FEATURE
Serj Tankian
2012.07.10UPDATE
2012年07月号掲載
Writer 米沢 彰
今や生ける伝説とも言えるほどのカリスマ性と圧倒的な人気を誇り、世界を席巻したSYSTEM OF A DOWN。ロサンゼルスにあるアルメニア人コミュニティから生まれた、民族的な色の濃いサウンドながら、05年には『Mezmerize』、『Hypnotize』が2作とも全米1位を獲得、06年にはグラミー賞を受賞するなど人気、実力、評価の全てを兼ね備え、エスニック・サウンドのラウドロック・バンドとしては快挙を成し遂げたそのバンドのフロントマン、Serj Tankian。一度その声を聴けばSerjその人と分かる独特のクセのある歌い方は、一度ハマると中毒になってしまうような不思議な魔力を持ち、バンドのまさに顔と言える重要なポジションを担ってきた。
06年にSOADの活動が休止となってからはSerjはソロ活動を活発化させ、まさに天才的なその創造性を存分に発揮し、SOADの枠を大きく飛び越えた活動を見せてきた。07年にはセルフ・プロデュースによるアルバム『Elect The Dead』をリリース。全米4位を獲得するなど、セールス面でも成功を収める。ツアーを続けながらその創造性を磨き続け、遂には『Elect The Dead』をオーケストラと共に共演するという常識外のプランを『Elect The Dead Symphony』というタイトルで実現化。それだけにとどまらず、更には共演したオーケストラとのコラボレート作品として2ndアルバム『Imperfect Harmonies』をリリースするに至った。まさに天才、非凡の才能を作品として昇華し、SOADとは異なるアーティスト性を発揮してきたSerjであったが、その一方で着実に“SOADのSerj”を求める声が高まっていたのも事実であった。
11年、突如ワールド・ツアーを発表し、SOADが活動を再開するに至る。まさに衝撃的な再開となり、世界各地が熱狂の渦に包まれた。12年も夏に大規模フェスやツアーなどが予定されており、SOADの年となりそうだが、そんな最中、Serjのソロ作品がリリースとなる。活動再開の準備、そして各地のフェス出演など、多忙の中であっただろうことは予想に難くないが、その中でこのレベルのソロ作品をリリースしてくるSerjのバイタリティには脱帽するしかない。
アルバムの1曲目「Cornucopia」からSerjにしては底抜けに明るいロック・サウンドで驚かされるが、2曲目「Figure It Out」はSOAD的な狂気をはらんだ楽曲で、この作品がSerjのソロ作品でありながらこれまでの実験的な取り組みとは一線を画す、聴き慣れたSOAD的なアプローチ満載のモロにラウドロック・アルバムだということがハッキリと伝わってくる。SOADの活動休止中はSOADとは離れた音楽性を追求し、活動再開後は非常に近いサウンドとして返ってくるというのは非常に興味深いが、事実、このアルバムは天才アーティスト、Serjではなく、SOADのフロントマンSerjとしての作品として捉えるのが一番しっくりくる。唯一、SOADとの違いを上げるとすれば、SOADのサウンドの中枢を担う、Daron Malakian (Gt)の狂気に満ちたギター・リフがない点だと言っても過言ではないほどにアグレッシヴなトラックが多数を占めている。
このタイミングで『HARAKIRI』と題したアルバム・タイトルには非常に意味深なものを感じてしまうが、恐らくそれだけの覚悟と意気込みをこの作品に込めたということだろう。Serjの覚悟をあなたは受け止められるか!?SOADファン、非SOADファン問わず、Serjの真骨頂を体感して欲しい!
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