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INTERVIEW

OMNIUM GATHERUM

2021.12.17UPDATE

2021年12月号掲載

OMNIUM GATHERUM

Member:Markus Vanhala(Gt)

Interviewer:菅谷 透

25年のキャリアを持つフィンランドのメロディック・デス・メタルの代表格、OMNIUM GATHERUM(以下:OG)。彼らの9枚目となる最新作『Origin』は、メロデスの攻撃的な成分や、OGならではの壮大なサウンドスケープを保ちながらも、清涼感やポップな要素を絶妙にミックスした、荒涼とした大地に暖かな光が差すような作品に仕上がっている。80年代のヴァイブを纏い、今までよりキャッチーでメロディックな内容となったアルバムについて、バンドの中心人物であるMarkus Vanhalaに話を訊いた。

-2019年にはSCAR SYMMETRYらと来日公演を行いましたね。当時の思い出はありますか?

古き良き時代だったね。日本にはOMNIUM GATHERUMとしてはたしか4回くらい行っているんじゃないかな。2013年ごろだったら、NIGHTWISHとかと東京のSTUDIO COASTでやったよ(※"LOUD & METAL ATTACK")。あれは俺たちにとってもしかしたら史上最高のライヴだったかもしれないな。STUDIO COASTみたいなデカいところが満杯になったしね。SCAR SYMMETRYと行ったのは2019年だったね。東京はソールド・アウトになったんだ。名古屋や大阪でもプレイしたよ。そのあともずっと、早くまたそっちに行きたいと思っているよ。いつ行っても最高の時間が過ごせるし、オーディエンスも素晴らしいしみんないい人たちだしね。カルチャーとか、日本のすべてが好きなんだ。フィンランドとは全然違うから、いつも興味深い体験ができる。

-そのあと2020年にパンデミックがやってくるなんて思いもよらなかったわけですが、バンドにはどのような影響がありましたか? また、あなたはロックダウンの中でどのように過ごしていましたか?

他のバンドと同じように打撃を受けたよ(苦笑)。基本的にずっと自宅に閉じ込められていたんだ。俺にとってはクレイジーな状況だったよ。俺はOGの他にINSOMNIUMもやっているから、この10年は年間200回くらいショーをやっていた。常に旅をしていて常に家にいなかったから、俺にとっては大きな変化だったよ。でも、悪いことだったとは言えないな。やっとリラックスする時間がたくさんできたし、この家(※自宅スタジオからインタビューを実施)で家族と過ごすこともできたしね。この機会を最大限に生かすようにはしていたよ。音楽的にもメリットがあったと思う。普段は曲を書く時間が常に足りない感じなんだ。コンサートの合間にデッドラインがあったりするからね。でも今回はたっぷり時間をかけて曲を作ることができたから、音楽の世界にのめり込んで......音楽のおかげでサヴァイヴできたようなものだよ。ずっと曲作りに没頭していたから、正気を保つことができたんだ(笑)。自宅スタジオで曲を書き続けてね。INSOMNIUMのEP(『Argent Moon』)もできたし、OGのアルバムもできたし......それからI AM THE NIGHTというプロジェクトも作ったんだ。90年代のノスタルジックなブラック・メタルにインスピレーションを得たバンドなんだけどね。

-それは面白そうですね!

BODOM AFTER MIDNIGHTのWaltteri Väyrynen(Dr)も一緒にやっているんだ。もうひとつスーパー・グループ的なものも結成してね。そっちももうすぐリリースしたいと思っているよ。いろんな音楽が進行中なんだ。

-ロックダウンの中でもずっと仕事を続けていたんですね。では、その結果のひとつである、OGのニュー・アルバム『Origin』についてうかがっていきます。海外ではすでにリリースされていますが、どのような反響が届きましたか?

上々だよ! ちょっと心配していたんだけどね。もちろんOGらしいサウンドではあるけど、今回はデス・メタル風のポップという感じだから(笑)。今までよりキャッチーでメロディックな内容になっている。今回はこういう気分だったんだ。メンバーの音楽的嗜好を組み合わせたような感じかな。俺たちは80年代のハード・ロックや、アダルト・オリエンテッド・ロック(AOR)をよく聴いているからね。JOURNEYとかTOTO、WHITESNAKE、VAN HALEN......特にDEF LEPPARDをよく聴く。そっち系の嗜好をデス・メタルに組み合わせたいと思ったんだ。というのも、俺はもともと"ちょっと枠からはみ出した考え方をしたほうが面白い"と思っているからね。OGはメロディック・デス・メタル・バンドとカテゴライズされがちだけど、インスピレーションはメロディック・デス・メタルじゃないところから得たほうがいい。ハード・ロックとかね。IN FLAMESとかDARK TRANQUILLITYとかSOILWORKの真似をしようとするよりも、そうしたほうがサウンドがユニークになるし。評論家たちもこのアルバムを気に入ってくれているみたいで、うまくいっているんだ。フィンランドではラッキーなことにツアーができる状態だったから、早くも数ヶ所プレイしたんだ。オーディエンスも新曲を気に入ってくれているみたいで良かったよ。それにこの1年半くらい静かだったからみんなライヴにも飢えていて、熱狂的に迎えてくれたんだ。スペシャルなマジックがかかったような雰囲気だった。

-アルバムはいつごろから制作をスタートさせましたか? パンデミック前からだったのでしょうか。

パンデミック前にできていたのは、たしかせいぜい1、2曲だったんじゃなかったかな。パンデミックが起こったとき、OGはいい状況と悪い状況の両方にあったんだ。ちょうど『The Burning Cold』(2018年リリースの8thアルバム)を引っ提げた最後のツアーをしていたころでね。それが終わったらツアー活動を休止して、新作に向けて曲を書き始めるつもりだった。だからタイミング的にはちょうど良かったと言えばそうなんだけど(笑)、打撃も本当に大きかったんだ。アメリカにいたしね。

-アメリカ! そうでしたか。

ヘルシンキからニューヨークに向かう飛行機に乗っているときにパンデミックが爆発したんだ。俺たちは何も知らなかった。ニューヨークのJFK空港に降り立ったら人っ子ひとりいなくてさ。世界滅亡を描いた映画の1シーンみたいだったよ(苦笑)。どこも閉まっていて、それで"これは大変なことになったぞ"と気づいたんだ。ショーもフィラデルフィアでかろうじてやれただけで、フィンランドに逆戻りだったよ。

-そうだったんですね......。

もちろん経済的な損失もひどかったよ。ツアー・バス代もあったし、2年間有効なビザも取ったばかりだったし。アメリカで足止めを食らうより帰れて良かったけどね。

-少なくとも帰ったおかげでこのアルバムに取り組めましたからね。

そうなんだよ。帰国してすぐに取り掛かったんだ。最初はロックダウンもそんなに長くないだろうと思っていて、この数週間を有意義に使おう、なんて思っていたしね。ところがこんなに長引いて(苦笑)。

-パンデミック中にメンバーも変わりましたね。今作から、新たなメンバーとしてMikko Kivistö(Ba)、Atte Pesonen(Dr)が加入しています。彼らの特徴を教えていただけますか?

たしかにヘンなタイミングだよね。前のギタリストのJoonas("Jope" Koto)とベースのErkki(Silvennoinen)が脱退したのが2019年でパンデミック前だったんだ。ふたりともツアー三昧の生活に疲れてしまってね。歳をとるとみんな人生の中で他のことをやろうと思うようになって、ツアー・バスや空港を見たくないと思うものらしい。俺には理解できないけど(笑)。俺は人と違うんだろうな、今でもそういう生活が好きだしね(笑)。というわけでコロナ禍が始まる数ヶ月前にふたりが脱退した。もっとリラックスした人生を送りたいということで。もし脱退が数ヶ月後だったらまだいたかもしれないね。ロックダウンで休めたわけだから(笑)。ヘンなタイミングではあったけど、幸運にも新しくいいメンバーが入ってくれたから......。

-新メンバーもレコーディングには参加したのでしょうか。

そう、参加したよ。

-彼らとの新しいケミストリーはいかがですか。

最高だと言わざるを得ないね(笑)。今のラインナップが一番いいんじゃないかな。そうだ、パンデミックの良かったことがもうひとつあって、バンドとしてのリハーサルの時間がたっぷり取れたことなんだ。この10年はリハーサルの時間がとても少なかったからね。いつもツアー中とかスタジオの中でやっていたんだ。今はオールドスクールな感じで、若いころみたいにリハーサル室に入って、バンドとしてリハーサルするようになった。このタイミングで新メンバーを迎えられたのも良かったね。時間がたっぷりあるから、一緒に過ごして一緒にプレイして。結束が固くなるのが早かったよ。

-それは良かったですね。アルバムにも一体感が表れているような気がします。そうやってできたアルバムの"Origin"というタイトルの由来についてもうかがえますか? シンプルながらもとても力強いタイトルです。

このタイトルにはいろんな意味があるんだ。歌詞的な意味もある。歌詞はJukka(Pelkonen/Vo)がいつも担当しているんだけど、あいつの歌詞はいつも人間の深層心理的なものを描いているんだ。『Origin』は前作(『The Burning Cold』)からするとコインの裏側みたいなものだね。『The Burning Cold』は外の世界とのインタラクションみたいなことを書いていたけど、『Origin』はもっと心の中を掘り下げたような感じなんだ。聖域みたいなところまでね。人はどういうふうに物事を決断するのか、周りからの決めつけにどう反応するのかとか、心の"Origin(源泉)"を探る内容なんだ。他の意味としては、新しいメンバーでバンドが再結集して、リハーサル室でプレイするというルーツ、つまり"Origin"に戻ったというのもある。キッズのときみたいな、プレイする喜びをまた見いだしていることを表しているんだ。コンサートをやりたいとか有名になりたいとかそういうものじゃなくて、仲のいいやつらとプレイすることがひたすら楽しいということだね。

-純粋な喜びを味わっているということですね。

それ以外のことは俺たちにとってはボーナスみたいなものだよ(笑)。

-今作は、ミキシングにJens Bogrenを迎えています。ARCH ENEMYやOPETHといったデス・メタル・バンドとの仕事も多い人です。彼には"DEF LEPPARDの傑作『Hysteria』のデス・メタル・バージョン"という指示が伝えられたとありますが、あなたにとって『Hysteria』はどのようなアルバムでしょうか?

俺のオール・タイム・フェイヴァリット・アルバムだね(笑)。

-でしょうね(笑)。

初めて聴いたのは8歳くらいのころだったかな。それくらい昔から好きだったよ。今回は80年代のヴァイブが強かったんだ。"マイアミ・バイス"とか、古き良き栄光の時代のね。Jens Bogrenは俺が大好きなミキシング・エンジニアのひとりなんだ。本当にたくさんのバンドと素晴らしい仕事をしている。彼が今回のアルバムをミキシングしてくれて光栄だよ。心から感謝している。これにも素晴らしい仕事をしてくれたよ。で、ミキシング・エンジニアというのは参考にできるアルバムを聞いてくることが多いんだ。どういう感じのサウンドスケープが欲しいのかの目安にしたいってことでね。Jens Bogrenにとっても、さっき出てきたようなバンドと同じようなものを作れと言われたら退屈に思うだろう。"ARCH ENEMYみたいなサウンドにしてください"なんて言われてもね......。今回は80年代のヴァイブの強いアルバムだから『Hysteria』を聴いてくれと頼んだんだ。80年代のプロダクションの例として素晴らしいからね。デス・メタルの置かれる環境としてはまったく新しいものでもあるし。つまりリヴァーブやエコーを増やして、よりスタジアム向けのサウンドにするってことなんだ(笑)。

-なるほど。Jensも新鮮なものを求めていたでしょうね。

もちろん! 彼も他とは違うことをやりたいと思っていたんだ。SOILWORKみたいなアルバムを他のアーティストでやるよりもね。

-80年代のヴァイブを考えていた時点でJensのことはすでに頭にあったのでしょうか。

80年代のヴァイブだったから、初めから頭にあったわけではなかったんだ。ただ、彼はいつもユニークなサウンドスケープを作る人だからね。手掛けたアルバムの音が全部違うから、典型的なミキシング・エンジニアとはちょっと違うんだ。そのプロジェクトに深く飛び込んで、その核心を掴める人だね。今回もそうしてくれたと思う。それでいて俺たちらしいメロディック・デス・メタルの要素も生かしてくれた。両方のいいとこどりをしてくれた感じだね。

-たしかに『Hysteria』との共通点もありますね。緻密に構築されたサウンドや、ポップ寄りの立ち位置と変化した作風のあたり。それでいてOG的な要素もばっちりキープしていると思います。メロディック・デス・メタルの攻撃的な成分をしっかりと保ちながらも、清涼感やポップな要素を絶妙にミックスした作品だと感じました。

それが方程式みたいな感じだね。新しいものを見つけつつ、オリジナルのサウンドをキープする。ファンをがっかりさせることのないようにね。