INTERVIEW
THREE DAYS GRACE
2015.06.11UPDATE
2015年06月号掲載
Member:Neil Sanderson(Dr)
Interviewer:山本 真由
-だからこそ、今回のように制作スタイルが変わってもうまくいっているのかもしれませんね。今作はツアー中に制作されたようですが、日々ライヴを行いながら作曲をする今回のようなスタイルのメリットはどんなところですか?
Mattのことはすでにソングライターとして信頼していたからね。通常、信頼関係を築くのは時間がかかることだけど、それがすでにあるっていうのは大きかった。今回アルバムを形成していくプロセスの中で良かったのは、SHINEDOWNとツアー中、MattがTrack.2「Painkiller」のアイディアを出してくれたことなんだ。いきなりギターで弾き出してね。みんな一発で気に入ったよ。言うまでもなく、今回の1stシングルになった。北米で出したのは1年以上も前の話なんだけどね。あいつがTDGのいい曲の基盤を作ってくれたから助かったよ。あの曲はツアー中に書き終えたんだけど、新しいサウンドやヴァイブスがとても気に入った。これからレコーディングするんだと思うとワクワクしたよ。それでトロントに戻ったらレコーディングをやって、あまりに気に入ったからラジオに持っていったんだ。新しいサウンドをデモンストレーションするという意味もあってね。そうしたら全米1位になった。俺たちにとっては"この新しく生まれたエネルギーを続けていこう、続けていけるぞ"って確信が持てる出来事だったよ。これならファンもついて来てくれるってね。ついて来てくれるのが当たり前だと思ったことは1度もないんだ。あの曲のおかげでアルバムの輪郭ができたようなものだね。
-だからあの曲はあんなに早く出たんですね。
そうだね、1年も前だったからね。
-非常にハイエナジーで勢いのある作品になったのは、あの曲によるものもあるんですね。レコーディングはあまり時間をかけずに制作できたのでしょうか?
時間はかかったけど、基本的にはツアー中だったからね。3~4週間ツアーをやって、家に帰ったらスタジオに直行、みたいな感じだった。今回はプロデューサーのGavin Brownとやることにしたんだ。1stアルバムをプロデュースしてくれた人なんだけどね。彼が、昔のプロセスに俺たちを戻してくれたんだ。つまり、時間をかけてやるってことだね。しばらくじっくり取り組んだら今度はオフを取って、それまでの作業を振り返ってみる。銃を突きつけられているような切羽詰まった状態にならないようにしてくれた。それに、いつもよりいい作品に向かわせてくれる人なんだ。2~3日間スタジオにこもってからツアーに出て、ツアー中はサウンド・チェックの時間なんかを利用してジャムってみる。そうやって、うまくいくかどうかを試すことができた。思うに、ルネサンス時代の画家の多くもそうだったんだろうな。しばらく描いて、それから作業から少し離れてみて、気持ちをクリアにしてからまた作業に戻る。そうすることによって、何が良くて何が良くないのかを見極めることができるんだ。......今回はそういうことを試みてみた。そういう方がいいものができるような気がするね。ときには心を鎮めて、キャンバスから筆を離した方がのいいこともあるんだ。その方が全体像がクリアに見えてくる。
-今回のサイクルの方があなた方に合っていそうですね。
たしかにそうだね。ただ、贅沢なことではあると思う。プロデューサーも他のプロジェクトもあるし、タイトなスケジュールで動いているからね。今回はオープンエンドだったのもあるけど、Gavinがツアーに同行してくれたのが大きかった。友人でもあるから、一緒にいる時間の半分くらいはただ笑いながら楽しい時間を過ごしているだけなんだ。そういう環境があると、いい曲を書くクリエイティヴな状態になれる。彼は一緒にツアー・バスに乗ってくれて、ギターを弾いたり、サウンド・チェックに付き合ったりしてくれたんだ。もちろんショーの最中は一緒じゃなかったけどね。日中は一緒に曲を書いて、夜はロック・ショーをやって、ショーが終わったらバスの中でワインを飲みながら楽しい時間を過ごす。新しいシングルのTrack.1「Human Race」も、真夜中にくつろぎながら人生の話をしていてできた曲なんだ。あの曲は本当に自然発生的だったね。Gavinもバスに乗っていて。昔の、初めてアルバムを作ったときに戻ったような感覚だったね。
-Gavinはいろいろな面で非常に深く携っているのですね。だからかもしれませんが、全体的に力強くフレッシュな印象の楽曲が並んでいます。今回のレコーディングでもっともこだわった楽曲や、新たな試みのあるものがあれば教えてください。
また「Human Race」の話に戻るけど、個人的にもお気に入りの曲なんだ。理由はいろいろあるけど、生まれた経緯もとても気に入っているし、俺たちとしては一風変わったフレーバーだし、アレンジも今までとはちょっと違う。Gavinは俺たちが自分たちの心理を深く掘り下げる大きな手助けになってくれた。ものすごく深いところからネタを引っ張り上げてくれるんだ。彼には持論があって、"歌詞を書くな、会話を書くべきだ"と言うんだ。そうすることによって、感情を表現するときに実際の会話でどう語るかを考えるようになる。韻を踏んだりするような、クレバーでポエティックな表現じゃなくて、実際に話すときみたいな言葉遣いでね。Gavinに歌詞のアイディアを話すときは、実際の会話の中で話すんだ。頭よさそうに聴こえるような言い回しを使うんじゃなくて。「Human Race」はGavinがツアー・バスに同乗しているときに生まれたんだ。眠らないまま朝日が昇ろうとしていたときだった。夜更かしは結構よくやるんだ。いけないことだけどね(笑)。バスは美しい田舎道を走っていて、俺たちは窓の外から景色を楽しんでいたんだけど、突然アメリカの中西部の大都市に入り込んだんだ。そうしたらラッシュ・アワーにはまってしまってさ。窓の外を見ていたら、みんなクラクションをガンガン鳴らして、怒鳴りあっていた。ものすごいスピードを出してね。俺たちはまるで別の世界からそういう光景を眺めているような感覚だった。そうしたら誰かが"何でみんな、他人をこんなクソみたいに扱っているんだろう? Human Race(人間の競争)を走っているのにうんざりしないのかな"と言い出した。そういう何気ない会話が曲へと発展していったんだ。Gavinといると、そういう何気ない瞬間をとらえることができるようになる。それがマジックだよね。あの曲はまさにそれを体現しているような気がする。
-映画のような映像美で描かれた「Human Race」のミュージック・ビデオも公開されましたね。こういった楽曲のヴィジュアル・イメージもメンバーでアイディアを出し合うのですか?
そうだね。ただ、あのヴィジュアルは監督のMark Pellingtonの頭にあったものではあるけど。Mark Pellingtonがビデオを手がけてくれるという話を聞いたときはぶっ飛んだよ。PEARL JAMの「Jeremy」を手がけたのが彼なんだ。あれは俺のオールタイム・フェイヴァリットのひとつだから、彼が「Human Race」に興味を持ってくれているなんて聞いて、最初はウソだろって思ったよ。彼は美しいものや醜いもの、恐ろしいもの、苦しみをすべて盛り込むというショッキングなイメージを思い描いていた。そういうものをヴィジュアルでとらえて、現代社会に人間として生きるというのはどういうことなのかを表現しようとしたんだ。俺たちはそのアイディアを彼に自由に発展させてもらった。今回俺たちがやったのは彼の頭の中を覗き込んだ程度だね(笑)。