LIVE REPORT
BLOODYWOOD
2025.05.08 @豊洲PIT
Writer : 菅谷 透 Photographer:Teppei Kishida
インド発のメタル・バンド BLOODYWOODが、来日ツアー"RETURN OF THE SINGH - JAPAN TOUR '25 -"を開催した。特大のインパクトを残した2022年の"フジロック(FUJI ROCK FESTIVAL)"、2023年のツアーに続く3度目の来日となった今回は、自らの出身地を題材にした最新アルバム『Nu Delhi』を携えてライヴを実施。前回から大きくスケール・アップした会場で、民族音楽とメタルの融合という独自の音楽性を全面に押し出した、熱狂のパフォーマンスを披露し、日本のファンとの固い絆を再確認していた。
オープニング・アクトを務めたEMNWは、変幻自在のツイン・ヴォーカルが映えたミクスチャー・ロックで魅了。BLOODYWOOD目当てと思われる外国人の観客も、楽しそうに身体を揺らしていたのが印象的だった。続くCrossfaithは海外アーティストのサポートを務めるのは久しぶりとのことで、闘争心を剝き出しにしたステージを展開。最新アルバム『AЯK』収録曲だけでなく、「Monolith」、「Jägerbomb」といった代表曲や、会場に集った洋楽ファンを狙い撃ちしたTHE PRODIGY「Omen」カバー等、多彩なセットリストでフロアを沸かせていた。
会場の最後方でも汗ばむほどの熱気が充満したところで、いよいよBLOODYWOODのメンバーが登場すると、1曲目から彼等の人気を決定付けた「Dana Dan」を投下! ラップ・ヴォーカルのRaoul Kerrは、格闘家のように鍛え上げられた肉体を大きく揺さぶりながら正確にリリックの連射を放ち、もう1人のヴォーカルであるJayant Bhadulaも、野性的なグロウルと唄心に溢れたメロディックな歌唱で観客を突き動かしていく。サビでは大合唱が巻き起こり、早くも会場の熱量がレッド・ゾーンに突入していた。Jayantが日本語で"久しぶりだな、東京!"と挨拶すると、2曲目は最新アルバムの表題曲「Nu Delhi」。躍動感あるバウンシーなビートと、Sarthak Pahwaが奏でるインドの民族楽器である両面太鼓 ドールのリズムが絡み合い、観客の本能的な衝動を解き放っていった。
観客のBLOODYWOODコールに対し、Raoulが拳を胸に当て噛みしめた後は、"みんな、夢を美しく保ち続けてほしい"というメッセージから「Aaj」をプレイ。中盤ではギタリストのKaran Katiyarが伝統的な笛に持ち替えてのソロを披露、さらにボルテージが高まっていく。インド料理をテーマにした「Tadka」では楽器陣の毒霧(!)も炸裂し、会場の熱気はますます上昇を続けていった。続く「Jee Veerey」では心の闇へと立ち向かう意志を壮大なサウンドスケープで提示。モダンで重厚なメタル・サウンドと、郷愁を誘うKaranの笛の音色が融合したこの特別な響きこそ、BLOODYWOODの真価と言えるだろう。
JayantとRaoulが観客をアジテートした後は、最新アルバムよりBABYMETALとのコラボ曲「Bekhauf」へ。会場全体に響き渡るシンガロングでハイライトと言うべき瞬間を描き出すと、Jayantは"前回(の東京公演)の倍はラウドだよ"と感激した様子。会場に集まったファンはもちろんプロモーターやPA、照明といったスタッフにまで謝意を示し、メンバーを紹介した後で、"We Are BLOODYWOOD!"という力強いコールが場内に轟き渡った。足元を揺るがす一斉ジャンプの嵐が生まれた「Machi Bhasad (Expect A Riot)」では、KaranとSarthakがフロアに突入。さらなる熱狂のるつぼと化していく。本編ラストにプレイされた「Halla Bol」ではドラムを除く5人が最前線に躍り出てヘドバンを披露、大きな余韻を残してステージを去っていった。
鳴り止まない拍手を受け、メンバーが再びステージに登場。アンコールとして演奏されたキラーチューン「Gaddaar」の強靭なヘヴィ・サウンドで、再びフロアはカオスに導かれていった。中盤ではJayantが観客にパンジャブ語のフレーズをレクチャーし、難易度の高さに観客が思わず苦笑いする一幕もあったが、これもまた彼等ならではの文化交流だ。丁寧な解説で無事言葉の壁を乗り越え、シンガロングがこだますると、一際アグレッシヴなパートに突入。白熱の盛り上がりでショーを締めくくった。観客の感謝が込められたBLOODYWOODコールに、Raoulは"この先人生でクソみたいなことがあるかもしれないけど、最期の瞬間までこの夜の経験を心に留めていてほしい。それがニュー・デリーからの想いだ!"と心に訴え掛けるメッセージで応えていた。
そして、この夜最大のサプライズはフィナーレに待っていた。Karanがガールフレンドの前で膝をつき、公開プロポーズを敢行したのだ! 答えはもちろんイエス。2人がハグを交わすと、数千人の"立会人"からは温かく力強い祝福の拍手が送られていた。ライヴ前に実施したインタビューでも日本への想いを語っていたKaranだが、彼の人生における重要な転機の舞台としてもこの地を選んでくれたことで、音楽を超えた絆が生まれたと言えるだろう。バンドが再び戻ってきた際は、さらに多くの人々に笑顔とパワーを与えてくれるはずだ。
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