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INTERVIEW

BELLFAST

2024.10.24UPDATE

BELLFAST

Member:西野 幸一郎(Vo)

Interviewer:井上 光一

伝統的なアイリッシュ/ケルティック・ミュージックと王道のヘヴィ・メタルを融合させ、日本人ならではの国産フォーク・メタルを鳴らす唯一無二のバンド、BELLFASTが約7年ぶりに通算3枚目となる最新作『The Warrior Celt』をリリース。2023年には創設メンバーの脱退劇等もあり、新たなメンバーを迎えての再出発となったBELLFASTだが、このたび激ロックではフロントマンである西野幸一郎にメール・インタビューを実施。アルバムの制作プロセスや楽曲解説はもちろん、メンバーの脱退並びに新メンバーの加入の経緯等についても大いに語ってもらった。

-『The Warrior Celt』のリリースおめでとうございます! 無事アルバムの完成を迎えた現在の率直な気持ちをお聞かせください。

我々のアルバム・リリースにあたって、こうした機会をいただきありがとうございます。最新作『The Warrior Celt』、魂を注ぎ込んだ、いい作品に仕上がったと自負しています。作品の完成がゴールというわけでは決してありませんが、今はひとまずビールをガブ飲みして祝いたい気分です。というか、実際そうしています(笑)。

-前作『Triquedraco』(2017年リリースの2ndアルバム)から約7年の月日が流れましたが、その間にコロナウイルスによる世界的なパンデミックがありましたね。BELLFASTもライヴのキャンセル等大きな影響を受けたとは思いますが、あのパンデミックは西野さんの創作面において何か影響を与えましたか。

そうですね、あの時期はブックされていたライヴ日程が延期になり、それもまた再延期され、結局は中止になったりと、活動がままならない時期でした。ただ、創作面でパンデミックがなんらかの影響を及ぼしたということは特にはないですね。生活面でも自身が一度もコロナに罹らず、接種したワクチンによる不具合も特になく、収入面での影響も全くなかったこともあって、個人的には"居酒屋が20時に閉まってしまうこと"が当時の最大の懸念だったかもしれません。

-結成30周年を迎えた2023年には創設メンバーの松本周二(Ba)さんと初期メンバーの榊間 浩(Dr)さん、そしてヴァイオリニストの星野沙織(soLi/LIV MOON/TONERICO)さんが脱退してバンドとしても大きな転機を迎えましたね。バンドを存続させるという意思は西野さんや他のメンバーの中で最初から固まっていたのでしょうか。

2022年に行ったライヴの数日後に松本が"やめたい"と言い出したときには、彼なしでこのバンドを継続することは考えられませんでした。松本はこのバンドの創始者であり、後から加入した自分の中でも"BELLFASTは松本のバンド"という意識がありましたからね。しかし、残留の説得を続けていく一方で残るメンバーとも選択肢について話し合い、BELLFASTとしてアウトプットしてゆくことがまだまだあるという結論に達して、これまでと違う形であっても活動を継続することを決意しました。その"違う形"を目指す過程の一環として、榊間と星野がバンドを離れることになりました。なので、もしかしたら"活動の継続"よりは"再出発"という表現のほうが適当かもしれませんね。

-新たに3人のメンバーが加わりましたが、特にヴァイオリニストの武内いづみさんは12年ぶりの復帰となりました。それぞれのメンバーが加入した経緯を教えていただけますか。

まず最初に声を掛けたのはベースの池田督樹でした。普段から仲良くしているバンド RAZOR HIGHWAYやVelmentiAのメンバーとしてプレイ、パフォーマンス、クリエイティヴィティの全てに魅力を感じていましたし、何よりナイスガイなので迷わず誘いました。ベースに関しては他の選択肢は特に考えず、最初から池田の名前が浮かんでいましたね。ドラムについては、池田も以前一緒にプレイしたことがあるHELLHOUND、AFTERZERO の山崎隆太のサポート起用を経て、多くの候補の中から正式ドラマーとして京都在住の内田伸吾(六合)をリクルートしました。内田は20年来の友人であり自分の知りうる限りではテクニック、センス、マインド共に間違いなく最高レベルのドラマーで、いつか自分がソロ・アルバムを作るときには絶対に彼に叩いてもらうと決めていました。が、今回優れたドラマーを必要とする機会が生じたことで前倒しでオファーし、一緒にプレイすることが実現しました。検討の段階では京都在住という距離の問題から躊躇する意見もありましたが、"欧米だったら隣町だぜ!"という自分の無茶な意見を押し通しましたね(笑)。ヴァイオリンは、星野が類稀な超絶プレイヤーだったこともあって、後任探しは難儀するだろうなと覚悟していました。そんななかで1st(2010年リリースの1stフルレンス・アルバム『Insula Sacra』)当時からずっと繋がっている武内のSNSでの演奏活動をいつものように眺めてたときに、"あ! いづみちゃんがいるじゃん!"とふと思い立ち、ダメもとで再加入をオファーしたらなんと快諾いただけた、という経緯です。

-新体制となって制作された本作ですが、従来のBELLFASTらしさを継承しつつも新たなアプローチが随所に見られる強力な作品に仕上がっています。バンドとして新たな地平へと辿り着いた手応えのようなものは感じられましたか。

"従来のBELLFASTらしさ"と"新たなアプローチ"は、まさにこの新作を表す要素なので、その部分に言及していただけることが嬉しいですね。まず、BELLFASTらしさというものを常に意識しているわけではないのですが、このバンドで"フォーク・メタル"を意識し出してから20年近くも経つと、全てのアウトプットがバンドのスタイルに自然に収束してゆくようなイメージです。そして新しいアプローチについては当初からそれを狙っていたわけではないのですが、新しいメンバーのこれまでにないスキルやセンスが刺激となったことで、制作してゆく過程でどんどん挑戦的な作風になっていきましたね。そして結果的に、今のこの体制のBELLFASTでしか作り得ない唯一無二の作品に仕上がったと自負しています。

-クレジットを確認した限り、前作、前々作の歌詞はBrian Cullen氏との共作も含まれていましたが、本作は西野さん単独で全ての曲の歌詞を担当したことも大きな変化ですね。本作の制作にあたってご自身で全ての歌詞を手掛けるというのは制作時点で決められていたのですか。

1stと2ndでは、松本や狩野 慎(Gt)が作った曲はBrianが詞を書くというプロセスが当然のようになっていました。そのプロセスの一環として、自分の歌詞もアイルランド伝承や北欧神話に詳しいBrianに手を入れてもらい、歌唱にあたって発音チェックもしてもらっていました。今回に関しては、主に自分がメイン・ソングライターとして曲/詞共に自律的に創作を進めたこと、前作から7年のうちに自分のスキルが向上したこと、そして英文チェックやスピーキング・チェックのテクノロジーが急速に進化したことなどの複数の要因が重なって、歌詞については自分が全てを担当することになりました。

-歌詞はケルト神話や北欧神話にインスパイアされたようなストーリー性のある内容ですが、アルバム全体を通してコンセプトのようなものはあるのでしょうか。もしくは曲それぞれが独立した物語という解釈なのでしょうか。

各曲それぞれにそうした伝承や神話、戦士にまつわる事柄などのモチーフを封じ込めましたが、一貫したテーマやコンセプトを設定することなく制作を進めました。なので、それぞれの曲は独立した物語を語っています。ただ、作品が完成した今改めて各曲の歌詞を俯瞰してみると、全ての曲が"The Warrior Celt"というアルバム・タイトルへと繋がっているようにも感じます。

-本作のアートワークも西野さんが担当されています。アルバムの内容に相応しい出来栄えとなっていますが、アルバム・レコーディングの完了後に着手されたのでしょうか。もしくは同時進行でしたか。

今回は、実際の制作作業に入る前に"次作はこういう作品にしよう"というヴィジョンを全て固めていました。実は2023年の春に突発性難聴になってしまい、1週間ほど入院を余儀なくされたということがあったんです。幸か不幸かその入院期間中には様々なことをじっくりと考える時間に恵まれ、"The Warrior Celt"というアルバム・タイトルと収録曲全てのタイトル案、それぞれの大まかな曲調、そしてアートワークもその時点で現在の形に近いドラフトまで作成しました。設計仕様書みたいなものですね。そこから実際の楽曲を作り、様々な要素を修正しながら完成形に近付けていったという形です。

-作曲プロセスについてお聞きします。本作は西野さんが作曲した曲が中心となっていますが、前作で西野さん以外に作曲を担当していた松本さんと榊間さんが抜けたことで自然とそのような役割分担となったのでしょうか。

そうですね、1stは1993年の結成当時から松本と狩野が書き貯めていたマテリアルの具体化と、自分が持ち込んだヴァイキング・テイストの混在という構成でした。一方2ndは、自分がイニシアチヴを取りながら、他のメンバーも積極的に新しいアイディアを出して作り上げたという印象です。今回は、基本的には全ての曲を自分で書くつもりでアルバム全体を構想しました。それは松本等が抜けたからというわけではなく、自分がモチベーション高く思い描いた作品の全体像を実現するためには、そうするのが自然だったから、というところでしょうか。ですが、作曲を進めるなかで池田も狩野も素晴らしい楽曲アイディアを持ち寄り、結果的にはそれらが作品を一歩上へと押し上げてくれました。

-アルバムの中でも際立ってキャッチーな「Ibernia」と7分超えの長尺曲「Last Ember Fades」は新メンバーの池田督樹さんが作曲されていますね。池田さんはVelmentiAやRAZOR HIGHWAYでメイン・ソングライターを務めていますし、作曲面における貢献度も高かったのではないでしょうか。

池田はいわゆる"洋楽のツボ"がDNAレベルで備わっている本当に素晴らしいソングライターで、彼が書くRAZOR HIGHWAYの曲はどれも心から大好きです。「Last Ember Fades」は彼が最初に持ってきた曲で、長い間BELLFASTを友人として客観的に見てきた彼ならではの"BELLFASTかくあるべし"的な思いがこもった、とてもいい楽曲だと思います。続いて持ってきた「Ibernia」を最初に聴かされたときは、あまりのキャッチーさに"さすがにこれはBELLFASTではできないよなぁ......"と採用に躊躇してたのですが(笑)、個人的にはこの手のスタイルの曲も大好物だったことと、RAINBOWの「Since You've Been Gone」やMICHAEL SCHENKER GROUP の「Dancer」みたいな立ち位置の曲があっても面白いかなと思い直し、ちょいと冒険してみることにしました。そして結果的に、アルバムの中でしっかりとBELLFASTの曲として機能していることに嬉しい驚きを感じます。