INTERVIEW
MAD JAMIE
2023.08.17UPDATE
2023年08月号掲載
Member:感情線あくび
Interviewer:山口 哲生
"渋谷区宇田川発IDOL PUNK ROCK"をコンセプトに掲げ、2021年に始動したMAD JAMIE。パンチの効いたハード・ナンバーと、アグレッシヴなパフォーマンスでフロアを沸かせてきたが、2023年3月にグループとしての活動に幕を下ろし、同年4月から感情線あくびのソロ・プロジェクトとして再び走り始めることとなった。再始動発表以降は、現体制での第一声として「NONFICTION」のMVを公開し、5月16日には恵比寿LIQUIDROOMでのワンマン・ライヴ"FUCK FOREVER"を開催。それ以降も楽曲を立て続けに発表し、さらには自主イベントも開催と、勢いを加速させている要注目のロック・アイドルだ。激ロック初登場となる今回は、現体制として活動してからの手応えや、連続リリースされた楽曲について、そして感情線あくびのルーツやフェイヴァリットまで、幅広く話を訊いた。
何があっても、どういう状況になっても、ここでやり続ける
-4月1日に現体制での活動を発表されてから凄まじい勢いで突き進んできていますけども、ここまでを振り返ってみていかがでしょうか。
率直に言うと、帰ってきたなっていう感覚が一番強いです。Jamie(※ファンの呼称)と一緒に作るライヴが、あくびは本当にすごく大好きだから、その日常というか、その日々が帰ってきたなって。
-恵比寿LIQUIDROOM以降、自主イベントも数多く開催されていますね。
ライヴも回数を重ねるごとに、熱量がどんどん高まっているのを感じてます。Jamieと話す機会があるときも、日に日に楽しくなってるっていう感想をくれたりして、"本当に一緒に作ってるんだな、MAD JAMIEは"っていうことを実感してますね。パフォーマンスは、バンド形態で歌うというのはLIQUIDROOMから始めたことなので、実は戸惑いもあって(苦笑)。でも、全部が生になったことで、もっと音楽や歌に向き合ってる時間が多くなっていて、それもすごく楽しいですね。上手くできなくて悔しいときもあるんですけど、オケでやっていたときには感じなかった、音と自分が重なる瞬間が少しずつ増えている気がして。そうなったときにはすごく嬉しいし、楽しいです。
-お話の着地点が"楽しい"になることが多かったですけど、毎日結構ハッピーな感じではあるんですか?
うん、本当にそうです。やっぱりライヴって自分の生き甲斐だったんだなって感じてます。
-そうなると、ライヴがない時期は相当キツかったでしょうね。
1ヶ月半ぐらいしか活動休止していなかったんですけど、それでもやっぱり長く感じましたね。普段はひとりで家に閉じ籠っているタイプなんですけど、ずっとウズウズしてました。でも、その時間でもう一度自分と向き合うことができたし、何回考えても、あくびにはMAD JAMIEしかない、それがやりたいことなんだって強く再認識できたから、良かったなって。
-そこに辿り着くまでは、不安とか怖さもあったり。
MAD JAMIEを始めるときに、あくびは何があっても、どういう状況になっても、ここでやり続けると覚悟を決めたから、やるということは揺るがないものとしてあったんです。でも、ここまで脇目も振らずに活動してきて、止まることが初めてぐらいだったから、心配というか、そういう気持ちもあって。あとは、自分ひとりで帰ってきてもう1回やるとなったときに、Jamieはついてきてくれるのかな、喜んでくれるのかなという不安もあって。けど、信じて待ってくれているのがSNSとかでも見えたり、すごい伝えてくれたりもしたから、不安にはなりつつも、ずっと前を向いていられました。
-たしかに、信じて待ってもらえていることって嬉しいし、ありがたいですよね。
本当にそれを感じました。信じてもらえていることが、自分の中ですごく大きなパワーだった。
-お話しされていた"何があってもやり続ける意志"は、現体制になってから最初に発表された「NONFICTION」(2023年4月リリース)に詰め込まれていますが、そういった気持ちを歌いたいというところから、この曲は動き始めたんでしょうか。
そうですね。あくびは、MAD JAMIEって嘘がないと思っていて。ライヴのあの空間に嘘なんてひとつもないと思って今まで活動してきたし、これからどれだけ形が変わっても絶対にそうするという気持ちがあったので。そういうノンフィクションな部分と、強い意志と、これからもやっていくという少しの希望がある曲になったらいいなという話はしてました。
-なるほど。MAD JAMIEのホームページを拝見すると、あくびさんのプロフィールのところに"メイクは濃くても心は裸"と書いてありますけど......。
それ久しぶりに聞いた(笑)!
-(笑)「NONFICTION」という曲にしても、今お話しされていたことにしても、そのフレーズとすごく結びつきが強いし、座右の銘みたいな感じにもなっているなと思って。なんとなくつけたひと言じゃないんだろうなって思いました。
あれはデビューしたときに、大人の人がつけてくれたんですよ。"君は「初期衝動」担当で、キャッチコピー「メイクは濃くても心は裸」だから"って。そうなんだぁと思って(笑)。
-実際どうなんです? もともと嘘が嫌いとか、ライヴとかリアルな場面を大事にしたいというところがあくびさん自身にあって、そこを汲み取って名前をつけてもらえた感覚もあるんですか?
うん、そっちですね。気づきのほうがデカいかも。"あ、心は裸だったんだ......!"って。自分が服を着ていないことをそこで知りました(笑)。
-ははははは(笑)。
"私、全裸だったんだ。だからこういうことになっているんだな"って。"感情線"という名字もデビューしたときにつけてもらったんですけど、感情を出しているんだなって、改めて自分のことを知った感じです。
-"あなたはこういう人になってください"という感じでは決してないんですね。作り上げられた偶像みたいなものとは違うという。
そうなのかもしれない。悲しかったら悲しいし、嬉しかったらめっちゃ嬉しいし、全部どうぞっていう気持ちでライヴしてると思う。で、それを受け取ってくれるJamieがいてくれてると思ってます。
-昔から嘘をつくのがあまり好きじゃなかったんですか?
すぐ顔に出るタイプです(笑)。小さい頃に、例えば怒られないように嘘をついても、絶対にバレてたりとか。そんなに嘘をついた思い出もないんですけど、お母さんから"顔に書いてあるよ"って言われたり、いろんな大人からも"わかりやすいね"って言われたり。そうやって言われてきた思い出ばっかりあります。
-私はそういうタイプなんだなと思いながら生きてきたと。
うん。そう思いながら大人になったはずなのに、未だに出てるっぽい(笑)。
-(笑)ちなみに、小さい頃から音楽が好きな子だったんですか?
そうですね。最初はテレビに出てるアイドルがすごく好きで。世代的にはモーニング娘。とかミニモニ。とか、あとは懐メロ番組で見た松田聖子ちゃんとかWinkとか、キラキラしたアイドルが好きだった記憶があります。
-そういった世界を見て、私も歌を歌いたいと思ったんですか?
思ったんですけど、誰にも言えなかったですね。自分ができるものじゃないなって。あんなにキラキラして、歌って踊るみたいなことは自分には無理だなって、小さいながらに思ってしまっていたし、そう思ってることを誰かに言うのも恥ずかしかったです。だから親にも言わずに、ずっと心の奥にしまって生きてました。"将来なりたいものは?"みたいなよくある質問も、なんとなく周りと合わせて、"お花屋さん"とか"ケーキ屋さん"って言ってみたりとか。
-心の奥にしまいながらも、私はやっぱり歌いたいんだと思えたのはいつ頃だったんです?
高校を卒業したあとですね。高校はファッションの学校に行ったんです。矢沢あい先生の"ご近所物語"を読んで、自分の作りたいものを作って、ショーで輝く主人公にすごく憧れて。これだったら自分もやれるかもしれないなと思ったし、そのことは人にも言えたんです。それで学校に入ったんですけど、卒業するタイミングでもう一度将来について考えるときに、すっごく大好きではあるんですけど、ファッションのほうには進み切れなくて、どうしようか迷った期間が1年ぐらいあって。自分が本当にやりたいことってなんなんだろうなって、ずっと考えていたんですけど......やっぱりあくびは、本当はアイドルになって、人前で歌って、パフォーマンスして、表現することがしたかったんだなって、そのときに思って。でも、自分には無理だとずっと思っていたから、1個だけオーディションを受けてみて、それで無理だったら諦めよう。イチかバチか、この夢に自分の中でケリをつけようと思って受けてみたのが、今の事務所です。
-へぇー! そうだったんですね。
受けたら返事が返ってきて、オーディションに行って、受かって。そこからトントントンと来て......今に至る(笑)。
-(笑)そこからは速かったと。
うん。あそこから世界が変わったなって思いますね。
-そこで1歩踏み出せたのはめちゃくちゃ大きかったですね。
ホントに。それが違う形だったり、踏み出せてなかったりしたら、本当に今がないから。良かったなってすごい思います。
-最初はテレビに出ていたアイドルに憧れつつ、MAD JAMIEとして発表している楽曲はかなりハードなロック・ナンバーですけども。そういう音楽は徐々に好きになっていったんですか?
そうですね。もともとジャンルをあまり意識して音楽を聴いたことがなくて。最初に自分の意思でCDを借りに行ったのは、相対性理論と東京事変と椎名林檎。ラジオで流れてきたのを聴いて気になって、歌詞を調べて、こういう人なんだって借りに行ったのが最初です。で、高校のときに友達の影響でRADIOHEADとスマパン(THE SMASHING PUMPKINS)がすごく好きになって。聴くとその世界に入れて、なんてきれいなんだ......って。音楽の世界が広がったのが、そのふたつのバンドですね。激しい音楽はMAD JAMIEになってから、大人の人とかJamieにそういう音楽が好きな人がいっぱいいるからいろいろ教えてもらって、いろいろ聴いたんですけど。その中でも一番刺さったのがRAGE AGAINST THE MACHINEです。
-どんなところが刺さったんです?
すっごいかっこいいし、気持ちいいし、心が燃えるってこういうことだなって。あくびは英語がすごくわかるわけじゃないから、そのときは何を言っているのかわからなかったんですけど、でもそういうことじゃなくて、ウワー! って訴え掛けてくるものがあって。
-なんかめっちゃ怒ってるなぁみたいな。
そうそう(笑)! Zack(De La Rocha/Vo)がどこへ行っても、どんな人の前でもとにかく怒ってる(笑)。でも、真ん中に太い芯があって。それにすごく感銘を受けて、今ではすっごい大好きです。