INTERVIEW
THE HALO EFFECT
2025.01.10UPDATE
2025年01月号掲載
Member:Niclas Engelin(Gt)
Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子
IN FLAMESの歴代メンバーであり、スウェーデンはイェーテボリの旧友でもある5人が結成したTHE HALO EFFECTが、2ndアルバム『March Of The Unheard』を完成させた。デビュー作のリリース前後から精力的にショーを実施してきたこともあり、約2年半ぶりとなる新作はライヴを意識した強力な仕上がりに。彼らがバックボーンに持つ90年代のメロデスを核に置きながらも、そこから時計の針を前進させていくようなヴァイブスも備わり、THE HALO EFFECTとしてのサウンドを確固たるものにした作品となっている。前作に引き続き、Niclas Engelinに新作について話を訊いた。
世界中を回ったことによってTHE HALO EFFECTとしての自覚が強くなったよ、それが表れているのが2ndアルバムなんだと思う
-少し前の話になりますが、2022年には"DOWNLOAD JAPAN 2022"にて日本での初パフォーマンスを行っています。ライヴの印象はいかがでしたか?
いい質問だね。いつも言っているけど、俺は日本が大好きなんだ。何度も行っているし、カルチャー全般、人、食べ物......それにみんな親切だしね。THE HALO EFFECTは何十年もプレイしてきたやつらの集まりで、みんな何十年もお互いを知っているけど、これは新しいバンドというかブランドなんだ。だから、ジャンルとしては今までずっとやってきたのと同じではあるけど、(来日の時点では)俺たちにとってまだ新しいものだった。たしか日本に行ったのが、THE HALO EFFECTとしてまだ5、6回目ぐらいのギグだったんだよね。どんな反応を予測していいかも分からなかった。でも日本の人たちはいつものようにとても優しかったよ。(※笑顔で)最高だったね。10時半だったか、まだ早い時間の出演だったけど、満員だったんだ。しかもみんな俺たちの音楽にノってくれて......まだ1stアルバム(『Days Of The Lost』)が出て数日とかだったと思う。(会場で)サイン会をやった記憶があるからね。とにかくオーディエンスの反応が最高だった。自分たちの出番の後はMASTODONを観ることができてね。最高だったよ! 俺たちのボス、テツ・ミヤモト(トゥルーパー・エンタテインメントの宮本哲行氏)のことも大好きだし、早くまた日本に行って、たくさんショーをやりたくて待ちきれないんだ。
-最高の日本デビューを飾ることができたんですね。THE HALO EFFECTとしてはヨーロッパや北米、オセアニアまで様々な地域で、数多くのライヴを実施しているようですね。たくさんショーを行ったことで、バンドとして得たものや変化はありましたか?
あったね。もうTHE HALO EFFECTとしての自分たちが何者か悩まなくなった。世界中を回ったことによってTHE HALO EFFECTとしての自覚が強くなったよ。それが表れているのが2ndアルバムなんだと思う。たくさんのギグをやって、THE HALO EFFECTとしての絆が生まれて。それって重要なことだと思うんだ。1stアルバムがその第1歩だった。俺自身あのアルバムはとても気に入っていて、素晴らしいデビュー・アルバムだと思う。今回のはそこからTHE HALO EFFECTとして次の1歩を踏み出すアルバムなんだ。
-前作から約2年半という短いサイクルで2ndアルバムがリリースされることにも驚きがありました。第2弾を制作するアイディアはいつ頃から話題に上り始めたのでしょうか?
(笑)今振り返ってみるとなかなか興味深い展開だったよ。バンドにとって最初のショーが、"Sweden Rock Festival 2022"だったんだ。デカいステージに昼間に出ることになってた。それでフェスは6月の土曜日(11日)で、4thシングル(「The Needless End」)が前週の金曜日(6月3日)にリリースされたんだ。つまり、誰もこのバンドについてほとんど聞いたことがなかった状態だった。『Days Of The Lost』は40分くらいしかないから、初めてのショーで全曲プレイしないといけなかったんだ。しかも全部やっても20分くらい余ってしまう。Mikael(Stanne/Vo)は面白いやつだからあいつに何かやらせてもいいけど、20分はさすがに持たない。長すぎる(笑)。それで、俺がマーチング・バンドを使うイントロを作ったんだ。イェーテボリのGÖTA LEJONというマーチング・バンド(「March Of The Unheard」のMVにも登場する鼓笛隊)でね。それから、ショーのアウトロも作った。ちょっと引き延ばそうと思ってね。
-なるほど。
そのイントロとアウトロを、ツアーの間ずっとキープしていたんだ。みんな気に入ってくれたようで、ショーのリピーターもいた。そうやって何度も来てくれる間に、"いったいあの曲はなんなんだ?"と思われるようになったんだ。それで、"このイントロを曲にしたらどうなるだろう?"と思って取り組んだのが、タイトル曲「March Of The Unheard」になったというわけだ。つまり、俺は新作の曲を書くプロセスを、最初のショーの1ヶ月半前に始めたことになるね。
-そんなに早かったんですね!
そう。それに俺たちは曲を書く手を止めていなかったからね。いつもネタを書いていて、スタジオに出たり入ったりしていたんだ。部分的にレコーディングしたり、「March Of The Unheard」を曲に仕上げたりしながらね。
-となると、オフの日も実際はオフじゃなかったりしたんでしょうね。
そうだね。俺たちはいつもTHE HALO EFFECTの"バブル"の中に居たんだ。だからこそアルバムの曲を書いたりレコーディングしたりすることができた。そうしたことが正しかったと思っているよ。アルバムのサイクルをストップして曲を書くという必要がなかったからね。サイクルの真っ最中に書いていたけど、俺はその状態が気に入っていたんだ。
-1stアルバムのサイクルと同時進行で新作を作っていたんですね。
そうだね、そう言える。
-その新作『March Of The Unheard』が新年早々に出ますが(※取材は12月下旬)、リリースを控えた今の心境を伺えますか?
ヴァイナルが届いたところなんだ。きれいだよ。俺にとっては、やっと全ての制作プロセス......レコーディングやライティングを離れることができるな、という感じ。ヴァイナルを手にしてみて、手触りもいいし、匂いもいい。それに見てくれもいいんだ。アートワークはAdrian Baxterが作ってくれた。Mikael Stanneのアイディアやヴィジョンが反映されているんだ。素晴らしい出来栄えだよね。というわけで、俺たちはこれから次のフェーズに入っていく。つまり、これらの曲をライヴでやるということだ。ライヴでファンに気に入ってもらえて、反応してもらえるといいね。どんなことになるか分からないけど。
-今はワクワクしながらドキドキもしているような時期ですかね。
そう、ちょっと不安もあるけど、ライヴの素晴らしさはそういうところにあると思うんだ。曲に命が吹き込まれる場所だからね。
-前作のインタビュー(※2022年8月号掲載)の際はレコーディングを"友達同士の同窓会で、みんなで音楽をやっているって感じだった"と表現されていましたが、今回はツアーも一緒に行って、定期的に顔を合わせる状態でしたよね。レコーディングに変化はありましたか?
いや。同じセットアップだよ。エンジニアもミキサーもマスタリング担当者も同じメンツで、同じスタジオで作ったしね。機材も少し変えた程度でほとんど同じだった。というのも、『Days Of The Lost』のときのセットアップがとても気に入っていたからなんだ。便利だったし、みんな気心知れてるし、安心して取り組むことができたからね。それに毎回わざわざブッキングする必要がないスタジオだったんだ。この期間中にこれとこれをやると決めたらすぐに取り掛かれる状態だった。家族とか他のコミットメントがあるなかで、ここには自由があったんだ。
-それもあってか、本作ではツイン・リードのギター・フレーズ等、前作よりもさらにメロディが強化され、自由度を高めつつも方向性がより明確になっているように感じました。
ああ、俺もそう思うね。1枚目のミーティングでは、この手の音楽をやるかどうか分からなかった。今は俺たち全員、いろんなタイプの音楽を聴いているからね。音楽スタイルがとても多彩なんだ。RUSHっぽくやろうか、それともTom Petty路線でいこうか、なんてあちこちに飛んでいたけど曲を書き始めたら「Gateways」、「Shadowminds」、「Feel What I Believe」(全て『Days Of The Lost』収録)ができて、"よし、こんな感じで行こう"と話がまとまった。ということでさっきも言ったけど『Days Of The Lost』がTHE HALO EFFECTにとって最初のステップになって、今度の『March Of The Unheard』はその次のステップになった。そして君も言ってくれたように、今回はいろんなものが強化された。メロディックさやソロ――プログレ色の強いパートもあるし、あらゆる要素が少しずつ入っている。それからインストゥルメンタル曲の「Coda」は、アルバム全体のメドレーみたいな感じなんだ。小休止的な役割だね。チェロとヴァイオリン、それから女性ヴォーカルも入れた。アルバムがああいうふうに終わるのは、次のアルバム、3作目で何が起こるか分からない感があっていいと思う。というか、自然な形で3作目になだれ込めるんだ。
-まだ2作目が出てもいないうちから、3作目への期待を高めているんですね。
そう! それが俺の見方なんだ。
-アレンジメントにおいても、シンセやストリングスの増加等さらに実験的な作風になっていますが、これは意図的なものなのでしょうか?
まぁ、そうだね。と言ってもストリングスは1stでも「Last Of Our Kind」で使っているけど、そうしたほうが自然な気がしたんだ。レコーディング中にふと"よし、この曲があるべき姿に赴くままにやってみよう"と思うことがある。曲の流れやニーズに沿ってね。この曲にはこれが必要だというのが分かったら、それに手を伸ばすんだ。ソングライティングやレコーディングの間に、その必要なものを感じたり認識したりするのが大事だと思う。あまりやりすぎないようにしないといけないけどね、男声合唱団を取り入れるとかさ(笑)。ライヴでもやりやすいものにしないといけないから。
-それもあってか、多くの曲がライヴでの姿を想像しやすいですね。前作のインタビューの際はLOUDNESS、Y&T、KREATORといった80年代~90年代初めのクラシック・アルバムからインスピレーションを得ていたとおっしゃっていましたが、今回のレコーディングでモチベーションやインスピレーションの源になったものはありましたか?
インスピレーションの源はいつもと同じだったと思う。俺がKING DIAMONDやMERCYFUL FATEの大ファンだってことがこのアルバムでははっきり表れているんじゃないかな――だからあまり変わっていない気がする。同じだよ(笑)。素晴らしい音楽たち。
-そういった80年代や90年代の音楽をあなたはリアルタイムで聴いていますよね。近年では、90年代のメロディック・デス・メタルを懐古したサウンドを若い世代のバンドが演奏する、メロデス・リヴァイヴァルと言えるような風潮が世界各地で起こっています。こうした動きはあなたから見てどう思いますか? 彼等とTHE HALO EFFECTの違いは、その時代をリアルタイムで聴いていたからこそ、その時代の一番いい要素を引き出して、なおかつモダンな要素もあって、過去を振り返りつつ時計の針を前進させていくようなヴァイブスだと感じています。
そう、まさにその通りだと思うよ。俺はIRON MAIDENの『Somewhere In Time』とか、名盤やコンサートを観たり聴いたりしてきたことがラッキーだったと思う。その時代のまっただ中にいたんだ。魔法みたいな時代だったよ。インターネットなんてまだなかったから......当時のスウェーデンには"Okej(オーケイ)"1誌しか音楽雑誌がなくてね。ここでは大人気だったんだ。あとはドイツやアメリカやイギリスの雑誌があった。そういう雑誌にKING DIAMONDとか、好きなバンドの写真が載っていた。HELLOWEENやLOUDNESSも。そういうのを見て、"すげぇ! スーパー・ヒーローだ!"と思っていたよ。それがイマジネーションをかき立てていたんだ。"おぉ、アルバムが出たのか!"なんてワクワクした、素晴らしい時代だった。毎日のように友達との話題になっていたよ。俺たちはサッカーやフロアボールをやっている普通のガキだったけど、周りにはいつでも音楽があったんだ。学校にレコード店の袋を持っていって"〇〇のレコードを手に入れたぞ!"なんて自慢してさ。いい時代だったなぁ。好きな音楽を見つけるのに自分で探しに行かないといけなかった時代だ。俺が子供の頃はイェーテボリの中心部にレコード店が1軒あって、家から片道1時間かかったんだ。行っていろいろ漁って、また1時間かけて帰る。大急ぎで帰って、レコードをターンテーブルに載せて、自分はベッドに横になってアルバムをじっくり聴く。あの頃はせいぜい月に2枚くらいしかアルバムを買えなかったから、何度も何度も聴いて、学校で話題にするんだ。そんな感じで労力がいるものだったから、音楽は俺たちにとって今よりも大きな意味を持つものだった気がする――というのは俺の推測だけどね。今はスマホとかでネットに接続すればすぐ探せるからさ。ほら、ごらんの通り俺はオタクだから(※背後のレコードの棚を指さす)。
-そうやって音楽が身に沁み込んでいるおかげで、それをさらに発展させることができるんですね。そうしてできたのが『March Of The Unheard』だと。その"March Of The Unheard"というアルバム・タイトルの由来について伺えますか? 歌詞を全て確認できてはいないのですが、現状や沈黙を打ち破るというメッセージが感じられました。例えば「Detonate」の"Break the chains of this deadlock before we detonate(爆発する前にこの行き詰まりの鎖を断ち切ろう)"みたいな。
Mikaelは素晴らしい歌詞を書くアーティストなんだ。俺の理解としては、社会から除け者にされたり見放されたりすることについてだね。MÖTÖRHEADやJUDAS PRIESTのワッペンを着けているから理解してもらえないんだ(笑)。昔はメタルヘッズがあまりいなかったからね。あとタイトル曲は、俺たちの社会の中で声を持たざる者についてで、あいつはそれについて語ろうとしているんだ。はみ出し者たちの声だね。声を上げたくても上げることができないやつら。