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INTERVIEW

SONS OF APOLLO

2020.01.16UPDATE

2020年01月号掲載

SONS OF APOLLO

Member:Derek Sherinian(Key)

Interviewer:山本 真由

-ラストを飾る「New World Today」は、16分近くの長尺のナンバーになっていますね。でも一瞬も聴き逃したくない曲でもあります。実際に聴くとそんなに長くは感じないと言いますか。歌の力が強いというのもあるかもしれませんが......。

俺はいつも言っているんだけど、パーフェクトな曲、パーフェクトな映画というのはスタートからフィニッシュまで聴いたり見たりしているなかで時間の経過を忘れてしまうものなんだ。それほど没頭してしまうからね。

-わかります。

素晴らしい曲や映画はそういうものなんだ。君は「New World Today」をそう感じてくれたんだね。16分近くあるけどその中でいろんなことが起こっていて、曲の書かれ方がいいから、そんなに長い時間聴いているって実感がないんだ。

-そうですね。1曲なのに緩急のダイナミクスがすごいです。あなたもおっしゃっていましたが映画みたいですよね。

だね。ちょっとした映画みたいな展開で。

-それが、特にプログレマニアでなくても聴きやすい内容になっている所以かと思います。もちろん超絶技巧なんですが、難解になりすぎずキャッチーな部分が多いというのが印象的です。リフもそうですし、ベース・ライン、それから9分半くらいのところでキーボードのソロが入りますよね。あの多彩な音色がすごく好きなんです。

おぉっ、嬉しいね。ありがとう!

-この楽曲はどのように組み立てていったのでしょうか? もちろん今までの経験もありますし、ご自分が蓄積してきたものから自然の流れに任せるのもお手のものというのはわかるんですが、16分は長いにしろ、実際はそれ以上のものが詰め込まれている気がします。

まぁ、最初は一部のセクションから始めるよね。俺が最初に手をつけたのはイントロ部分だったな。ギターが来るまでの間、ギターが入ってからJeffの歌が入るまでの間、そのあたりはみんなで書いたんだけど、ビルを建てるようにひとつひとつコツコツと組み立てていったんだ。最初はゆっくりしたものから始まって、段々"よし、ここでガツンと"という感じにしてね。そうやってできたんだよ。

-それにしてもいろんな要素が入っていますよね。これを2、3曲に分けるとかそういう考えがよぎったことはありますか。

実は事実上は6曲に分かれていて、サブ・タイトルが付いているんだ。

-そうなんですね。アルバムのブックレットなどには書いてあるのでしょうか。

アートワークに書いてあるよ。

-なるほど。まだアートワークが手元にないので、そんなにたくさんのセクションがあったとは知りませんでした。

そうなんだよ。君の言う通りの展開(数曲に分かれている)になっているわけだ。

-でも全体としては1曲にまとめることにしたんですね。組曲みたいなものなんでしょうか。

そうだね、そういう見方もアリだと思うよ。

-全体としてはコンセプトやストーリー・ラインがあるんでしょうか。

必ずしもそういうわけではないんだ。歌詞はJeffが書いているから歌詞的なことはあいつに聞いてくれればいいよ。

-歌詞をまだ見ていないので、読んでからJeffに聞いてみます(笑)。音楽的には6つの流れがあるという感じでしょうか。

そうだね。6つの違う流れだけど、それぞれ関係している。最終的にはイントロのリプリーズに立ち戻る感じだね。オーケストラみたいな感じに組み立てた曲なんだ。

-前作に引き続き今作もライヴでの表現が楽しみな楽曲ばかりですが、ツアーのリハーサルはもう始めているのでしょうか。

いや、まだだね。本番1ヶ月前くらいから始める予定だよ。

-ご自宅で個人的に練習するときなどあるかも知れませんが、演奏面で特に難しいと感じているところはありますか。

そうだね......ものすごく難解なものもあるんだ。例えばRonが書いた箇所なんかはキーボードで弾くのがすごく難しい。彼はギターで作曲するからね。それに初めてライヴで演奏するまでにあれだけの曲を全部覚えるのも、スタジオでやるのとはまた感触が違うんだ。そういう要素をすべて組み合わせるのは大がかりなパズルをやるようなものだよ。あと1ヶ月くらいでそれを解かないといけない。そうすればリハーサルを始めるころには準備ができているからね。

-みなさんが曲の断片を持ち寄るときというのはそれぞれ自分の担当楽器で作曲しているんでしょうか。例えばあなたがキーボードでベースのパートを作曲するとか。

うーん......例えば、俺が曲のアイディアを持ち寄るときは全パートを書いておくんだよね。どんな感じにしたいという基本的なアイディアなんだ。そこに各メンバーが独特のサウンドを乗せるわけだから、そのことは念頭に置いて書いている。メンバーがそこにクールなものを乗せてくれたら、それはいい変化になるし、それを使って曲を作っていくというのがクリエイティヴなプロセスだね。

-ご自分で書いたご自分のパートはどうでしょう。自分で自分に試練を与えたりしますか?

それはもちろん与えるよ。例えば「King Of Delusion」のピアノが前面に出てくるところもチャレンジングだったね。今までああいうふうな音をレコーディングしたことがなかったから。それから他にもB-3、オルガンがよく出てくるけど、ああいう箇所を弾くときは自分で自分をプッシュする感じだね。もっといい演奏ができるように、自分に挑戦するんだ。

-そのオルガンのパートも含めていつも思うんですよ。"いったいこの人は何本指があるんだ?"みたいな(笑)。

本数はみんなと同じだよ(笑)!

-40本はあるんじゃないかと思うときがあります(笑)。複雑な音でもスムーズに弾いていますよね。他人が弾いたらすごく大変なんじゃないかと思うフレーズでも。それはあなたにとってもチャレンジングなんですね。

もちろんさ。

-ライヴでの演奏に注目してほしいところはありますか?

うーん、特にないね。俺たちが日本に行ったらとにかくエンジョイしてほしい。今、いつまた行けるのか見極めているところなんだ。進展があったら知らせるよ。日本のファンのことは大好きだからね。

-ありがとうございます。日本を気に入ってくださるあまり、今作では、リミテッド・エディションとして全曲のインストゥルメンタルとアカペラも収録されたバージョンがありますが、こういったものを入れようと思ったのはなぜですか?

それは、日本のファンがスペシャルで、こういうものを捧げる価値があると思うからさ!

-インストによってもっと各楽器に注目してほしいとかそういう意図があったりはしましたか。

いや。単に聴き方の選択肢として与えたかっただけなんだ。それだけだよ。

-なるほど。例えばファンの方がみなさんの曲をコピーしたいと思ったとき......あなた方の曲をコピーするのは至難の業だとは思いますが、インストゥルメンタルなどが役立つと思われますか。

それはあると思うね。あと、シンガロングしたい人たちもいるんじゃないかな。そういう人たちはカラオケみたいに使えばいいかもね(笑)。

-たしかに! シンガロングの練習にもなりますね。

そうだね。それを録音して俺たちに送ってくれ。俺たちのWEBサイトに載せるよ(笑)!

-いいですね。これを記事にしたら、日本から応募が殺到するかも知れませんよ。

いいね(笑)。

-今作では、前作よりもバンドしてのまとまりが形となった作品ですが、実際にどんなときにバンドとしての絆が強固になったと感じますか?

音や気ががっちりハマると、感じられるものなんだ。全員が同じタイミングで感じることができる。そうなると最高の気分を味わえるよ。

-日本語でもそんな感じの言い回しがありますね。ケミストリーが高まると言葉が要らなくなって、しっくりきていることを感じ取ることができるみたいな。

へぇ。日本語ではなんて言うの?

-"阿吽の呼吸"と言って......("阿"と"吽"の呼吸的なものから来ている的な説明)。

なるほどね。俺たちはまさにそれだよ。

-前作があってツアーがあって今作ができて......今は常に"阿吽の呼吸"状態なんですね。

間違いないね。このバンドの美しい点のひとつだよ。

-今作に伴うツアーも発表されていますが、日本行きも考えているとのことで嬉しい限りです。ツアー後もこのバンドとしての活動は続く予定ですか?

もちろんそうだと思っているよ。みんなもこのバンドを大好きでいてくれているしね。いくらスーパー・グループと言っても、組み立てるのには時間がかかる。そして俺たちはその時間をかける気満々なんだ。俺たち自身がこのサウンドに、このバンドに惚れ込んでいるからね。だからこそずっとプレイしていきたいんだ。

-心強いお言葉ありがとうございます。来日公演にはぜひお邪魔したいです。

ぜひそうしてくれ! そのときはちゃんと挨拶に来てほしいね。

-ありがとうございます。最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

日本にいる素晴らしいファンのみんな! SONS OF APOLLO『MMXX』を楽しんでくれますように。俺たちはみんなが本当に大好きだから、早くまたそっちに行ってみんなのためにプレイできるように最善を尽くして頑張るつもりだよ。それまで元気で。良いお年を! メリー・クリスマス(※インタビューは2019年12月20日)! ハッピー・ホリデイズ! アリガトウ(日本語で)!