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FEATURE

ART OF ANARCHY

2015.08.18UPDATE

2015年08月号掲載

GUNS N' ROSES、STONE TEMPLE PILOTS、DISTURBEDのメンバーが顔を揃えたスーパー・グループ"ART OF ANARCHY"、5人のミュージシャンが火花を散らした刹那をとらえたデビュー・アルバムをリリース

Writer 山口 智男

"ART OF ANARCHY"の名の下に集まった顔ぶれは、まさに"ハードロック/ヘヴィ・メタルのスーパー・グループ誕生"という言葉がふさわしいものになるはずだった。しかし、Scott Weiland(Vo)をメンバーに加えてしまったため、ART OF ANARCHYのスタートはいきなり波乱含みのものになってしまった。よもや他のメンバーたちは忘れていたわけではあるまい。Scott Weilandが不世出のロック・ヴォーカリストであると同時に稀代のトラブルメーカーであることを――。

ART OF ANARCHYの結成は今から遡ること4年前。2011年5月のことだった。Jon(Gt)とVince(Dr)のVotta兄弟が抱いていた理想のバンドを作りたいという夢にRon "Bumblefoot" Thalが手を貸したことがそもそもの始まりだった。Bumblefootはソロ・ギタリストとして活躍したのち、謎のギタリスト、Bucketheadの後任として、2006年にGUNS N' ROSESに加わった超技巧派ギタリストだ。双子のVotta兄弟とは長年の友人関係にあり、ふたりがかつてやっていたバンドをプロデュースしたこともあるという。素晴らしい才能を持ちながら無名の存在に甘んじているふたりが世に出る手助けをしたかったのだろう。

GUNS N' ROSESがツアーを休んでいる間の時間を使って、ニュージャージーにあるBumblefootのスタジオで曲作りを始めた3人にDISTURBEDのベーシスト、John MoyerとSTONE TEMPLE PILOTS/VELVET REVOLVERの元シンガー、Scott Weilandが加わった。

DISTURBEDはご存知、かつてOzzy Osbourneから"メタルの未来"というありがたいお言葉をいただいたシカゴの4人組。5枚のアルバムをリリースしたのち、2011年に活動を休止。その間、Moyerはプログレ・メタル・バンド、SYMPHONY Xのシンガー、Russell Allenが結成したADRENALINE MOBやこのART OF ANARCHYに参加。バンド外活動に精を出していたが、今年6月、DISTURBEDはMoyerを含むラインナップで活動の再開を発表。8月に復活第1弾アルバムとなる『Immortalized』をリリースすることが決まっている。

一方のScott Weilandは1992年にサンディエゴの4人組、STONE TEMPLE PILOTSのヴォーカリストとしてデビュー。デビュー当時、グランジ・ブームに便乗したバンドと叩かれながら、リリースするアルバムを次々にヒットさせ、多彩な音楽に挑戦し続けたSTONE TEMPLE PILOTSは現在では90年代を代表するバンドのひとつに数えられている。しかし、大きな成果を残しながら彼らの活動は決して順調ではなかった。理由はScottのドラッグ問題とトラブルを繰り返さずにいられない破滅的なパーソナリティ。長年、Scottに振り回され、思うように活動できない状況に耐えながら、他の3人のメンバーがScottを許してきたのは、昔からの仲間という理由もさることながら、やはり彼が歌うだけでその曲が特別なものになるヴォーカリストとしての魅力が大きかったからだろう。

Bumblefootのプロデュースの下、楽器隊の4人がレコーディングしたトラックにロサンゼルスにいるScottが歌詞とメロディを書き、ヴォーカルを加えるというやり方で完成されたART OF ANARCHYのデビュー・アルバム『Art Of Anarchy』でもScottは金切り声を張り上げず、リラックスした歌唱に徹しながらヴォーカリストとしての力量を存分に発揮している。リラックスした調子がセクシーな魅力も醸しだすヴォーカルを存分に楽しめるTrack.4「Get On Down」、Track.6「'Til The Dust Is Gone」、Track.7「Death Of It」、Track.10「Long Ago」といったメロウな曲はもちろん、リフをたたみかけるいかにもハードロッキンな演奏とScottによるメロウな歌声が組み合わさることで、いわゆるハードロック/ヘヴィ・メタルとはひと味違う曲調になったTrack.5「Grand Applause」、Track.9「Aqualung」、Track.11「The Drift」も、このバンドならではと言えるだろう。

Scottの歌声もさることながら、エスニックな味わいもあるインストのTrack.1「Black Rain」以外の全曲のメイン・ソングライティングを手掛けたJon Vottaの才能にも注目しておきたい。それも含め、さまざまな可能性をアピールするアルバムを完成させ、メンバー全員揃ってアー写と「'Til The Dust Is Gone」のミュージック・ビデオを撮影したにもかかわらず、Scottはアルバムのリリースを待たずにバンドを脱退......いや、Scottによると、"脱退するも何もそもそもバンドに加入した覚えはない"ということらしい。Scott曰く"歌詞を書いて、歌って欲しいと頼まれただけで、それをやったからってバンドに加入したことにはならないだろう"。

"いや、Scottはまだ正式にART OF ANARCHYのメンバーだ"と主張しているBumblefootとScottの間で当初、どんな話が交わされたのか? 前述したレコーディングのやり方からはScottが1回限りのプロジェクトと考えていたことが窺える。そもそもそのころ、ScottはすでにSCOTT WEILAND & THE WILDABOUTSとして活動し始めていたはずだ。

もちろんBumblefootにも言い分はあると思うが、それほどScottに対して腹を立てていないどころか、彼のヴォーカルを絶賛しながら、"いつでも戻ってきて欲しい"と言っているところが面白い。SLASH(Gt)、Duff McKagan(Ba)、Matt Sorum(Dr)ら、GUNS N' ROSESの元メンバーたちと結成したスーパー・グループ、VELVET REVOLVER、そして彼を何度も許してきたSTONE TEMPLE PILOTSからもクビを言い渡されたScottだけにART OF ANARCHYに迎えるにあたっては、それなりに覚悟していた!? あるいは、それだけScottの歌声に惚れこんだということか。

ともあれ、超技巧派ギタリストとして鳴らしたにもかかわらず、一歩下がったところからバンドをひっぱりながら、才能あるミュージシャンたちに思う存分、活躍させたBumblefootの懐の深さやプロデュース力を、結果的に印象づける作品になったところが、ひょっとしたら『Art Of Anarchy』の1番の聴きどころなのかもしれない。

もちろん、GUNS N' ROSES、DISTURBEDと掛け持ちしながらということだとは思うが、Bumblefootはツアーも含め、ART OF ANARCHYの活動を続けることに意欲を燃やしている。"後釜のシンガーの候補はいるか?"と、とあるインタビューで尋ねられた彼は"Scottが戻ってくることが理想"と断ったうえで、Corey Taylor(SLIPKNOT / STONE SOUR)、M. Shadows(AVENGED SEVENFOLD)、Josh Todd(BUCKCHERRY)、Danny Worsnop(ex-ASKING ALEXANDRIA / WE ARE HARLOT)の名前を挙げているから、近い将来、ひょっとすると......いやいや、何が起こっても全然不思議ではない世の中だ。そもそもBumblefoot、Moyer、Scottの3人が顔を揃えるなんて、誰に想像できた!? あるいは、その前にART OF ANARCHYに参加したことで、その才能を知られるようになったJonとVinceのVotta兄弟が何か始めるかもしれない。

5人のミュージシャンが火花を散らしたその刹那をとらえた『Art Of Anarchy』はそこから聴こえる以上のドラマを楽しませるという意味でも聴き応えある作品と言えそうだ。

 


ART OF ANARCHY
『Art Of Anarchy』
[SONY MUSIC JAPAN]
SICX-7 ¥2,400(税別)
■初回仕様:紙ジャケット+ポスター封入
■日本盤ボーナス・トラック2曲収録
2015.08.26 ON SALE!!
amazon | TOWER RECORDS | HMV
 
1. Black Rain
2. Small Batch Whiskey
3. Time Everytime
4. Get On Down
5. Grand Applause
6. 'Til The Dust Is Gone
7. Death Of It
8. Superstar
9. Aqualung
10. Long Ago
11. The Drift
12. 'Til The Dust Is Gone (Acoustic) ※ボーナス・トラック
13. Long Ago (Acoustic) ※ボーナス・トラック

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