INTERVIEW
BODY COUNT
2024.11.21UPDATE
2024年11月号掲載
Member:Vincent Price(Ba)
Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子
-だからこそユニークなのかもしれませんね。各楽曲についても話を聴かせてください。スラッシュ・メタルとハードコアが融合した「The Purge」はモッシュピット・アンセムと言えるような楽曲で、CANNIBAL CORPSEのGeorge "Corpsegrinder" Fisher(Vo)も絶妙なタイミングで登場していますね。楽曲やCorpsegrinderが参加した経緯について伺えますか?
(※笑顔で)モッシュピット・アンセムか! 俺がWillと一緒のときはいろんな曲を一緒に聴くんだ。それで"おぉ、この人にこの曲で参加してもらえたらクールだよな!"なんて話をする。そんな感じでCorpsegrinderにアプローチしたら快諾してくれたんだ。彼もBODY COUNTの大ファンでね。BODY COUNTのファンだって言う人は多いから、参加してもらうのもわりと楽なことが多いんだ。
-以前から知り合いだったのでしょうか?
ああ。ツアーも一緒に行ったことがあるしね。
-「Live Forever」では元KILLSWITCH ENGAGEのHoward Jones(Vo)が参加していて、楽曲も、BODY COUNTとしては新境地と言えるようなメタルコア・サウンドになっています。この曲について詳しく伺えますか?
Howard Jonesも俺たちの友達だから、理に適った参加だよ(笑)。俺はIceが歌うとき、これに合う声の人が参加してくれたらクールだろうなと考えるんだ。そうすることによってヴォーカル部分が一段とレベルアップする。「When I'm Gone」をあいつが歌っていたときも、これにAmy Leeが参加してくれたらパーフェクトになるだろうと考えた。
-サウンド的にはいかがでしょう? BODY COUNT的には目新しいサウンドになっているように感じられますが。
この曲のタイトルが前はなんだったかを思い出そうとしているんだ......ずっと考えているんだけど思い出せなくてね(苦笑)。(この曲は)3年前に最初に書いた曲の1つだったんだ。そこから少し手を加えた。それをHowardが気に入って、ぜひ何かやりたいと言ってきたんだ。
-ちなみにコロナ禍の時間があった状態で、他のアーティストの曲を聴く機会が増えましたか? それでこういう新境地に辿り着いたのではないかと。
音楽はいつも聴いているよ。今もiPodを使っていてね。1つはスタジオ、1つは車の中、それから居間にも1つ置いてある。だから朝目覚めたらiPodをオンにして、車に乗ってはiPodをオンにして......という感じで(笑)、常に音楽を聴いているんだ。ただ、新しいバンドはあまり聴いていないな。
-それでも新しいものを生み出すことができているんですね。
そうだな。そこはWillのおかげだよ(笑)! 最近のバンドでもお気に入りはいくつかあるけど、だからといって彼等から何か得ようと思っているわけではないんだ。
-彼等のほうがBODY COUNTから得ているかもしれないですね(笑)
そうなんだよ! Willに"こういうのをやりたい"と若者の曲を聴かせても、"おいおい、彼等のほうがBODY COUNTになりたがっているじゃないか"と止められる(笑)。
-BODY COUNTのアルバムではカバー曲を収録するのが恒例となっていますね。前作ではMOTÖRHEADの「Ace Of Spades」、今回はPINK FLOYDの「Comfortably Numb」がチョイスされていますが、この曲にはなんとDavid Gilmour(Gt)本人が参加しています。この曲をカバーすることにした理由と、Gilmourが参加した経緯を教えてください。
(※笑顔で)こいつはとても面白い話でね。Iceが「Comfortably Numb」をやりたいと言い出したのは、俺たちが『Manslaughter』の曲を書いていたときだったんだ。
-そんなに前から温めていたアイディアだったとは。
ああ。もうずーっと温めていたよ。スローにしてみたり、コーラス部分を高速でやってみたり(笑)、いろいろ試してみたけどうまくいかなくて、それでもどうしてもやりたいと。ただ、Iceはコーラス部分をやるのは嫌だと言っていた。それで誰にやってもらおうかと考えていた。俺はRichie Sambora(ex-BON JOVI/Gt)と仕事をしていたから"そうだ、Richieにやってもらおう"と思ったんだ。それが『Merciless』に取り組み始めた頃のことだった。Iceもまた"コーラス部分のことは忘れよう。俺はやりたくない"と言っていたけど、俺はその前にRichieにギターの部分を全部やってもらっていたんだ。コーラスの部分のギターを全部ね。ヴォーカルはやらなかったけど。
-なるほど。
それで、Iceがもう一度この曲に取り組んだとき、俺はRichieの弾いてくれたギター・パートを編集で曲に織り込むことができたんだ。それでBob Rock(※METALLICA等を手掛けたプロデューサー)にちらっと話したら"権利関係はクリアにしなくていいんじゃないか? そのまま出せば"と言われて、Richieに話しても同じことを言われたけど、2人が分かっていないのは、そのまま出して問題になった場合、非難されるのはVincent Dennis(※Vincentの本名)じゃなくてIce-Tだってことなんだ(笑)。それでマネージャーに相談して、権利関係をクリアにしようということになった。ところが......待っても待っても返事が来ない。Iceは"Vince(Vincent)、あいつら許可をくれるかどうかも分からないな"と言い出した。あらゆる資料を提出して許可を申請したけど返事が来ないから、もしかしたらボツにしないといけないかもしれないなと。じゃあせめて原曲の歌詞をネタに何か書いてみようか、という話になった。それならカバーにはならないからね。そうしてカバーをボツにしようとしていた寸前にRoger Waters(ex-PINK FLOYD/Ba)から連絡があった。"ぜひ使ってくれ! 曲の幸運を祈るよ"と言ってくれたんだ。
-それは良かったですね。
その後David Gilmourからも連絡があった。"Roger Watersはコーラスで歌っているのか?"と聞いてきたんだ。それで"いや、コーラスはIce-T 1人で歌っています"と言ったら、"そうか。じゃあ進めてくれ。曲を使っていいよ"と言ってくれた。それから24時間後にまた連絡があって、"ギターのパートを削除してくれ。僕が弾きたいんだ"と。
-そういういきさつだったとは。彼はその部分をRichie Samboraが弾いていたことは知らなかったのですよね?
いや、Richieのことは伝えてあったけど、その上で削除してくれと言ってきたんだ。それで俺からRichieに伝えなければならなかった。"あのさ、David Gilmourが弾きたいんだって"(※気まずそうな笑顔)。まぁ、分かってくれたけどね。Richieが弾いたものは今でも取ってあるんだ。将来的にリリースするかもしれないし、しないかもしれない。でも最初に弾いたのは彼だったんだ。
-なるほど......。まぁ相手がGilmourですし、Richieも納得したでしょうね。
Richieにとって彼は憧れの人だからね。彼のプレイもDavid Gilmourに似ているし。おかげで全て丸く収まったよ(笑)!
-興味深いお話をありがとうございます。ところでこの曲の歌詞はIceがかなり手を加えていて、原曲とは全く違いますよね?
ああ。それは初めからそのつもりだったんだ。世界情勢がどんどん変化しているからね。
-今のご時世により合ったものにしたんですね。
そうだね。あいつはかねてから、みんながいかにnumb(感覚が麻痺している)かについて語っていたんだ。コンピューターが発達した世の中で......ずっと前からあの曲をやりたがっていたよ。思いつきでもなんでもない。『Manslaughter』くらいの頃からずっと考えていたんだから。そりゃ初めはいきなり"これをやりたい"という感じだったけど(笑)、実現したんだ。
-SLAYERの「Raining Blood」(2017年リリースのBODY COUNTの6thアルバム『Bloodlust』収録)等、いくつかのカバー曲はアルバムだけでなくライヴでも演奏されていますが、楽曲やアーティストへのトリビュートということになるのでしょうか。それとも単に楽しむため?
カバー曲を選ぶのはIceだからねぇ......(笑)。1つ思い出した。アルバムのためだったかどうかは忘れたけど、いつだったかCANNIBAL CORPSEの「Hammer Smashed Face」をやりたいと言っていたことがあったな(笑)。カバー曲は作ったけど、結局あいつは歌わずじまいだった(笑)。でもいつもアイディアは思いつくんだ。"これをカバーしようぜ"といつも言っているよ。BLACK SABBATHもやるべきだってあいつは言っているけど、まだ実現はしていないな。
-それは将来のお楽しみになりますね。そもそも彼がメタルを好きになったのも、たしかBLACK SABBATHやOzzy Osbourneを聴いたのがきっかけでしたよね?
ああ。それからPUBLIC ENEMYの「Welcome To The Terrordome」もカバーしたいって言っていたよ。まぁそんな感じで、いつもあれこれカバーしたいと言っているんだ。
-オリジナル曲のみならずカバー曲もアイディアが豊富なんですね。今回はセルフカバーもしています。「Mic Contract」はIce-Tがソロで発表した楽曲のBODY COUNT版ですが、この曲を収録するに至った経緯を伺えますか?
あの頃の曲を作り直したいと言っていたんだ。理に適っている気がしたからやってみた。最初に(Ice-Tの曲を)やったのは『Manslaughter』に入れた「99 Problems」だけどね。その次にやったのが『Carnivore』に入れた「Colors」だった。『Carnivore』には「6 In Tha Morning」もデラックス・エディションのボーナス・トラックに入れたから、じゃあ今度はこのアルバムに「Mic Contract」を入れようという話になったんだ。
-なるほど。
クレイジーだろう? 一時期は自分の昔の曲を全部メタル化したいと言っていたんだ。でも昔のギタリスト......D-Roc(The Executioner)ではないけど、昔のギタリストの1人がやりがたらなくてね。それでそいつはもういないんだ。やる気がなかったからね(笑)!
-笑)調べた限りでは、BODY COUNTとしての来日は恐らく1993年が最初で最後のようです。
ああ。そろそろまた行かないとな。
-最近ヨーロッパ・ツアーを終えたばかり(※取材は10月中旬)ですが、世界の他の地域に行く予定はありますか?
そろそろ行くべきだとは思うよ。1993年以来ずっと行っていないからね。あの頃はあらゆるところでプレイしていたな。みんなに知られていたから、ツアーだなんだとあらゆるオファーが来ていたんだ。そろそろ行っていい頃だと思うよ。なんだっけ、"SUMMER BREEZE(Summer Breeze Open Air/※ドイツのメタル・フェス)"だっけ?
-"SUMMER SONIC"のことでしょうか。
あぁ、"SUMMER SONIC"。どこかと混同してしまったな(笑)。"SUMMER SONIC"とかのフェスにも出てみたいし、クラブ規模のところでもやれると思う。そろそろそういう時期だよ。