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INTERVIEW

Bimi

2024.08.29UPDATE

2024年09月号掲載

Bimi

Interviewer:山口 哲生

7月に品川 ステラボールで開催された"Bimi Live Galley #03 -cosmic-"もチケット完売。現在もワンマン・ライヴ全公演ソールド・アウト継続中のBimiが、EP『Snack Box』と『Refresh』を2枚同時リリースした。彼らしいバリエーションに富んだ楽曲たちを収録した『Snack Box』と、リリース日、品番、値段のみアナウンスされ、その他詳細は完全にシークレットという"謎の商品"として告知されていた『Refresh』は、作品のトータル・カラーは異なるものの、お互いを補完し合う2枚になっている。今回は両作品の全収録曲についてインタビューを実施。そこに詰め込んだこだわりや、現在のモードについて、じっくりと語ってもらった。

-今日は同時発売された2枚のEP『Snack Box』と『Refresh』についてじっくりお聞きできればと思います。『Refresh』に関しては、リリースを発表された際には"謎の商品"として作品タイトルも楽曲名も伏せていましたが、この方法を取った理由というと?

『Snack Box』のほうはいつもの如く、どれぐらいカマせるかみたいなことを考えていたんですけど、『Refresh』のほうは、なんの先入観も持ってほしくなかったんですよね。

-先入観ですか。

どんなアーティストもそうですけど、曲タイトルを見て"こういう曲なのかな"ってちょっと予測するじゃないですか。それで"あぁ、こういう曲か"みたいな。そこでギャップを楽しんだりすることもあると思うんですけど、でも"これが曲名です、これが歌詞です"っていきなり渡されて、なんの準備もしていないまま、邪なものが入っていない状態で聴いてもらって、感じてもらいたいなと思って2枚に分けました。アルバムにしても良かったんですけど、急遽出すっていうサプライズ感と、産地直送で鮮度のいいまま聴いてくださいっていうのをやりたかったので。

-なるほど。前回のインタビュー(※2024年5月WEB掲載)でも先入観のお話をされていましたが、それとはまた別のベクトルの先入観。

そうですね。この前話したようなカウンター・カルチャーとかそっち系の話ではなく、どっちかと言うとサプライズとか、楽しんでもらいたいっていうのと、あとは箸休めみたいな感じもあります。『Snack Box』のほうはいろんなものをゴテゴテに詰め込んだから(笑)、その口直しじゃないですけど。でも『Snack Box』と『Refresh』を組み合わせて初めて完成するようにはしたかったので、そういった意味でのいいバランサーになってくれるのが『Refresh』ですね。とはいえ、それは決して捨てのEPとかじゃなくて。

-あくまでも補完し合う関係であると。まずは『Snack Box』についてお聞きしたいんですが、お話にもあった通り、いろんなものを詰め込んだと。

前作の『心色相環』(2024年3月リリースのEP)は、メジャー初だったのもあって自己紹介的な意味合いが強かったんですけど、今回の『Snack Box』に関しては、スキルフルにいろんな音楽をカマす、みたいな。自己紹介というよりは、好きな音楽を詰め込んで"こういうのやってます、超カマしてますよね? 楽しいでしょ?"みたいな、エンタメに特化した作品にしようと思って。前回はめちゃめちゃ自分の価値観を詰め込んでたんですよね。これが俺の価値で、俺の喜怒哀楽で、でもそれは表裏一体で、みたいな。ポエトリー系も多かったし難しい話も多かったんですけど、今回の「Miso Soup」なんかは、すっごいくだらないことをドリル・ビートに乗せるんか? って。何も考えずに聴いてもおもろいし、改めてライムとかめちゃめちゃ遊んでるし、でもちゃんと読んだらメッセージ性もあるっていう、いい感じの塩梅になっていたり。

-なるほど、それで"Snack Box"なんですね。手に取りやすいというか。

そうです。手に取りやすくて、お菓子みたいに甘みが強かったり、塩気が強いのがあったりっていう。前回は感情をこれでもかっていうぐらい押し付ける感じだったんですけど、今回はサクッと取って、味わってくださいみたいなイメージです。

-でもまぁ、たしかにおっしゃる通りバラエティに富んではいるんだけど......。

そのわりにはって感じですよね(笑)。

-そうそう(笑)、内容はかなり濃いので。

結局それがBimi味なんで、しょうがないっちゃあしょうがないですね。

-そういうことなんでしょうね。お話にも出てきた「Miso Soup」から『Snack Box』が始まるわけですけども。

パンチ強いですよね。

-かなりインパクトありますね。タイトルだけ見るとちょっとネタっぽさはあるけど、かなり言葉を詰め込んでいるし、それこそスキルフルだし。

今(※取材は7月下旬)、リスナーには"ほっこりした歌を書いちゃいました"って、嘘ばっかついてます。

-また相当な嘘を(笑)。

どんな感動する曲が来るんだろうなって思ってくれてるんで。というかそっちに仕向けてます。

-それもある意味サプライズと言えばサプライズですね。この曲はどういうところから作り始めたんですか?

とにかくラップをブチカマしたかったんですけど、日本人全員──底辺から上のほうの人まで全員に刺さるものってなんだろうって考えたときに、ソウルフードかなと思って。じゃあ味噌汁にしようかなっていうところから始めました。"炊き出し 家庭の食卓 どんな所でもこいつなら変わんない"とか。

-"若めだから"から始まるくだりもいいですね。

あぁ、味噌汁の具を入れていくっていう。最初に"馬耳東風"を思いついたんですけど、"とうふ"は味噌汁の具になるから、4小節か8小節、全部具で攻めるかと思って書いたっすね。

-そういったユニークさもありつつ、"お金で自分の見栄なら張れるが心の奥まで着飾れない/お金で自分の機嫌は取れるが心の奥まで満たされない"みたいに、メッセージをまっすぐ叩きつけるところもあって。

ここ、最初は違う表現にしてたんですけど、まだ詰められるかなと思ったので、スタジオですぐに考えて。ここはたしかにいいなと思う。

-スキルフルというお話もありましたけど、ラップもそうだし、声のパターンも様々で。

いろんなラッパーが歌っているようなビート・アプローチをやりたくて。今はまだ世に出て行っている段階なので、なんでもできるっていうのを提示したほうがいいかなと思って、そこは意図的にやりましたね。

-それもある意味らしさですね、できてしまうという。2曲目の「You Gotta Power」は、ざっくり言うとダンス・ミュージックというか。

そうですね。これはライヴを意識して作りました。クラブとかで酒を飲みながらみんなでダンスできるものを作りたかったので。アンセムまではいかないけど、みんなで騒げる感じ。

-且つ、"ドラゴンボール"リスペクト。

もう完全にそうですね。"ドラゴンボール"は世代なんで、未だにフィギュアとかあったら集めちゃうぐらい大好きなんですけど。だから鳥山(明)先生へのレクイエムであり、そこにBimiみをフュージョンさせてもらった感じですね。

-ビルドアップのところに、かめはめ波を溜めるときの音を入れてたりとか。

ラップも、こっちは亀仙流で、こっちは悪者側みたいに、善と悪に分けたりとか。"ドラゴンボール"の雰囲気が好きな人だったら"おぉー、なるほどね"みたいな感じはあると思いますね。

-曲としては、いわゆる歌モノEDMみたいな感じではなく、ビートでがっつり踊らせる展開も面白かったです。

1分40秒歌わないっていうのは最初に決めてたんですよ。1コーラスはビートとかチョップとか、そういった素材で勝負するってずっと決めていて。なんか、元気玉って溜める時間長いじゃないですか。

-はははは(笑)。数話ぐらい撃たなかったりしますし。

そうそう。ずっと溜めてて、その間に誰かが戦ってるっていう。で、歌い出したら気持ちいいみたいな。そういう緩急をしっかりつけたかったっていう感じですね。

-3曲目の「月と太陽 feat.SUIMMIN」は、グルーヴィで艶のある感じですけども。

僕、スラップ・ベースが好きで。特に、オシャレなR&Bの中に交ざっているスラップ・ベースのフレーズがめっちゃ好きなんですけど、それを生演奏じゃなく、打ち込みでやって、チルR&Bに仕上げるのが得意なのがSUIMMIN君なんです。それで、俺の性癖──スラップ・ベースを織り交ぜたジャジーな感じのやつを、湿度高めでお願いしますって。で、このトラックを貰って、すぐにエロい歌を書いた感じでしたね。ジメジメした熱帯夜のセックスの話を書こうと思って。

-トラックをオーダーするときから性愛を歌おうというのは決めていたんですか?

いや、ビートを聴いたときですね。なんか"月と太陽"っていうのが漠然と浮かんだんですよ。そこから書いていったらこうなったっていう感じでした。

-じゃあビートにインスパイアされて。

基本そういうのが多いですね。「You Gotta Power」は"「ドラゴンボール」で、アッパーで、EDM"でみたいな注文をしたけど、フィーチャリングのときは向こうからの提示を受けて書いていきます。そっちの土俵で戦いたいっていうのがあるし、そっちでもカマせる自信があるので。

-"ペトリコール漂う SUN&MOON"というラインは匂いを感じさせるし、それがより艶っぽい雰囲気を醸し出しますね。

そうですね。梅雨のアスファルトの匂いみたいな。

-セクシーな曲って匂いが大事だと思うので、いいなぁと思いながら聴いてました。

そういうことをするときに流せる曲ですね。

-R&Bってそういう曲でもありますし。

うん。R&Bとかジャズって、熱に絆される夜を彩る曲じゃないですか。2人の想いを助長するような曲だから、そういうのをやりたかったっすね。

-4曲目の「Absolute ZERO feat.Usnow」はフューチャー・ベースで。

トラックを聴いた瞬間に、これはもう氷だなと思って。でも、ただの氷っていうのも嫌だから、下げに下げて、絶対零度かなっていうところから作っていきました。すみません、分かりづらくて(苦笑)。

-いや、分かりますよ。サウンド的に冷たさがあるし。

あと、響いている感じもあるんで。氷の洞窟の中で鳴っている音楽みたいなイメージがあったから、そこからはすぐでしたね。

-そういったクールさはあるんだけど、ラップと歌がそうさせない感じがあって。

そうですね。氷ってめっちゃ冷たいと、熱いのか冷たいのか分からなくなるじゃないですか。その感覚にしたくて。手が張り付いて離れない、みたいな。

-あれ痛いですよねぇ......。

そうそう。"熱っ! えっ!? 痛っ! 冷、熱っ!"みたいな。冷たすぎて行ききっちゃってる感じ。熱を帯びているのか、熱が冷めきっているのか、ぶっちゃけよく分かんないっていう。

-ただ、そこに痛みはあるという。

うん。でも、絶対零度なんで、そこまで下がったらあとは上がるしかないっていう。そういう希望も見えるような曲にしました。

-最後は上がるというものにはしたかったんですか?

作っている最中にそうなっていった感じですかね。"アイス"って覚醒剤とかそういう意味もあるじゃないですか。そっち系のリリックも書いたんですよ。"蒼白の肌掻きむしって"とか"幻覚は別格な氷嚢"とか、ちょっと怪しいワードを入れてるんですけど。でもそれって結局自分が逃げているだけで、そこと向き合ったときに希望に繋がるなって。絶望って意外と希望に繋がることがめちゃめちゃ多いし、そこで立ち直られれば人間にとって強くなるための試練みたいなものというか。そこを意識していたら、ここから先は上がるだけだなっていうリリックが出てきました。なので、最初から希望にする気はなかったんですけど、いつの間にかって感じでしたね。それこそ自分でも熱いのか寒いのか分かんなくなっちゃって(笑)、いつの間にか熱を帯びてたっていう。

-面白いですね。5曲目の「Safe Haven」は前回のインタビューでお聞きしたので割愛させていただきまして、ラスト・ナンバーは「Hurry feat.福澤 侑」。

一緒にやってる福澤 侑も俳優で、仲がいいんですけど、彼も結構尖っていて。俺ら2人、俳優界隈の中で言うと異質な存在ではあるので"ナメんなよ?"みたいな、自分たちをフレックスする感じというか。この価値観についてこれないようなら置いていくからね? っていう、ちょっとした挑戦状みたいな感じですね。

-その感じがアッパーなトラックに合ってますね。

仲もいいし、現場が一緒になることも多かったので、現場中に作ったんですよ、この曲。俺らはパーティー・チューンのほうがいいんじゃない? って。

-パーティー・チューンを選んだのはなぜだったんです? それこそドリル・ビートとか、いろんな選択肢があったと思うんですけど。

俳優2人でまとまってカッコつけると、カッコつきすぎて寒くなるんですよね。そういうのはK-POPとかアイドルがやっているし、二番煎じで、結局そっちに憧れてたの? みたいになるのはすごい嫌だから、あえてチャラけるエンタメというか。"昨日食べたラーメンにも感謝してる"とか言っちゃう感じにしたかった。別にダサいこと言ってもかっこいいっしょ? みたいな。

-なるほど。決まりすぎてしまうという。

決まりすぎちゃうと冷めちゃうんですよね。カッコつけてると。だったらチャラけてカマしたほうがいいと思って、こういう感じにしました。

-ここまでが『Snack Box』の収録曲で、もう1作が"謎の商品"として発表された『Refresh』ですけども。

こっちは自分の内情に向き合った感じですね。ちょっとメタ的な発言なんですけど、『Snack Box』は表に出るときのBimiの強さとか、イケイケみたいな感じなんですが、『Refresh』は誰もが持っている弱い部分にフォーカスしていて、それは俺も持ってるよっていう。だから、距離感的にはこっちのほうが近い。突き放して"ついてこいよ"とか、リードするんじゃなくて、どっちかと言うと寄り添う感じ。弱さとか脆さ、儚さとか、そういったものもあるんだけど、それも人間として素晴らしいよねっていう。

-1枚通してメランコリックというか。

まさしくそうですね。自分の心に引っ掛かる哀愁だったり、取り戻せないものだったりを、これを聴くことによって一個奥に入ってもらって、自分の人生に強く繋げてもらいたいなって。