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INTERVIEW

BELLFAST

2024.10.24UPDATE

BELLFAST

Member:西野 幸一郎(Vo)

Interviewer:井上 光一

最近は"上手いね"より"クセが強いね"と言われるほうに、喜びを感じてしまっています(笑)


-「Thor's Roar」は恐らくバンド史上最も速い曲ですよね。個人的にはイントロやギター・ソロ前のデスヴォイスに近いヴォーカルに北欧のメロディック・デス・メタルからの影響も感じましたが、あくまでエクストリームなメタルに寄りすぎないバランス感覚が印象的でした。西野さんの中で、今回はこのような曲を作りたいという欲求があったのでしょうか。

そうですね。バンド史上最速の曲となりました。メロディック・デス・メタルというよりはブルータルなスラッシュ・メタル、具体的には『Low』(1994年)時期のTESTAMENTをイメージして作った曲です。デス/ブラック、スラッシュをはじめとするエクストリーム・メタルも大好きで少なからず影響を受けていて、1stの時点で代表曲「Deadly Oath」の曲中でブラストビートを入れていたり、2ndでは「Sign of the Paganheart」にブラック・メタル的なトレモロを、「Sword of Victory」にはANTHRAX風のパートを加えたりしています。ただ、自分を含めてメンバーのプレイ・スタイル面ではエクストリーム要素が希薄......というかほぼ皆無なので(笑)、幸いにも何をやってもそっちに寄ってしまうことはないですね。もしこの曲が本当にザックザクのクランチ・リフだったら、BELLFASTっぽくなくなって逆に違和感があるように感じてしまうかもしれませんね。

-編曲についてはどうですか。デモの段階で各楽器の基本的なアレンジ等は、フルートやヴァイオリンも含めて、ある程度はできあがっているのでしょうか。

ギター・ソロを除く全ての演奏パートについて、もし一音違わずそのままコピーして演奏してもらったとしても完成度高く仕上がると思えるレベルのデモ音源を作って、各メンバーに渡しています。ギターは指がフレットを移動する際のノイズまで入れたり、ドラムにはゴースト・ノートを加えたり。いつもメンバーに"やりすぎだ"と怒られています(笑)。ただ、決してそれをそのまま再現してくれというわけではなく、概ねそう聞こえるように、元アレンジを超えるパフォーマンスを各自よろしく! という感じでオーダーしていますね。その結果、メンバーみんなの個性が漲る素晴らしいアウトプットが集まってくることは、作曲者としてはこの上なく幸せです。

-本作は7分を超える長尺曲が3曲収められていますが、特にラスト曲の「The Warrior Celt」はバンド史上最長の9分近い大作ですね。歌詞も含めて映画の一場面が想起されるようなドラマチックな仕上がりとなっています。レコーディングは苦労されたのではないですか。

「The Warrior Celt」はアルバムのタイトル・トラックで、特に思い入れが強い1曲です。20年程前に作ったもののタンスの奥で眠っていたプログレッシヴなアイディアをもとに曲作りを進めていたのですが、狩野が新たに作ってきた曲と融合させてみたら最高にナイスな仕上がりとなりました。歌詞の面でも、忠義のために栄光の死に向かって戦う"戦士"が、その一方で愛する者ために生き延びたいと願う"1人の人間"でもあるということの自然な葛藤を描いた、まさに映画的なストラクチャーとなっています。レコーディングは新井太朗(Gt)が担当したので自分はよく分かりませんが、長尺で展開も複雑なので、たぶん苦労したと思います。

-アルバムのマスタリングは世界的な知名度と実績を持つSvante Forsbäckが担当しています。彼との仕事はどうでしたか。

前2作はミックスとマスタリングをKING DIAMONDのギタリストでもあるAndy LaRocqueにお願いしていましたが、今作ではミックスをギタリストの新井が自身で行う決定がなされていたので、マスタリングのみ外部に委託することにしました。様々な選択肢を模索するなかで、KORPIKLAANIの最新作『Rankarumpu』(2024年)を聴いてそのサウンドの素晴らしさに感銘を受け、同作のマスタリングを担当していたSvanteにマスタリングを依頼することに決めました。彼はRAMMSTEIN、APOCALYPTICAやVOLBEAT等のビッグ・ネームとの仕事で有名ですが、前述のKORPIKLAANIをはじめ、AMORPHIS、ENSIFERUM、FINNTROLL、TURISASといった自分が好む多くのフォーク/ヴァイキング系バンドの作品を手掛けた経験の多さも決め手となりました。結果については、もう本当に言うことなしです! 望んだ以上の素晴らしい音像に仕上げてくれました。

-西野さんは以前のインタビューで"BELLFASTの曲を他の人が歌ってもピンと来ない。そういうヴォーカリストでありたい"とおっしゃっていました。本作の制作を経て、ご自身のヴォーカリストとしての考え方について改めてお聞かせください。

自分がメタルヘッズとして様々な曲のヴォーカル・パートを耳にするとき、しっかりとコントロールされた巧さに惹かれることが多いのですが、それを超越して心に響いてくるのは、シンガーそれぞれの個性だと感じています。なので、自分も歌うときには、ピッチやリズムというテクニカルな部分をしっかりと押さえつつも、楽曲を構成する全ての要素の1つとして、たとえラフな歌唱になったとしても感情をダイレクトに込めようとしています。実際問題、年齢を重ねても全く衰えを感じさせない化け物シンガーの方々とは違って、自分は年を経るごとにヴォーカリストとしての可動範囲が、緩やかではあるけど狭まってきていることをひしひしと感じていますが、それも含めた自分でしかない"個性"が、BELLFASTの魅力を構成する重要な要素の1つになれたら嬉しいと日々思っています。最近は"上手いね"と言われるより"クセが強いね"と言われることのほうに喜びを感じてしまっています(笑)。

-難しい質問かもしれませんが、現時点で西野さんが一番気に入っている曲と、バンドで演奏していて一番楽しい曲があれば教えてください。

これは新作からですよね? うーん......おっしゃる通りとても難しいです! 全ての曲がナンバー・ワンなのですが、あえて1曲だけ挙げなければならないとするならば、現時点では自分のIRON MAIDEN愛を昇華させた「I Demigod」ですかねぇ。この曲は、自分とBELLFASTの中に存在するIRON MAIDENからの影響と、フォーク・メタルが理想的な融合を果たしていると思います。ツアーのリハーサルで演奏していて楽しい、というか気持ちいいのは、バラードの「Morning Dies Away」。この曲でのバンドのグルーヴ、そしてギタリスト2人による長大なソロ・ワークが本当に素晴らしいのですが、それをリハーサルで生演奏で聴いたとき、トリップするほどの気持ち良さに包まれました。ライヴでの演奏もフロアの皆さんと一緒に楽しみたいと思います。

-少し話は逸れますが、BELLFASTの立ち位置というか、西野さんご自身が日本のヘヴィ・メタル・シーンから一歩引いたスタンスを保っているような印象があります。現在は海外で活動する日本のメタル・バンドも増えていますが、BELLFASTとしての海外での活動展開等は考えていらっしゃいますか。

そんな印象なんですか(苦笑)? たしかに、以下は個人的な感覚ですが、アーティスト単体の音やパフォーマンスには興味を惹かれるけど、その集合体というか、そういったバンドたちが集まってそのファンたちと作り上げていく"場"や"シーン"みたいなものは、さほど重視してないかもですね。そう言いながら、そうした会場でみんなとワイワイ言いながら飲むのは楽しいので、一概にはそうも言えないのですが(笑)。そんなスタンスがBELLFASTの活動にも表れているんだろうなぁとは思います。 海外展開については、2点。まず音源の流通については、今の時代はストリーミングが主流なので現在の形態でも十分に海外展開できている状態だと感じています。フィジカルについては、積極的に売り込みはしませんが、出したいというレーベルがあれば喜んで、という感じですね。もう1点のライヴという側面については、これはいつかやってみたいと常に考えています。我々は大所帯なので諸々とハードルは高いですが、楽しそうなのでぜひ実現させてみたいですね。

-今年の11月には東名阪でのツアー"The Warrior Celt Tour 2024"が決まっていますね。どのようなライヴになるのか、答えられる範囲でお聞かせください。

レコ発ワンマン・ツアーということで、もちろん新作からたっぷりとやります。それに加えて、前2作からもそれぞれ何曲かピックアップしてプレイします。現編成での初めてのステージということで、新生BELLFASTの魅力をしっかりと届けられるよう、リハーサルを重ねています。ドラムの内田とは今回が初めてのステージですし、ヴァイオリンの武内とプレイするのも十数年ぶりなので、とにかく全てのことにワクワクしています。ショーの全体の構成はまだ決定してはいませんが、長丁場になることは確実なので、途中で短い休憩を挟む2部構成になる可能性が高いです。その休憩タイムも各会場ごとに起用したDJ陣の選曲を楽しんでいただけると思います。

-最後に、新作を心待ちにしていたファンへのメッセージをお願いします。

前作から7年間もお待たせしてしまいましたが、新作『The Warrior Celt』は、それだけ待った甲斐があると思っていただけるような力作に仕上がったと実感しています。ヘヴィ・メタルへの愛と情熱、そこから湧き上がるクリエイティヴィティをはじめ、持てる全てを注ぎ込んだ作品です。ぜひ聴いてみてください! そしてライヴでも共に楽しみましょう! 会場で皆さんにお会いできることを楽しみにしています! Horns Up!