－そうですね。どれもひどいんですけど、この曲は"春眠暁を覚えず"の主人公が、起きれないことを理由に会社を辞めるというストーリーで。でもこの"ちょっとわかる！ そうしたいと思ったことある！"みたいな共感性と、歌もサウンドも超本気なのが合わさって、妙に人の背中を押してくる謎の力があるんですよね......（笑）。

NAOKI：ははは！ そこが赤ペンの力なんです！ 迷いを取り払うような......。

TAGIRU：やっぱりそこは、勉学に勤しんできた人間同士の波動だよね。この曲の歌詞なんて、ちょうど中学3年生くらいで習うんじゃない？ 現在完了とか出てくるよ？

－そうなんですよね。そこまで英語が得意でない人でも、歌詞を読めばわかるレベルの英詞という。本当すべてが徹底的ですよね。

TAGIRU：......でももともと僕らは遊びのつもりで、ライヴ会場限定でCDを出して夏季限定の活動にしようと思ってたんです。冷やし中華みたいに通りすぎてやろうと思ってたんで、全国流通する予定なんて何もなかったんですよ。流通するのが決まってたらこんなふざけたことしてないです（笑）。

－あ、ではみなさんの赤ペンの波動が、大人たちを動かしたんですね。

NAOKI：やっぱりレコード会社の人たちも赤ペンの使者なんですよね。さっきレコード会社のお偉いさんから"音源すげえいいね！"って言われました（笑）。

TAGIRU：でも演奏面も制作面もやっててすっごく楽しくて......。この年齢になってまた新鮮に音楽を楽しめているので、すごく自分たち的には幸せですね。

－それは音源から十分伝わってきます（笑）。

NAOKI：ありがとうございます。楽しい以外の何物でもないです（笑）。こんなにふざけ倒して遊び倒してCD出せるんだ！？って......。ほんとに夢ありますよね！

－みなさんがこれまでの音楽活動で培ってきたキャリアあってこそだとも思いますけれど。ちなみにNAOKIさんはもともとラップ担当で、メイン･ヴォーカルを務めるのは今回が初めて。普段はリード・ヴォーカルのTAGIRUさんは今回歌は担当せず、10年ぶりにギターを弾いたとのことですが、やはり練習を？

NAOKI＆TAGIRU：めっちゃくちゃ練習しましたよ（笑）！

NAOKI：僕はYouTubeを見まくりました（笑）。

TAGIRU：僕は"でかいほうがいい音が出るんじゃないか"と思ってでっかいアンプを買ったり、"地獄のメカニカル・トレーニング"という速弾きの本を買ってきたりしました（笑）。全然指が動かなくてどうしようかと思って......。そしたらベース経験のあるうちのマネージャーさんが"握り拳を指と指の間に入れて開くようにしたほうがいいですよ"と教えてくれて、そこから始めました。やっぱりミュージシャンだから、音はふざけちゃいけないと思って、相当練習しました。

NAOKI：デス・ヴォイスに相当苦戦しました。デス・ヴォイスって流行ってるじゃないですか。商業音楽として、流行ってるものは取り入れないと（笑）。

TAGIRU：やっぱデス・ヴォイスやってる人は、みんな赤ペンやってたと思うんですよ！

NAOKI：だよね！？ やっぱりここまでラウドロックにデス・ヴォイスが入ってると、ラウドロックをやるなら自分もやらなきゃいけないという使命感に駆られるよね！ まあ音楽だけはふざけないぞ、というところですね。

－いやあ、結成から5ヶ月でここまで本格的なサウンドを作るのはさすがだと思いますよ。みなさんの正体もネットを駆使して調べてみたり、歌詞もちょっと注意深く読んでみたり、私も取材にあたって"あれ？ なんだか勉強みたいだな......？"と思いました。

NAOKI：我々の時代は一生懸命辞書を引きましたけど、今はSiriに聞けばなんでもわかる時代なんですよ。でもそんな中で、みんなが"ちょっとわからないことを調べてみる"ということをやってもらいたいがゆえの覆面バンドでありこういう歌詞なわけなんですよ！ ただこの"教材"を取らなければあなた方の人生は変わりません！

TAGIRU："教材"ってこのCDのこと（笑）？

NAOKI：そうです！ この教材を手に取って疑似体験をしてもらうことで、人生経験にして欲しいということですね。浮気するとどうなるとか、会社を辞めると彼女にフラれるぞとか......。

TAGIRU：バイト先でこういうことすると陰口言われちゃうよ、とかね。

－イマドキっぽく言えば"バイト先でこういうことするとLINEグループに招待してもらえないぞ"でしょうか。

TAGIRU：ああ、そうですね。"えっ、バーベキューあったの......！？"みたいな（笑）。

NAOKI：いいね！ それ次の教材の題材にしようよ（笑）！