INTERVIEW
NOTHING TO DECLARE
2016.09.07UPDATE
2016年09月号掲載
Member:Mas Kimura(Vo/Gt) Yoshi(Gt) Mutsumi(Dr)
Interviewer:山口 智男
-さっきおっしゃったように葛藤しながらも、曲はどんどんできていったんでしょうか?
Mas:作ってはボツにして、また作っての繰り返しでした。
Mutsumi:「Savior」のフレーズもただ単に使い回したわけではなくて、"このタイミングで使いたい"というちゃんとした意味がある。それを"苦悩"だと言ってしまったら言いすぎかもしれないけど、Masの中にあるさまざまな葛藤が歌詞になって、そこにメロディがつくということを、ここまではっきりと目の当たりしたのって今回のアルバムが初めてなんです。勝手な話なんですけど、今までは勢いでポンと出てきたという印象があったので今回は本当に身を削りながら作っているってことが伝わってきたなと。
Yoshi:だからバンドとして手をつけた曲でボツにした曲は1曲もなかったですね。全部ちゃんと形になってます。とことん自分の中で作り上げてきていたので、僕らはそれをさらにいいものにしていけばよかったんです。
-シングル『We Stand Alone』はライヴを意識したサウンドを追求していましたが、今回はその延長線上でそれだけに留まらずに音源としての完成度も追求していますね。
Mas:フル・アルバムなので遊ぶ余裕があったんですよ(笑)。「Phobia」(Track.8)と「Jenny」(Track.10)は、アルバムだから入れられました。
Yoshi:というか、アルバムだから生きると思ったんですよ。今回はアコースティック・ナンバーの「Close to Nothing(Acoustic Version)」(Track.9)も入ってますしね。
Mas:『We Stand Alone』は、『Your Obsession』(2013年リリースの1stミニ・アルバム)のイメージから抜け出して、ライヴを意識したストレートな曲を書こうと考えてたんですけど、『We Stand Alone』をアルバムにしていたら、もしかしたら今回のような作品になっていたかもしれない。でも、そこを指摘していただいて嬉しいです。僕らもそこを気に入っているんです。ムッちゃん(Mutsumi)は「Jenny」がすごく好きだし、Yoshi君と僕は「Phobia」が好きだし、後半は楽しいというかユニークさがより一層出ていると思います。
Yoshi:他のロック・バンドで、同じような曲がバッと続いてアルバムの途中でお腹いっぱいになっちゃうなんてありがちだけど、うちはキャッチーな曲もあるし、今回はパンク・ロックもあるし、聴かせる曲もあるし、バラードもあるし、アコースティックもあるし、最後はDJ BAKUさんのリミックス(Track.12「We Stand Alone(Remixed by DJ BAKU)」)もあるし。
Mutsumi:1枚通して聴いてもらいたいという気持ちが強いんです。今は配信でアルバムの中から欲しい1曲だけ買えるじゃないですか。そこに対する葛藤もあって、作り手としてはアルバムってやっぱり全曲通して聴いてほしい。曲順や曲の繫がりも感情や風景の変化の流れを意識していて、曲間のスキットも次の風景に辿り着くまでに必要な道のりというか、すべてに我々なりの理由があるんです。だからアルバム1枚通して、ひとつのストーリーとして伝わればいいなっていう思いはありますね。
-個人的にはTrack.5の「Save Our Souls」が一番好きです。
Mas:おぉ!(笑) ありがとうございます。僕も個人的に思い入れがあるんですよ。もちろん全曲にあるんですけど。
-この曲、新しい感じがしますね。ギターも空間系の音色で。
Mutsumi:"○○PLAY"を彷彿とさせるような?(笑)
Mas:他にも今までやらなかったことをやってみたんですよ。例えば、空間系のギターの裏にファルセットでコーラスを入れてみたり。そういう新しい試みを盛り込んでいるので新しい感じに聴こえたら嬉しいです。
-ベースも跳ねる感じで。
Mas:"(ドラムの)キックとベースはかっこいいヤツやって"って任せました(笑)。
Mutsumi:空間に余裕を持たせて、世界観を際立たせるために音数は結構少なくしました。そのぶんライヴでちょっと苦労しそうですけど。
Mas:この「Save Our Souls」と「Jenny」はレコーディング中に感情が入りすぎて泣き出しちゃって声が出なくなったこともありました(笑)。いろいろ思い入れがあるんで感情がすごく入っちゃって。まぁ、僕が涙もろいだけかもしれないですけど。
-でも、実際、「Jenny」から溢れ出るエモーションがすごい。
Mutsumi:ライヴでやると、僕は思わず絶叫しちゃいますからね。
Mas:で、メンバー全員"おお!?"ってなる(笑)。
-「Phobia」みたいな曲は前からやっていました?
Mas:『Your Obsession』に収録している「Born To Be Mild」の続編と自分の中では考えていて、だから、『Your Obsession』のときにもあったスタイルというか、そういう空気感の曲ではあります。
-歌メロが歌謡曲っぽいというか、ラテンっぽいというか。
Mas:面白いと思うんですよね。歌謡曲も演歌も好んでは聴かないですけど、日本にいるから自然に耳にすることはあるし、耳に入ってきたら面白いなと思うし、それをすぐにアウトプットできるのが僕らの強みだと思ってます。メタルやメロコアではなくて、いろいろな色を取り入れるのはうちのスタイルになりつつあるので。
Yoshi:Masが育ってきた環境が大きいのかな。日本人だけど、海外でずっと暮らしていた経験がこういうふうに出てくるんだろうなって思います。100パーセント外国人でも、100パーセント日本人でも出せない面白さがこういうところに表れている。
Mutsumi:それを、いいと思えるメンバーなんですよ。いいものはいいという聴き方をしてきたせいか、全員あまりひとつのスタイルにこだわらない。だから、ツアーの移動中も洋楽/邦楽問わず、ありとあらゆるジャンルの音楽をそれぞれに持ち寄るんです。しかも、どれに対しても"ここ、いいよね"とか"こいつら上手いな!"とか関心しながら聴ける(笑)。そういうところが今回の楽曲のバリエーションに表れているなと。最初のアルバムのころは、方向性が定まっていないように思えて逆に弱みに感じてたんですけど、今は何をやってもかっこいいものとして成立させられる自信があるんです。
Mas:『Your Obsession』のインタビューでも、すべての曲を僕ひとりが書いていると言ったら驚かれたのを覚えてます。ちょっとコンプレックスだったんですよ。それで、曲を書くたびに"自分は何をしたいんだろう"ってマイナスに捉えちゃう暗黒時代があったんですけど(笑)、でもみんなに相談したら"それでいいんじゃない? うちらはそれだよね"って勇気づけてくれて、"それでいいんだ"って思えるようになりました。だから今回はバリエーションのある曲が書けたのかな。まとまりがないと言えばないのかもしれないけど、いろいろ面白いことを臆せずやってみました。
Mutsumi:型から入らずに、そういう曲の数々を1枚の作品として成立していると思ってもらえたら一番嬉しいですね。