LIVE REPORT
WINTERSLEEP Japan Tour 2008
2008.02.25 @渋谷CYCLONE
Writer 吉野将志
開演ギリギリで会場に到着するやいなや、階段付近でまさかまさかのメンバーとの遭遇。
こんなところにWINTERSLEEPがいるなんて・・と恐る恐る、話し掛けてみる。思いのほかとっても気さくに答えてくれ、気持ちよく会場内へと足を運ぶことができた。「待っていたよ!」と言われんばかりの、アットホームで賑やかな雰囲気がそこには溢れていた。そんなフロアに迎えられて、オルタナティブの遺伝子を内包するとまで言われたWINTERSLEEPのライブが始まるのである。
のっけからそれまでの雰囲気をぶち壊すかのような激情インプロ。そして、新作「Welcome To The Night Sky」から「Miasmal Smoke & The Yellow Bellied Freaks」。周りを見回してみると、「え?こんなに激しいバンドなの?」と思ったのはどうやら私だけではなかったらしい。
WINTERSLEEPへの先入観がほどよく緩和してくる頃、またまた新作から「Archaeologist」が演奏される。タイトかつエネルギッシュなリズム隊、少し懐古的にも感じさせるギターのディストーション。どこか懐かしくも、温かくも聞こえる古き良きオルタナティブ/グランジ調のサウンドに気持ちよく身を任せていた。
まさにその時である。五臓六腑にも染み渡るような、ニルヴァーナの好敵手こと、パール・ジャムのエディ・ヴェダーをも彷彿とさせる、ポールの歌声に衝撃を受けたのは・・・。声の響きだけでこんなに熱くさせられるなんて、久しぶりだ。演奏されるすべての曲にのせられる彼の歌声にずっと惹きこまれてしまったほどである。ヴォーカリストとして、またバンドのフロントマンとしてのしっかりとした風格も感じさせるポール・マーフィー。そんな彼から時々こぼれる笑顔がとっても素敵でお茶目であったことは特に印象的であった。小規模な会場だからこそ生まれる親近感以上のものをその笑顔から感じることができた。
ライブ中盤から後半にかけては「Search Party」「Astronaut」「Laser Beams」など、新作の楽曲中心に構成されたセットリストであったために、会場はポカーンとするかと思いきや、ステージのテンションに比例して会場もヒートアップしていく。狭いステージに制限されながらも、内に秘める感情を時にダイナミック(動的)に、時にはスタティック(静的)に表現しており、ステージから伝わってくる感情がフロアにも広がり、聞いている我々を一度も飽きさせることなく、ライブ終演を迎えていった。全体としては、とにかく月曜日の疎ましさを吹っ飛ばすような、とっても気持ちのよいライブであった。
古き良きオルタナティブ/グランジサウンドを鳴らすバンドが少なくなっている現在のロック・シーン。もし仮にそうだとするならば、WINTERSLEEPはオルタナティブ/グランジを伝承していく貴重な存在であるし、また、だからこそこれからの楽しみなバンドでもあると思う。
Reported by 吉野将志
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