INTERVIEW
nurié
2025.01.15UPDATE
2025年01月号掲載
Member:大角 龍太朗(Vo) 廣瀬 彩人(Gt) 染谷 悠太(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
未来に向けて提示するなら、"SUPER ROCK BAND"というタイトルが必要やなと
より色鮮やかに、さらに克明となった筆致で描かれるnuriéの美しき世界は、ここからきっとあらゆる境界線を越えていくことになるだろう。前作『拝啓、二千二十年へ』から約4年の時を経て発表される彼らの2ndフル・アルバムにこのたび冠された"Borderless"というタイトルは、まさに彼等の意思が託された言葉そのもの。ロック・バンドとしての力強さがこれまで以上に増している一方、繊細で多彩な表現も得意とするnuriéの高い表現力も、今作にはしっかりと凝縮されているのだ。
-nuriéにとって2ndフル・アルバム『Borderless』は、前回のアルバム『拝啓、二千二十年へ』(2021年リリース)から4年弱の時を経た上での作品となることもあってか、音の雰囲気やテイスト等、バンドとしての変化を感じる点が多々あります。今作を発表するのにあたって、nuriéとしては特にどのような面を打ち出したいと考えていらしたのでしょうか。
大角:ここまでにはいろいろな紆余曲折があったなか、今回のアルバムはnuriéとしての本来の形であったり、nuriéを組んで活動を始めた頃の初期衝動への解像度を上げて作っていくことになりました。今思ってみると、ここに至るまでの間に少し遠回りをしてたかもしれないと自分たちで感じている部分も踏まえつつ、感覚的には10まで拡げたものを今作では3くらいまで意図的に絞り込んだところがあるんです。そして、今後もそこはさらに研ぎ澄ましていきたいと思っているんですが、まずはこのアルバムでここからの方向性を聴いてくれる側に対して明確に提示しておきたい、という気持ちから『Borderless』を作らせてもらいました。
-"10まで拡げたものを今作では3くらいまで意図的に絞り込んだ"とのお言葉通り、もともとnuriéに対しては芸域の広いバンドであるなという印象がかなりあったのですけれど、たしかに今作ではより率直でロックな部分、骨太な部分がサウンドとしてフィーチャーされているように感じます。
廣瀬:そこは今回、リード曲を選ぶ上でも強く意識した部分です。例えば、大角の書く歌詞とかその根底にある彼の人間性からいっても、nuriéにとってはいわゆる"ザ・ヴィジュアル系"みたいな音楽ってどうしても浮いてしまうんですよね。『Borderless』では、そんな僕等にできるやり方で、今のシーンに馴染む方向性を意識しながらそれぞれの曲を作っていきました。
-今作のリード曲は「SUPER ROCK BAND」と「眩く青の無影灯」の2曲となっておりますが、まずは前者についてのお話から伺って参りましょう。この曲は"このバンドが僕にとっての人生なんだよ"というド直球な歌詞から始まり、nuriéからの意思表示が詰まった潔いロック・チューンに仕上がっておりますね。
廣瀬:これは最初のSE「Drawing」が明けての2曲目にしよう、って最初から決めて作った曲だったんですよ。nuriéのライヴでは生演奏のSEから最初の曲に突入する展開が多いんで、その流れをアルバムでもパッケージングしたかったんです。それと、「SUPER ROCK BAND」はイントロ始まりじゃなくて、絶対に大角の歌とメロディから始まる曲にしようと思ってました。
-"僕らしか出せない音に祈りを"とも歌われているこの曲からは、極めて高い熱量を感じます。きっと、ドラマーの染谷さんからしても「SUPER ROCK BAND」は......。
染谷:そりゃしんどいっすよ! テンポ速いし(笑)。
廣瀬:nuriéの曲って結構テンポ速いのが多いんですけど、中でもこれが一番速いかもしれないです。
染谷:そもそも(BPM的に)200オーバーの曲がかなりあるし、これに関しては217とかやった気がする(笑)。それに、メタルみたいにずーっと突っ走り続けるアスリート的な感じとはまた違う種類の速さというか、速いだけじゃなく繊細さも同時に持ってる曲やし、1曲の中に緩急もあるんで、プレイヤー側としてはそこをいかに表現するかが結構難しいんですよ。だから、一発一発ごとの強弱までしっかりこだわって叩くことで、サビの最も突き刺したいところをさらに強調していった感じでした。当然、叩く上では歌詞に対する感情移入の度合いもすごく高かったですね。ただ、この歌詞って書くの結構悩んでなかった?
廣瀬:結果的にはあの最初のワンフレーズに全て集約されてるけどね。
大角:その最初の1行は一番最後になってできたんですよ。そこまではほんと、いろいろ試行錯誤しました。めっちゃ悩みましたね。それも何ヶ月単位で。
廣瀬:でも、それだけ悩んだ甲斐のあるいいフレーズが出てきたと思います。"このバンドが僕にとっての人生なんだよ"っていう詞から始まることで、この『Borderless』というアルバム全体への期待値もグンと上がるものになりましたからね。
染谷:そういえば、いつもは歌詞に対して口を出すことはそんなにないんですけど、これに限ってはちょっと意見を出したことがありました。なんか、当初の歌詞はどちらかというとnuriéのことを前から知ってくれてる人たちに刺さる感じやったんですよね。だから、今の俺等としてはもっと広いところまで届くような歌詞にしたほうがええんちゃうかな? ってリクエストしました。
大角:たしかに、貫通力という意味ではこのアルバムの中で最もそこを意識したのがこの「SUPER ROCK BAND」ですね。
-その貫通力は歌詞表現のみならず、ヴォーカリゼーションの部分でも大いに発揮されている印象です。
大角:まずはシンプルに速いテンポの中で、滑舌やブレスをどうするかというのがめっちゃムズかったんですけどね(笑)。そこをなんとか攻略しつつ、ちゃんと感情を乗せながらメッセージを伝えるようにという気持ちでレコーディングしていきました。
-一方、コンポーザーであると同時にギタリストでもある廣瀬さんからすると、この「SUPER ROCK BAND」という曲はどのように捉えいくことになられましたか。
廣瀬:この曲に限らずなんですけど、僕がギターを入れることにおいていつも意識しているのは、80パーセントのことを120点でやるっていうことなんですよ。つまり、そこまで詰め込みすぎないようにしてるんです。言うたら、最も大事なのはメロディと歌詞であって、それをどうきれいに聴かせられるかっていうところやと思うんで、主張はするけど必要以上には主張しすぎないようにするというのが基本的なスタンスですね。そういう面では、ギタリストというよりも自分は作曲やシンセ類も含めた総合的なアレンジをメインでやっているのもあって、感覚的にはちょっとプロデューサーに近い視点で各曲と向き合っていると言えるかもしれません。
-かくして、この「SUPER ROCK BAND」は強い存在感を放つリード・チューンに仕上がったわけですが、ここにこのタイトルを冠するのにあたってはある種の勇気も必要だったのではないかと思われます。これはnuriéにとっての所信表明なのでしょうね。
大角:このタイトルで作品を残すと決めるまでには、やっぱり勇気が必要だったところはありました。とはいえ、始動当初からnuriéはライヴで"関西 大阪のSUPER ROCK BAND、nuriéです!"っていうことをずっと言ってきてるんで、この言葉は僕等の代名詞になってきてるところがあるんですね。それだけに、今このタイミングでこういう曲をこれからの未来に向けて提示するなら"SUPER ROCK BAND"っていうタイトルが必要やな、と思ったんですよ。
-現状を表わしているという以上に、未来に向けた誓いでもあるのですね。
大角:そうですね。むしろ、その未来に向けた部分のほうが気持ちとしては強いです。
-対して、もう1曲のリード・チューン「眩く青の無影灯」はJ-ROCKどころかJ-POP界隈までをも視野に入れたかのような広いストライク・ゾーンを狙った楽曲に仕上がっているところが特徴的です。この曲はいかなる成り立ちで生まれたものだったのでしょうか。
廣瀬:これはアルバムの制作過程でどんどん風呂敷が大きく広がっていったときに、悠太君から"もうちょっと本来の自分等に立ち返ったほうがいい"という意見が出てきて"たしかにそうやな"となって作った曲やったんですよ。今回「傘はいらない」がこのアルバムの中から先行リリースした曲としては最も古い曲だし、デモとして最初にできてたのが「自分賛歌」だとすると、これと「流るる季節に君の面影」は一番最近になってできた新しめの曲っていうことになりますね。でも、「眩く青の無影灯」は音の雰囲気としては初の音源として出した「モノローグ」(2019年リリースのシングル表題曲)に近いところもあるんですよ。