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INTERVIEW

妖精帝國

2020.03.25UPDATE

2020年04月号掲載

妖精帝國

Member:終身独裁官ゆい(Vo) XiVa伍長(Gt) ryöga伍長(Gt) Nanami准尉(Ba) Gight軍曹(Dr)

サウンド・プロデューサー:橘 尭葉大尉

Interviewer:杉江 由紀

妖精帝國、ここに復活! 昨年1月にXiVa伍長、さらに6月にはryöga伍長を新隊員として迎えたうえで、始動当初から長らく前線に立ってきた橘 尭葉大尉が、楽曲制作やプロデュースなどの後方支援に回ることとなった妖精帝國。このたび発表したアルバム『the age of villains』は、4年半ぶりにして新体制初の大作へと仕上がった。自ら"villains"と名乗るだけあって、この中で繰り広げられているのは蠱惑的なほど甘く美しくも、時に残酷で陰のある暗黒幻想世界にほかならない。終身独裁官ゆいいわく今作は"過去最高の出来と言われた前作を凌ぐ逸品"とのことだ。妖精帝國の生み出すヘヴィにして妖しき世界へようこそ。


隊員たちに"この声の特性がより生きるような曲作りをしていきたい"と伝えた


-昨年1月にXiVa伍長、さらに6月にはryöga伍長が新隊員として加入となり、同時に始動当初から長らく前線に立たれてきた橘大尉が、楽曲制作やプロデュースなどの後方支援に回ることとなった妖精帝國にとって、今作『the age of villains』は4年半ぶりのアルバムであると同時に、新体制初の音源ともなっております。きっといろいろな意味で、今回は多くの新たな要素が音に反映されていくことになったのではありませんか?

ゆい:うむ、たしかにそうだな。前作『SHADOW CORPS[e]』(2015年リリースの6thアルバム)のときとは体制が違ったこともあり、今回は気持ちの面からして、新しいことをいろいろやっていきたいという姿勢がまずあったのは間違いない。例えば、もともと妖精帝國と言えば、ヘヴィ・メタルやゴシック・メタル的なサウンドが主軸となってきてはいるものの、一方ではあの音像の中だと、私の声が"馴染んでいないように聴こえる"という意見も世間で出ていて......もちろん、そのミスマッチ感が"妖精帝國らしくて好きだ"という声がたくさんあるのもわかってはいる。ただ、今回はアニメ業界寄りのリスナーだけではなく、メタル・ファンたちのこともきっちりと納得させたい! という思いを持ちながら、"バンドの音とヴォーカルの馴染み"という部分を、より強化していくことになったと言っていいだろう。それゆえに、私からも隊員たちに、"この声の特性がより生きるような曲作りをしていきたい"とあらかじめ明確に伝えたのだ。

-なるほど。では、サウンド・プロデューサーである橘大尉からしてみると、ゆい様の声を最大限に生かすためにとった方法論とはどんなものだったのでしょう?

橘:そもそも、彼女が歌えばすべては妖精帝國の音楽として成立するんですよ。つまり、方法論の違いとしては、前が音と歌とのギャップがあるところに面白さがあったんだとすると、今回は新しく入ったXiVa伍長やryöga伍長の作る曲たちが増えたこともあって、音も歌も共にこれまで以上の強さを持ったものになっていったということですね。プロデューサーとしては今作の場合そこが非常にうまくマッチしたと感じています。

-なお、今作においては楽器隊のみなさま全員が作曲を手掛けていらっしゃいますので、ここからは個々の見地から"ゆい様の魅力的な声を生かすにあたり、ご自身がコンポーザーとしてこだわられたこと"を教えてください。

XiVa:僕は今回「獄ノ幻」と「Phantom terror」を作っていて、最後に入っている「葬送フリヰジアン」に関してはアレンジをさせていただいているんですが、全般的に意識していたのはメタルコアのエッセンスを入れていきたいなということでした。パワーがありつつも、ドラマチック且つメロディアスな音というのが、ゆい様の声に合うだろうなと感じていたからです。結果として、その狙いは当たりましたね。

ryöga:僕が書いたのは「Autoscopy」、「IRON ROSE」、「Hell in glass」なんですが、妖精帝國の音楽に対しては、入隊前からどの曲も"普通だったらそうはいかないよね"っていうメロディ展開や、突き詰め方をしている印象が強かったので、その部分はしっかりと継承しつつ、自分の色も出していけるようにどの曲も作っていくようにしました。特に、「Autoscopy」はヴォーカルのメロディ・ラインにすごく突っ込んであります。以前の妖精帝國だったらたぶんこれは採用していなかったであろう、ゆい様の歪んだ声もあえて組み込んでいくことで、曲にも歌にもパワー感を持たせたかったんですよ。すでに試聴動画を見てくれた臣民(ファン)の方々から高評価をいただいているので、そこは思い切ってトライしてみて良かったなと改めて感じているところですね。

ゆい:やはり私としても作曲陣にお願いをするだけではなく、自分のヴォーカル・ワークでも今までとは違った、より幅広い表現をしていきたかったからな。以前であれば、"これだと声がザラついて、汚く聴こえてしまうかもしれない"と切り捨ててしまっていたような歌い方や、ここまでが限界なのでは? とリミッターをかけていた悲痛すぎるような声の出し方といった、言わば未知の領域まで踏み込むことで、自分自身の枠を大きく超えることができたように思う。

-5人の作曲者が織りなすそれぞれのカラーを、ゆい様がより色鮮やかに歌い上げていらっしゃることが聴いているとよくわかりますものね。中でも、「Hell in glass」はミュージカル的な雰囲気までもが漂っていて、非常に興味深い仕上がりだと感じます。

ryöga:原曲のイメージはもっとヘヴィでドロドロしていたんですよ。でも、そこにゆい様の仮歌が入った段階で僕の想像を遥かに超える感動的なものになったので、この曲はそこから音もさらに突き詰めていって。僕はギター・ソロでも頑張ったつもりだったんですが、最後にゆい様の本番の歌が入ったら瞬く間にソロが食われてしまいました(笑)。

ゆい:「Hell in glass」に関しては、曲をデモで聴いた段階から、私の頭の中で魂を持った人形をモチーフとした物語がどんどん広がっていったので、歌うときにも、かなり深く感情移入できたというのが大きかった気がする。


イカれてるとか、狂ってるとか、最高だな(笑)


-感情移入と言えば、Nanami准尉の作られている「濫觴永遠」には、セリフのようなものが入っているくだりがありますね。

Nanami:曲を作っていた当初からそこは入れたかった部分なんですよ。これまでにも各アルバムの中に1曲くらいはたいていそういった曲が入っていたんですが、この曲でもゆい様の持っている表現力を発揮していただくことにしました。

-Nanami准尉は、「濫觴永遠」の他にも「Paradiso≒Inferno」を作られていらっしゃいますが、こちらはこちらでスケール感のある楽曲に仕上がっております。

Nanami:妖精帝國では以前からクラシカルな要素やクワイアを使うことが多かったんですけれども、今回はそういった部分を前よりも増やしつつ、モダンでヘヴィな部分というのもより強化したかったので、曲作りのときにはそこも意識していましたね。あと「Paradiso≒Inferno」については、中東系の異国感みたいなものも少し醸し出していくようにしました。こうしたアプローチは今後もまた取り入れていきたいところですね。

-Gight軍曹は今作におけるイントロダクション的な面持ちとなっている、1曲目の「A Treatise of Villainy: The Seventy-Two Villainous Truths (And One Blasphemy)」、熾烈なるアグレッシヴさとトリッキーなフレージングが炸裂する「絶」、「Eclipsed」の3曲を作っていらっしゃいますが、何よりも驚いたのは「Eclipsed」のイカれっぷりです。もちろんこれは褒め言葉でして、ゆい様のフリーキーなヴォーカリゼーションもあいまって、突出した異彩を放つ曲に仕上がっておりますね。

ゆい:ありがたい(笑)。そう言ってもらえるのはとても嬉しい。

Gight:ゆい様の持っている個性をより強く打ち出すべく作ったのが「Eclipsed」なんです。実際に歌が乗ったらそこはさらに強まって、レコーディングのときには"おぉ、狂ってる......!"と僕も嬉しくなりました(笑)。

ゆい:イカれてるとか、狂ってるとか、最高だな(笑)。私としては、こういうものは歌っているとき、表現しているという以上に"憑依"している感じなので、逆に歌い終わったときにはボーッと真っ白になってしまう(苦笑)。