LOUD PARK 07特集｜TRIVIUM ライブレポート！！

Report : KAORU

今回のラウドパークで私が一番見たかったバンド、Triviumの登場だ。
実は前回の来日公演を逃してしまっていたのだが、周りのTriviumへの評価は上々だし、何より「The Crusade」というメガトン級の完成度を誇る、これぞ新世代メタルと言えるアルバムを作ったバンドなのだ。期待は高まるばかり。

ステージには「The Crusade」のジャケット画のモチーフが飾られている。
私は基本的にメタルバンドのこのようなファンタジー的な要素はいろんな意味で大好きだ。なんだかFINAL FANTASYの世界にいるみたいで！

というわけで、ライブ開始。一曲目は「To The Rats」だ。いきなりの高速チューン。
フロアでは早速！とばかりにヘッドバンキングが起こる。
（しかしヘッドバンキングというのはやはり髪を振り乱してやったほうがかっこいい。）
メンバーの立ち姿は、若いながらなかなか風格があってかっこいい。
Vo.GのMattは日系でかなりの童顔。髪型はいかにもメタラーなロン毛でお世辞にも今時の洗練されてる若者！な感じはしないが、文句なしに”赤レンジャー”な存在感。（古くてごめんなさい。）

演奏はというと、基本的にメンバー個々の演奏力自体はとても高いというのはこの一曲目からすぐに確信した。
しかし、音のバランスがあまり良くないのだ。特にドラムの音質は気になった。
「Detnation」ではドラムの音に合わせて手拍子が沸き起こる。
しかし！！！とにもかくにも全体的に演奏が走りまくりだ！速い！
インタビューによると、ドラムのTravisはドンカマ（リズムテンポを一定にするために聞くクリックのこと）は聞いていないとのことだった。
演奏が走る原因はもちろんドラムだけではない、ギターもベースもみんながリズムをちゃんと刻んでいないと走ってしまうものなのだが・・・う～ん、興奮してるのかな？
この曲はミディアムテンポな部分の”タメ”がいいところだと思ったので、残念だ。
しかしツインギターの絡みは見事で美しく、しっかりと魅せてくれた。
「Entrance Of The Conflagration」でも同じく、演奏が速い速い！
お世辞を言うなら「勢いのある疾走感ある演奏」と書けなくもないが、正直言ってただ単に勢いに任せて走ってしまっていて、ドラムだけ追いついていけていないという感じ。
（ていうかあの速さに追いつけるドラマーなんてなかなかいない。）
これはもしかしたらフロアの前列付近で思いっきりヘドバンをしていれば気持ちがいいのかもしれないが、じっくり見て聴いている分にはかなりつらい。
とてもグルーヴ感の気持ちいい曲なのでもったいない。Triviumの曲を知らない人もたくさん見ていたと思うが、そういう人にはどう感じたのだろう？
本当の曲の良さはちゃんと伝わったのだろうか。

しかしだ、この速さで、このギターソロが弾けるというのは、ある意味凄い。
Triviumというバンドには、オールドスクールなメタルへのリスペクトがとても感じられるバンドだし、ちょっと若年寄？（いい意味で）で成熟された曲を作っているが、こういう所を見ると「ああ、まだ”ちゃんと”若いんだなぁ～」なんてちょっと微笑ましくも感じたのも確かだったりもするといえばするのだけれど、これは私がTriviumが好きだからそう思えるのだろう。

MCではVo.GのMattがたどたどしい日本語で「オマエラサイコー！サケベー！」と煽る。
「A Gunshot To The Head Of Trepidation」ではまた美しいツインギターの絡みを聞かせてくれた。そしてフロアも「Hey!Hey!」と激しく拳を振り上げ、演奏に応える。
そして新たにシングルカットされた「Becoming The Dragon」。
複雑なリズムもお手のものでかましていく。
しかし、全体のまとまりという意味ではまだまだ成熟されていない。
曲の良さをもっと伝えるためには、もっと抑えるところを抑えるべきだと思う。
「Tread The Floods」ではやっとグルーヴが取り戻された感じだ。
ベースのPaoloのコーラスの絡みも綺麗にきまっている。
そしてこのライブでのハイライトと呼べる「Anthem(We Are The Fire）」。
「俺達は火」なんて拳を挙げる、暑苦しいことこの上ない曲なのだが、今のメジャーロックシーンには、この”暑苦しさ”を感じさせてくれるバンドはとても少ない。
ちなみに、私の推測ではあるが、彼らはわざわざ、ある意味計算して暑苦しくしているんじゃないかと思う。
私が日常的に聴いている多くのロックは”クールさ”や”スマートさ”が良さだったりもするが、Triviumは”スマートで暑苦しい”感じと言おうか。暑苦しいことは悪いことじゃない。ただちょっと気恥ずかしいだけだ。しかしその気恥ずかしさも、のるか、そるかだ。
私はのる。のれば火になれるのだから！
もちろんフロアは、拳、ヘドバン、モッシュの嵐。
ただ、演奏はまたCDよりも大分速くなっている。
もちろん、CD通りの演奏なんかじゃなく、ライブはライブでの良さというのがあるというのは百も承知だが、どうしてもここまで速いと、曲の良さが壊れてしまっていて残念だ。
「Pull Harder On The Strings Of Your Martyr」にて本編は終了。

そして、エンディングSEには、ゲームでお馴染みのFINAL FANTSYの映像作品「FINAL FANTSY ADVENT CHILDREN」のサントラの曲が流れた！
メタルとファンタジーの世界というのはなかなかリンクしているものだし、自分は個人的にFFシリーズの大ファンなのでとても嬉しかった。

ライブを終えての感想だが、Triviumというバンドは、絶対に今後のメタルシーンにおいて、更にメジャーロックシーンにおいても、非常に重要な存在になることは確かだと思っている。
メンバーの存在感、更にMattのヒーロー性、あまりにも完成度の高い楽曲力。
どれをとっても申し分のない存在だ。
しかし彼らはまだライブにおいては未成熟だということを十分に感じてしまった。
ある意味微笑ましいことでもあるのだが、表現力を磨くことと、曲の良さを壊さない程度のバランスを考えた演奏を、これから期待したい。
若いというのは悪いことではない。それは走り気味な演奏のことにおいても言える。あれだけ速い演奏が出来るだけでも凄いことだし、フロア前方はとても興奮するだろう。
しかし彼らはきっと、フロア前方だけではなく、スタジアムの後方まで届かせることの出来る力を持つバンドだと思うのだ。だからこそ、これからのライブ力向上に期待！