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INTERVIEW

DARK TRANQUILLITY

2020.12.17UPDATE

2020年12月号掲載

DARK TRANQUILLITY

Member:Mikael Stanne(Vo)

Interviewer:菅谷 透


書いた歌詞の多くが、自分でも予想しなかったような意味合いを持つようになった


前身バンドを含めて30年以上のキャリアを持つ、スウェーデンが誇るメロディック・デス・メタルの重鎮 DARK TRANQUILLITYが4年ぶり12枚目となるアルバム『Moment』を完成させた。オリジナル・メンバーであるギタリストのMartin Henrikssonが2016年に、Niklas Sundinが2020年3月に脱退し、新たなギター・チームに元ARCH ENEMYのChristopher Amott、ANDROMEDA/NONEXISTなどで活動するJohan Reinholdzを迎えた今作は、間違いなくバンドとしてひとつの転機となる作品と言えるだろう。新メンバー加入の経緯やアルバムについて、フロントマンのMikael Stanneに話を訊いた。

-激ロックのインタビューとしては、2010年の9thアルバム『We Are The Void』リリース時以来約10年ぶりとなります。その間バンドには様々な変化がありましたが、今回のアルバムにも大きく影響する部分として、オリジナル・メンバーであるギタリストのMartin Henrikssonが2016年に、Niklas Sundinが今年2020年3月にバンドを離れました。彼らの離脱をどのように受け止めましたか?

Henrikssonの脱退はショックというわけではないけど、今でも寂しさはあるね。するだろうとはわかっていたけど、いざとなるとやっぱり。ツアーや作曲活動を続けるための原動力を失ってしまったというのが悲しかった。でも彼は昔からメンバーの中でも一番マメだったから、スタジオ・ワークだけじゃなくて、ツアーやショーのブッキングも担当してくれていたんだ。実務的なところをすべてね。それが第一になってしまって、その次にギターで、"あぁ、それもやらなきゃね"というようになって、それが問題になってしまった。でもクールな話があって、彼は今もバンドのために実務をやってくれているんだ。今はフルタイムで、マネージャーとしてすべての面倒を見てくれている。

-それはいい話ですね。バンドのことを一番よくわかっているでしょうし。

もちろんさ。今はブッキングとか、実務的なことやお金絡みのことを全部引き受けてくれているよ。俺に言わせれば"退屈なことを全部肩代わりしてくれている"という感じだね(笑)。

-Niklasも別の形で携わってくれているそうなので後ほどうかがいますが、今でもふたりと関わりがあるのはいいですね。

そうなんだよ!

-その一方で、2017年からライヴ・メンバーとして参加していたChristopher Amott(ex-ARCH ENEMY/ex-ARMAGEDDON)、Johan Reinholdz(ANDROMEDA/NONEXIST etc.)が新しいギター・チームとして加入しました。まず、彼らがサポートとして参加するきっかけはなんだったのでしょうか?

まずNiklasの話になるけど、彼は『Atoma』(2016年リリースの11thアルバム)のときにツアー活動をしないことにしたんだ。家族と過ごしたいからってことでね。それは理解できるし、俺たちも彼の決断を支持した。そのときNiklasが自分の代役として推薦したのがJohanだったんだ。NiklasはJohanのアルバムのアートワークを担当したことがあって、彼が素晴らしいやつだと知っていた。Johanはここイェーテボリから車で数時間のマルメ出身で、連絡してみたら来てくれたんだ。それからChris(Christopher)は、ARCH ENEMYをやめたと聞いたときから目をつけていた。フリーになってニューヨークに住んでいたから、『Atoma』のツアーで向こうに行ったときに"ヨーロッパで一緒に夏のツアーに出ないか?"と訊いたんだ。そうしたら、超乗り気になってくれた。そこから始まったんだ。一緒にリハーサルをしたんだけど、まさにパーフェクトで最初からしっくりきたね。ふたりともしっかり準備をして臨んでくれたし、スキルも俺たちに馴染みのあるレベルを超えていた。つまり、俺たちもそれに見合うように頑張らないといけなかったってことなんだけど(笑)。歌もプレイももっとうまくならないといけなかったんだ。――とまぁそんな感じで、ふたりが参加することになった。彼らには"とりあえず今だけ参加して、合うかどうか見極めてくれ。俺たちはもちろん合うと思っているよ。ツアーごとに関係を更新していこう"と言っておいた。お互いプレッシャーになるのは嫌だし、まずはやってみてどんな感じになるのか見てみたかったんだ。その結果、最高にファンタスティックな手応えを得ることができた。問題なんてまったくなかったよ。それで去年の初めにツアーが終わり、"よし、じゃあ新作の曲を書き始めよう"という話になって、"どうだい? 正式メンバーになる気はあるか?"と訊いたらふたりとも"ああ、もちろんさ"と言ってくれた。そうやって始まったんだ(笑)。すごく楽で自然な流れだったよ。今じゃ15年くらい一緒にやっているような気がするね(笑)。

-パートタイムからフルタイムまでの転換がスムーズで、音楽的にもぴったり合っていると思います。素晴らしいことですね。

そうなんだよ。音楽的な育ちを共有しているというのも大きかったね。似たようなメタルを聴いて育っているし、歳もだいたい同じくらいだしね。共通点が多いから暗黙の了解的なところが多いんだ。だから一緒にいやすいし、音楽の話もしやすいし、これ以上ハッピーなことはないよ。

-ここからはそんな現ラインナップで初めての作品となる、ニュー・アルバム『Moment』についてうかがいます。今回もシンプルなタイトルのアルバムですね。1単語で完結するアルバム名は今作で12作中8作目になりますが――

そうそう、短いのが好きなんだよね(笑)。

-"Moment"というタイトルには瞬間、今、力学における力の能率など様々な意味がありますが、この単語を名付けたのはなぜですか?

もともとは目安として付けていた仮のタイトルだったんだ。曲を書きながらそれらを繋げるヒントというか、全体をまとめたり、共通のスタート地点になったりするような言葉としてね。それに、Niklasがジャケットのアートワークをデザインするときに参照できる言葉が欲しかったというのもあったんだ。"こういうことを俺は考えている、具体的にはまだわからないけれど"ということでね。過去が未来と出逢う場所、そこに自分たちは何を持っていくのか、どんな経験や教育、知識を持っていくのか、そしてそれらが、前進していく俺たちにどんなヒントを与えてくれるのか。その"Moment"では何もかも変わってしまうかもしれないし、同じままかもしれない。何が起こるかによって、新しい可能性やアイディアが入り込む余地があるかもしれない。そんな感じだね。興味深い言葉だと思ったし、間違った方向に向かっている世の中に対する俺の視点にも通じるものがあると思ったんだ。もちろん、自分が不満や怒りを感じたことについてできるだけ書くようにしているよ。書いたりスクリームしたりすることによって(笑)、理解しようとしているんだ。アルバムの曲はすべて去年書いたものだった。ところが今年の初めにパンデミックが起こって、"あれ、新曲が違う意味を帯びたものになり始めているぞ"と気づいたんだ。というのも、人生の中で不意に訪れる物事への対処やアプローチの仕方についての曲たちだからね。パンデミックは間違いなく想定外で不思議なことだし、誰にとっても命を脅かすものだ。書いた歌詞の多くが、自分でも予想しなかったような意味合いを持つようになったよ。それによってタイトルがいっそう痛烈なものになって、自分が思ったよりもずっと意味のあるものになったんだ。

-パンデミックの前に書かれた曲たちということですが、こういうことになっていっそう時代性を帯びた気がしますね。"どうしてこうなるとわかってたんだろう?"と思ってしまうような。

そうだよね。予測できてればよかったんだけど(笑)。自分の中で一本筋が通っていることをシェアするとそうなるのかもしれないな。ともあれ、今起こっていることは人間のワーストな部分とベストな部分を両方引き出していると思う。今は誰もがすべての変化に直面していて、今まであって当たり前だと思っていたことや享受してきた自由の多くがなくなってしまった、その状態と付き合わなければならなくなったからね。簡単なことじゃないんだ。パーフェクトに対処している人もいるけど、まったく受け付けられなくて、新しいルールを守ることを拒否している人たちもいる。自己陶酔的なメンタリティというか、"俺のほうがよく知っている。俺が心配することはない。他人事だ"なんてエゴイスティックなことを考えている人たちだね。そういう感じの人たちについてもたくさん書いたし、今は現実にそういう人たちがあらゆるところに出てきているんだ。

-今おっしゃっていたようなことが、アルバム全体に設けたテーマという感じでしょうか。

そうだね。俺自身がことあるごとに立ち戻っているテーマでもあるんだ。何が俺たちを前進させるのか、モチベーションになるのは何か、そして人間がいかにミスリードされやすいものなのかということだね。特定の主義、信条、政治的思想......人に執着心を与えて、他のことを一切考えられなくさせてしまうのはなんなのか。人間というのは知っていることよりも、信じていることに惹かれやすいものだと思うからね。それは、真実というものが時としてすごく扱いづらいものだからだと思うんだ。真実は掴むのも、完全に理解するのも難しい。だからこそ信条や宗教というものが存在するんだと思う。人間という存在に意味なんてない、という真実を掴むことが無理だからだろうね(笑)。人間は無意味な取るに足らない地球上の生き物なんだ。もちろんそこには安心感があるし、それは理解できる。でも、だからといって信条や宗教だけにしがみつく必要はないと思う。俺にとってはね。――今話したようなことは社会生活のいろんな場面で見ることができるから、俺はそれを描こうとしているんだ。