LIVE REPORT
RAZORS EDGE
2016.10.23 @下北沢ERA
Writer 荒金 良介
真っ昼間の"THRASH暴動"に目も身体も完全に覚め、1時間強のライヴが終わったあとの余韻は半端じゃなかった。そう、改めて余韻に浸り、振り返って噛みしめたくなるほどRAZORS EDGEのライヴは壮絶すぎるのだ。こっちの意識を一心不乱にさせる怒濤の演奏力に身を任せたら、あとはベルトコンベアーのごとくラストまで運ばれていくだけ。その息つく暇を与えない瞬間の美学を味わうために、多くの観客がこの下北沢ERAに集った。
RAZORS EDGEが今年結成20周年を祝したベスト盤『RAZORS MANIA』を10月19日に発売。今日はその新作を購入した人のみが、無料アウトストア・ライヴに招待されるというものだ。
開演時刻12時半を10分ほど回り、「THE CLOSE GAME」で火蓋を切ると、手を上げて騒ぐ人たちが散見された。間髪いれずに「DO THE SPIN SOUL」に移ると、次から次へと曲を畳み掛けていく。すると、様子見していた観客の空気はみるみると崩壊し、ステージとフロアが一体化した濃密空間がすぐにできあがる。今回は近作ということもあり、あえてベスト盤からハズしたと思われる最狂最速の傑作6thアルバム『RAW CARD』から「WE UNITE」、「FAITH」を序盤に織り込んでくるあたりも嬉しかった。
バンドの演奏は徐々にヒートアップし、エンジン全開状態に拍車がかかったのは「FUCKED UP!」からだろうか。ライヴで1回しかやったことがないという、15周年記念作品の表題曲だ。それから「STORMY! STORMY!」に繋いだあと、目がパンパンだったKENJI RAZORS(Vo)の目がようやく覚めたとTAKA BEEF(Gt)がMCでイジる場面も微笑ましかった。「MOUNTAIN MOUNTAIN」、「RAZORS WIND」とかますと、文字どおりの高速スラッシュ・チューン「THRASH 'EM ALL!!」を放つ。1stアルバム表題曲で特に初期作は全曲1曲目のつもりで書いていたという言葉を裏づけるとおり、思わずTAKA BEEFは"CDどおりに弾かれへん"と苦笑いすると、"(当時は)速さでごまかしていた"とKENJI RAZORSがポロッと口にする。初期衝動満載の楽曲も20年という歴史の中で磨き抜かれ、凄まじい威力で聴き手の懐を抉ってくる。
中盤には各メンバーが思い入れのある楽曲を披露するスペシャル・コーナーに突入。KENJI RAZORSは"宇宙に飛び出したようなハードコア"と形容していた「JET STREAM」、TAKA BEEFはBLACK SABBATHの「Neon Knights」風リズム(※個人的に脳裏に浮かんできた曲です)からカオスの熱狂を作り上げる「BLITZKRIEG THRASH!!!!」、KRASH(Dr)はライヴであまりやっていない「SKATE RIOT」、MISSILE(Ba)はthe原爆オナニーズを意識したという「POSTMAN」とメンバーの嗜好性がわかる選曲で会場も大盛り上がり。これを機にどれも定番セットリストに入れてほしいと思うほど、楽曲の個性が映え渡っていた。
後半戦に入ると、「TRAIN TRAIN TRAIN」で、観客に肩車された状態でKENJI RAZORSが絶叫し、観客も笑顔になり、ノリノリになって踊り狂っている。もはや昼も夜も関係なく、時間軸さえも吹っ飛ばすようなエネルギーが会場に満ち溢れていた。本編を「THRASH MARCH」で締めくくると、アンコールでもKENJI RAZORSは両手を広げてムササビダイブで観客の中に溶け込んでいく。"ああ~、最高!"という言葉を千回叫んでも、この興奮は伝わらないだろう。ライヴハウスでしか味わえない熱狂がここにはあった。そう言えば、観客の中にわざわざ名古屋から来たという10歳の女の子もフロアに交ざっていた。ずっとRAZORS EDGEを追いかけてきた往年のファンから、若い世代までガッツリと巻き込むパワーにも唸らずにはいられない。残念ながら、今年12月17日のワンマン・ライヴをもって、11年間活動を共にしたTAKA BEEFが脱退することに触れ、"次のギターは決まってない!"とKENJI RAZORSは堂々公言していた。憶測にすぎないけれど、まだ決めたくないというのが本音なのかもしれない。
常に"今、この瞬間"を全力でスパークし続けることに命を賭けてきた彼ら。その瞬間をコツコツ積んできた20年というとてつもない年月の重さに、震えるような感動を覚えたワンマン・ライヴだった。
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