INTERVIEW
武瑠
2025.07.15UPDATE
2025年07月号掲載
Interviewer:山口 哲生
-活動のスタンスとしては、そういった方向で動いていると。
そういう経験の上で、ここまでずっと好きなことをできていたから、久しぶりにみんなで何かに挑戦してみたいと思ったので、19周年に(Spotify)O-EASTを掲げたんです。1人でやっている分ライヴの準備とかも含めて大変な部分もあるから、1本のライヴに対してのカロリーも高いんですけど、とにかく出られるだけ出よう。海外も今年は行けるだけ行こう。日本も同じで、なるべくオファーは断らずに、取材も含めて全部挑戦しようかなって。それも区切りを決めておかないとずっと長距離走みたいになっちゃうので、とりあえず(2026年)1月12日までは走ろうかなって、めちゃめちゃたくさん企画を詰め込んでます。
-SNSを拝見して、かなりいろいろやられているなぁと思いました。
告知が多すぎて自分でも追いついてないぐらい(笑)。
-「TO BE LIKE THRILLER feat.IKE,星熊南巫,4s4ki」のインタビュー(※2024年12月号掲載)のときに、最近対バンに結構誘われているから、フットワーク軽く出ようと思ってますっていう話をされていたんですけど、本当に実行されているなと思って。例えば、Verde/とmitsuさんとの3マン("咆哮SOLOIST")や、BugLug主催のサーキット・イベント("バグサミ2025")といった昔から馴染みのある方たちもそうですし、MAMA.やCHAQLA.といった若手のバンドとも絡んでいて。
廃れ切ったことによってV系が自由になった感覚が、ライヴを観に行かせてもらってもあったし、やっぱりベースでどこかリンクするところもあるし、やっぱ地元だなみたいな感覚もあって。前に"V系産まれヒップホップ育ち"って言ったんですけど、そんな特異な位置の人ってそんなにいないよなと感じて、今の自分の感覚でV系シーンに出たら、どうなるんだろうって自然に思えたところもあります。わりとあらゆるジャンルの人たちとフィーチャリング含めてやった気がするので、今の自分で地元に帰ってみたらどうなるんだろうって。それも実験や挑戦の一環みたいなものですね。
-そこに対しても挑む感覚なんですね。
そうですね。帰るとは言ったけど、帰るにしてはあまりにも時間が経ちすぎているので、帰るっていうフェーズじゃない気がして。わりとそれはそれで挑戦というか。もう知らないだろうし(笑)。"名前は聞いたことあるけど"みたいな感じだと思うので。自分の中では新鮮さや新しい学びというか、新陳代謝を得たくてやるみたいなところがありますね。
-『BIBLE』に収録されている「FXXK YOUR FEELINGS」は、MAMA.とCHAQLA.とのコラボ曲ですが、いわゆるヴォーカリストを招いたフィーチャリングとはまた違うものになっていて。
同じテンポ、構成、スケールでそれぞれ3通りの「FXXK YOUR FEELINGS」を作ったんです。サビとか大サビとか、たまにリンクする部分があって、他のところは全部自由にみたいな。それをリミックスしたものというか、その3曲を混ぜたものを先に出します。ここだけCHAQLA.になって、ここだけ武瑠になって、ここは3パターン全部出すみたいな。そうやってミックスした状態のものを先に出して、後から3パターンを切り分けて出すっていう。これもちょっと実験ではあるんですよ。
-面白いですね。
これ、もっと分かりやすい言い方ないかなと思うんですけどね(苦笑)。
-いや、結構伝わりましたよ。テンポと構成とスケールを合わせておけば、急に切り替えても繋げやすいという。
DJで、全然関係ない曲も、スケールとBPMを合わせて一緒に流して繋げるみたいなのをよくやってるんで、これをバンドでやったらおもろいかなと思ったんですよ。あとは、ラッパーが同じビートやトラックで全然違うものを乗せるじゃないですか。あれをバンドでやったらどうなるんだろうなって。サビメロは一緒なのに、演奏やトラックが違うみたいな。
-その話を2組に持ち掛けたときは、面白そうだしやりたいです! みたいな感じだったんですか?
そうですね。むしろ面白そうと思うであろう人にしか声を掛けなかった(笑)。わけが分からないことだけど、CHAQLA.とMAMA.だったらわけが分からないの好きそうだからやってくれそうだなって。ただ、特殊すぎるから詳細を伝えるのが大変でした。映像も乗っかってくるので。
-ビデオも撮ってるんですね(※取材は公開前)。
撮ってます。MAMA.が映っているときはMAMA.の音が鳴っていて、2アーティストが映っているときはその2アーティストの曲を混ぜたものが流れていて、それが(分割)3画面でずっと進行していて、みたいな。それを言葉で伝えるのが本当に難しすぎて(笑)。でも、昨日リミックスを作ったんだけど、面白かったですよ。いきなりブチッ! って変わったと思いきや、一緒に鳴らしても成立してるところもあったり、全部鳴らしても大丈夫なんだ! とか。
-そういう意味では、『BIBLE』に入っている「FXXK YOUR FEELINGS」は、その1パーツというか。
リミックスに対しては、そうと言えばそうですね。先に曲を出してからリミックスするのはよくあるけど、リミックスを出してからバラバラにしてリリースするから、それは結構面白いかなって。あの部分はこの人だったんだとか、3つ重なっていて分からなかったけど、1本だとこうなんだとか。
-かなり攻めの一曲になってますね。「FXXK YOUR FEELINGS」の次に置かれている「CHEMICAL TATTOO」は、ハイパーポップ的でありつつちょっとゴシック感もあり、歪み成分も多めで。先ほどヴィジュアル系のお話をされていましたけど、それを今の感覚でアップデートしたような印象もあったんですが。
曲に関しては全く意識してないですね。自分が本当にただやりたいものを作って、あまり合わせずにいったらどうなるのかなっていう感じだったので。曲としては、"バイブル"と言って作っているなかで、アルバムの下のほうというか、カオス成分をもっと広げたいなと思ったんです。ちょっときれいにまとまろうとしちゃってるんじゃないの? みたいな気持ちが自分の中にあったので、ハヤシベトモノリ(Plus-Tech Squeeze Box)さんに作曲をお願いしたんですよ。ハヤシベさんの音を聴き直して、こういうカオティックで意味不明な位置付けの曲が必要だなと思って。できたのはこの曲が最後だったかな。自分で書いた曲は「予知夢」が最後ではあったんですけど。
-なるほど。そのあたりが最後にできたと。
でも、もう1枠あるんだったらすごくチルなエモ・トラップというか、ずっとラップしてる曲を入れたかったなと思って、ちょっと後悔してます(苦笑)。「堕落したっていいかも feat.[ kei ]」の後とかに。
-たしかにそれは聴きたい!
ちょっと時間がなかったですね(苦笑)。
-今お話に挙がった「堕落したっていいかも」は、武瑠さんがこういうメッセージを、この温度感で柔らかく歌うことって、今まで少なかったんじゃないかなみたいな印象もあったんですよね。この曲ってどんなところからできたんですか?
これは、友達が捕まったニュースを見て。最近の特徴で、それまで仲が良かった人も地獄みたいに叩いていて、普通に死んじゃったらどうするんだろうと思いながら見てたんですけど。俺はそれに対して何もコメントを出せなかったし、明確な答えが見つからなくて。それは人を裏切ったと言えばそうだし、その点においては良くないことだなって分かりつつも、すごく追い詰められた状態で悪いことをしてしまった人に対して、蜘蛛の糸も垂らさず、全員で足蹴にして落とそうとしているのが、めちゃくちゃ醜く感じちゃったんです。だから、SNSでコメントをするんじゃなくて、それに対して思ったことを曲に書いてみようと思って、こうなったっていう感じですね。
-そうだったんですね。
子どもの頃を思い返すと、悪いことをしたり失敗したりしたら、助けてあげるのが友達だっていうので育ったはずなんだけどなぁと思って。そういう気持ちで書きました。答えがなかったし、SNS上で言う答えなんてよりなかったので。変なのが湧いてきても嫌だし。自分は自分で、助けてくれって言われたら助けようと思って実際そうしたんですけど、それを別にSNSに書く必要もないので。
-それでこういった優しい歌になったんでしょうか。
まぁ、その子の1件だけじゃなくて、これはずっと思っていることでもあるので。みんなたった1発のミスで人を殺そうとしすぎじゃない? って。で、実際に死んでいるのに、本当に学ばないんだな、そういう世界線と一緒にいたくないなっていうのは超あります。"指殺人"とか言われてますけど、みんなちょっと理性を失いすぎてるし、大きい事件が起こるとむしろ拍車が掛かっているような感じもあって。だから、そうならないでいられる人だけでもそうならないようにしようね? みたいな意味でも書いてるかもしれないですね。