INTERVIEW
LORNA SHORE
2025.09.10UPDATE
2025年09月号掲載
Member:Will Ramos(Vo) Adam De Micco(Gt)
Interviewer:井上 光一 Translator:安江 幸子
現代エクストリーム・メタル・シーンを牽引するバンドにまで成長を遂げたLORNA SHORE。世界中のファンが期待するなかで、今年の9月12日に、いよいよ新作『I Feel The Everblack Festering Within Me』が、リリースされる運びとなった。本誌ではWill Ramosとリード・ギタリスト、Adam De Miccoの2人へのインタビューを敢行。最新作についてはもちろん、来日公演の思い出等もたっぷりと語ってもらった。
-前回のインタビュー(※2023年3月号掲載)は『Pain Remains』(4thアルバム)の日本盤(2023年)リリースが決定したときでした。日本への来日予定について聞いた際に"俺のマニフェストの中にある"と言ってましたね。"俺たちは絶対に行くよ。ただ時間を少しくれ"とも言ってくれましたが、今年マニフェストを無事実現できましたね("Live in Tokyo 2025")! 日本はいかがでした?
Will:バンドの全員が日本に行きたいと心から願っていたのが特にあのときだったんだ。行ったことがなかったしね。俺個人の視点から行っても最高だったし、全員がそう思っていたと思う。みんな本当に楽しんでいたよ! 本当にいろいろ見ることができたしね。
Adam:そう、素晴らしい旅になったよ。多くのメンバーがガールフレンドも連れてきていたから、パートナーと一緒に日本を楽しむことができたし。旅はよくしているからカルチャー・ショックというのとはちょっと違うかな、でも今まで行ったどことも違った。クレイジーな異文化体験だったよ。いられるだけで最高の気分だった。ライヴが終わった後で延泊してね。Willは俺よりも長くいたよ。通常はツアーで街を訪れても翌日には出て行ってしまうけど、東京で1日だけプレイして去るというのはあまりにもったいないと思ってね。俺たちの誰もそうはしたくなかった。それで延泊したんだけど、歴史的なもの、クールなもの......とにかく何もかも素晴らしくて、すごく気に入ったよ。
最高の時間が過ごせたから、また行きたいと心から願っているんだ。うちからあんなに離れているのにすごくくつろいだ気分にさせてもらえるなんてクレイジーだったよ! ライヴでも大歓迎してもらったし、謙虚な気持ちになれる、最高の経験ができた。日本でプレイできたなんて本当に素晴らしいことだよ。
Will:大好きな国になったよ。
-LORNA SHOREのようなエクストリームなメタル・バンドが、平日に2,000人以上を収容できる会場をソールド・アウトさせたということは、日本において間違いなく快挙でした。
Will:本当に。
-そして、通算5枚目のアルバム『I Feel The Everblack Festering Within Me』完成おめでとうございます。聴いてみて、LORNA SHOREがバンドとして新たなレベルへと間違いなく達した作品だと確信しました。各メンバーも本作を作り上げたことでそれぞれの成長を実感されているのではないですか。
Adam:もちろん! 前回(『Pain Remains』)を超えるためにすごくハードに頑張ったよ。まぁ作品を出すたびに前回を超えようとしてはいるけど、前作では俺たちの土台が本格的に固まったし、バンドとしての標準が確立されたから、それを超えるというのは至難の業だったんだ。今回はそれが達成できた実感が強い。全く簡単なタスクではなかったけど、今こうやって形になって、心から報われた気がしているよ。
-レコーディング・プロセスについてお聞かせください。ツアーもいろいろしていたと思いますが、そんななかでアルバムの曲作りやレコーディング作業はいつ頃、またどれくらいの時間を費やして行われたのでしょうか。
Will:長かったよ~。今回は今までで一番オフの時間が長かったんだ。去年の前半、6ヶ月くらいオフがあってね。その大半を使って曲を書いたりスタジオに行ったりした。まだ何も曲が書けていないときも、そのときできることをするためにスタジオに入ったりしてね。1ヶ月取り組んで1ヶ月オフにして、また1ヶ月取り組んで、ツアーに行って......という感じで、いろんなことの合間を縫って作っていたよ。
Adam:ほぼ去年1年かけて作った感じかな。去年の1月初めくらいから曲を書き始めて、その後はWillも言っていたけどスタジオを行き来して。それが4月、6月、8月......ツアーから戻った後も12月あたりに仕上げの作業をやっていた。実は今年の初めに日本にいたときも、ミキシングされた音をチェックして調整していたんだ。正味1年くらいかけて作ったと言えるね。
-時間も労力もたくさんかけた作品なのですね。
Will&Adam:そうだね。
-プロデュースはJosh Schroederが担当していますね。彼と組むのは3作目になります。あえて新しいプロデューサーを付けなかったのは、彼が6人目のメンバー的な存在に近いとか、バンドのサウンドを一番よく理解しているという判断だったのでしょうか。
Will:俺たちが道に迷ってしまったことが何度かあってさ。そういうときには導いてくれる人が必要なんだよね。何がいいって、彼が俺たちの人となりをすごくよく知っているということなんだ。サウンドは常に変化し続けているけど、彼は俺たちと長い間一緒にやってくれているからね。
Adam:そうだね。このアルバムで新しい人とスタジオに入るのは大変だったと思う。Joshは俺たちのことをすごく知っているし、人としてもよく理解してくれているから助かっているんだ。それに一緒にいてとにかく心地いい。一緒にプロセスを進めていくのに慣れているから、今回も彼で行ったんだと思う。
-先程"過去の自分を超える"ことについて話していましたが、やはりこれまでやってきたことを分かっている人と組むというのが、新しい方向に行くときは自然な流れなのでしょうか。
Adam:ああ。方向性という意味では、俺たちのほうが彼より思い切りがいいかもしれない。俺たちの中からそういう欲求が出てくるものだからね。俺たちの話を聴いて理解してくれるというのが、彼の役割みたいな感じなんだ。
Will:彼が俺たちをクレイジーな方向にプッシュしようとしても"おーい"と言える仲だしね。多くのプロデューサーはただプッシュするだけで、望み通りのものができなくてもとにかくプッシュしちゃえみたいな感じだけど、彼は俺たちの言い分に耳を傾けてくれるんだ。そういう本質的なところが大切なんだよね。
-本作は、あなた方が得意とするシンフォニックなデスコア、という枠内に留まらない挑戦が前作以上に感じ取れます。先行シングルとして公開された「Oblivion」はMVも含め、ドラマチックで壮大なスケールに圧倒させられました。世界の終末や人々への問い掛けのような歌詞も映画的なイメージを想起させますね。
Will:ありがとう!
Adam:そう、間違いなく軸となる曲だったね。あの曲ができあがるまでは壁にぶち当たっていた感があったけど、あれができてから"よし、アルバムに重みができたぞ"と思えるようになった。制作に勢いができて、他の断片でしかなかった曲もそこから完成に向かっていったんだ。
-「Oblivion」は最初にできあがった曲の1つだったのでしょうか。
Adam:いや、5曲目くらいだったと思うけど、序盤の4曲を経てようやくこの曲から弾みが付いた感じかな。5曲目か6曲目くらいで、よしこれを高めていこうという手応えを得たんだ。それまでの曲でも手応えを得てはいたけど、ここへきてようやく確かになってきた感じ。"よし、クールだ。やっとみんながワクワクできるものができた"ってね。あと、それまでとは違うものができたという意味でもエキサイティングだった。それまでに書いた曲は俺たちの得意分野から外れすぎているか近すぎるかのどっちかで、俺たちらしさも感じられるけど、俺たちが今までやったものとは違う、そういうものがようやくできたんだ。ちょうどいいところに着地できたような気がする。
-「Unbreakable」にも驚かされました。LORNA SHOREのディスコグラフィの中でも群を抜いてポジティヴですし、リスナーを鼓舞するような力強いアンセムですね。
Will:まさにそれが俺たちの狙っていたところだったんだ。LORNA SHOREは今までああいうタイプの曲を書いたことがなかったから、書くのが特に難しい曲でもあったけどね。とてもアンセミックで......と言っても通常"アンセミックで壮大"と言うとシンプルなものを意味するけど、LORNA SHOREの場合はあまりシンプルになりすぎてもいけないし、十分なシンプルさを保つと同時に超ベーシックなものにはしたくないというのがあって、俺にとっては無理に近いものがあった。でも最終的にこういうものができて良かったよ。俺個人としてもプレイするのが大好きな曲の1つになった。 全部の曲のプレイスルーをいろいろとやってみたけど、あの曲が一番上手くいったと思う。ライヴでやったら絶対に最高のものになるよ。会場中の人たちが"We are unbreakable"と歌う姿を想像するだけでワクワクするんだ。すごいことになるよ。
-まったくですね。MVを観ていると、ライヴでみんなで"We are unbreakable"と盛り上がれるんだなと思います。
Will:それこそが狙いだよ!
Adam:そう、狙いだったんだ。曲を聴いたとき、ツアー中にライヴを撮ったらいいMVになるだろうなと考えたけど、実際にライヴをやらないとその瞬間は撮れないし、でもアルバムを出す前に曲を出したかったから、最善の方法(エキストラを呼んでライヴ風景を作って撮る)でそれが達成できたと思う。今までああいうMVを撮ったことがなかったから、すごくクールだったよ。みんな曲を聴くのが初めてだったから、気に入ってもらえるかも分からない状態で撮ったものだしね(笑)。
撮った後のオーディエンスも最高だったよ。撮る前はどうなることやらと思ったけどね。最初は初めてのことだったしちょっと変な感じがしたけど、2、3テイク撮ったところでオーディエンスと絆ができて、撮影をエンジョイすることができるようになったんだ。楽しんでいるところが反映された内容になったと思うよ。