MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

DARK TRANQUILLITY

2020.12.17UPDATE

2020年12月号掲載

DARK TRANQUILLITY

Member:Mikael Stanne(Vo)

Interviewer:菅谷 透

-先ほどNiklasが手掛けたアートワークの話が出ましたが、今までのディスコグラフィにはない暖かな色彩が新鮮です。どのようにして制作されたのでしょうか?

そう、暖かい色彩を使いたかったんだ。Niklasも"『Atoma』と違う感じにしたいね"と言ってくれた。俺も、他の人たちがやっていたのとは違う、もっとアナログで手作り感のあるものが欲しかったんだ。デジタルでキラキラしたものじゃなくてね。Niklasにも手描きを増やしてもらったんだ。デジタル画面での手描きだけどね。合成物というよりもお絵かきという感じかな。これ以上ないくらいハッピーだよ。どんなものにすべきか、何を表すべきかというところですごく協力し合ったしね。カラー・スキーム(色彩設計)も理にかなったものになっていると思う。これまでの他の作品とは違う色合いを使いながら、他のものと同じNiklasのスタイルが表れているからね。

-アルバムのミキシングとマスタリングはJens Bogrenが手掛けています。Jensがアルバムに関与するのは『Construct』(2013年リリースの10thアルバム)、『Atoma』と3作連続ですが、彼を起用した意図をうかがえますか? 個人的には、Jensが関わって以降サウンドにいっそう深みが増したように思っています。

そうだね。彼は"わかってくれる人"なんだ。俺たちの音楽を熟知してくれているからね。『Construct』で初めて彼と組んだときに、彼が俺たちの音楽のバランスをいかに理解してくれているかがわかったんだ。ヘヴィでギター重視でありつつ、キーボードで繊細な部分を表現していたりするところをね。プロデューサー役をやってくれているMartin(Brandström/Key/Syn)も彼の理解をありがたく思っていて、この音の一部を担ってほしいと考えているんだ。他人にミキシングを任せるとメタルやデス・メタル的な面にばかりフォーカスされてしまうことがあるけど、そうすると音の一体化が難しくなる。Jensはその一体化をちゃんとやってくれているし、彼のミキシングというか、音楽全体に対するアプローチが素晴らしいね。彼のミキシングはどれも大好きだよ。俺にとってあまりひいきでないバンドのものでも、彼がミックスすると聴きたくなるし、"すごい、素晴らしい"と思うんだ。だから彼が手掛けてくれることに意味があると思うし、素晴らしい仕事をしてくれたと思う。

-Jens以外には考えられなかったんですね。

今回はそうだったね。彼に時間がないんじゃないかと心配したけど、今はみんな家にいるから(笑)、スケジュールもうまくいったよ。

-レコーディングはギタリストふたりの加入発表と同じく、今年3月末に開始されていますね。COVID-19が世界的に拡大していた時期でしたが、制作を行ううえで影響はありましたか?

制限がかかったとか、そういうことはなかったね。

-スウェーデンはたしか、ロックダウンなどはなかったんですよね。

なかったね。スウェーデンのコロナ対策は他の国と全然違っているんだ。自分としてはいいと思うけど、かといって果たして正しいやり方なのかはわからないね......(苦笑)。マスクの着用義務もないし、ロックダウンもシャットダウンも行っていない。イベント会場は閉まっているし、レストランに入れるのは何人までとか、そういうルールはあるけどね。それでも自由に出かけることはできるし、店も全部やっている。とにかく自分自身と他人を大事にしなさい、というスタンスだね。みんながガイドラインを守れば、少なくともやってはいけるんじゃないかな。スタジオはここイェーテボリにあって、メンバーの多くはその徒歩圏内に住んでいるんだ。俺の場合は徒歩15分。だから制作プロセスの間はずっと家かスタジオのどちらかにいたよ(笑)。JohanとChrisの場合、Chrisはニューヨークに住んでいてJohanはマルメに住んでいるからイェーテボリではホテルに泊まっていたけど、貸し切り状態だったのが良かったね。そんな感じだったから、作業に集中することができてクールだったよ。俺たちとしては夏までにアルバムを出して、そのあとフェスに出て新曲をやるという計画だった。それがなくなってしまったから、そうか、じゃあデッドラインやリリースを少し先送りにすることができるな、スタジオでもう少し長く作業できるなと考えたんだ。それでアメリカ・ツアーをやろうとしていた秋まで作業を延ばしたんだけど、それもなくなったから、さらに数週間かけることができた。曲はレコーディングを始める前にすべて作り終わっていたけど、ヴァイブや雰囲気、自分たちが隔離生活の中で感じたこと――俺たちの場合は意図的に隔離生活を送ったわけだけど(笑)――はとても不思議な感じだった。この状態については常にメンバーで話し合っていたし、俺たち自身も影響を受けたね。このアルバムが出てもツアーはできないわけだから、これまでとは違った形で作品にフォーカスしたほうがいいんじゃないかとか。完成した今は、普段だったら"さぁ、ツアーに出てみんなの前でスクリームするぞ"って態勢になっているけど、今回はじっくり聴く態勢になっている感じかな。去年レコーディングを終えていたら、全然違った音になっていただろうと思うね。もっとも、無意識下ではどんな感じだったかわからないけど。

-ここからは楽曲についてうかがいます。前回と違うスタンスで、という話でしたが、本作はアグレッシヴなメロデスとアトモスフェリックなキーボードが調和した、前作『Atoma』の延長線上にある作風だと感じました。

それはそうだろうね。うん。『Atoma』に磨きをかけたような感じを目指していたんだ。

-というのも、Chris、Johanの加入により、いわゆるシュレッドの要素もこれまでより多く感じられますが、全体としてはDARK TRANQUILLITYらしいメロディを重視したスタイルが保たれていて、バランス良く融合されているように思いまして。新ギター・チームに共有した約束事などはありますか? 彼らの音楽性とバンドの音楽性のブレンド具合などは話し合いましたか。

もちろん! まずは俺とAnders(Jivarp/Dr)とMartinの3人だけで話し合ったんだ。JivarpもMartinもたくさん曲を書いたからね。それから他のメンバーに参加してもらって意見を聞いた。俺たちのサウンドを維持することはもちろん大事だったし、30年間培ってきたものをなんらかの形で保つことも大事だったけど、同時にこのすごいミュージシャンふたりのテクニックやスキル、スタイルを取り入れることも大事だったからね。時には"いいね、いいね、でも......"ということもあったよ。"そこまでテクニカルなことをやらなくていいから"みたいな。それよりメロディやエモーションにもう少しフォーカスしよう、という感じだった。ふたりともメロディックでソウルフルでエモーショナルなギタリストだから。あとは着地点を見つけるだけだった。Johanはそつなくやれたんじゃないかな。ソロの部分を考えたときも山ほどアイディアを出してくれたよ。ものすごくメロディックなやつを弾いたかと思えば、突然フル・シュレッドなモードになって、おいおいどうしたんだ? なんて思ったときもあったけど(笑)。"あ、(メロディックなフレーズの)インスピレーションがネタ切れしたから、ちょっと速く弾いてみようと思って"なんて言われたよ(笑)。"そ、そうか。まぁ、それはやめとこう"と言ったけどね(笑)。

-(笑)

でも俺たちにとっては重要なことだったんだ。彼らにあまり制限を与えないようにしつつ、俺たちらしさを維持するというのはなかなか難しかったよ。

-なるほど。今回はパーフェクトなバランスに着地できたのではないでしょうか。

そうだね、パーフェクトに機能したと思うよ。でも将来的にはふたりにももっと曲作りに携わってもらうつもりだし、いろんな部分を引き出したいと思っているよ。

-ChrisとJohanは、今回どの程度作曲に関与したのでしょうか?

Chrisはアイディアや全体のムードに意見を出してくれた。ソロやリードもね。Johanはすべてをギターで解釈する役が多かったな。ソングライティングにも3曲参加しているよ。俺たちだけだったら昔ながらのものに留まってしまうところを違うものにしてくれたんだ。お互いにとってチャレンジングだったし、ギヴ&テイクがうまくできて、新しい全体像ができたと思う。

-ChrisとJohanはどちらも名手ですが、リード・ギター、リズム・ギターの役割分担は決められているのでしょうか?

役割分担というか、フィフティ・フィフティだね。"俺はこっちのリードをやるからお前はそっちをやっていいよ"みたいな。一緒に同じところを弾く場面もあるけど、たいていは曲の中で役割分担をしているよ。ふたりともリード・ギタリストとしての素養があるからね。

-ご自身のヴォーカルについてはいかがでしょう? 今作でもグロウル/クリーンが効果的に使いわけられていますが、どのような構成を意識しましたか?

いろいろなエモーションを表現しようと思っていたよ。曲を書き始めて、デモを作っていろいろ試していたときに、全部のアイディアにデモを作って、どれがうまくいくかやってみようという話になったんだ。それで俺は、ヴォーカルのメロディをたくさん書いた。その中からしっくりくるものを選んで、時にはそのメロディを中心に据えて残りを書いたんだよ。そういうプロセスは普段とはかなり違うものだったね。通常は曲ができたら俺がヴォーカルをやって、何かアイディアが出てきたらレコーディングの最後の段階でつけ加える、みたいな感じなんだ。今回はしっくりくるものができるまでにもっとフォーカスして作り込んで、早いうちからバランスを見いだした感じだね。特にJivarpは曲を書いたときにヴォーカルのメロディも思い浮かんでたから、俺がそれを理解して発展させていったんだ。