FEATURE
A DAY TO REMEMBER
2015.09.19UPDATE
2015年09月号掲載
Writer 井上 光一
先に断りを入れておくと、本作は彼らにとって現時点での最新作ではあるが、すでに2013年にリリースされたアルバム(通算5枚目)である。"Ozzfest Japan 2015"での来日が決定し、いよいよここ日本でのリリースが決まったということだ。かなりのタイムラグはあったものの、こうして国内盤がリリースされるというのは、すでに10年選手の彼らを追い続けてきた日本のファンにとっても、感慨深いものがあるに違いない。たしかな実力があり、強固なファンベースを誇り、且つ商業的にも成功しているようなバンドの作品が、今の今まで国内盤化されなかったというのは、様々な事情があったとはいえ、バンドにとってもファンにとっても不幸なことであったと言えよう。故に、所属レーベルとの確執を乗り越え、自主制作でリリースされた本作でもってようやくの国内盤化という流れは、ひとりのファンとしても実に嬉しく思う。彼らの音楽が、もっと多くの人に知られるであろうことは間違いないからだ。
前置きが長くなったが、本題に戻ろう。本稿を執筆するにあたり、過去の作品をすべて聴き直してみたのだが、彼らのサウンドを決定づけているポップ・パンク的な激キャッチーなメロディと、メタルコア由来の強烈なブレイクダウン、極悪なブルータリティ、といった要素を1曲の中で展開してしまう彼らなりの方法論は、ややもすれば相反する要素のコントラストへの面白味の方が強かった初期に比べて、本作においてはポップな面にしてもヘヴィな面にしても、すべての要素がバランス良く収まっている印象だ。冒頭を飾るTrack.1「City Of Ocala」、続くTrack.2「Right Back At It Again」と立て続けにキラー・チューンで畳みかける流れで、彼らは自らが生み出してきたサウンドを、誇らしげに標榜してみせる。Track.4「Dead & Buried」やTrack.7「Violence(Enough Is Enough)」あたりの、怒りに満ちたハードコア且つメタリックなヘヴィ・パートから、哀愁のメロディへと雪崩れ込む彼ら得意の展開を持った楽曲は、バンドのヘヴィな一面を求める向きにも十二分に応えうる出来栄えだ。マイナー・コードでシンプルに疾走しつつ、スクリームを使わず、エモーションが迸るメロディを歌い上げるTrack.5「Best Of Me」は男泣き必至。全編アコースティックの佳曲Track.6「I'm Already Gone」では、装飾を取り払った彼らの持つ裸のメロディ・センスの良さが堪能できるし、いわゆるモダン・ロック的な匂いが濃厚に香る、ドラマティックなTrack.11「End Of Me」といったような楽曲は、バンドとしての成長を如実に感じさせる。こういうタイプの曲にたしかな説得力を持たせることができるのも、平坦ではなかった道のりを歩み、誠実にキャリアを積み重ねていった結果であろう。おそらく、デビュー時から順を追って彼らの音楽を聴いてきたリスナーの中には、その音楽性に大きな変化がないことに不満を抱く人もあるかもしれない。前々作『Homesick』あたりで、彼らの基本的な方向性は、ほぼ確立されたと言えるし、何か驚くような新機軸は正直見受けられない。彼らは変化よりも深化していくことを選んだのだろう。それは洗練であっても、決して過去の焼き直しなどではないと断言したい。ツアー生活の思い出を懐かしむような、ノスタルジックな空気が漂う歌詞を、どこか優しい眼差しで歌い上げつつ、何があっても自分たちは変わらない、といったような力強い想いに満ちた、Track.13「I Remember」で、彼らは未来へと歩み出した。そう、本作でキャリア第2章を迎えた彼らと、日本のファンとの未来もまた、ここから新たに始まるのである。
A DAY TO REMEMBER
ニュー・アルバム
『Common Courtesy』
[Hostess]
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HSU-19002 ¥2,100(税別)
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1. City Of Ocala
2. Right Back At It Again
3. Sometimes You're The Hammer, Sometimes You're The Nail
4. Dead & Buried
5. Best Of Me
6. I'm Already Gone
7. Violence (Enough Is Enough)
8. Life @ 11
9. I Surrender
10. Life Lessons Learned The Hard Way
11. End Of Me
12. The Document Speaks For Itself
13. I Remember
14. Leave All The Lights On
15. Good Things
16. Same Book But Never The Same Page
※日本盤はダウンロード・ボーナス・トラック、歌詞対訳、ライナーノーツ(予定)
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