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INTERVIEW

LORNA SHORE

2025.09.10UPDATE

2025年09月号掲載

LORNA SHORE

Member:Will Ramos(Vo) Adam De Micco(Gt)

Interviewer:井上 光一 Translator:安江 幸子

俺は"悲しくてハッピーな"曲が好きなんだ。そのパーフェクトな例がこれだと思うね


-『Pain Remains』の楽曲は歌詞という点である種の物語的な、寓話的な形で悲しみ等のエモーションを表現していたように思いますが、本作は非常にパーソナルな、ご自身の経験を反映したような歌詞を書かれていますね。「Prison Of Flesh」や、「Glenwood」といった曲が特に顕著ですが、内面を曝け出すような歌詞を書くことは非常に勇気が必要だったのではないですか。

Will:イエス&ノーだね。例えば「Glenwood」みたいな曲はこれまでもたくさん書いてきたし。それに、俺は悲しい曲が好きなんだ。

-前回もそう言っていましたね。

Will:ああ。時にはそういう感情をいろいろ紐解くことが大きな意味を持つことがある。どう書けば筋が通るものになるか考えあぐねていたときのことを思い出すよ。いろんな感情を思い出しながら、振り返るのってクレイジーな作業だななんて考えていた。過去に起こったいろんなことに思いを馳せてね。歌詞を書きながらそういう感情を思い起こしていたら、"よし、これはいいものができるぞ"と思える瞬間があったんだ。完成したものでとてもいい気分になれるんだったら、この作業も必要なんだなと思えてね。 俺は悲しい曲が好きだから......と言うと、"悲しくなることが好きなの?"なんて思う人もいるかもしれないけど、悲しい出来事を紐解くのはクソみたいに嫌な作業であると同時に、大きなカタルシスを与えてくれる作業でもあるんだ。特にこういう曲を作るのは、俺という個人がその状態から抜け出すためにも必要なことだよ。今はただ、すごくいいものができたと思っているんだ。俺にとって大切なのはそれだけだよ。"Hell yeah!(そうさ!)"と言いたくなるね。みんなにも気に入ってもらえると嬉しいよ。「Prison Of Flesh」も同じというかずっと書きやすかった。アルバムの中には書きにくかった曲が他にいろいろあるんだ。前作『Pain Remains』も独特のエモーショナルな面があったけど、今回は他の人にとっても現実味のあるエモーショナルな作品になったね。

-「War Machine」も今までのLORNA SHOREにはあまりなかったタイプの曲だと感じます。特にギターのリフやソロ、イントロで人々の悲鳴や銃撃の音等がサンプリングされているといった点で、新鮮な驚きを感じました。迫りくる感じがたまりませんね。

Adam:これは俺のお気に入りでもあるんだ。ライティング・プロセスの初期に出てきたアイディアの1つだったんじゃないかな。ツアー三昧でLORNA SHOREの曲を散々プレイしてきた後だったから、それまでやってきたものとは違うものを書いてみたいと考えたんだ。LORNA SHOREの曲に飽きたという意味じゃないけど、何か違うことをやってみようってね。 それで、自分たちが聴いて育ってきた曲たちへのオマージュは、今までやったことがなかった気がしたから......削ぎ落とした感じのメタルをやろうと思った。俺たちがメタルにハマるきっかけになった、METALLICAとかあの時代のバンドに敬意を表しつつ、自分たちならではのバージョンを作ろうと考えたんだ。それが俺のアプローチだったね。俺たちをメタルに出会わせてくれた曲みたいなものをいかにして書くか、なおかつ今までやったことのないようなヴァイブをいかにして持たせるか。 俺にとってはちょっと変わり種の曲になった。普段バックステージなんかで聴いているタイプの曲だね。フェスでもこの手のバンドが出ているときには観に行くし、そういうバンドに敬意を表する曲なんだ。同時に普段自分たちがやっているタイプの曲からいい感じに離れられるから楽しいよ。大胆不敵で削ぎ落とした感じのメタル・ソングが欲しかったんだ。

-しかもモダンな感じになりましたね。

Adam:そう、それが狙いだったんだ。90年代、自分がガキだった頃はMTVで"MTV Headbangers Ball"(メタル専門番組)を観ていたから、あの番組にフィーチャーされるような曲を作ったらどんな感じになるだろうと思って書いた。あの番組にフィーチャーされるような曲と同じエネルギーを持った曲を作りたいというのが、俺のゴールだったんだ。

-「Lionheart」のサビで登場するクワイアによるメロディアスなコーラスや、「Death Can Take Me」のクリーン・パートとまではいかずともメロディに近いサビを、Willが披露しているのも印象的です。あなたは、ご自身のYouTubeチャンネルで公開している、BRING ME THE HORIZON「staTues tHat CriEd bloOd」や、SLEEP TOKEN「Hypnosis」のカバー動画を観れば分かるように、メロディも歌えるヴォーカリストですよね。LORNA SHOREで歌を取り入れる、というアイディアは前作や本作の制作時にも特に考えることはありませんでしたか。

Will:将来的にどこかの時点で取り入れたらクールだなとは思うね。ただ、曲に導かれてそうならない限りは積極的に入れるつもりはないんだ。多くのバンドは(クリーン・ヴォーカルを)"入れるために入れる"ことがあるけど、必ずしも曲にとっていいことになっているとは限らないしね。その方向に進むには段階を踏む必要がある気がする。0からいきなり100に持っていくのは、俺の見る限り、たいていの人たちは上手くいっていない。すごくリスキーな動きなんだ。(グロウルからクリーンへの)ギャップを埋めるには、少しずつ導入していったほうがいいと思う。 君が挙げてくれた「Death Can Take Me」ではピッチ・スクリームやフォールス・コードのピッチ・スクリームを取り入れているし、「In Darkness」ではフライ・スクリームもやっている。「Death Can Take Me」はフォールス・コードだからすごく低いけどメロディもあるんだ。その狙いは、みんなに歌ってもらいたいということでね。歌える人は歌えばいいし、スクリームできる人はスクリームすればいい。スクリームばかりだとどうしていいか分からないオーディエンスもいるからね。歌詞の内容によっては、ライヴで一緒に歌ったほうがパワフルに感じられるものもあるだろうし。それに個人的にもライヴで"歌う"のが好きなんだ。将来的に曲に求められたら、メロディをたくさん歌うのもいいと思う。ただ、今は今までやってきたヴォーカルを入れるほうが得策な気がするんだ。 ちなみに「Lionheart」のコーラス部分はメンバー総動員だったんだよ! プロデューサーもフォトグラファーも参加してもらった。

-フォトグラファー!?

Will:ああ。すごく楽しかったよ。

-合唱団を使ったわけではなかったんですね?

Will:そう、Adamも歌ってるよ。

Adam:俺も歌ってる(笑)。

Will:全員フィーチャーされてるよね。

Adam:あの日スタジオにいた人全員、強制参加だったんだ(笑)。

-ディレクションはどなたが?

Will:俺だ。

Adam:その日スタジオに行ったらこいつが"今日はヴォーカルをやってもらう"なんて言うから、"いったいなんの話だ!?"と思ったよ。"俺はギタリストだぜ?"と思ったら、"この部分に合唱団っぽいものを思い描いている"と言うから"マジか!"と感じたね。しょうがないからみんなでスタジオに入って歌ったら、これがもの凄すごく楽しかった。たしかこいつの狙いとしては、ヴォーカルに聞こえない、プログラミングみたいな声を録ろうということじゃなかったかな。Will 1人の声で100万回録って重ねるんじゃなくて、いろんな人が束になって一度にやったほうが、曲の理に適っていると考えたんだ。すごくクールな一時だったし、心から楽しめたよ。

Will:これも、みんなにライヴで歌ってほしい曲の1つだね。"Yeah!!"みたいな気分になってほしい。自由に自分を解き放ってさ。飛び跳ねたりしてもいいしね。

-もしかしたらバンド史上一番ファンが歌いやすいアルバムになっているかもしれませんね。

Will:イエスと言えるね。同時にノーとも言えるけど(笑)。

-あなたの真似をパーフェクトにできる人はいないでしょうからね(笑)。

Will:それはどうかな(笑)? このアルバムからはファッキンなくらい最高のヴォーカル・カバーがいっぱい生まれる気がするよ。そうしたら俺はお役御免だな(笑)。

Adam:いや、新しいやつを探すつもりはないよ。残念ながらお前は俺から離れられないんだ(笑)!

-Willは唯一無二ですからね(笑)。さてアルバムのラストを飾る「Forevermore」は、前作の「Pain Remains」3部作(「Pain Remains I: Dancing Like Flames」、「Pain Remains II: After All I've Done, I'll Disappear」、「Pain Remains III: In A Sea Of Fire」)を1曲でまとめあげたような大作ですね。前作の「Pain Remains III: In A Sea Of Fire」は、最後、"I'll salt the earth and disappear in a sea of fire"という虚無的な一節で終わりますが、本作は"Together forever reborn. We live on forevermore"と叫んで幕を閉じます。歌詞全体的にもWillの死生観のようなものが感じ取れましたが、どのようなメッセージが込められているのでしょうか。

Will:この曲はもともと喪失について書いたものだったんだ。Adamも俺も家族を失っていたから、カタルシスになる曲が欲しかった。わりと初期段階から、ヴァイキングの葬式みたいなものを思い描いていたね。彼等の一部は死ぬと舟に乗せられて、その舟は海へと押し出されたところで火を放たれるんだ。そうするとみんなとてもいい気分ととても悲しい気分を同時に味わうことになる。 この曲の考えとしては、死が俺たちを分かつことがあっても、俺たちはなんらかの形で一緒に居続けることができるということなんだ。最後のほうに"I know this isn't goodbye / We'll meet again on the other side(分かっているんだ これはさよならじゃない/俺たちはあの世でまた出会うだろう)"ってフレーズが出てくる。信仰がなんであれ、そういうふうに考えたい人というのは世の中に多い。このクレイジーな宇宙の中で、きっとまた会えるだろうってね。俺たちにとってこの曲はそういう意味を持っている。俺たちに嘆く余地を与えて、あらゆる感情を乗り越えられるようにしてくれる。すごくいいものができたと思うよ。

-ある程度歳を重ねると誰もが誰かを失う経験をしていますし、とても共感できる曲だと思います。

Will:俺もそうなることを心から願っているよ。さっきも言ったけど、俺は"悲しくてハッピーな"曲が好きなんだ。そのパーフェクトな例がこれだと思うね。終わったときに嫌な気持ちといい気持ちが同時に出てくる。歌いたいけど歌ったら嫌な気分になってしまうような......どう言葉で言い表せばいいのか分からないけど。もし自分の感情を全部の曲に入れたら、全部あんな感じになるような気がするね。

-『I Feel The Everblack Festering Within Me』は全体的に、徹底的にヘヴィでありながらも非常に多様性に富んだ作風ですね。本作制作の際にインスピレーションを受けたアルバムや曲、音楽以外でも映画作品や本等があれば教えてください。

Will:今3つ思い浮かんだよ! 1つ目はよく話をしているやつだから、お前(Adam)から言ってくれ(笑)。

Adam:えぇ、3つもあるの? 挙げてきたのはそっちなんだからお前から言ってくれよ(笑)!

Will:ファッキンな「Lionheart」は一番昔からあるタイプの曲だね。大変なときでも頑張って乗り越えるみたいな感じだから。"ブレイブハート"という映画があって、まさにその感じを表すセリフがあるんだ。苦難の中でもプッシュし続けるっていうね。あの映画にインスパイアされた......つもりはないけど、曲ができてから歌詞を考えたときに、そのセリフをリメイクした感じから作ってみようというのはあったから、単純に"「Braveheart」って呼ぶべきか?"と思った時期もあったけど、"いや、「Lionheart」でいこう"って落ち着いた。それでああいう感じの曲になったんだ。もう1つはもちろん(映画の)"インターステラー"。あれはAdamのアイディアだったね。Adamが"ブラック・ホールの曲を書きたい"と言い出したから、"Fuck yeah! 書いてみようぜ"って話になった。

Adam:"インターステラー"で、水の惑星に辿り着くシーンがあるんだ。これが自分たちを助けてくれる! という希望でもあるし、文明のないところに来てしまった疎外感を覚えるシーンでもある。希望と疎外感が同時に起こるんだ。その押しと引きの感覚にすごくインスピレーションを受けた。

Will:最後に、「War Machine」は......

Adam:今それを思い出したところだよ(笑)!

Will:"イコライザー2"!

Adam:そうだね。素晴らしい映画だよ。

Will:素晴らしい映画だよ! ファッキンなくらい大好きなんだ。これも気に入ったセリフがあって、なんらかの形でリメイクして曲に取り込めたらと思った。今回は前回よりも映画にインスピレーションを受けたものが多かった気がするね。そうしたくてしたわけじゃないんだけど(笑)、結果的にそうなったんだ。

-最後に今後の予定と、アルバム・リリースや再来日公演を心待ちにしている日本のファンへメッセージをお願いします。

Will:日本のファンのみんな、俺たちの曲を聴いてくれてチャンスを与えてくれて、そしてこの前の来日ではショーにも来てくれて、本当にありがとう! 9月12日に『I Feel The Everblack Festering Within Me』という新作を出すんだ。みんなが楽しんでくれて、俺たちがまたすぐ日本に行けるチャンスに繋がることを願っているよ。今度は願わくば、たった1回のショーじゃなくてね!

Adam:本当に!

Will:俺たち、そっちに行くのが大好きだからね!

Adam:"買ってくれてありがとう"と先にお礼を言っておくよ(笑)。心から日本に行きたいんだ。

Will:心から行きたいよ!

Will&Adam:今日はありがとう!

RELEASE INFORMATION

LORNA SHORE
アルバム
『I Feel The Everblack Festering Within Me』

[Sony Music Japan International]
2025.9.12 ON SALE!!
SICP-6708/¥2,860(税込)