LIVE REPORT
ALIVES
2021.12.13 @下北沢SHELTER
Writer 荒金 良介 Photo by watanabe"KOOL"syo
ライヴ終了後に本人にも言ったけど、曲間のMCがとても長かった。ここに辿り着くまで、そして、今日という日を迎えるまでに様々な感情を抱えていたに違いない。その思いがここで爆発したのだろう。加えて、バンドで約20年というキャリアを積んできた彼の、初々しい表情や立ち振る舞いが実に新鮮だった。その意味で今しか観ることができない貴重な公演であった。
ex-GOOD4NOTHINGのTANNY(Vo/Gt)が立ち上げた新バンド、ALIVESが1stアルバム『Code of Alives』を引っ提げ、"LET'S GO FREEDOMS TOKYO"と題したワンマン公演を決行。サポート・メンバーは音源同様にHIDETA(Ba/SHACHI)、KOU(Dr/STANCE PUNKS)が務める形となり、今回が東京初ライヴにして現編成で2回目のステージである。
近未来調のSE「Let's go freedoms」が流れると、「Believe」でショーは始まった。胸をすくパンキッシュな曲調で駆け抜けると、次はTANNYの歌メロを存分に生かしたミドル・テンポの「And have some hope」を披露。2曲目を終えた時点で"いっぱい間違えて、アガッてます!"とTANNY。
続いて「Let me in」、「Beyond the light」とプレイしたあと、「Carry on」においては切ないメロディで観客の心に寄り添っていく。そして、MCネタをスマホに記録していたらしく、ドラマー KOUの天然話を筆頭に脱線に次ぐ脱線のMCが続く。そんなTANNYにHIDETAが優しくも厳しいツッコミを入れ、場内が笑いに包まれる場面が多々あった。
未発表の新曲を挟み、ここでTHE CLASHの「I Fought The Law」、BLINK-182の「Dumpweed」のカバー2曲を披露。いずれもTANNYのルーツ音楽と言えるバンドで興味深く聴いた。ショート曲「1 minute blast」をやり終えると、"みんなとの約束を果たさなきゃと思い、どんな形でもライヴハウスに帰ってこようと思った。あいつ頑張ってるな、じゃあ、僕もと思ってくれたら......。お星様の曲を"と前置きして「ANDROMEDA」をプレイ。ミラーボールが回る中、壮大なスケール感とともに優しく歌い上げるメロディが魅力的だった。エモーショナルな「Break the wall」を放つと、ライヴは終盤を迎える。クールに歌い上げる2曲目の新曲を経て、ファルセットを効果的に用いた「Enough」も聴き応え十分。そして、本編ラストはMV曲「Sky dance」を披露。同期を使ったダンサブルな曲調で、これが予想以上のライヴ映えだった。伸び伸びとした歌声でフロアを踊らせ、凄まじい熱量で観客を包み込んでいった。
"ワンマンやし、アコギやろうかな"と語ると、アンコールでは弾き語り形式で「Let me in」を1曲披露。ラスト曲「ON THE LINE」では観客から自然とクラップが湧き起こり、ワンマン公演は大盛況のうちに幕を閉じた。疾走感溢れるパンクから胸に迫るエモーショナルなナンバー、さらに情景が鮮やかに浮かぶ壮大な曲調まで、TANNYの音楽的キャパシティを存分に魅せつけたパフォーマンスの数々。年齢を重ね、今のTANNYにしか表現できない多彩なアプローチを、たくさんの人たちが心から楽しんでいた。
ALIVESは始まったばかりである。1枚のフル・アルバムしか発表していないため、カバーや新曲2曲を盛り込んだ内容となったものの、MCを含めて彼の人柄が色濃く表れたショーとなった。今後の動向も温かく見守っていきたい。
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