歌ってほしい"、"こう表現してほしい"というのは今までよりもメンバーに共有したところがありましたね。「下弦に舞い散る夜桜は、あなたを想い永遠を唄ウ。」では、儚く歌ってほしいとか。

アンズ:この部分は優しくとかね。歌パートに関しては結構注文を出したかもしれない。

Koyoka:プリプロで1回、それぞれが思い思いに歌ってものを聴いて、それでこうしてほしいというところがあればやってみる感じで。

アンズ:たしかに、ブレスの位置まで指示したのもあったかも(笑)。息づかいを入れたかったんですよね。

-そういった個々の想いやチャレンジも、新しさを生んでいますね。

サリ:振付でも新しいことをしていて。和の要素ということで、初めて扇子を使っているんです。他の曲は身体ひとつで表現するものなんですけど、プロデューサーに"この曲は、扇子を持って踊りたいんですよね"って言ったら、"俺もそう思っていた"と言ってくださったので。私は日本舞踊をちょっとやっていたのでそういう動きを入れようというのと、アンズがこだわって書いた歌詞に、振付でも寄り添いたくて。冒頭は桜が舞い散る儚さを表現した振付になっていますね。みんなに振りを教えるときも、"この部分では首のここの筋を見せて、目線はこっちで"みたいな感じで。扇子を持った動きって実は結構難しいんですけど、みんな練習をしてくれて、きれいにできるようになりましたね。

-ライヴでもいい変化が生まれそうです。そして疾走感のあるロック・チューン「Loudspeaker」の歌詞はKoyokaさん作です。

Koyoka:この曲は私がこれまで8bitBRAINで作詞してきた中で一番爽やかな曲なんです。アルバムの中にはいろんな曲がありますけど、その中でも一番爽やかなんですよね。歌詞としてはファンの方への感謝、こうしてアルバムってひとつの集大成ができた、ありがとうの気持ちだったり。あとはまだコロナ禍が続いていて、日々いろんな状況があって、急に何かが変わってしまうこともあるけれど、愛を持ってお互いにやっていこうねということを書きたくて。"言葉"をテーマにして、歌詞を書きました。

-ヴォーカルのエフェクト感も、あまり強くない感じがあって、よりキャッチーさがありますね。

Koyoka:聞きやすくなっているのはあると思いますね。あとは、今までと違って強い表現を入れずに、ふわっとした表現や言葉を選んでいるかなっていうのがあります。サビも、これまでは尖った言葉や強い言葉を使ったり、確信を突くような感じだったりが多かったんですけど、"溢れ出した言葉がいつだって「自分」を作って"とか、みんなに当てはまるような言葉を使って書いているので。そこがすっと耳に入りやすいのかなと思いました。あとは最初のほうにある、"出会えた日々が辿り着ける未来へ/今繋がってく"のところは、「UTA」(『Out of order』収録曲)というミドル・バラードで描いた歌詞から持ってきているんです。「UTA」もストレートな思いを綴った歌だったんですけど、アルバムということでこれまでの作品と関連しているもの、進んでいる流れが見えるものができたらというのはありました。

-アルバムへと進んできたからこそ、思いを繋げていこうと。

Koyoka:みんなのおかげでここまでこれたんだよってのが、表現できたらいいなというのはありましたね。

-「"Look at me"」は菊地さんの歌詞で、今の時代らしいSNSの話などが盛り込まれた、ポップでシニカルな曲です。

菊地:もともと承認欲求をテーマに書きたいなと思ったときに、浮かんだのがSNSで。でもきっとSNSも何年後、何十年後かには古いものになっているんじゃないかなって思うんです。mixiとか前略プロフィールとかも、あんなに流行っていたのに今や懐かしいものになっていて。きっとTwitterとかも将来そうなっていくんだろうなと思ったから、Twitterで使う"ハッシュタグ"や"いいね"っていうワードをあえて入れたいなと思って。私はKoyokaと逆で、今まで8bitBRAINの中では、どちらかというとライヴのラストにくるようなパーンと明るい曲とか、誰かのお誕生日ライヴとかで、思い切りかわいく騒ぐみたいな曲を担当することが多かったんですけど。今回初めてこんなシニカルな曲を書いたなっていう。

-曲が引き出した感じですかね。

菊地:今回は挑戦をしたかったんです。で、最初はシニカルに振り切って書いていたんですけど、曲的にはどちらかというと承認欲求がある側の子の視点が合うなと思ったので、もともとの要素も入れながら書き直して。今って鏡やカメラがないと女の子は生きていけないような時代になったじゃないですか。そういう"写真"や、"鏡"を入れながら、且つ同じワードでも違う意味が感じ取れたりするものにしました。着飾って良く見られようと思ってやっていることだけど、実はそれが誰かを傷つけているかもしれないよっていうのは、私自身今まで経験してきたことでもあるんです。承認欲求が強い人に対して、自分の言いたいことが言えなくなっていって、人に合わせなきゃいけないとか、自分をどんどん小さくしていってしまった経験も込めながら書いていたので。普段はポジティヴ人間なんですけど、作詞しているときは精神が、めちゃくちゃ病みました(笑)。

-音楽だからこそそういう毒もポップに昇華できましたね。

菊地:書き終えてスッキリしましたし、新しい音楽の楽しみ方を見いだしたなと思いました。

-でも改めて、SNSがある、誰もが発信できるって大変な時代を生きてますよね。

アンズ:めんどくさいことも多いですからね。

菊地:誰でも人気者になれちゃう気持ちにさせてしまう感じもありますよね。そのなかで本物ってどれだけあるんだろうみたいなところは、ずっと言いたかったことだったので。曝け出してみました。