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INTERVIEW

妖精帝國

2020.03.25UPDATE

2020年04月号掲載

妖精帝國

Member:終身独裁官ゆい(Vo) XiVa伍長(Gt) ryöga伍長(Gt) Nanami准尉(Ba) Gight軍曹(Dr)

サウンド・プロデューサー:橘 尭葉大尉

Interviewer:杉江 由紀

-さて、今作には橘大尉の作曲による、「或る追憶、膨張宇宙に於ける深海乃ち萃点」という楽曲も収録されておりますが、こちらはいかなるヴィジョンを持って作られたものだったのでしょうか?

橘:最初はとにかく速い曲を作ろうというところから始まりましたね。作っていくうちに色のイメージが頭の中に広がっていって、濃い緑はフレーズだったり、青色はメロディだったり、透明なイメージはピアノだったり、黒はギターだったりというふうに、色が音に置き換わっていくような感覚で生まれていった曲でした。そして、ピアノの部分については、昔インディーズで出したアルバム『stigma』(2005年リリース)に入っていた、「Deep Sea」というインスト曲と雰囲気が近しいものになってるので、そこがわかる方にとっては"あ、これは!"ってなると思います(笑)。

-15年の歳月を経て、「Deep Sea」と「或る追憶、膨張宇宙に於ける深海乃ち萃点」はここでリンクしたのですね。

橘:深海も宇宙も神秘的なものですからね。そのあたりの微妙なニュアンスも、ここでは歌詞にうまいこと乗せてもらってます。

ゆい:15年前は私と橘のふたりしかいなかったのだけれども、最新の現体制妖精帝國でもこういった曲を作り上げられたというのは感慨深いな。

-かくして、今作『the age of villains』の最後を締めくくるのは、「葬送フリヰジアン」という楽曲ですが......こちらはなんと、橘さんを含めた全コンポーザーの名前がクレジットされたものとなっております。具体的にはどのようなプロセスを経て生まれたものだったのかを教えてください。

ゆい:この曲は歴史がとても長いものになる。実は、前作『SHADOW CORPS[e]』を出した直後から次作に向けて動き出してはいたものの、そこから編成変更などもあって、いったんは作り出したものをすべて破棄したという経緯があって。これはそこから新たにアルバム制作に向けて動き出した当初にできた曲で、"終始ギャロップというリズムで通すのが面白いんじゃないか?"という意見を出したのはたしかNanami准尉だったな。ただ、そこから今回のレコーディングに入るまでには、何回も何回も何回もみんなで作り直して、ようやく完成ということになったので、結果として橘を含めた楽器隊5人全員の名前が作曲者として記されることになったというわけだ。

-時間も手間も贅沢なほどにかけられた珠玉の逸品というわけですね。

ゆい:昔から私たちのことを知っている者たちからすれば、この曲に対してはかなり"妖精帝國っぽいな"と感じるところがあるのかもしれないが、実はここでも新しいことはいろいろとやっているので。歌詞の中の"We Are Villains!"というフレーズは、『the age of villains』を出すうえで最も伝えたかったメッセージでもある。

-妖精帝國の"妖精"という言葉に着目するなら、一般的にはティンカーベルに代表されるような、ファンシーなイメージをそこに感じる方も多いと思うのですが、それでいてこのアルバム『the age of villains』は、曲ごとにテーマやモチーフこそ様々ではあるものの、根本の部分では毒気を含んだ、ダーク・ファンタジーな世界が、より色濃く構築されている作品に仕上がっていると感じます。このバンドが妖精帝國と名乗ったうえで"We Are Villains!"と提言する最大の理由はどこにありますか?

ゆい:例えば、誰かから見たら狂っているような愛であっても、ある人にとってはそれがまっすぐな純愛であったりもする。一見すると対極的なものであっても、見方ひとつ、見え方ひとつで意味合いが変わってくる事柄はいくらでもある。要するに、私たちがこのアルバムの中で描いているのは"ある方向に偏っていたとしても、それはそれで悪くはない"ということなのだ。

-なんとも深いですね。

ゆい:我々はよくアニメ系のイベントに出たりもするのだが、まぁ、どこに出ても、だいたいはアウェーでいつまでたってもメイン・キャラにはなれないというか(苦笑)、クラスの中で言えばみんなとワイワイしている側ではないというか。

-陽キャではなくあくまで陰キャであると(苦笑)。

ゆい:"Villains"という言葉が象徴しているのは結局そういうことになるだろうな(笑)。むしろ我々としては"そっち側"の気持ちを代弁していきたい。その思いが今回のアルバムを作っていくことで強くなったのも確かだ。それに、正の力よりも、負の闇属性のほうが、強い力を持って闘っていけるんじゃないかというふうにも私は思っている。

-また、この"the age of villains"というタイトルには計3つの意味が込められているそうですね。

ゆい:アニメでもゲームでもメタルでもいいのだが、少し前までは"お前そんなの好きなんだ。オタクだな"と言われたりして、人目をはばかりながらコソコソと自分の好きなものを愛してきた者たちも結構いると思う。だが、近年ではそれらがサブカルチャーとしての市民権を得て、世界的にも認められるようになってきたではないか。それもまた、"the age of villains"の到来を意味しているのではないかと私は感じている、というのがひとつ。

-ふたつ目は?

ゆい:今の世の中は、何が正義なのかというのがわかりにくくはないか? 民主主義と言えば聞こえはいいけれど、数の暴力というものがまかり通ってしまっている現実もある。大多数の言っていることが絶対に正しいとか、権力を持った者が得をして言ったもの勝ちになってしまう現象とか、何が正義で何が悪かを判断するのがとても難しい状況になっているだけに、今そこにいる君たちは正義と悪についてどう捉えているんだい? という問い掛けの意味での"the age of villains"でもある、というのがふたつ目の意味になっている。

-3つ目は?

ゆい:これはさっき言ったこととも重なるが、我々はいつも黒い出で立ちをしているせいか、見た目からして悪そうに見えるらしいので(笑)、どこに出ても疎外感を感じるが、それならそれで、我が道を行こうではないかという意味での"the age of villains"というのが3つ目だ。

-アウェーである、疎外感を感じる、無駄に群れない。これは唯一無二、唯我独尊、他と一線を画するということでもあるはずです。Villainsであることを自認することは、妖精帝國にとってのアイデンティティそのものを意味するのでしょう。

ゆい:そうでありたいという気持ちをずっと持ち続けてきたのは間違いない。それに悪役に憧れる者たちというのも一定数はいるからな(笑)。我々としてはそういった臣民たちとこれからもこの世で強く闘っていきたいと思っている。みんな、立ち上がろうではないか!

Nanami:このアルバムを出したあとにツアーをできるようであれば、そういう場では海外も含めて同士たちとの絆を深めていきたいです。

XiVa:非常に完成度が高いアルバムになったぶん、これをライヴで実際にやっていくというのは少しプレッシャーでもありますけどね(笑)。でも、とにかく楽しみです!

ゆい:ボジョレー・ヌーヴォーみたいな例えにはなってしまうが、今回の『the age of villains』では、妖精帝國にとって"過去最高の出来と言われた前作を凌ぐ逸品"を作り上げることができたからな(笑)。前作から4年半の時を経て、最強の布陣となって戻ってきた我々の時代がいよいよやってきたぞ、ということだ!