INTERVIEW
FEVER 333
2021.01.27UPDATE
2021年02月号掲載
Member:Jason Aalon Butler(Vo)
Interviewer:菅谷 透 Interview interpreted and translated by Ginger Kunita
人生で経験した長年の苦痛やトラウマ、我慢や涙も全部書き綴りたかった
-表題曲「Wrong Generation」では、Travis BarkerがWU-TANG CLANのRZAとRAEKWON、そしてTom Morello(RAGE AGAINST THE MACHINE/Gt)とコラボレーションした楽曲「Carry It」から、"My UZI weigh a ton, son, carry it(俺のマシンガンは1トンある、持てよ)"というフレーズをサンプリングしていますね。
そうそう、これはTravisが提案したんだ。"ちょっと前にRZAらとやった曲のサンプルを入れよう"って。あれはPUBLIC ENEMYもやった曲だった(※PUBLIC ENEMYの楽曲「Miuzi Weighs A Ton」に由来する)し。Travisがサンプルを持ってきて、それをベースに曲を作ったんだ。ここで強調しておきたいんだけど、俺はPUBLIC ENEMYとWU-TANG(WU-TANG CLAN)の大大大ファンだから、その提案にすぐ食いついたし、楽曲で彼らへのトリビュートもできたような気分でとても光栄だったよ。
-「Last Time」は他の収録曲とは毛色の異なる、胸が締めつけられるようなピアノ・バラードです。この楽曲についても詳しくうかがえますか?
あの曲はこうした状況に疲れた、みんなの疲労感を表すものだった。俺だけでなく、周りのみんな、そして何よりもアメリカにいる有色人種のみんながずっと経験してきた負担や複雑さだ。もううんざりなんだって伝えたかったんだよ。みんなは"作り話だ"、"考えすぎだ"、"不均衡などない"とか言うけど、白人社会で実際に差別されたり、目に見えた酷い扱いをされたりすることを経験していると、本当につらい。この曲は俺たちが感じている極度の疲労を物語っているよ。
-本編のラスト・トラック「Supremacy」では、BLONDIEの「Rapture」/KRS-ONEの「Step Into A World (Rapture's Delight)」のメロディを引用しています。
これもまた、俺はKRS-ONEをはじめとしたヒップホップの大ファンだからね。BLONDIEもすごく好きなんだ。この曲は友達のNicholas "RAS" Furlongと一緒に作ったもので、彼があの曲を引用しようと提案してきたから、"かっこいいね、やろうよ"って答えた。白人優越主義(Supremacy)が主体になっている多くの社会には、問題も分断も多いし、人々が落ちてしまうような亀裂が生じると思う。もちろんメロディも大切だけど、KRS(KRS-ONE)自身も啓蒙的なラッパーだから俺も影響を受けたし、BLONDIEは当時のラップ・ミュージックの先駆者だったからね。音楽業界で女性としてサヴァイヴしてきたこともそうだし、パンク・ロックから音楽を始めた俺にとっては、彼女(Debbie Harry/Vo)のあり方そのものにとてもインスパイアされたんだ。この曲を引用することは大きな意味があったし、好きなアーティストたちに敬意を表すようなかっこいい楽曲を作れたら最高だと思って、意欲的に進めたよ。
-また、「Supremacy」は"When time turns into history / The story that we'll tell will be / When we were marching for our lives / You stood on the other side(時が歴史に変わるとき/俺たちが語る物語は/俺たちが命を賭けて行進していたとき/お前はその反対側に立っていた)"という、ある意味ではリスナーを突き放すような歌詞で締めくくられますが、どうしてこの終わり方にしたのでしょうか?
この言葉は今でも他人を傷つけながら、自分の利益を正当化しようとしている人に向けているんだ。自分が他人に損害を与え、問題を抱えていることを知っているのに、自分の行動を正当化しようとする人たちは、誰でもその行動を永続させ、そういったポリシーを永続させ、それらの信念や視点、プラットフォームを永続させようとする。それを続けていけば、やはり大きなギャップが生まれるし、より多くの人がそういった考えに陥っていくし、最終的には俺たちもそれを甘んじて受け入れないといけなくなるからね。でも、俺たちや他の人々へ提供することができた安全性や利益を無視し、または切り捨てる、こういったタイプの人たちがいつか罰せられるときがくると思うんだ。少なくとも、そう認識されると思う。間違ったことをした人がいて、それを少しでも改善しようとした人がいるわけだからね。この言葉は、間違っているのに自分のことしか考えない人たちに向けて締めくくりたかったんだ。
-日本で先行発売されるCDにはボーナス・トラックとして、大統領選挙後の24時間で、制作からレコーディングまでが行われたという楽曲「Once Again」が収録されています。本編に勝るとも劣らないヘヴィなサウンドに驚きましたが、この曲の内容についてもうかがえますか?
そうそう、大統領選挙に問題がありすぎると思ってね。問題を理解しようとたくさんの議論がされているけど、これは共和党、民主党、リバタリアン党、無所属――なんと呼ばれているかにかかわらず、人々に対して保たれている力の均衡なんだ。まだ俺たちを支配する階層のシステムの手中にあるわけで、みんなには暢気なお祝いごとに巻き込まれたらいけないってわかってほしい。ひとつのことを変えて、他のすべてを水に流そうとしたって、社会としてかなり困難で危険な立場に戻ってしまうだけだよ。この曲は実際この目で見たやりとりの中で、多くの分断が生じた場面にインスパイアされてできたんだ。いつも曲作りを一緒にしている仲間のZach Jonesと1日で完成させた曲だよ。
-またCDには「Bite Back」、「Wrong Generation」のライヴ音源も収録されていますが、無観客ライヴだからか、歓声がまったくないのが印象的です。これはバーチャル・コンサート・ツアーからの音源でしょうか?
あぁ、そうそう。あれはバーチャル・ライヴからの音源だ。
-バーチャル・コンサート・ツアー"WORLD TOUR FOR THE WRONG GENERATION"は10月に6公演が行われました。オンラインでの世界各地域に向けたライヴ配信という試みでしたが、実際に行ってみていかがでしたか? また、ファンからはどのようなリアクションがありましたか?
あれは最高だったよ。すごく多くの人が観てくれたし、みんな昔のようなライヴ・デモンストレーションを体験しようとしてくれていたね。みんなひとつになって、会話をしながら自宅で楽しんでくれた。踊ったり、パーティーしたり、安全に昔のノーマルだった状況に戻ろうとしていたみたいだった。だからそれを見ることができたのは最高に嬉しかったし、みんなの愛情を感じたよ。俺たちのメッセージはアクティヴでインパクトがあるけど、それにファンがすぐアクセスできるように頑張り続けたいね。
-ところで、昨年10月にはLINKIN PARKの1stアルバム『Hybrid Theory』の20周年記念として、FEVER 333による「In The End」のカバーがSpotify限定で配信されました。同曲をカバーしてみていかがでしたか?
最高だった。彼らはロックとラップのハイブリッド・ミュージックのパイオニアだから、そういった先駆者たちに敬意を表す機会を与えてくれたと思っている。とてもいい気分だったよ。
-依然として困難な状況ではありますが、今後の活動予定を教えていただけますか?
もう1年くらいずっと曲を作っているから、FEVER 333としてもう1枚アルバムをリリースしたいと思っているよ。ツアーがまだできない間は、ファンと繋がれる別の方法を追求したいね。それと、誰でも関われる、誰でも参加できる場所を提供して、俺にとってすごく大事な話題についてあれこれ意見交換したいと思っているんだ。例えば人種的格差、文化的格差といった不協和はアメリカだけでなく、世界中に浸透していて、いろんな人々が経験しているわけだから、それについてとかね。それから、教養や心の安らぎのために人々が平和な議論に参加して、そしてもちろん学んでいくためのスペースが提供できたらいいなと思っている。
-最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。
もちろんだよ! 芸術とエネルギーや、人々に人間としての力をもたらすという考え方は国境や海を越えて伝えたいんだ。俺たちはまったく異なる文化から来ているけど、このバンドに対する本物で有機的な愛を一貫して示してくれた日本のファンに、心から感謝しているよ。日本のファンは、アートが本当の変化のための最も重要なツールのひとつであることを教えてくれたから、それに感謝したいね。