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INTERVIEW

Bimi

2024.08.29UPDATE

2024年09月号掲載

Bimi

Interviewer:山口 哲生

音楽って自分という芯があって そこに翼とかパーツを付けるのは自分じゃないって思った


-1曲目は「夕立 feat.カノエラナ」。夏の景色が目の前に広がる楽曲になっていますけど、カノエさんを迎えてやってみようと思ったのは?

最初の入りは正直言うとKING RECORDS繋がりっす(笑)。でも、夏っぽい感じで作りたいとなって、カノエちゃん以外のパートは僕が書いたんですけど、カノエちゃんがめちゃくちゃ仕上げてくれて。こんなに向き合ってくれてありがとうございますっていう。

-本当にいい曲になってますよね。Bimiさんがイメージしていた夏っぽい感じというと?

海とか花火とかそういう感じじゃなくて、泥臭い夏にしたかったんですよ。夏休みって楽しい思い出もあるんだけど、30日間何もしてなかったなぁみたいなこともあったりして。そっちに寄り添いたかったんです。報われない、取り残された夏の歌を歌いたかったんで。それで、失われた30日間ってどんなんだったかなって考えていったんですけど、そこには後悔があって、夏の景色に絆された自分がいて。そういったものを刺激するような、奮い立たせるような歌にしたかったし、そういう自分の感情を夕立が洗い流してくれるように、感情を吐露していくっていう物語を描きたかった。

-失われた時間とか、取り残されている感覚とか。

意外と焦るじゃないですか、そういうのって。何に焦ってるのか分からなくて、でも大人になっていく自分がいて。そのことを大人になったときに思い返してみると、そういえばいつの間にか大人になってたなっていう。そういうのって誰しもが毎年絶対に感じると思うんです。だからまぁ、きれいじゃない記憶をきれいにしたかったっていう感じですね。

-それこそお話しされていた"いつの間にか大人になっていた"というところを刺激されて、かなりグッときました。

この曲、友達に聴かせると、おじさんおばさんになればなるほど刺さるみたいで。ごめんなさい、言い方がアレでしたけど(笑)。

-いや(笑)、マジでそうだと思う。上の世代になればなるほど沁みますよ。

老若男女の"老"の方々から、"これ完成したら送って!"って言われたり、結構泣きながら聴いてくれる人も多くて。あら? って。

-"あら?"って(笑)。いい曲だなぁと思いましたよ。それこそ夕立が洗い流してくれるというか、気持ちがすごくすっきりするし。

泣くとか発散すること、外に出すことによって、自分を改めて見つめ直せるところってあるじゃないですか。"俺ってこうだったんだよ"って言うことによって、改めて自分を見つめ直すっていう。そうやってポジティヴな気持ちに変換するためには、出力しなきゃいけないと思っていて。全員そうだと思うんですけど、自分の内々の世界だけでやっていると、とんでもないぐらい落ちちゃうから。それをぶちまけられるような、大人たちの孤独みたいなものを代弁するような感じだったり、例えばカノエちゃんの影響力でこの曲が流行ったとして、子供が歌うようになって、その子供が大人になって"こんな曲があったな"って改めて聴いたり歌ったりしたときに、"こんなヤバい曲だったんだ!"って、二度美味しくなる曲になればいいなって思いますね。

-たしかに大人になって聴いたときに初めて分かることってありますもんね。あと、"ポジティヴな気持ちに変換するためには、出力しなきゃいけない"というお話で言うと、今って老若男女の"老"になればなるほど出力しにくいというか。やり方によってはパワハラって言われちゃうから、みんな異常に気を付けてるだろうし。

そうなんすよね。じゃあ俺らは死ぬまで我慢しろっちゅうんかいっていう。でも何かの本とか、いろいろな物語で言われてるけど、死ぬときは後悔のほうがつらつら出てきて、あのときにああしておけば良かったって思いながら死んでいく人が多いって。だけどそういう後悔って人間讃歌でもあると思うし、そういうのを全部夏のせいにするっていう感じの曲ですね。"ヒグラシ"とかも命のメタファーとして入れてるんですけど、こいつはこいつで命を燃やしていて、だけど自分はそうでもなくて、みたいな。

-本当に素敵な曲でした。2曲目の「Good-by」も沁みますね。

こっちは中高生とか大学生が上京した後とか、旅をして戻ってきたときのあの感覚というか。"あれ? 意外とみんな子供の頃のままじゃいられないんだな"みたいな、そういう寂しさに寄り添う曲ですね。

-サウンド的にはKAWAIIフューチャー・ベースな感じで。

この前"cosmic(Bimi Live Galley #03 -cosmic-)"っていうライヴをやったんですけど、それに向けてちょっとスペーシーで、スペース・シャトルに乗り込む人と......みたいな、そういうのも織り交ぜたんです。でも一番伝えたかったのは、どうしようもない別れって絶対にあるじゃないですか。心は離れないけど、物理的に離れなきゃいけない別れ。大学とか仕事、他にもいろいろあると思うんだけど、離れた先でそれぞれの価値観が変わって、戻ってきたときに"あれ? お前変わったね"みたいな。それを言う/言わないは分からないけど、お互いその違和感を持ちながらそれと共に旅をしていく、っていう。そこにちょっと寂しさはあるんだけど、それでも進んでいかなきゃなって。そういう曲が書きたかったんです。

-着地点としては"それでも進んでいかなくちゃ"なんですね。

うん。『Refresh』の曲は、全部前向きには作ってますね。これも「夕立」と一緒で、吐露する感じ。お前が変わっちゃって悲しいし、これからも変わっていくことは分かっているけど、でも今は今だから、明るくなるまで一緒にいようよとか、今は今で楽しもうよっていう。

-それもあって"だってまだ痛いから/まだ居たいけどさ"というところもいいし、曲調的にはポップなんだけど、痛みはあるというか。

もうほんとその通りで。ポップにして聴き心地だけは良くしておいて、メッセージ性は濃くしたかったっていう。

-そのポップさがあるからこそ、濃いメッセージもより入ってきますし。

俺、今後"Balloon"とか絶対に入れないっすもん(笑)。いつも最初から書いていくんですけど、"膨らますBalloon"って書いて......ヤベぇ、どうしようって。

-それもポップなサウンドから出てきちゃったんですね。

ちょっと風船ガムっぽいサウンドだなって思ったんですよ、ポップで、風船ガムで、ちょっとB-Boyチックなやつが、カラフルな世界で歌ってるみたいなイメージだったんで。あとスペース・シャトルにも掛けたかったから、宇宙、ふわふわしてる、浮遊感、Balloon......うわ、どうしようって(笑)。

-(笑)でも、きれいにまとめてますよね。

風船ってヘリウム・ガスなら飛んでいくけど、口で膨らませると沈んでいくなと思って、ここでもう早いとこ風船回収しなきゃ! って思ってました(笑)。

-(笑)続く「OIL」もメッセージが濃くて。

この曲はどっちかと言うと自分の人生というか、現状についてですね。ここ1年で、Bimiもそうですけど、俳優のほうでもだんだん主演をやらせてもらうようになったり、後輩が増えたりとか、背負うものが増えてきて。それがプレッシャーだとは思ってなかったんですけど、気負っていたのかなんなのか、夢に死んだじいちゃんが出てきて。俺にもこういう繊細なところってあるんだなって思ったんですけど、なんか悲しい夢とか切ない夢を見て起きた後って、それがまだ残ってるじゃないですか。ちょっと思い返したりとかして。で、これは絶対に書いておかないと! と思ってペンを走らせた感じでしたね。うちのじいちゃんは土木をやっていて、いつも油の匂いをさせて家に帰ってきてたんで、"鼻を突き抜ける 油の匂い 記憶の残滓が"とか。あとは油=オイル=老いるで、老いていく自分の人生観と、オイルだから潤滑油とか燃料とか、そういうのと掛け合わせて作った感じです。

-この曲の2ヴァース目が好きでした。"俺は耐えれているのか?/こたえてるのか?/悶えてる。"というリアルな自問自答とか、"兎角この世は他人には偉くシビアだ"という現実を歌っていたりとか。そこはBimiさんが今まさに感じていることでもあると思うんですけど。

そこに関しては、やっぱりこの世界ってシビアだなと思うし、シビアな世界だからこそ僕らの職業が成り立っているっていう逆説的な意味もあるんですけど。芸能とか人前に出る職業って、ちょっとサービス業というか。0から1を生み出さなきゃいけないこの仕事って、めちゃめちゃ脆いじゃないですか。何か1つあったら破綻するし、信用がなくなったら終わるし。サラリーマンも大変だけど、それとはまたちょっと違うシビアなところがあって、でもそれを平然としているみたいな、そういったところで自分が感じているものを入れた感じでしたね。

-そういった職業的なシビアな現実だったり、"仲間や家族や俺も老いて腐って"という、どうやっても避けられない現実も書いていたり。

命のバトンみたいなものですね。自分に言われたこととか、残されたものが足枷とか鎖みたいになることもあれば、それが前に進むための資材になることもあるし。そういうのはネガティヴでもポジティヴでもあるから。死んで残った負の遺産も、貴重で大切な思い出も、それが燃料になって、その両方のペダルを漕いで進んでいくっていうイメージですね。

-次の曲は「飼ふ -味変-」。インディーズ時代(2022年)に発表した楽曲の再録ですね。

今の歌い方とか音楽表現にしていくのが"味変"なんですけど、これは自分が思っていた以上にヒロちゃん(HIRONAKAURA/編曲担当)がとにかくヤバくて。インディーズ時代は意固地になるというか、結局俺を表現できるのは俺だけだろっていつも思っていたし、今もその気持ちはあるんだけど、そこは「babel」(2023年リリースのメジャー1stデジタル・シングル)でも言ってる"他者の味が交わって化ける"っていうところでもあって。"俺を表現できるのは俺だけ"と思っている自分も、他人の印象的なものだったり、トラウマだったり、良かったことだったりが織り交ざって形成されているんだから、改めて自分の価値観だけで曲を作ったらダメだなと思って。芯として自分というものを持っておくのはもちろんで、そこがブレたら芸術としては破綻してしまうけど、音楽って自分という芯があって、そこに翼とかいろんなパーツを付けるのは自分じゃないんだなって、アレンジされたものを聴いて思いましたね。

-まさにそういったアレンジですよね。前のバージョンのものは、もうちょっと淡々としているというか。

前回は素朴にしたかったんですよ。サビで"Cattle mutilation"って言ってるけど、目玉とか内臓を全部くり抜かれて空っぽになった牛と、空っぽな自分たちの現状を照らし合わせていて。だからこそ素朴なのが良かったんです。芝生に転がっている牛の死体を、スポットライトがポツンと照らしていて、そこにあの単調なループ・トラックが来るっていう。で、"スマブラ(大乱闘スマッシュブラザーズ)"の360°カメラみたいな感じで牛を撮っているところに、俺が淡々とラップを乗せていくって感じのイメージで作ったんですけど、今回のアレンジではその牛が飾り付けられて葬儀が行われていて、"この牛、そんないいとこの牛だったんだ!?"みたいな(笑)。

-はははは(笑)。もともとはダウナーで、内省的で、それこそスポットライト1つだけみたいなイメージだけど、"味変"バージョンはもうちょっと視界が広がっているというか。

そうそう、周りも見えるようになって。この牛がなんでこうなったのかっていうのを紐解いてくれてる。宇宙船が見えて、宇宙人が実験して、そこに捨てたっていうあらすじまで見えるようになって。すげぇなぁ、それもそれで素敵だなって思いましたね。

-でも、そもそも「飼ふ」を"味変"させたかった理由というと?

もう4Gと5Gがなくなっちゃうかもしれないので(笑)。6Gになっちゃうから。

-(笑)"電波4Gか5Gだかで ほんとがんじがらめ"というリリックから。

でも、昔の俺おもろいなと思ったんですけど、"Cow"って牛で、"う"が死んでるから、普通は"う"のところを"ふ"にしてるんですよ。

-あぁ。"俺らを嘲笑ふ斜陽"とか"消しゴムのよふに消費されてポイさ"とか。

変なこだわりだけど、改めてこだわってたんだなって思いますね。「飼ふ」はライヴでやると感情が入るんですよ。何者でもなかったときの自分の気持ちというか。"俺の中をしかと確かめてくれ 黒ずむ前に"とか"俺の中をしかと確かめてくれ 暮なずむ前に"とかは自分の鮮度の話なんですけど、牛の肉も鮮度が大事なように、自分の鮮度はそんなに長く保てないから、早く人に見つけてもらわないとっていう。そうやって苦しんでいるのが、"味変"でちょっと違う感覚になっていて、レコーディングしてて楽しかったです。

-たしかに、ちょっと違うベクトルなんでしょうね。近しいものではあるんだけど。

うん、焦ってますよね。今は"上に行かなきゃ"っていう焦りで、前のは"見つけてくれ"っていう焦り。とにかく誰か一回俺にスポット当ててくれっていうところから、だんだんスポットが当たるようになってきて、さらにそのスポットがもっと欲しくて、光の位置に近づいていくっていうか。そういう縦軸と横軸みたいな感じなんですけど、ほんと酷かったですね、この時期の精神状況は。今はたぶんこういうの書けないですもん。

-そういった変化があったからこそ、このトラックでも気持ちがいいと思えたんでしょうね。

たしかに当時の俺だったら"いや、こういうのじゃなくてもっと素朴な感じで!"ってなってたと思うけど、今はめちゃめちゃ素晴らしい! って思うんで。

-そして、CDのみに「Bonus Inst -Refresh- (Prod. DJ dip)」が収録されると。

ここまで話してきた曲たちをマッシュアップじゃないですけど、リミックスで1つにまとめてハイライトみたいな感じにして、お疲れ様でしたって締める感じになってます。

-こちらもぜひ盤をゲットして聴いていただければと。本作を持ってのツアー"Bimi Release Party 2024 -Special Box-"も決定しています(※取材は7月下旬)が、その前に、お話にも少し出ました品川 ステラボールで開催された"Bimi Live Galley #03 -cosmic-"についてお聞きできればと思うんですけども、この公演もソールド・アウトだったと。

いやぁ、ありがたいことに。

-当日はいかがでした?

めっちゃ良かったですね。手応えもあったんですけど、その手応えがあったからこそ、さっきの縦軸の焦りがすごいんですよ。今は仲間をもっと増やしたいというか。めちゃくちゃカマしたい欲とか、まだ行けるって気持ちがあって。まだ自分の中では武者震いする領域じゃないというか、"当然行けるんだよ、早くしてくれよ"っていう段階であって、挑戦って感じではないんですよ。"やっとかよ"っていう。そこの焦りが大きいですかね。早くもっとカマさせてくれって。

-ある意味、答え合わせをしているというか。

そうですね。当たり前やん! っていう。めちゃめちゃビッグマウスで申し訳ないんですけど。もちろん会場が埋まるのはめちゃくちゃ嬉しいんですよ。安堵感はあるし、ビジネスとして成立させられて、周りの大人たちにも納得してもらえて良かったっていうのもあるんですけど、でも個人としては当然というか、まだ全然満たされてないですね。自分の器が100リットルあるとしたら、今は1デシリットルぐらい。

-(笑)1滴にも満たないレベル。

やっと水道が繋がって、蛇口をひねれば出るんだけど、重くてひねれない感じ。まだめちゃめちゃ乾いてます。だからこそもっといろんなフェスとかに出たいですね。"なんだこいつは!?"って思われる自信はめっちゃあるんで。

-Music Bar ROCKAHOLIC新宿でイベントもあるようで。

Bimiの出演はないんですけど、DJ dipが出演してクラブで言うBimiナイトみたいな感じですよね、Bimi空間みたいな。大丈夫かな......誰か酸欠とかなんないかな。毎回ライヴで倒れちゃう人がいるんですよ。やっぱ女性だと体力的に疲れちゃいますよね。屈強なわけではないから。

-たしかに元気ではありますけどね。

今は野郎も増やしていきたいなって思っていて。"cosmic"のときにぼちぼち増えてきたなって思ったんですけど、まだまだもっと。

-聴いてもらったら刺さると思いますし。東名阪ツアー"Bimi Release Party 2024 -Special Box-"のファイナルはZepp Shinjuku (TOKYO)です。

Zepp(Shinjuku (TOKYO))は因縁の場所でもあって。インディーズのときに会場を取ろうとしたんですけど、まだ信用がなくて取れなかったんです。でもKING RECORDSを通した瞬間、一発で取れました。まぁ、当然だよなっていうのは分かりますけどね(笑)。信用もないのにいきなり取らせてくださいって言っても難しいだろうし。でも自分の中で思い出もあるし、ありがたいですよね。

-他にも続々と決まっていることもあって、明かせない部分もあるとは思うんですけど、いい方向に進んでいきそうな感じがしますね。

うん。いい方向には向いてきていて。一個一個大事にカマしていくだけだなっていう感じなんですけど。でも、とにかく早くいろんな人に聴いてもらって、自分の心を鎮めたいですね。ちょっと安心したいなって思うけど......でもまぁ安心しないんだろうな(笑)。安心しないまま、このまま行きたいです。勢いが止まったら、その程度だったなって割り切る心を持ってメジャー・デビューしているので。だとしたら生き急がなきゃいけないなっていう気持ちでいます。

RELEASE INFORMATION

ニューEP
『Snack Box』
『Snack Box』JK.jpg
NOW ON SALE!!
NKZC-56~7/¥9,350(税込)
[EVIL LINE RECORDS]

ニューEP
『Refresh』
not_end.jpg
NOW ON SALE!!
NKCD-10511/¥2,750(税込)
[EVIL LINE RECORDS]