INTERVIEW
YOU ME AT SIX
2021.01.18UPDATE
2021年01月号掲載
Member:Josh Franceschi(Vo)
Interviewer:山本 真由
前作『VI』(2018年)で、ダンス・ミュージックを取り入れたオシャレでポップなサウンドに進化したYOU ME AT SIX。かつてのポップ・パンク・キッズが、UKを代表するバンドのひとつとして普遍的なサウンドを手に入れたということで、前作は多くのリスナーから歓迎された。しかし、そんな彼らの冒険はまだまだ終わりではなかったのだ。どこまでも探求心を持って進み続ける彼らは、前作リリースから間もなく新曲作りに取り掛かった。そして、非日常的なタイのパタヤのスタジオにこもって前作とはまた方向性の違う、ハッピーではないダークでグルーヴィな新作『Suckapunch』を完成させたのだ。"音楽的リハビリ"とも表現するそのレコーディングや、今作に至る道程について、フロントマンのJosh Franceschiに語ってもらった。
いろんな変化やシフトは人生の一部で、成長していくなかで避けられない。このバンドの軌跡はその成長過程を記録した日記みたいな感じになっていると思う
-前作『VI』(2018年)のリリース後まもなく曲作りを始めていたそうですが、その間にCOVID-19という未知のウイルスによって世界は大きく変化しました。YOU ME AT SIXのメンバーの生活にはどのような変化がありましたか?
やっぱりつらい面はあるよね、ショーやツアーはもちろんできないし。一時期はスタジオで1ヶ所に集まることもままならなかったしね......メンタル面でもある意味試練になっているんだ。コロナが生活の大きな一部を占めるようになってしまって、バンドとしてファンとも会うことができないという日々に耐えているよ。僕にとってファンとのコネクションはとても大切なものだからね。大変ではあるけど、それでも、自分たちはいろんな面でラッキーだし、恵まれていると思うから、嫌なことにあまりとらわれすぎないようにしているんだ。僕たちよりずっと酷い状況の人たちもいるわけだからね。
-今作の内容や、スケジュールにも影響はありましたか?
実は、アルバムは2019年の10月に完全に(曲を)作り終わっていたんだ。
-そうなんですね。
録音したのは2019年の10月~11月。これはどっちにしろリモートだったけど、ミキシングも終わって、友達でもある担当者とメールをやりとりしていたよ。この前の夏にリリースするつもりで、もう少し前倒しにしようかという話は出たけど、ツアーができなくなるということが判明したから、立ち消えになった。プロモーションもできないのに、アルバムを出しても仕方ないからね。今はアナログ盤をどうするとか、販路をどうするとか、そういう問題は出ているけど......ほら、(イギリスは)またロックダウンになるから(※取材日は2020年11月上旬)。でも、概ねラッキーだよ。アルバムを出してもツアーができないとか、ツアーは出たけど途中で放り出して帰らないといけないとか、そういう事態にはならなかったわけだから。運が良かった点はいろいろあったよ。
-先ほど"スタジオで1ヶ所に集まること"について言及していましたが、このアルバムが完成してからも曲を書き続けているということでしょうか。
うん。いつもクリエイティヴでいられるように曲を書き続けているよ。クリエイティヴになれる機会はたくさんあるし、僕みたいにロンドンに住んでいると、素晴らしいソングライターにたくさん出会えるから、その利点を最大限に生かすようにして、スタジオにもできるだけ頻繁に入るようにしているんだ。そういう人たちと一緒に曲を書いたりもしているよ。何に使うかはまだわからないけど、ただ手持ち無沙汰に座っているのは我慢できないってことだけはわかっているんだ(笑)。こんな状況でも、アクティヴであり続けたい。何かせずにはいられないんだ。
-直接会える機会が減ったことで、アルバム制作に関して難しいと感じたことはありましたか? また、スムーズに作業を進めるために何か工夫したことなどあれば教えてください。
自分たちだけで曲を書いて、できたものを送り合うことが多いね。メールにmp3ファイルとか、作業中のものをつけて送るんだ。でも、それは前からやっていたことで。というのも僕は他のメンバーから見ると街の反対側に住んでいて、あまり家が近くないんだ。ここ3~4年はリモート作業が増えているね。
-では、コロナだからといってそんなに作業が変わったわけでもないんですね。いいことですね。
そうだね。
-前作『VI』では、ダンス・ミュージック的なアプローチを取り入れ、音楽性に大きな変化がありました。ある意味ターニング・ポイント的な作品だったかもしれませんが、バンド仲間や、ファンからはどういった反響がありましたか?
覚えている限りは評判が良かったね。まぁファンが他の曲よりこっちの曲が好きとか、そういうのはあったと思うけど、アルバムを出すときはそれがつきものだから。とても気に入ってこれからも僕たちについてきてくれると言ってくれたファンもいれば、新しい面を見て、あまり興味がなくなったというファンもいる。自然な流れだと思うから、あまり気にしないようにしているけどね。前作はイギリスでまたトップ10に入ることができて、世界中を回ったツアーも大成功だった。僕たちの新曲を披露するために旅ができたのは良かったね。僕たちが曲を書く理由の一部はそれだから。バンドを、世界を見る手段として使いたいんだ。でも、新曲がないとツアーに出ることは正当化できないだろう(笑)?
-その新しい路線を今回はさらに発展させたということで、後ほどいろいろ質問したいと思いますが、資料には"自分たちの心はまだロック・バンドだけど、今はダンスやR&Bが大好きだ"といったコメントが書かれていましたね。最近よく聴いている音楽はありますか? 今でもメタルや、ロックは聴いていますか?
もちろん今でもロック・ミュージックは聴いているよ。いいのはね。R&Bやヒップホップは昔から大好きだったけど、ここ数年まではあまりバンドに反映されていなかった。でも、メタルや、ロックや、パンクはずっと好きだね。僕の一部だから。ひとりの人間としても、アーティストとしても、基盤を作ってくれたんだ。友達にすごく才能のある人や、バンドが多いから、彼らが新曲を出すといつもワクワクするし必ずチェックするよ。最近は昔の音楽、子供の頃親や姉貴の影響で聴いていたあらゆる年代の曲をよく聴くようにもなった。今はロックだけじゃなく、素晴らしい音楽が世の中に溢れていると思うよ。ジャンルという概念もここ数年でがらりと変わった気がするし。昔はロックかそうじゃないか、パンクかそうじゃないか、ポップか......という感じだったけど、今は境界線を越えているものが多いね。
-自分たちの音楽以外で、ファンにも聴いてほしいお気に入りのアーティストを教えてください。
Frank Oceanとか......彼の大ファンなんだ。それからAMINEというすごくクールなアーティストがいてね。KENNYHOOPLAも。今人気上昇中の若手でとてもクールなんだ。あとはHOCKEY DADというバンド。他にもいくつかあるから、僕のSpotifyのプレイリストをチェックしてみて。僕が今何を聴いているかわかるよ。ユーザー名は"josh6"だから、見つけやすいと思う。
-日本のバンドはいかがでしょう。前作リリース時には、"日本のバンドのステージは素晴らしい"というコメントをしてくれましたね。そのときはBABYMETALや、ONE OK ROCKを挙げていましたが、最近日本のバンドで気になるバンドはいますか?
うん。BABYMETALはライヴ・パフォーマンスだけでなく、ミュージシャンとしても絶えず成長し続けているバンドのひとつだと思う。最近友人のBRING ME THE HORIZONと新曲を出したんだよね。
-あぁ、そうでしたね。
「Kingslayer Ft. BABYMETAL」という曲で、イケてるよ。それから去年の夏はCrossfaithとばったり会ったんだ。ルーマニアでフェス("Zaxidfest 2019")があったときにステージが一緒でね。彼らも素晴らしいバンドだね。日本の音楽は楽しめる点が本当にたくさんあると思うし、いつもインスタとかでチェックしているよ。
-ニュー・アルバムの内容に移りますが、今作はさらに大胆にダンス・ミュージック路線に舵を切る内容となりました。しかしながら、前作のポップな印象とは打って変わって、ダークなサウンドや、アグレッシヴな表現が多いように感じますが、どうしてこのような方向性になったのでしょうか?
今僕たちが人としてどんな状態かを洞察するような内容になっているからじゃないかな。『VI』を作ったときの僕たちは全員結構好調で、ポジティヴな音楽をよく聴いていたんだ。そんな心理状況が曲に表れていたんだと思う。『Suckapunch』での俺たちは人生の中でも過渡期にあるというか......その変化は求めて得たものもあればそうじゃなかったものもあって、失恋もあったりして......。
-あらら。
でも、そういうどん底で脆くなっていた状態から、アーティストとしてのベストな面を引き出すことができたと思う。......そんな状況を意識していたし、そんなメンバーたちの心理状況が音楽に表れているんだ。だから前よりヘヴィで、ダークで、インダストリアルなダンス・ミュージックになった。前作の「Back Again」みたいな曲は甘ったるい感じだけど、どうにもいい気分にはなれないメンバーが何人かいるわけだから、ああいう曲は書けないよね。これが今の僕たちの状態なんだと思う。個人的心境とグループとしての心境が、僕たちの音楽性や一緒にプレイすることと合わさった感じ。その結果がこれなんだ。
-失恋したメンバーがいたとのことでしたが、他にも何か悲しい思いをしたことがあったかもしれません。『Suckapunch』を作るプロセスが、セラピーやカタルシスを感じさせるものになった面はあるのでしょうか。ポジティヴなものを生み出すきっかけになったといいますか。
もちろん。僕たちはタイで過ごした時間を"音楽的リハビリ"と呼んでいるんだ。あれは自分たちのささやかなユートピアだった。世間から"アンプラグド"になって、その場所で過ごして曲を作ることだけに専念できたんだ。その様子はアルバムから感じ取ることができると思う。そういう経験が積み重なって、セラピーにもカタルシスにもなったと思うしね。曲を作るときっていうのは、ソングライターとして自分に正直になることが大切なんだ。時にはあまり気分が良くない領域に踏み込むことも大事だし、そこからベストな曲が結果として生まれることもあると思う。今回はそういうことが多かったし、バンドは自分の人生の中で常に何かを探索するための手段でもあるんだ。活動のあらゆる瞬間からポジティヴなものを引き出したり、生み出したりしていきたいね。これはそういうことができたアルバムなんだ。
-ある意味今のあなた方を捉えたスナップ写真のような作品なんですね。10代のときから活動していたYOU ME AT SIXのメンバーも、今作の制作過程で全員30歳を超えられたようですね。10代や、20代の若い頃とは、周囲の扱いや社会的な見られ方も変わってくるとは思いますが、心境の変化や音楽活動への取り組み方に変化はありましたか?
100パーセント変わったと思うね。YOU ME AT SIXとしての道を歩み始めた頃、メンバーの中には16歳とか、文字通りキッズだったやつもいたし。大人になった今、一緒に音楽をやりながら成長してきて、お互い青春を経て大人の男になった過程を見てきて、いろんなことがあったなと思うよ。日本に行けることになるなんて最初は考えもしなかったし。初めて行ったとき僕は19歳だったんだ。今の地位にいられることはラッキーだと思う。もちろんいろんな変化やシフトはあったけど、そういうのは人生の一部というか、成長していくなかで避けられないものだからね。このバンドの軌跡はその成長過程を記録した日記みたいな感じになっていると思う。そういう思いもあって、昔の曲を聴くのが好きなんだ。新しい曲を書くときはいつも昔の曲を聴くようにしているんだ。これからどこに行くのかを考えるときに、今までどんな道を辿ってきたのかを認識しておくのは大事だと思うからね。