INTERVIEW
武瑠
2025.07.15UPDATE
2025年07月号掲載
Interviewer:山口 哲生
-"俺が背負う"みたいな気持ちがここに来てすごく強くなっているのが印象的でした。
それだけすでにいろんな思いが乗っかっていることを自覚したところもあるし、そう思わないとこんなしんどいことやってらんねぇよみたいな気持ちもあるし(笑)。あとはやっぱり、信じられるものがとにかくなさすぎるんですよ。政治とかなんでもそうですけど、自分で調べようみたいなのってあるじゃないですか。でも調べても、そもそもの話、その文献やネットが正しいかどうか分からないから。
-ほんとにそうですよね。
だから正しいことに辿り着きようがないし、結局これが正しいと自分が思うかどうかでしかないなって。小さいことでもそうで、今年はワールド・ツアーがあるので、今まで以上に体調管理しなきゃと思ってるんですけど、小麦ですら、いくら文献を読んでもいいとダメが延々繰り返されるんですよね(笑)。
-うんうん(笑)。
小麦なんて大昔から日本にあったのに、小麦は戦後にアメリカが持ってきて、(日本人に)食わせようとしているっていう主張をしている政治家の方とかもめっちゃいっぱいいて。じゃあ、うどんとかそばってどうやって作ってたんだよみたいな。俺個人的としては、小麦粉は大丈夫派なんですけど、小麦粉ダメって言う人も結構いるじゃないですか。
-まぁグルテンフリーもこれだけ流行ってますし。
自分が調べた感覚だと、グルテンって一部アレルギーの人がいて。たしかにその人たちは小腸でちゃんと消化できなくて、アレルギーになっちゃう。そういう人はいるんだけど、でも俺、山芋食べすぎたらピリピリするけどな......とか。答えが出てないことばっかりじゃないですか。しかも、この断片だけ切り取ったらこっちが正しいよね? みたいなことをこれだけ時間をかけて議論してもまだ終わらないんだ? みたいな。そんなのもう無理じゃん(笑)! どっちも狂信的に信じられないし、結局それぞれに合ったものがありますよね、それぞれに合ったバランスでっていうことなのに、狂信的に信じてめっちゃお薦めしてくる人もいるじゃないですか。こうしなきゃダメだよとか、これ食べちゃダメだよとか、もう無限すぎてめんどくさいと思って。
-分かるなぁ。
今はポップに食べ物だけに収めますけど、これが政治とか宗教とか全てにあるじゃないですか。こっちが正しいとかこっちは正しくないとかこれは陰謀論ですとか、もういいやと思って。めんどくさいし、どうせ知りようがないんだから、自分が信じたいルートを信じようと。
じゃあ自分が信じたいルートってなんだろうと思ったときに、死ぬぐらいだったら"堕落"してもう1回やり直せばいいんじゃないとか、これは"永遠"なんだろうか? って問い掛けるまでが自分の正義であって、それを押し付けることはしないとか、世の中にとっては"不道徳"なのかもしれないけど、俺はやっぱり音楽とかライヴハウスって少しだけドキドキして、他じゃ味わえないようなちょっと怖いところであってほしいとか。そういう自分の思っていることを言ったら、これは"悪党"になるよねとか。これは浮気者にも繋がるんですけど、当時よく言っていたのが、"どうせ洗剤とかのCM(のオファー)は捨ててるんで、(名前を)「浮気者」にしました"みたいな(笑)。
-ははははは(笑)。
浮気で全部失っちゃうような人になりたくないし。人からしたらそれは"怠惰"って思うかもしれないけど、そういう怠惰な時間も必要だし。そういう自分の、全部信じられないな、気持ち悪いなって感じた上での、信じられるセーブポイントみたいなものを作ったんだろうなと思います。
-自分の中での宗教って言うと重たいし、正義って言うのともまた違いますよね。でも、正しさ......なのかな。
正しいとも思わないけど、自分が美しいと思うこと、みたいな。
-あぁ。そうか。それですね。
正しい/正しくないっていうのは人によって全然違うから。その人にとっての正義を選んだら、世界から悪魔にされたっていう意味での"SLY DEVIL"とか。そういう感じですね。正義と悪って立場によって全然変わることだから定義できないなっていう。「悪党 feat.ADE SARIVAN」のジャケ写を、善と悪が重なって1つになっているものにしたんですけど、全てがそこに帰結するような気がします。
-たしかに。まさにですね。
自分は子どもいないですけど、子どもがいたらなんて教えるんだろうなって思うニュースがめっちゃ多くて。例えば、オンラインカジノで捕まってる人とか、"ねぇねぇ、なんでこの人悪いの?"って言われたら、別に悪くないよって言っちゃうもん(笑)。あれは利権の問題なだけで、"正しい"と"正しくない"だけで世の中はできてないんだよって言うしかないだろうなって思うから。俺はもともとカジノがあんまり好きじゃないから別にやってないですけど、スマホとかに普通に広告出てきてそれをやって処分されるとか、普通に意味不明じゃないですか。広告出したやつのほうが悪くね? みたいな。
-気持ち的に罪で言うならそっちのほうが罪ですね。
本当に意味不明で、法の抜け道みたいなのがぐちゃぐちゃになってる日本で、何をもって"これが絶対的に正しい"って言えるんだろうって。こんな穴だらけの法律だけを信じて、よくもそんなに人のことを糾弾できるよな? って思うんです。こういうストレスはずっとなくならないんでしょうけど、せめてそっちとなるべく関わらずにいきたいなとはすごく考えてます。
-分かりみが深すぎました。そういう意味では、今考えていることをしっかりとバイブルとして閉じ込められたと。
そうですね。時間が経っちゃって分かんなくなってたんですけど、聴き直してみて、「怠惰 feat.GOMESS」とか作っといて良かったなと思いました。戦いたいっていうモードが強かったからか、最近の自分の感性にしては音圧で埋めるような曲が多いので。あと、フィーチャリングも多くて、わりと派手に作っちゃう曲も多かったから、「予知夢」や「怠惰 feat.GOMESS」、「堕落したっていいかも feat.[ kei ]」で少し抜けを作れて良かったなって思ってます。
-そして、先程からお話が出ているように、ワールド・ツアー"武瑠 TOUR 2025 BIBLE"が控えています。7月は日本、8月は南米、9月はヨーロッパ、11月に再び日本を回り、来年1月12日には、"武瑠 19TH ANNIVERSARY LIVE「CEREMONY」"をSpotify O-EASTで開催されます。間もなくスタートといった感じですが、そこから一気にライヴ・モードになる感じでしょうか。
そうですね。でも、もう一回作戦を立てる必要があるなと思ってます。単発で海外に行くとなると、ありがたいことに現地のイベンターの宣伝だけで人が集まってくれるんですけど、ツアーとなると全然違って。宣伝の方法が全く変わるから、この国ではこういうプロモーションっていうのがもう本当にぐちゃぐちゃになっているんです(苦笑)。本当は日本だけで手一杯なんですけどね。なのにこれだけぶち込んじゃったんで、初めて自分の考えじゃ及ばないラインに入ってます。
-LIQUIDROOMのMCで、"俺は頼ろうと思う"というお話もされてましたよね。
ぶっちゃけ頼らないと無理ですよ。(Spotify)O-EASTに関しては、ファンに"みんな連れてきて!"って言うしかないなって思ってます。自分の中では最早全力を尽くしている感じがあるので。あと、メディア的な展開も含めて、やっぱり口コミが一番強い気がするから、みんながどれくらい連れてきてくれるかにかかっているのかなって思いますね。
-背負う気持ちもあるし、任せる気持ちもあるっていうのがいいなぁって思いましたよ。あと、ツアー初日に「正夢」のMV撮影をされることを発表されていますけど、それが届くのはもうちょっと先なんでしょうか。
いや、すぐ出します。CG部分はもう撮っているので。今回は今まで自分がやってきたファンタジー感みたいな世界観もがっつり入ってるんですよ。とにかく1曲だけ聴いてもらえるならどのミュージック・ビデオを作るのか? っていうのが「正夢」のテーマとしてあって。
-まずこれを観てくれと。
もうこれ観てもらって刺さらなかったら俺の実力不足ですね。それぐらいのミュージック・ビデオがきっとできると思うので。