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INTERVIEW

THE HALO EFFECT

2022.08.11UPDATE

2022年08月号掲載

THE HALO EFFECT

Member:Niclas Engelin(Gt)

Interviewer:菅谷 透 Interview interpreted and translated by 川原 真理子

オリジナル・ギタリストのJesper Strömbladを筆頭としたIN FLAMESの歴代メンバーが新バンドを結成――突然のアナウンスに狂喜乱舞したファンも多いことだろう。メロデス・シーンのトップ・プレイヤーにして、それぞれ古き友人でもあった彼らが結集し完成させたデビュー・アルバム『Days Of The Lost』は、オープンなマインドによって生み出された、メロデスの新たな名盤になり得るサウンドが展開されている。そんな本作や、バンド結成の経緯について、ツイン・ギターの一翼を担うNiclas Engelinに話を訊いた。


"Days Of The Lost"とは、ある種"形成期"のことなんだと思う――俺たちはこういう人間になって、未だにヘヴィ・メタルをやりたいと考えているんだ


-まず、THE HALO EFFECT結成以前のお話からうかがえればと思います。みなさんはイェーテボリ(スウェーデン第2の都市で、メロディック・デス・メタルの聖地としても知られる)のご出身だと思いますが、それぞれいつごろから面識があったのでしょうか?

俺とJesper(Strömblad)は、ハイ・スクールの7年生のときから仲良くなったんだ。1986~87年のことだよ。Mikael(Stanne/Vo)とは、1989~90年ぐらいに知り合った。そして、Daniel(Svensson/Dr)とPeter(Iwers/Ba)とは90年代に知り合ったんだ。というわけで、Jesperとはもう35年来の付き合いということになる。もっとかもな。

-JesperがIN FLAMESを始動させたのは1990年のことですが、当時IN FLAMESやメロディック・デス・メタルのシーンをどのように認識していましたか?

正直言うと、当時はちょっと変わっていると思ったね。俺や俺の仲間はみんな、MORBID ANGEL、OBITUARY、DEATH、DEICIDEといったフロリダのデス・メタルを聴いていて、そういうのはメロディックじゃなかったからさ。でも俺たちは同時にIRON MAIDENやJUDAS PRIESTといったクラシック・バンドが大好きだったんだ。Jesperがやっていたのは、両方のおいしいとこ取りだった。IRON MAIDENのメロディやスウェーデンのフォーク・ミュージックをデス・メタルに取り込んだんだけど、あの当時それは新しいことだったんだ。

-THE HALO EFFECTのメンバーは90年代以降IN FLAMES、DARK TRANQUILITYなどそれぞれのプロジェクトで忙しくされていたと思いますが、その間も互いに交流があったのでしょうか?

あったよ、ばったり会うことがあったからね。俺は1997年から1998年にかけてIN FLAMESにいたし、それからGARDENIANを始めたけど、俺とMikaelはいつだって会って音楽の話をしていた。アルバムやギグやフェスティバルの話をしていたよ。だからある意味、俺たちは長年にわたって交流があったんだ。それから俺は2005年か2006年にIN FLAMESに復帰して、それ以降ずっとやっている。

-THE HALO EFFECT結成以前から、スタジオでセッションを行う機会もあったのでしょうか?

そんなにはやっていなかったと思うな。むしろ、地元のバーでつるむことのほうが多かったね。

-THE HALO EFFECT結成のアイディアは、いつごろ浮上したのでしょうか? また、どなたが最初に提案したのでしょうか?

実はね、このバンドは1990年か1991年にできていてもおかしくなかったんだよ! 俺たちはそのころから知り合いだったんだからね。でも、実際に始めたのは2019年になってからだったんだ。DanielとPeterがIN FLAMESをやめると(※それぞれ2015年、2016年に脱退)、彼らはいつだって俺に、"週末にジャムらないか? 一緒にやってみないか?"と言ってきた。俺は"楽しいだろうな、クールなアイディアだな"と思ったけど、時間がなかったんだ。しょっちゅうツアーに出ていたし、家族との生活もあったからだよ。そんな折、ストックホルムからイェーテボリに向かう列車の中で偶然Mikaelに会ったんだ。いつものように、俺たちはバンドについての話をした。俺とMikaelは長年、SLEEPといったドゥーム/スラッジ系の音楽を聴いてきたから、その繋がりがあったんだ。そこで、イェーテボリまであと1時間というところで、"会って一緒に曲を作るべきだ!"、"最高のアイディアだ!"って思ったんだよ。でも、そのあとも何も起こらなかった。始動までに2年かかったんだ。

-では、あなたが列車の中でMikaelと会ったのは、2017年のことだったのですか?

そうそう、2017年だ! で、2019年になってミーティングを行ってね。"やろうじゃないか! いい感じだから、何ができるか見てみよう。ちょっとしたジャムをやってみればいい。魔法使いを――Jesperを呼ぼうじゃないか"ということになって、彼を呼んでみんなでミーティングを行ったところ、全員乗り気だった。でも、どんなタイプの音楽をやりたいかについてははっきりしていなかったんだ。ただ、また一緒にやりたいということだけしかわかっていなかったから、とりあえず曲作りを始めたんだけど、最初にできたのはアルバムに収録されている「Gateways」という曲だった。これはメロウな曲で、ホラー映画の主題歌のようなちょっと不気味なメロディになっていて、最後は壮大なコーラスで終わる。これがバンドの進むべき道を示してくれたんだ。"これが、俺たちが進むべき道なんだ"と思ったよ。"俺たちはこの手の音楽を知っているんだから、プログレッシヴなことをやってRUSHのようになろうとする必要なんてない。90年代に俺たちが始めたことをやろうじゃないか。楽しんで、あまり考えすぎないようにしよう"とね。

-バンド名の"THE HALO EFFECT(ハロー効果)"は、ある対象を評価するときに、目立ちやすい特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められるという"認知バイアス"を指す社会心理学の用語ですが、こちらを掲げた理由をうかがえますか? 誰の発案だったのでしょうか?

(笑)Mikaelは、モロにアーティストなんだ。彼は詩人で、常に歌詞やテーマのことを考えている。彼は、それの達人なんだ。彼はもちろんRUSHが大好きだから、これはRUSHの曲のタイトル(「Halo Effect」)から来ている。彼は、今君が言ったその社会心理学用語というアイディアがクールだと思ったんだな。とっても素敵な車を見て、"これ、新車だ! きっとすごいスピードが出るぞ!"って思っても、実際に乗ってみると"動かない!"って思うことだよ。ライトが当たっていて素敵に見えても、実際はそうじゃないことがあるんだ。これってとってもクールだと思うな。

-ご自身から見た、各メンバーの印象や特徴について教えていただけますか?

まずJesper。彼は魔法使い、そしてとても広い心を持っている。俺が曲を書いていたら、彼は途中で俺を止めて"ギターを持ってきてくれ! アイディアが浮かんだ!"と言ってメロディをつけた。そしてそのメロディを聴くと、まるで最初からずっとそこにあったようなんだ。"いったい、どうやってそんなことができたんだ?"って思ったよ。"ハーモニーもある! これもやらなくちゃ"と彼は言った。それがJesperなんだ。Mikaelは、夢追い人だね。そして、真のアーティストだ。歌詞にとてもこだわりがあって、いい感触を得られないといけない。しかるべき歌詞をしかるべき箇所に入れないといけないんだ。彼もまた、広い心を持っている。Danielは、クレイジーな男。何を起こすかわからない。すごく穏やかで優しい話し方をすることもあるし、彼もまた、広い心を持っている。なのにクレイジーなことをして、俺たちを笑わせてくれる。バンドのクレイジーなピエロなんだ。Peterは、ベースで基盤を築いている。彼もまた広い心を持っているね。全員が広い心の持ち主で、互いを理解している。そのおかげで音楽を作りやすいし、バンドにもいやすい。このアルバムの曲作り全般が、このプロセスで行われたんだ。

-本作『Days Of The Lost』のレコーディングはいつごろスタートしたのでしょうか?

2019年10月にミーティングを行って、これをやることに決めたんだ。それから11月末~12月初めにスタジオ入りして、様子見のためにデモをレコーディングした。そのときは「Gateways」、「Shadowminds」、「Feel What I Believe」をやったんだ。そして、2月末にもう3曲やった。どれだったかな? タイトル曲の「Days Of The Lost」は入っていたけど、あと2曲は覚えていないな。たくさんレコーディングしたから。するとパンデミックが襲ってきて、俺たちにはどうすることもできなかった。でもなんとか時間を最大限に利用して、さらに曲作りを行ったよ。しかも、バンドの存在を秘密にしておいたんだ。知っていたのは家族だけで、うちの妻と娘はバンドのことを知っていたけど、俺たちは水面下に隠れていた。締め切りや、ああしろこうしろといった制約を一切設けずにやるためにね。そのおかげで俺たちには時間がたっぷりあって、バンドを築き上げて、強力な曲を作ることができたんだ。2020年に「Shadowminds」のビデオ撮りを行って、それをNuclear Blastと日本のレコード会社(トゥルーパー・エンタテインメント)に送った。彼らはたった1曲しか聴かなかった、たった1本のビデオしか観なかったのに、日本のレコード会社の人はぶっ飛んだ! 俺はとっても嬉しかったよ。Nuclear Blastの人も同じで、"このバンドと契約しよう! すごくいい!"ということになったんだ。でも、彼らが結果(アルバム)を聴いたのはそれから1年近くあとのことだった。ミキシングを終え、マスタリングを終えて完成したわけだけど、どっちのレコード会社も興奮していたよ。すごく良かったって。

-"Days Of The Lost"というアルバム・タイトルの由来についてうかがえますか?

これまたMikaelさ。アーティストだからね。俺たちが最初のデモの何曲かを聴いたとき、91~92年のヴァイブがあったから、そこに至るまでに起こったことについての曲を書かないといけないと思ったんだ。俺たちはもうすぐ50歳になろうとしていて、長年やってきたから、自分を見いだそうとしている20代前半のちょっと不安定な気持ちについて書きたいと思ったんだよ。これは、誰もが共感できるテーマだよね。"Days Of The Lost"とは、ある種"形成期"のことなんだと思う。自分を形成した時期のことだよ。俺たちはこういう人間になって、未だにヘヴィ・メタルをやりたいと考えているんだ。

-お話をうかがっていると、特にアルバムの方向性を定めることなく、単に曲を作ったということなのでしょうか? そしてそれを聴いてみてある種の方向性を見いだして、そこからそちらに進んでいったと?

そう、そのとおり!

-特にテーマや目標を定めたわけではないんですね?

それはなかった。俺たちが一緒にプレイしたい音楽がどういったものなのかがわかると、それはイェーテボリのデス・メタル・シーンだった。俺たちは90年代から今まで、このジャンルの形成にひと役買っていた。だから、自分たちが一番得意とするこの手の音楽をプレイしたんだ。曲作りのときに、あまり考えすぎないようにして、ひたすら楽しもうと思ったんだよ。そしていいメロディやいいリフができると、そのまま突き進んだんだ。

-おっしゃるように本作では、みなさんが培ってきたキャリアを惜しみなく発揮したような、メロデスの新たな名盤になり得るサウンドが展開されています。

ありがとう!

-また本作は、90年代のメロデスだけでなく、デジタル・サウンドなどモダンな要素も取り入れられています。こうした部分も意図的なものだったのでしょうか? それとも、自然とこうなったのでしょうか?

自然とこうなったんだ。「A Truth Worth Lying For」のヴァースのリフなんて、俺が91年に書いたものなんだよ! スタジオでたまたまそれを弾いていたら、みんなが"それ、なんだよ!"って聞いてきて、"昔、俺がSARCAZMっていうバンドで書いたリフだよ"と言ったら、"それを使おう! やってみようよ!"と言われたんだ。そしてリハーサルでみんなでジャムってドラムとかを加えてみたら、"よし! これを使おう!"ということになったんだよ。というわけで、91年から今までのリフが詰まっているんだ。そこが素晴らしいところなんだよ。特に決まりなんかなかった。いい曲はいい曲なんだし、俺たちがやるとなんだってこうなるんだ。俺たちはこのジャンルの一端を担ってきたし、未だにそうなんだからね。

-昔、IN FLAMESが始動したころは、ふたつのスタイルを融合させたことが少し変に思えたと先ほどおっしゃっていましたが、今のご自身が思う、メロデス・サウンドの魅力はどのようなところにありますか?

俺はメロディの大ファンなんだ。いいメロディはいいメロディで、DEPECHE MODEだろうがKATATONIAだろうが関係ない。いいメロディは心に残るんだ。そして俺はスウェーデンのフォーク・ミュージックの大ファンでもあるから、あのメランコリックなメロディと超ヘヴィなリフを融合させることができるところが魅力だね。それがチャレンジなんだ。あと同時に、フックを効かせることも大切だね。そうすればみんなに馴染みやすいものになる。"そうだ! これだ!"って思ってもらえるんだよ、IRON MAIDENのように。

-楽曲制作は具体的にどのように行われたのでしょうか? 誰かが主導権を握っていたのか、それとも5人がアイディアを出し合って行われたのでしょうか?

「Shadowminds」をはじめとする最初の3曲は俺が作り始めた。それから、Jesperが「Feel What I Believe」を持ってきた。ふたりとも曲の大まかな部分ができあがっていたんで、リハーサルでそれを他のメンバーに聴かせたんだ。そして話し合って、翌日みんながリハーサルに集まったら、Danielが"この曲の別のアレンジを考えてみたんだ。やってみようよ"と言ったり、Peterが"こういうベース・ラインを考えたんで、やってみたいんだけど"と言ったりした。だから、全員によるコラボレーションだったんだ。みんな、それぞれのサウンドを持っているからね。さっきも言ったように、長年やってきたから独自のサウンドを持っているんだ、指紋のようにね。ギター・スタイル、ベース・スタイル、ドラム・スタイル、すべてがそうだけど、そのおかげでやりやすいんだ。互いを信頼して、互いの強みを当てにできるんだから。そして、相手の邪魔をしないこと。それが鍵だね。"アイディアがあるんだけど"と誰かが言ったら、とりあえずやってみないといけないんだ。たいていは、いいものなんだから。

-一緒にプレイを始めてみて、ケミストリーや手応えを感じた瞬間はありましたか?

ああ、すぐに感じたよ。DanielとPeterがIN FLAMESをやめてから、俺はダイナミックで爆発的な彼らのサウンドが恋しかった。彼らと一緒にライヴをやると、背後に彼らの圧を感じるんだ。バスドラの"ボフッ"っていう圧とかさ。それに、彼らには独特のサウンドがある。もう20年以上も一緒にやってきたんだからね。だから、ケミストリーは最初からあったんだ。Jesperは曲作りに夢中になっていたし、次にMikaelがやってきた。友達同士の同窓会で、みんなで音楽をやっているって感じだったよ(笑)。

-不思議なことに、ご自身がJesperとギター・チームを組んで作品を制作するのはこのバンドが初めてになったかと思いますが......。

そのとおり!

-彼との仕事はいかがでしたか?

本当に不思議だよね! こんなに長い間知っているのにさ。実は、ハイ・スクール時代に初めてのバンドを一緒に結成したんだ。POLTERGEISTっていう名前だったんだけどね(笑)! 青少年センターで"ギターを弾いてみないか?"って言われたんで、"やるよ! IRON MAIDENが大好きだから!"って、カバー曲をやっていた。そのあと、俺はIN FLAMESで彼のパートを弾いてきたし、彼の曲作りに対する理解もある。彼は彼で俺の音楽を聴いていた。だから今回一緒に曲を作ってみて、完璧に融合したよ! バッチリだった。

-本作のギターは流麗なメロディから強靱なリフ、そしてギター・ソロまで、実に多彩なプレイが展開されています。アレンジメントで意識したことはありましたか?

俺にとって大切なのは、メロディなんだ。プレイしているとき、素敵なメロディを弾きたいんだよ、LOUDNESSのギタリスト(高崎 晃)のようにね。彼は素晴らしい! アルバム『THUNDER IN THE EAST』はすごいよ。それはともかく、俺はサウンドにアタック感を出したかったんだ。俺もJesperも心掛けていたのは、"コンピュータのPro Toolsを使ってギターをタイトにしないこと"だった。俺たちは昔ながらのやり方で、できるだけそのままやろうとしたんだ。人間なんだから、なんでもできるわけじゃないけど、いいテイクはいいテイクなんだから、それを使おうって。ファイルを誰かに送って、修正してもらうようなことはしない。"タイトにプレイしてタイトにしよう"、というのが俺たちの目標だったんだ。それから80年代、VAN HALENのフィーリングをちょっとやってみようと思った。とにかく、タイトだけれども人間が弾いているような感じにしたかったんだ。俺たちは人間なんだからね。ごまかしは何もない。君が耳にするものは、スタジオで俺たちが実際に弾いたものなんだ。それがアルバム全体で異彩を放っている。曲は、キーボードもヴォーカルもドラムもベースもギターもメロディも、すべての音がとてもはっきりと聞こえる。そういうレコーディングをすることによって、スピーカーから出てくる音をすべてはっきりと聴くことができるんだ。もうひとつある。アルバムを何度も通しで聴きたくなるということ。音を聴いても疲れないんだ。俺はそう思うね。

-制作過程においてモチベーションや、インスピレーションの源になったものはありましたか?

実はみんなでひとつの部屋に集まって、お気に入りのアルバムを聴いていたんだ。もちろんLOUDNESSの『THUNDER IN THE EAST』もあったし、Y&Tの『Mean Streak』もあったし、KREATORの『Endless Pain』もあったし、MORBID ANGELもあった。インスピレーションを得るために、80年代~90年代初めのクラシック・アルバムがいろいろあったんだ。"これはいい!"、"大好きだ!"と言ってインスピレーションを得たから、それをこのアルバム『Days Of The Lost』に送り込んだんだよ。

-そうした制作プロセスを経たあとでしょうか、2021年11月にTHE HALO EFFECT結成の情報が発表された際は、ここ日本でも大きな話題となりました。反響はご自身で予想していましたか?

(笑)個人的には、そんなふうには考えなかったんだ。この音楽を楽しんでくれる人がいればいいなとは思っていたけど、あれだけ話題になるとちょっと驚いたね。理解できなかったのかもしれない。曲作りに一生懸命だったからね。