FEATURE
MARDUK
2023.09.11UPDATE
2023年09月号掲載
Writer 井上 光一
死の美学に彩られた邪悪なまでのエネルギーが生み出した、背徳と暴虐の暗黒芸術!
本稿が掲載される頃には、日本ツアー("MEMENTO MORI JAPAN TOUR 2023")の開催が目前に迫っているスウェーデンが生んだ暴虐のカリスマ、MARDUK。1990年の結成以来、メンバー・チェンジを繰り返しながらも常にシーンの最前線に立って暗黒の破壊的ブラック・メタルを鳴らし続けてきた彼らだが、前作『Viktoria』(2018年)から約5年もの間、アルバムのリリースがなかったことで気になっていたファンも多いのではないだろうか。その間の彼らの動向を簡潔に説明すると、幾度かのメンバー・チェンジやステージ上でのトラブルによる解雇などがあり、現在はベーシスト不在のトリオ編成として活動を続けている。当然ながら世界的なパンデミックの影響が音楽活動にブレーキをかけたこともあり、30周年を記念したツアー("30th ANNIVERSARY TOUR")が延期されるなど、ライヴを主戦場としている彼らにとっては不本意な数年間であったことは想像に難くない。
2022年には本来のライヴ活動のペースを徐々に取り戻しつつ、紆余曲折を経て久々に世に送り出されたMARDUKの通算15枚目となるニュー・アルバムは"第2次世界大戦"というテーマから離れ、"Memento Mori"という"死を想え"といった意味を持つ有名なラテン語の警句が名付けられた。パンデミックやロシアのウクライナ侵攻など、逃れられない死への恐怖が多くの人々にとっていっそう身近なものとなった現代社会において、かつて死や疫病というテーマを掲げた『La Grande Danse Macabre』(2001年)というアルバムを発表したMARDUKであればこそ、本作のような作品が生まれたことは必然の結果だと言えよう。
『Memento Mori』はオールドスクールなMARDUKサウンドでありながらも、随所で意欲的な音楽的冒険にも挑戦し、死の美学に彩られた邪悪なまでのエネルギーが生み出した、背徳と暴虐の暗黒芸術である。不吉という言葉が嵐のような音の塊となって迫りくる、唯一のオリジナル・メンバーにしてバンドの首謀者 Morgan "Evil" Steinmeyer Håkanssonによる創造的なギター・ワーク、ソングライティングやアートワークも担い、背筋が凍るほどのサタニックなヴォーカル・パフォーマンスで狂気を扇動するDaniel "Mortuus" Rostén、激烈なブラストビートから地を這うようなヘヴィ・グルーヴまでも自在に操るSimon "Bloodhammer" Schillingのドラムス......少なくとも本作を聴いてバンドに幻滅するようなファンはほぼいないだろう。地獄の底から唸りを上げる叫びと重厚なブラストビートが耳をつんざくTrack.1「Memento Mori」で幕を開け、熾烈なギターのリフが暴虐性を扇動するTrack.2「Heart Of The Funeral」に圧巻のブルータリティが押し寄せるTrack.3「Blood Of The Funeral」の冒頭3曲は、リスナーをMARDUKの世界へと引きずり込む最も有能な役割を果たしている。ダーク・アンビエント風のオープニングが印象深い、陰惨で重苦しいスロウなヘヴィネスが渦を巻くTrack.4「Shovel Beats Sceptre」でがらりと雰囲気が変わる構成も見事で、アルバム全体を通して基本的にはMARDUKらしいと多くのリスナーが感じるファストな暴虐サウンドながら、インダストリアル的な質感を持ったラスト曲「As We Are」のようなミディアム・テンポの楽曲が、アルバム全体の流れに効果的なドラマ性を生み出していることは見逃せない点だ。
MARDUKにとって"死"は現実からの逃避として耽溺する甘い夢などではなく、冷徹なまでの現状認識にもとづく美学そのものである。無味乾燥とした希望を食らい尽くす暗黒芸術は、本作においても間違いなく世界中の人々の歓喜と憎悪の叫びを巻き起こすだろう。
▼リリース情報
MARDUK
ニュー・アルバム
『Memento Mori』
NOW ON SALE!!
SICP 6545/¥2,640(税込)
解説・歌詞・対訳付
1. Memento Mori
2. Heart Of The Funeral
3. Blood Of The Funeral
4. Shovel Beats Sceptre
5. Charlatan
6. Coffin Carol
7. Marching Bones
8. Year Of The Maggot
09. Red Tree Of Blood
10. As We Are
11. Psalm 156 ※ボーナス・トラック
配信はこちら
▼ライヴ情報
"Memento Mori Japan 2023"
9月13日(水)新宿 WildSideTokyo
9月14日(木)新宿 WildSideTokyo
9月15日(金)名古屋 Huckfin
9月16日(土)大阪 Socore Factory
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