INTERVIEW
人間椅子
2014.06.16UPDATE
2014年06月号掲載
Member:和嶋 慎治 (Gt/Vo)
Interviewer:荒金 良介
-試行錯誤はありました?
英語みたいに韻をなかなか踏めなくてね。だから、古い日本語を使えば、英語独特の音でテンポのいい感じになるかなと。
-古い日本語の方が音にハメやすいという理由で。
韻を踏めたり、七五調でやると、ハマりやすくて。今でも七五調で歌詞を書きますから。
-曲作りで苦労することは?
時々つまづくこともありますけど、1番大事なのは言いたいことがあるかどうかなんだよね。言いたいことがなくて、言葉をもてあそんでも苦しくなるだけだから。そういう意味では自分の中で壁はありましたけどね。今更ながらそれに気付きましたね。
-ここ数年で気付いたんですか?
そうですね。言いたいことがある、それが大事だなと。
-それから演奏や楽曲にも変化はありました?
ありますね。"この曲で何を言いたいか"が明確にあると、悩まずに曲を作れるんですよ。音の断片だけで作っても限界があるんだよね、ダルマの芯がない状態というか、核がないまま膨らませることは難しい。僕らCDの売り上げ、ライヴの動員もずっと横ばいだったけど、ある時から伸びはじめて、自分たちが曲を作る上でも心境に変化はありましたね。
-例えばどういうことですか?
動員が増えてきた頃と"言いたいことがあることが大事と気付いた"ときがちょうど同じ時期だったんですよ。で、活動が軌道に乗ってきた状態で"Ozzfest Japan 2013"の話をもらって、また1つ転がった感じです。
-実際、若いファンも増えてたりと、それがまた素晴らしいですね。
こういう音楽って、本来は年齢なんて関係ないはずなんですよ。常にサムシング・ニューがないといけないから。
-サムシング・ニュー!
うん(笑)、若い人が来てくれるということは僕らに何かしら新鮮なものがあるんだなと。
-若い人は人間椅子のどこを支持してくれてると思ってますか?
1つにはこういうルックスで、日本語で気味の悪い音楽をやってるグループはあまりいないから。あっ、面白いと思って観に来てくれてるのかなと。楽曲もドロッとしてたり、歌詞のテーマもほかにないものをやってるのかもと思ってます。現実を歌うだけじゃなく、抽象的なこと、生きていく上での悩みはあった方がいいよ、とか。その辺は、歳いってる人はあまり聞きたくない内容だったりするんだよね。でも若い人はわかってくれるから。
-20代前半のバンドが人生の苦悩どうこうと歌っても、説得力に欠けますもんね。
あっ、そうか!俺らは年寄りだからいいのかもしれない(笑)。言いたいことはデビューから変わらないからね。いつも問題意識のある歌詞を書いてるつもりです。ただ、いろいろ難しいことを言ってもアレだし、単純にかっこいいと思って若い人は来てくれてるんだろうし、それが1番嬉しいですね。
-今作の話の前に、前作『萬燈籠(まんどろ)』は祭り調の掛け合いがユニークな「ねぷたのもんどりこ」、擬態語を用いた「新調きゅらきゅきゅ節」のような土着的な楽曲もあり、人間椅子らしいおどろおどろしい部分が強調されてましたね。
それは意識して作りました。"Ozzfest Japan 2013"に出た直後だったから、僕たちの基本スタイルはこういうものだ!というのを考えましたね。
-今作は一聴して、歌いたくなったり、体がムズムズ動くようなキャッチーな楽曲が多いなと。
今回も前作同様にマイナー・キーのリフでガンガンいく。それをまたやってみました。あと、前作はプログレ色が少なかったから、自分たちなりに変拍子を入れてみたりね。すんなり聴けると思うけど、曲の中でもいろいろ表情も変わってるし。無理なくハッとする展開を入れたくて。そういうのが好きですからね。やっぱり、自分たちなりのサウンドをやりたいんですよ。例えば速いメタルとかにはそれぞれオーソリティがいるわけだし、僕らが同じことをやっても敵わないから。
-流れで一気に聴けるので、難解な印象もないですね。
難しすぎる音楽も飽きちゃうからね。あと、気付いたのは自分たちはハーモニーが苦手なんですよ。20数年経ってもダメで、それはほんと日本人だなと思いますね。外国人はハーモニーが得意で、どのバンドもハモりがうまいんですよ。日本人はモノフォニックの音楽というか、ユニゾンの音楽なんですよ。今回はほとんどハモりはないし、サビとか全部ユニゾンですからね。それは逆に良かったなと。だから、口ずさみやすいのかもしれない。サビで複数の声が入ってたら、大体ユニゾンですからね。